Fate/Grand Order Relief   作:コードs³

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はい。

私の頭が爆発する時間ですね、おつかれさまでした。


召喚

 

「ここまで良くご無事で……」

 

 珠佳の方での出来事を聞いたマシュが、始めて発した言葉がこれである。

「本当の本当に大変だったんですよぉ」

 現在進行形で繻霞に抱き着いている珠佳はそう言葉を漏らす。今の彼女にとっては羞恥より人恋しさが優先されるようである。

 

「あの……そろそろ離れてくれませんか?」

『俺からも頼む。いやマジで、視界がオレンジ色に染ま

 ってっから』

「まだ離れません。もう少しこのままで居させて下さ

 い、繻霞さん」

 

 珠佳が駄々を捏ね、一向に繻霞から離れようとしない。梃子でも動かないようである。

 

 さて、珠佳が離れるまでに時間がかかるようなので、彼女が特異点にレイシフトしてから、今に至るまでの事について話していこう。

 

 彼女はここ、屋敷跡の北西にある森林の中にレイシフトしたようだ。

 その近くには黒い靄のかかった怪物のようなものがいたらしく、気配をどうにか絶てたから生き残れたものの、バレていたらここにはいなかっただろうというのは当人の談である。

 二、三分程してから慎重に森を移動していたのだが、その最中にも件の骸骨兵士が木々の隙間から見え隠れしていて生きた心地がしなかったそう。

 出来るだけ音を立てないように森の入口付近まで忍び歩きしていた所で戦闘音がしたため、音の発生源へ疾走して来た――ということらしい。

 

「もういい?」

「…………はい。もう大丈夫です」

 

 じっくり五分以上を使って、珠佳はやっと解放した。

 

(…………ふう)

 

 少女二人に挟まれて若干温くなったペンダントから疲れた声色の声が僅かに発せられる。

 羨ましい以前に窒息するようなことになるであろう密度となっていたのだから、割と憐れみを覚える。

 

「それでは移動しましょうか、先輩方」

 

 割と長い時間待たされていたマシュは急かすようにそう言う。

 管制室からの通信が切れて十分以上の時間が経っているのだから仕方の無い側面はある。

 

「そうしようか。珠佳さんもそれでいい?」

「はい。私も、構いません」

 

 二人もそれに同意し、屋敷跡からクレーターへと移動を開始した。

 

「皆さん。もうじきオルガマリー所長に指定されたポイ

 ントに到着します」

 

 デコボコとした地形をどうにか十分以上歩いて、三人はようやっとクレーターの付近まで辿り着いた。

 

「しかし……見渡す限りの炎ですね。資料にあったフユキ

 とは随分と異なります」

「わたしも昔、冬木には来たことがあるけど、その時は

 こんなにも殺風景じゃなかったよ」

「私も来たことがあります」

 

 マシュの言葉に二人も同意する。

 少なくとも道路は綺麗に舗装されているだろうし、もっと色彩は青に偏っていただろう。

 

「皆さん訪れたことがあるのですね……」

「オカルトに詳しい友達から提案されて、ですけど」

「わたしは何気なく、かな。適当に旅でもしようかと日

 本地図にダーツを打ったら、偶々ここに当たっただけ

 だし」

「繻霞さん。それ、ダーツの◯だよ……」

 

 一人だけ異質、かつ理由としては弱いものを挙げていたが、それはそれとして。

 二人ともここに来訪したことがあるというのは出来すぎた偶然だろう。通常であれば何者かの作為を疑って然るべきだろうが、安心してくれ。全く以ての偶然だよ。

 

 同音異名の二人だけで話している間、マシュは独り言を呟く。

 

「資料に依れば、フユキは平均的な地方都市であり、

 2004年にこんな災害が起きた筈がないのですが……」

 

 更にそれは続く。

 

「大気中の魔力濃度だって異常です。まるで古代の地球

 にまで、時代が逆行しているような……」

「皆んな!」

 

 心ここに在らずといった様子のマシュへと声がかかる。その声は立香のものであった。

 

「先輩!」

「「立香(さん)!」」

 

 三人はその小さい二つの人影へと早足で向かい、その人影も此方へと接近してくる。

 そして二分も掛からないまま、五人は顔を突き合わせることができた。

 

「二人とも無事だった?」

「何とかね。ここに着いた瞬間に大量のスケルトンに囲

 まれちゃって」

「私のメイスで全て骨粉に変えました」

「そちらもでしたか、先輩」

「ということは三人も同じ?」

「私は違うけど、繻霞さんとマシュさんはそうだったみ

 たい」

 

