Fate/Grand Order Relief 作:コードs³
ベースキャンプから出ること無く終了。
それはそれとして、心臓を握られたらどうします?
どうしようも出来ないですね。終わりです。
どうにかできるのか、見ものです。
「それでは、アサシン 呪腕のハサンの対策会議を始めるとしよう」
前回に引き続き、二世を中心として会議を始める。皆、テンションも顔も平常時のままに戻ったようである。
「先ずは彼の素性からだ。彼は中東圏に存在した、とある教団の頭目であったとされている。それは暗殺者達の巣食う魔窟であったという」
「その19人の頭目は各々特殊な技を習得していましたが、彼はその中で呪殺に特化していました」
実は見たことがあったんです、と言いながらアリスと二世は件の人物のことを周囲に説明する。
ある一方は知識だけの、もう一方はどこか実感の籠もったような雰囲気を出しながら語っているようである。
『だからあんなに詳しかったのね、貴女』
納得したように所長は通信越しにそう呟いたそれに、立香が反応する。
「何か話していたんですか?」
先程の三人を話を聴いていなかった彼女は、それが気になったようである。だから噛み付いたのであろう。
『……アサシンの情報の殆どよ』
(無理矢理に吐かせたんだけどね……)
言外に少し後悔を滲ませた心情を吐露し、言語として聞き出した事実を白状する。
「成る程、そうだったんですね」
少女は何かに感付いたような素振りを一瞬見せ、直ぐに表情を戻す。
「彼の
「私から説明した方が速いでしょうね」
「そうだな。後は頼んだ、アリス」
そう言うと二世は押し黙り、何かを思案し始めた。
彼の本業は魔術・神秘を解き明かし、引き摺り下ろす事なのだから、恐らく目の前の難題を頭の中で自身の持ちうる知識の全てを動員して解明しているのだろう。
全てを知るということは、人間のみに許された傲慢で強欲な思いである筈なのだがな。
さて、アリスは二世の事を意にも介さないまま、オルガマリー以外の四人に向けて、呪腕のハサンの情報を話し始める。
「彼、もといアサシンの能力は然程高くは有りません。特筆するのは投げナイフの投擲と風避けの加護位のものでしょうし」
そこで彼女は一度言葉を切り、一呼吸ついて宝具について語り始める。
「ですが、宝具は侮るべきでは無いでしょう。彼は暗殺教団の長であり、魔に身を窶してまで手に入れたものなのですから」
「その名前は、『
語気を強め、それがどれ程までに深刻で、どうしようもない事実であることを理解させる。残酷だが、舐められる方が却って酷いことになるであろうから。
「勿論、対策もあります」
そう言った途端に張り詰めた空気が緩むのだから、解決策があるというのは良いことなのだろう。
彼女はただ一つの解を少女達へ教授する。
「右腕に触れないこと、これだけです。宝具が成立するには対象に触れる必要がありますから、回避や武具で防げば良いのです」
だとしても、それが容易に成せるという訳では無く、一般人であった三人からしたら寧ろ難しいことだ。
当然であるがように、紅い印の付いた手が三つ上がる。
「アリスさん」
「皆さん何でしょうか」
「私達はそんなことが出来ないのですが、」
「どうすれば回避できますか?」
ある程度は自身が契約する
だからといって対策が出来ないままである訳がない。ゲーム等では必ず攻略法がある様に、もしものことは考えられているだろうとも。
そういう期待に応えるのもまた、彼女らの責務だろう。
「そういう時の為の、魔術礼装でしょう?」
そう言い、順番に少女達の手を握り、魔力を通わせ、カルデアの技術を自分の知りうる技術を用いて、術式を改竄していく。
「……こんなものでしょうか」
一人頭一分の時間を掛けて改良したアリスは、手をパンパンと叩きながらやりきった雰囲気を出す。
「あの、今なにをしたんですか?」
「貴女達が着ている礼装を、少しばかりカスタマイズしたんです」
珠佳からの質問に彼女は答える。
礼装のカスタマイズ。
そんなことが出来ていいのか、と周囲は絶句する。
オルガマリーや二世はそれが不可能でないことは知っている。だがそれは、製作者当人や血縁者でなければ出来やしない事象だ。
(カルデアの機密が抜かれていた……?)
そんな訳がない。副所長は胡散臭いし、信頼できるかと言われればそうでも無いが、信用は出来る。
ならば、どうして?
