Fate/Grand Order Relief   作:コードs³

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今作品の主役、登場!





『緊急事態発生。緊急事態発生。

 中央発電室、及び中央管制室で火災が発生しました。

 中央区画の障壁は90秒後に閉鎖されます。

 職員は第二ゲートから速やかに退避して下さい。

 繰り返します――』

 主電源から予備の物へと切り替わり、明かりを取り戻した部屋にけたたましい音を鳴らしながら、アナウンスが自動的に放送される。

「今のは爆発音か!? 一体何が起こって……モニター、

 管制室を映してくれ! みんなは無事なのか!?」

 スマホの画面が瞬時に切り替わり、現在の中央管制室

の惨状を映し出す。管制室は瓦礫が積み重なり、焔が煌々と燃え上がる地獄と化している。

「これは……」

「…………」

 二人は言葉を紡ぐことすらままならず、その光景をただ眺めている。両者ともども思考に主導権を奪われ、これからの行動を定めるためにフルスロットルで脳のリソースを消耗しているのだ。

 それは三秒にも満たない間に行われた。

 弾かれたように立香は部屋のドアへ駆け出していく。

「待て!」

 だが医療スタッフとはいえ大人の挙力には抗える筈もなく、その行動は達成されること無く終わる。

「……離して下さい」

「離したら一人で行くつもりだろう!? 無茶だ!」

「ですが!」

 ロマンの目を真っすぐ射貫く立香の視線を見て根負けしたか、或いは止めるだけ無駄だろうと思ったのか、呆れたようにロマンは口を開く。

「分かった。だが、決して無理はしないように。

 そうと決まれば急ぐぞ」

 二人は全力疾走で廊下を駆け抜ける。

 多少崩れ落ちていようが構わない。

 そんなものなど、障害になり得ないのだから!

 

 当然というか幸運にも二人は時間を然程掛けずに管制室まで辿り着いた。そこにはスマホに映し出されていた映像の通りに業炎に包まれたものがあった。

「生存者は、今の所見られない。ここから確認できたの

 はカルデアスのみだ」

 続けて、ロマンはカルデアスの真下を指差す。

「あそこの、所長たちのいた場所が爆心地だろう。事故なんかじゃない。これは明確な破壊工作だ」

「ああ。そうだろうね、ロマニ。これは人為的に引き起

 こされた事件だろう」

 ロマンの付近の瓦礫の下から声が聞こえる。

「うわぁ幽霊だ!?」

「生存者に対して失礼だよ」

 ガラガラと音を立て、周囲に立つ二人の邪魔にならないように瓦礫が動きだす。そこには砂埃をこれでも纏っている男と、気を失い横抱きになっている女がいた。

「それにしても、ここまで吹き飛ばされるとはね」

「いや、その……」

「なんで生きてるんだ、って顔をしているね、二人と

 も。……私にも分からないから安心してくれ」

 さも当然のようにそう言われると、二人には言いようが無くなる。というか、それを追求できるような状況でないことは理解しているためである。

『動力部の停止を確認。発電量が不足しています。

 予備電源への切り替えに異常があります。

 職員は手動で切り替えてください。

 隔壁閉鎖まであと――――』

「……ルル副所長、これが終わったらちゃんと説明して貰

 いますからね!」

 そう言い残し、ロマンは何処かへと走っていった。

 恐らく火災のあった中央発電所に向かったのだろう。

 ロマンの姿が見えなくなった後、唐突にルルと呼ばれた男は口を開く。

「……ご機嫌よう、藤丸立香。立場上、君には避難をする

 ように命ずる必要があるんだけど、君の目的は知って

 いるからね。早速だが」

「……ううっ」

 遠くから、苦痛に呻く声が聞こえる。あの声は――

「――すまない、急用ができた。彼女は、あそこのコフィ

 ンに入っていった。申し訳ないが、後は自力でどうに

 かしてくれ」

 ルルは女……オルガマリー所長を横に抱いたまま、瓦礫を物ともせずに走り去っていった。

 その場に一人残された立香は一瞬の逡巡のあと、指し示された場所へと疾走する。

 幸いにも、直ぐにその場所へと立香は辿り着くことに成功した。だが、

「……うそ、でしょ」

 そこにはコフィンなんてものは無く、ただの瓦礫の山が聳え立っていた。うず高く積み重なっているそれは、コフィンを潰すには十分以上の質量を持っている様に見える。繻霞が生存している確率はゼロに等しいだろう。