 こうして各自各々の情報を交換していると、物音が周囲から聞こえ始める。

 あの骸骨たちだろうというのは想像に難くない。

 

「どうする?」

 

 立香が皆に提案する。彼女自身としては応戦するも撤退するも自由だと考えているようだ。

 

「撤退しましょう。無駄に戦う必要はありませんから」

 

 シスター姿の女は撤退を進言する。実際戦うのは彼女の性に合わない、かつ向いていない。

 

「そうしましょう!」

「「同じく」」

「それじゃあ撤退しよう!」

 

 多数決により、五人はクレーターのある方向へと走り去ることとなった。

 とはいえ、マスター三人はサーヴァントにおぶられたりお姫様抱っこされたりしての撤退であったのだが。

 

「あの、着いたのでそろそろ降ろして頂けると……」

「ごめんなさい」

 

 クレーターまで一分も掛からずに到着した五人は現在、ベースキャンプを作成するために魔力の収束する地点を捜索している。

 珠佳はシスターにおぶられたままであったことに気づき、ようやく降ろしてもらった。

 

「……見つかりました!」

 

 マシュが大声を上げる。

 声がした地点に四人は近付いていく。

 

「ここです」

 

 マシュが足で叩いた場所が件のレイポイントなのであろうが、如何せん魔術初心者である三名は何も判らないし気付けないのである。

 

「それで、後は何をすればいいのかな?」

 

 この場にいる四人の頭に疑問符が浮かぶ。

 そう。一人を除き、誰もやり方を知っていないのだ!

 

「その盾を貸して頂けますか?」

 

 その例外であるシスターが、マシュにそう要望する。

 彼女は少し躊躇いながらも、それをシスターに渡した。

 

「これをレイポイントに置いて、こうすれば――」

 

 そういうと、シスターは呪文を唱えてその盾との魔力の経路を作り、それを錨として召喚サークルを設置した。

 

「――よし、完成です」

「これは……カルデアにあった召喚実験場と同様の……」

 

 マシュの口から独り言がまろびでる。

 それと共に、召喚サークルの中央に所長の人影が投影された。

 

『よし、通信が戻ったわね。

 皆お疲れ様でした、空間の固定に成功したわ。

 これで通信も、支援物資の送信も可能になったわよ』

 

 所長が黙々と連絡していた横から声がかかる。

 

【所長。生存者の確認、及びコフィン内部の冷凍保存完

 了しました】

 

 副所長である、神幸縷々の声だ。

 所長は数秒横を向いて、直ぐに目線此方へとを戻した。

 

『はぁ……現状を把握して貰うために一応、貴女達にも伝

 えておくわね』

 

 溜息をついて、所長は説明を開始する。

 

『先ず、正規スタッフは全員生存しているわ。

 生きているだけだけで、その殆どは重体。

 或いは意識不明の状態ですが。

 活動できる人員は二十人にも満たないでしょう』

 

『次に、貴女達以外のマスター候補生は殆どが危篤状態

 にあり、今は凍結状態にあります。

 後は……特に無いわね、以上』

 

 途中で面倒になったのか、普通に報告することが無くなったのか、現状報告は終わった。

 恐らく後者であろう。

 けして執筆者が面倒という理由では無い。

 

【ということで、私達から君たちに命令だ。

 特異点Fを調査し、原因を発見すること。

 それじゃあ私は、レイシフトとシバの修理に向かうか

 ら】

 

 横からヌルリと現れて要件だけ伝え、ヌルリと去っていったルルを横目に、所長は言葉を紡ぐ。

 

『(全く、いつもあんな風なんだから)

 とにかく。貴方たちはここを調査し、原因を発見する

 こと。いいわね?』

「「「「はい」」」」

「了解しました」

『それでは、通信を切ります』

 

 ぶつりという音と同時にカルデアからの通信は途絶えた。

 

 さて、と置いてシスターは話をし始める。

 

「特異点での調査ということですが、今の儘では少し戦

 力的に心許無いというのが私の考えです。

 ですから――」

 

 そこまで言って、彼女は眼前のそれを指差す。

 カルデア式の召喚サークルである。

 

「――私を喚び出したそれで、珠佳さんの従者を召喚した

 い、と考えています」

 

 ベースキャンプ内部に沈黙が広がる。

 肯定も否定も無い空間で、言い出しっぺは口を開く。

 

「……てっきり、反対意見が出るものかと」

 

 白も黒も噴き出ることの無い時間を周囲からの黙認と受け取った修道女はそう漏らす。

 

「この中で一番の年長者はあなたでしょう」

 