答えは出でることはない。
少なくとも、彼女から種明かしがされるまでは。
所長も、膨大な情報量を処理するが為に思案の海に呑まれかけたが、直ぐに頭を振ってそれを消し去る。
指揮系統が腑抜けるわけにはいかないのだから。
さて、そんな所長の事情を露ほども知らないアリスはカスタマイズした内容を三人に説明する。
「珠佳さんは火力支援を半減させた代わりに、相手の動きを止めることに特化させました。繻霞さんは逆に火力支援を増強させました。マスターは……回復魔術の性能を向上させました」
「……私だけ何かぞんざいじゃない?」
立香と比べて、他二人だけが優遇されているように考えるのも、むべなるかなといったことだろう。
「仕方がないんですよ、マスター。込められている術式が非常に安定していますから、下手に弄る訳にはいかないんです」
だが、それにもちゃんとした理由はあるのだ。実際に回復、火力、回避と均衡が取れており、
「そうなんですか」
「そうなんですよ、珠佳さん」
偽りなく彼女はその事実を伝えた。
というか、そんなに優れているのならばこれを着て投入すればいいと思うのだが。
「それでは、所長さんは何でこの礼装にしたんでしょうか……?」
疑問に思った少女はそう独り言を漏らす。
すると、その当人から説明が為される。通信は繋がったままであるから。
『珠佳、貴女が着ているのは正規の戦闘服です。それ以前に、藤丸立香の着用している礼装は配布されたもので、貴女のとは格が幾分か落ちています』
「そうなの?」
『ええ。護身程度は出来るほどの性能だけどね』
装備者の立香のにも応え、所長からの通信は沈黙する。話すことは話したという意思表示だろうか。
見渡し、疑問を表すものが誰も存在しないことを確認したアリスは最後の議題を開始する。
「最後に陣形ですが、前衛がマシュさん、中衛が私、後衛が二世さんで行きます。それで、いいですか?」
「異議ナーシ!」
「それで構いません、アリスさん」
「……同じく」
「私も、それに不満はありません」
「同じく、不満は無いです」
反対や疑問も出ること無く、トントン拍子でそれは解消された。彼女のことを信頼してきている事の証左だろう。
「……それでは、外に出ましょうか」
そう言い、彼女を先頭として六人はベースキャンプを出立した。何気無い様に、隙をこれでもかと晒して、世間話をしながら。
「二世さんは生前何をしていたんですか?」
「現代魔術の講師を基本的にはしていたな。時計塔……ビッグベンは知っているか?」
「名前だけですが、一応」
「それでもいい。私はそこで、自分より才能のある
「そうなんですね……もしかして、二世さんってかなり高い立場にいたり?」
「……ああ。曲がりなりであれ、現代魔術科の
「所長さんと同じ、
「私には過ぎたものだと思うがね」
「いっ、いえ! 凄く、二世さんにお似合いですよ」
「……そうか」
眼鏡主従は、どうやら生前(二世は存命だが)のことについて話しているようだ。とはいえ主は周囲をチラリと確認しながらであるが為に、度々一瞬声が詰まっているようだが。
「マシュはさ、いつからカルデアに所属していたの?」
「いつから、と言われましても。その記憶がありませんから、ハッキリとしたことは言えません」
「ということは物心がついた時から居た、ってことになるのか……」
「そういうことになりますね」
「もっと外を見ようよ。ずっとあの中にいたら、息が詰まって仕方ないしさ」
「これが終わったら、所長に四人分の外出許可証を発行して貰いましょうか、先輩」
「あるの!?」
「ええ、ありますよ。寧ろ、無いわけがありません」
「それはそうだけどさ……こう、神秘の秘匿ガーとか、機密保守ダーとかで極限まで外界に触れる気配が無い、っていうのが魔術師みたいだから」
「それに当てはまるのはアトラス院の方々でしょうね。あの人達は外への露出が極端に少ないですから」
「へー……そういう組織もあるのか」
立香とマシュは他愛の無い話をしていた。特筆するべきことも無く、ただただ任務が終わった後のことを考えているのだ。
後に続く彼女らもまた、日常の出来事を話している。
そう隙を晒していては、狙われるというもので。
「GAGAGAAA!!」
現れたるは何時ぞやの骸骨兵士だ。しかも百人単位。
「……はぁ」
