自称・未来人の幼馴染   作:千夏ケイ

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第8話 幼馴染に引かれた……?

 ワイワイと、それぞれ友人たちとの話に興じる朝の時間。

 耳を傾けてみると、アニメや漫画の話やお笑い芸人の話、宿題の話など様々な話題がされている。

 

 しかし、その輪のどれにも俺はいない。

 

 友達が少ないから、ではない。

 確かに友達は少ないが、話す相手がいないほどじゃない。

 

 俺だって誰かと喋りたい話題がある。

 例えば、『幼馴染に恋はしない!』の話とか。

 そういった類の本が好きな奴がいるので、彼と話せば盛り上がれるだろう。

 

 でも、今はそんな場合じゃない。

 雑談なんてする気力がない。

 

「マジでわかんねぇ……!」

 

 俺は今、頭を抱えたままこう呟くしかできないのだ。

 

 時は遡り、数十分前。

 俺が「祐奈のことがもっと知りたい」といった時のことだ。

 

 俺の言葉を聞いた祐奈は目を見開き、花瓶を強く抱きしめる。

 

「えっ、ちょっ、ゴメン!」

 

 その後、何かすると思ったら、急に謝罪の言葉を残し、走り去っていってしまった。

 

 調べたところによると、恋愛は第一印象がかなり大切らしい。

 つまり、すぐさま逃げられた俺は出鼻をくじかれた、ということになる。

 

 まさか逃げられると思っていなかった俺ができることといえば、フラフラ~と自分の席に座り、頭を抱えることぐらいなものだ。

 

 そして、そのままなにもできず、今に至るという訳である。

 

 にしても、どうすればいいのだろうか。

 

 祐奈が逃げた、と捉えることもできるかもしれないが、考えてほしい。相手はあの祐奈だ。

 いつも余裕ぶっているあいつが、俺相手に全力で逃げるだろうか?

 全く持ってありえない。断言してもいいが、東川祐奈の辞書に“逃走”の文字はない。絶対に。

 

 だから、祐奈が走り去った原因は祐奈以外にあると考えるのが普通だろう。

 

 とすれば、考えられる理由は2つ。

 

 まず1つ目。何か急用を思い出して、話している暇がなかったから。

 この場合はいい。俺の話は別に緊急じゃないので、大事なことがあればそっちを優先するべきだと思う。

 

 2つ目。幼馴染が急に変なことを言い出して、キモ過ぎてドン引きしたから。

 こっちはもう最悪だ。すぐさまその場から離れたくなるぐらいのキモさなんて恋愛対象外確定演出じゃないか。

 

 ちらりと祐奈の方を見る。

 彼女は、いつも通りの様子で友達と話しているようだった。

 少し顔が赤いが……笑顔で楽し気な様子。とても急用があるようには見えない。

 そして、この光景は数十分前からずっと変わっていない。

 

 走り去った祐奈にショックを受けて放心状態だった数分間の間に用事を片付けたとかはあるかもしれないが……希望としてはあまりに小さすぎる。

 あまり自分の都合がいいように考えないほうがいい。

 

 まぁ、これで答えは1つに絞られただろう。

 

 つまり、彼女は今、ハチャメチャにドン引きしている状態なのだ、と。

 

 どこがダメだったんだ!? どこで失敗した……?

 

「はぁ……」

 

 ため息が止まらない。こういう時に、恋愛経験0なのがネックになる。

 こうなるぐらいなら、初恋の1つや2つ、中学までに体験しておくべきだったと心底思う。

 体験しようとしてできるものではないけれども。

 

 そうして己の未熟さを嘆いていると、背中がポンッと叩かれた。

 

 後ろを振り向くと、そこに立っていたのはタツだった。

 

「おいおい、何をそんなに悩んでいるんだ? 腹でも壊したか?」

 

 タツなりの心配なんだろう。その優しさが心にしみる。

 

「タツ、聞いてくれよ!」

 

 俺は、心優しき友に何があったかを伝えることにした。

 こういうときは、友達に慰めてもらうのが一番良い。慰めがなくとも、きっと、タツならわかってくれる。

 

 それに、タツはかなりモテるはずだ。

 女の先輩たちがキャーキャー言っているのを何度も見たことがある。

 ここはタツにお願いしよう。

 

 ◇

 

「いや、お前バカじゃねぇの?」

 

 話を聞き終わったタツの口から出たのは、慰めなど一切ない純度100%の罵倒だった。

 

「おい、なんてこと言うんだよ」

「いや、だってそうだろ? お前の考えは全くの見当外れなんだから」

「……見当はずれ?」

 

 いったい何が見当はずれだというのだろうか。

 俺が「祐奈のことがもっと知りたい」って言った瞬間に逃げ出したんだぞ?

 キモさに耐えられず、俺と距離を取ろうとしたとしかか考えられない。

 

 眉をひそめた俺を見て、タツがため息をつく。

 

「……全然わかってないようだな」

 

 ——ガシッ!

 

 タツが俺の頭を鷲掴みにする。

 いくら体力がないとはいえ、さすがは男。

 普通に痛い。早急にやめてほしい。

 

「いいか? この僕がしっかりと教えてやる。この頭に叩き込むんだぞ」

 

 あれ? なんか、ちょっと怒ってる?

 なんでだろう。怒らせるようなことはした覚えが……

 

 ……いや、あるな。

 そういえばさっき、タツを置き去りにして走ったっけ。

 

「あー、なんだ。さっきはごめんな」

「何のことだ。僕は怒ってなんかないぞ?」

 

 怒ってないなんて絶対嘘だ。

 だってちょっと不機嫌そうな顔をしているし。

 つかまれた頭は痛みを増してくるし。

 これで怒っていないわけがない。

 

「マジでごめんって。もう置き去りにしないからさ、許してくれ」

「……じゃあ、今度は最後まで話を聞いてくれよ?」

 

 今度は、か。

 そういえば、置き去りにするときなんか言ってたよな。

 まぁ、今言ってこないんだったら大した話でもなかったんだろうし……聞かなくてもいいか。

 

 それよりも、今はタツの教えとやらに集中しよう。

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