 救助を諦めてしまっても仕方が無い。

 だとしても、そうだとしても、

「それが諦める理由になんて、なるもんか」

 ――そう。そうだ。万に一つの幸運だろうとも、あの中を観測しなければ結果は確定しないのだから。

 立香は一心不乱に瓦礫を退かしていく。手が傷付いて表情を苦痛に歪めようが、腕の筋肉が悲鳴を上げようが、それを押し殺して行動を進める。

 とはいえ、少女の発揮できる挙力には限度がある。どれだけ頑張ろうが、5分の1を崩すに留まっている。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 息も絶え絶えにし、その山を睨みつける。

 酸欠と限界を超えた力を振り絞った身体は動き出すのを拒絶しており、立っているのもやっとの状態だ。

 だが意志は。意思だけは折れること無く、今も健在のままにそこに立っている。

 

 ――それは、遂に傍観者を舞台に上げるにまで至った。

 

 突如、立香の周りが光輝く。

『英霊召喚システム フェイト 強制起動

 クラス ―――――― マスター 藤丸 立香』

 少女の折れない『救済』の意思を呼び水とし、

 内に眠る それ を触媒として、

 運命を少女の内へと手繰り寄せる。

『サーヴァントが 召喚されます』

 

 衝撃波と共に突風が吹き荒れ、周囲の瓦礫が吹き飛ばされる。そのまま、少女は目を手で塞ごうが漏れ出る蒼光の奔流に、成す術もなく包まれる。

「わっ」

 それは苦痛を与えることなく、少女の身体を癒していく。傷付いた指先は元通りになり、千切れた筋繊維は時間を巻き戻したかの様に修復された。

 十秒程経った後。光は収まり、そこには女が立っていた。女はシスター服に良く似た純白の衣服を身に纏い、綺麗な銀色の髪を伸ばしている。

「初めまして、麗しいマスター」

「自己紹介は今いいからあのコフィンを開けて!」

「理解していますとも」

 そういい、女はバキリと音を立ててコフィンの扉をこじ開ける。流石サーヴァントといった所か、軽々とそれを実行してみせた。

 瓦礫に囲まれていたコフィンの内部はガタガタになりながらも原型を保っており、そこには何かボディラインが露わになっている衣服を着用した繰入繻霞がいた。

 目は閉じきっており、どうやら気を失っているだけだと思われる。とはいえ、直近で物音をこれだけ立てれば流石に起きるだろう。……ほらな。

「……あ、おはよう」

 欠伸を一つし、繻霞は起き上がろうとした……が、駆け寄ってきた立香によってコフィンの中まで再度押し込まれることとなった。

「……よかったぁ、本当に」

 意図せず、立香の胸元へ繻霞の顔を埋めるように抱きしめている。だが、安否の判らないままであった友人の生存が確認して安心しきった彼女に、そこまでの気配りが出来る訳がない。仕方が無いのだよ。

「あ、あの立香? 心配しているのは分かった。分かっ

 たから、ちょっと離れて? 胸が顔に当たってるか

 ら」

 当然、そんなことをされている当人は戸惑うばかりであり、立香の背中をトントンと軽く叩きながら解放を懇願する。繻霞自身、立香とここまで接近することなんて初めてであり、ドギマギするのもまた仕方が無いことなのだ。

「分かってる。分かっているから、暫くこのままでいさ

 せて」

 繻霞はやっとここで理解した。

 自分のことを何処まで心配していたのか。

 自分を救出するために、どれだけの労力を費やしたのかを。

 ――なら、この位構わないじゃないか。

「……うん」

 羨ましいことなんてない。

 ただ美しいものを見ている位で丁度いいのだ。

 

 暫く――といっても一分程の時間ではあるのだが――経ったあと、漸く立香の抱擁から繻霞は解放された。

 その直後、事情を知らない者から二人へ声がかかる。

「あのー、繻霞ちゃんと立香さん? でいいのかな。

 先程アナウンスが有りまして、私達、もうすぐレイシ

 フトされてしまうらしいです!」

 それは繻霞と共に着替えをしていた珠佳のものであった。その後ろからは立香のサーヴァントが歩いてこちらに向かっており、さらに後方からは二人分の足音が接近してきている音が聞こえる。