二世は嘆息する。
まるで高級な餌を竿に付けて海に投げたら、釣れたのは鰯であったようながっかりさである。
そう、彼らはわざと隙を晒してハサンに襲撃させる算段だったのだ。
「仕方が無いですよ、二世さん。ほら皆さん、戦闘準備をして下さい」
元より食いつく筈が無いと理解していた珠佳は、他のマスター達へと抗戦の意思を示している。
「「既にしてまーす」」
そんなことを分かっている彼女らはもちろん潰しに掛かる。何なら骸骨兵士を骨粉にでもしようかとも考えているだろう。
瞬時にマシュとアリスが前衛、二世が後衛の陣形に変わる。
彼らはただ少女たちを睨みつけるだけに留め、攻勢に出ることをしない。
「それでは、私達から行きますか」
「はい。キリエライト、突撃します!」
それならばと、アリスとマシュは戦いの火蓋を切る。
二人は特に密集した場所へと宝具を持って突っ込み、兵士を粉微塵の黒い塵へと変換していく。
どれだけ束になった所で、結局は低級の使い魔だ。
ただ蹂躙され、踏み躙られるだけだ。
「これでは私の出番が無いな」
そう呟きながらも彼女たちが取り零したり、死角から攻撃せんとする骸を、的確に魔術で撃ち抜いている。
出番はちゃんとあるぞ、
「……いま、誰か噂したか?」
「私達、何も言ってませんよ」
「マシュの戦闘を眺めてましたー」
「同じく」
そうか、と少し訝しげにしながらも二世は納得した。
こういうことは今までもあったからである。
「あ、もうすぐ終わりそうだよ」
繻霞が指し示すその先には、先程までの大群は何処へやら。ほんの十数体にまで数を減らしていた骸骨兵士がいる。
「それじゃあ、これで終わりとしましょうか」
そういうと、彼女の持っていたメイスに尋常では無いほどの魔力が集う。
間違い無い。宝具を放つつもりなのだ。
彼女は跳躍し、そのメイスを力一杯に集団へと投げつける。
「〝
それを視認できた者はいない。
ただただ投擲されたそれが速かった訳じゃない。
どれだけ離れていようが、視界が白に染まる程の閃光を放っていたからだ。
誰もが目を瞑り、その閃光を堪えるしか無い。
そこに生じた隙を狩るのは、暗殺者だ。
「マッテイタゾ!」
虚空から唐突に、男の嗄れた声が聞こえる。
気配を遮断したまま接近した、呪腕のハサンの声だ。
光で目が潰れ、全員がまともに行動出来ないと踏んでの襲撃だろう。
マスター達の背後に周りこんでいた彼は、直ぐに宝具を解放する。どうやら手早く抹殺する気のようだ。
「
狙われたのは――珠佳だ。
この中で一番、殺しやすいと理解していたのだろう。それもその筈、彼女らがキャンプから出立してから今までの全てを観察に費やしていたのだから。
か弱い生き物へと、残酷にも赤く発光する右腕が伸びる。邪なる腕が、今少女の心の臓を潰し、血を欲さんと躍動する。
「待っていたのはこちらだよ、アサシン。
やっと、君の存在を感知できたのだからね」
二世ご自慢の観察眼ですらボヤけさせてしまう彼に、カルデアが対処する術はほぼ無い。
だが、それをも超えるものがあったら?
全てを知っている者が協力者としていたら?
「――ガンド」
指向性を持たせた呪いの弾丸が、胸へと深く深く突き刺さる。立香が放った、
彼女らがカルデアベースを発つ前に珠佳の物と交換していたことを、彼は知らないのだ。
「ググッ!?」
身動き一つすら不可能となり、アサシンは驚愕の声を漏らす。如何にアサシンがサーヴァントとしての格が落ちていたとて、この程度ならば直ぐに解けるはずだ。
それだというのに、身体を縛るこの魔術から解放されない。彼にとっては初めての事象だろう。
そうしている間に六人全員が集い、臨戦体勢を整えることまではできた所で、カルデアから通信がかかる。
『こちらでも反応を確認したわ。アレはシャドウ・サーヴァント、影の英霊よ。元の存在より劣ってはいるけど、くれぐれも油断しないこと! いいわね!』
シャドウ・サーヴァント
人類史の影法師、その劣化版
だが、曲がりなりにも英霊であるが為に、それは強力無比である。
「分かってますよ、所長」
それに繻霞が応答した刹那、堕落した山の翁 呪腕のハサンとの戦闘が開始した。
どうせなら倒すとこまでやれよとは思いますが、字数的に膨れ上がるのでここで止めるのがベストという判断でした。
次回こそは倒すとこまで書きます。