 黒髪の少女は最もな言葉を彼女へとぶつける。

 外見の平均が高校生である集団で、一番歳を重ねたように見える(失礼だが)彼女が音頭を取るのは寧ろ自然だ。

 

『その背格好で15歳とかだったら逆に怖いぞ?』

 

 胸元から疑わしく感じているであろう声色の音声が出力される。

 彼女はサーヴァントだ。

 もしかしたら、もしかするかもしれないのだから。

 魔術とは、神秘とは末恐ろしいものである。

 

「その時はその時だよ、ペンダントさん」

 

 繻霞にバッグハグしながら立香がそれに控えめな肯定を示す。そして続けて

 

「そうだとしても、人数と戦力はあればある程いいでし

 ょ?」

 

 と眩むほどの笑顔で言った。

 立香の言っていることは実際そうなのだ。

 サーヴァントが二体にマスターが三名。

 守るには人手が足りないという訳だ。

 

「アリスさん、という訳で召喚の仕方を教えて下さい」

 

 立香は彼女にそう頼み込む。

 魔術や神秘に関しては無知の三名なのだから、その行動は正しいことである。

 

「いいのですか?」

 

 アリスは再度、当事者へと意思を聞く。

 同意は得て置かねばいけないのだ。

 

「いいんです、アリスさん。私も、自分の身を守れる力

 が無いことなんて分かってますから」 

「……そうですか。それならば、教えましょう。

 いいですか――」

 

「――覚えましたか?」

「は、はい。一応は」

 

 大体十分ほどの時間をかけて、珠佳は召喚の文言を粗方憶えることに成功した。

 如何せん呪文が長いのだから仕方が無い。

 

「それでは、始めましょう」

「……はい」

 

 どうやら覚悟を決めたようだ。

 二人は召喚サークルへと近寄り、かつて存在した英霊を人の世に引き摺り下ろすべく呪文の詠唱を開始する。

 

「「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。」」

 

 二人の声が空間に木霊する。

 

「「降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出

 で、王国に至る三叉路は循環せよ。」」

 

 今の時点では何も異変は起こらない。

 誰も彼女へと共鳴するものは居ない。

  

「「閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)。」」

 

 周囲の体外魔力がサークルへと集い始める。

 

「「繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する」」

 

 元々この特異点は神代に近い魔力濃度だ。

 であるのならば、強力な英霊が喚び出されるに違いない。 

 

「「――Anfang」」

 

 それと同時に、マシュの持つ宝具であり、サークルの基礎となっている盾から十二個の光の粒が現れた。

 

「「――――告げる」」

 

「「――告げる」」

 

 それらは回転を始め、やがて一本の光の輪と化す。

 

「「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」」

 

「「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば

 応えよ」」

 

 魔力で編まれた光輪が一つから三つに分かたれ、二人を取り囲むように展開される。

 

「「人理の轍より応えよ、汝星見の言霊を纏う七天」」

 

 少女はその瞬間、ある物を幻視した。

 金色に輝く、杖を持った老人が写るカードを。

 

「「糾し、降し、裁き給え。天秤の守り手よ!」」

 

 サークルへ周囲の三輪の光輪が集い、閃光が瞬く。

 思わず、当事者達も傍観している者たちも目を瞑る。 

 稲妻の様なものが散った後の空間には、男が立っていた。

 

「サーヴァント、キャスター。諸葛孔明だ。

 ところで……どちらが私のマスターだ?」

 

 諸葛孔明と名乗った長身の男は黒いスーツに身を包み、眼鏡をかけた格好をしている。

 

「こちらの少女が貴方のマスターだよ、ロード」

「……貴女は私の事を知っているのか」

「こちらの貴方と、それなりに交流のある友人を知って

 いるからね」

 

 二人が軽く会話していると、横から視線を感じる。

 その方向を見ると、わたわたとした素振りをしているマスターがいた。

 

「あ、すみません……」

「いえ、謝るのはこっちです。マスターを差し置いて、(サーヴァント)

 と話すべきじゃなかったですから」

「こちらも済まないと思っている、レディー」

 

 二人の謝罪が終わった後、孔明が最初に口を開いた。

 

「改めて、私の名前はロード・エルメロイ二世という。

 訳あって諸葛孔明の霊基を借りて現界している」

「そうですか。

 ……これから宜しくお願いします、孔明さん」

「二世と呼んでくれ。その名は私には過ぎたものだ」

「それでは二世さん、宜しくお願いします」

「ああ、宜しく頼む」

 

 二人は手を握り、しっかりと握手した。




ドンファンを出したかったんだ。
でも彼は英霊じゃないんだ。
だから、私は抑えたんだ。
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