「そうなのです、マスター」

 珠佳の発言に立香のサーヴァントも同意する。

「どうにか出来たり、しない?」

「……残念ながら、もう始まってしまっていますので」

 いかにサーヴァントとはいえ、既に起こってしまったことは変えることなど不可能である。というかシステムに干渉できるわけないのだ、シスターが。

 そこで、二人分の足音が止まる。どうやら到着したようだ。

「おーい、二人共大丈夫ですかー――って、誰ですか貴女

 は!?」

 案の定というか、ルル副所長とオルガマリー所長の二人であった。変わった点と言えば、頭に包帯を巻かれ止血された様子のマシュが抱えられている所だろうか。

「ルル、アナウンスにあったでしょ! 召喚システムが

 起動してサーヴァントが召喚されたって」

「あの、ルル副所長。そろそろ降ろしていただける

 と……」

「ああすまない、マシュ。立てるかい?」

 少し身体がぐらつく素振りもあったが、それでもちゃんと両足で大地に立てる程まで回復しているようであった。

「そういえばですが、カルデアスってあんなに赤かった

 ですっけ?」

 指を指した先には灰色に染まった地球儀……カルデアスがあるはずだった。

 だがそこにあるのは、周囲の板共々太陽であるかのように真紅に染まったカルデアスだけである。

『観測スタッフに警告。

 カルデアスの状態が変化しました』

「未来が観測不能になったと思ったら今度は炎上!?

 ああもう、貴方が就任してからこんなことばっかり

 ね!」

「私のせいじゃないですって!」

 二人が口喧嘩をしようが、アナウンスはただただその現状を報告する。

『シバによる近未来観測データを書き換えます。

 近未来百年の地球において

 人類の痕跡は 発見 出来ません。

 人類の生存は 確認 出来ません。

 人類の未来は 保証 出来ません』

「……そんな」

「嘘であって欲しい、夢であって欲しい。けど……」

「残念ながら、現実だよ。ふたりとも」

『コフィン内マスターのバイタル

 基準値に 達していません。

 レイシフト 定員に 達していません。

 該当マスターを検索中……発見しました』

 繻霞はその言葉に薄ら寒さを覚えた。誰かに観測され、観察されているような。機械の言葉であるのに、気味の悪さを覚えずにいられないのだ。

『適応番号43 呵々石 珠佳

 47 繰入 繻霞 48 藤丸 立香 を

 マスターとして 再設定 します。

 アンサモンプログラム スタート。

 霊子変換を 開始 します』

 三人と一サーヴァントの周囲から光が漏れ出る。身体が次第に薄まっていく感覚と共に意識も消失していく。まるで、世界に『自己というもの』が溶け出していくかのようである。

「あの……皆さん、手を繋ぎませんか?」

「いいですよ、珠佳さん」

「心細いのだろう? それくらい、構わないよ」

「……私も構わないわ」

「良いよ、珠佳」

「は、はい」

「もちろん!」

 上からシスター、ルル、所長、繻霞、マシュ、立香の言葉だ。

 発言した七名は横一列に手を繋いでいる。

『レイシフト開始まで、3』

 

『2』

 

『1』

 

『全工程 完了。

 ファーストオーダー 実証を 開始 します』

 三人のマスターとサーヴァントは光に包まれ、そのまま霧散した。




「所長、これからどうします?」
 ルルは所長に話を振る。
「どうするもこうするも無いでしょう。
 私達は彼女らを支援する、それだけです」
「そうですね。そろそろーー」
 施設に備えつけられたスプリンクラーが作動し、火災が鎮火される。既に予感していた二人は魔術で濡れないように防護しており、濡れ鼠にならずに済んだようだ。
「ふう。暑くて仕方無かったけど、少しはマシになったようだね」
「全くね」
 二人がそうしていると隔壁が開き、ロマンが管制室に侵入する。
「現在の状況はどうなってますか? 所長」
「ファーストオーダーが始まり、マスター三名とマシュ・キリエライトが特異点にレイシフトされたわ」
「サーヴァントが何故か召喚されたこと以外は特段無いよ」
「情報量が多いですね!?」
「兎角、ロマンはコフィン内部のマスター候補を冷凍して現状保存。ルルは他に生存者がいないか捜索して」
「「分かりました」」
 三名は各自行動を開始した。
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