狼は現在ダンジョンに単独で潜っている。
自然の光源が無いため、松明の明かりを頼りに邪魔な蔦や茂を刀で切っていく。
苔むした石の通路を歩きながら、トラップがないか確認する。
狼は忍びであるため、そういった仕掛けはある程度は熟知している。
ここはかつて坑道だったのだろうか、古くなり崩れた部分が多いが、採掘の跡や所々整備された道もまだ残っている。
特に仕掛けやトラップがあるわけでもなく、何事もなく道を通過していき、やがて狼は広い空間にたどり着く。
恐らく採掘中に洞窟と繋がったのだろう。
その空洞は狭い坑道とは違って、かなり動きやすい。
光源もうっすらではあるが、太陽光が天窓から差し込み、岩肌で反射することで生まれている。
薄暗い洞窟内には生えている植物の他に砂や瓦礫が散乱しており、小動物の死骸や人の骨なども見受けられる。
グルゥ…
奥から魔物の唸り声がする。
そこにいたのはトカゲの魔物、リザードマン
バキッ…ガリッ…
目玉をギョロギョロと動かして、肉や骨を喰らっている。
相手は気付いておらず、狼は骨や死骸を踏まぬように、隠密で背後に回る。
先手必勝、背後からの忍殺
仲間の突然の死に気付いた、リザードマンの群れ、片手槍と盾を取り出し、素早い動きで狼に槍を突きだす。
その突きを弾いて、盾を構えるより先に素早く首を跳ね落とす。
後ろから盾を構えた突進が来るが、壁や地面を足場にして蹴って回避する。
背後に周り背中を切り裂き
横から来る敵に対して横槍を弾かずに体制を後ろに倒して躱す。
流れるように刀を逆手に持ち、至近距離から迫る敵の喉を切り裂く。
槍を左右に受け流し、そのまま無防備な手を切り落とす。
投擲槍が飛んできても冷静に弾き、時には斧で盾ごと破壊して突き進む。
次々と血飛沫が舞って、槍と盾が落ちる音がダンジョンに響いた。
奥へ奥へと進むうちに最深部に辿り着く。
そこに大きな足音が聞こえてきた。
そこには群れの長だろうか、他のと比較して一際体格が大きいリザードマンがいた。
その大きさは熊と大差無い、全長を言えば遥かにデカイ。
盾は持っていないが、持っている槍は大きい。
それは戦槍を彷彿とさせる、狼は構える。
リザードマンは巨大な槍を両手で振り下ろす。
ビュッン!!
槍を凪払う時にそんな音が聞こえた。
キンッッ
足が地面に食い込む
弾いた感触は予想通り、此までの魔物の中では最も重い。
そこから何度も弾く
相手の体幹を減らしていく。
リザードマンはその時、腰を捻り体制をやや下げる。
狼に己の尻尾を振るう、鞭のようにしなるそれは当たれば並みの冒険者でなければ粉砕骨折するだろう威力、しかしそれを軽く後方にジャンプして躱す。
予備動作の大きい動きだ…
足の骨を砕くつもりだったのだろうが、空振りに終わる。
狼は回避で僅かに空いた距離を積めて忍殺を決めようとする
!!
ビュッンッ
先ほどの槍よりも速い
それは舌だ、それが勢いよく伸びて狼に迫る。
時間にして0.01秒
速度、時速90km
物凄いスピードを誇る相手の奇襲が狼の片足に直撃した。
筋肉が痺れ、足の動きが悪くなる。
好機と見たリザードマンは槍を構えて狼に急接近。
狼は移動しながら何度か槍を弾く。
だが、今の足の状態では長くはもたない。
次の一撃を受け、狼の体は茂みの方へと吹き飛ばされた。
「…」
狼は立ち上がり考える。
あの速度はこの薄暗さで弾くのは難しい。
ならば目で追わなければよい話し…
浅傷を受けた狼だが、焦りはしない。
吹き飛ばされた先は草が少々視界を塞いでいるが、狼にとってはこの方が今は都合がいい。
狼は直ぐ様、技を放つために構える。
相手は又もや、舌で狼の動きを鈍らせようと構えている。
「…」
ビュンッ
再び高速で迫る舌、それが茂みに当たり、風、音を狼に感じさせた。
刀を両手で持ち振り下ろす。
それは葦名一文字
葦名、一文字。
一なるは、真っ直ぐ。
真っ直ぐな、一刀なり
狼は筋肉質でヤスリの様に硬い舌を一刀両断する。
血が吹き出し、リザードマンは悶絶している。
リザードマンは形振り構わず、槍で狼を突き刺そうとするも、
狼は躱しリザードマンの体をよじ登って喉を突き刺した。
喉からも血が吹き出して、その巨体が倒れる。
床に大きな血溜まりが生まれ、リザードマンは数秒間痙攣した後、死亡した。
戦闘開始から10分が経過して、辺りは静かになった。
そのまま奥に進み、石碑を発見する。
文字は掠れていて読めない
彼らのルーツは殆どが残されていない、この世界の謎は魔物の生態系も入るだろう。
とは言えこの程度のダンジョンではあまり期待できないそうにない。
故に今回は報酬目当て。
洞窟内に自生している薬の材料になる薬草を取っていく、時折宝箱もあったりしたが、今回はハズレだった。
漁りながら狼は家でしたカルネルとの会話を思い出す。
カルネルよると危険なダンジョンは主に魔大陸やベガリットと呼ばれる場所に集中している。
そう言った場所ほど、貴重なお宝や、特殊な魔道具、そこから見つかる歴史も古い。
狼は怨嗟の炎を確認する
現状は弱い
いつ炎が強くなるか分かったものではないので、狼は戦闘では毎回慎重になりがちだ。
この前の飲み会の時で狼は一人で誓ったように、竜胤の力をそのまま放っておくことは論外。
また殺戮の舞台を作るわけにはいかない。
その為に何か情報を掴まなければいけない。
今はダンジョン内で手に入れた物品や素材を狼は外で換金するため、持ち物に積めていた。
改めて、今回集めた素材の量を見る。
「此だけあれば…かなり貯まるな」
そう言って持った荷物は結構重かった、そうして地上へと足を運ぶ。
地上ではギルドの近く、或いは都市の周辺になれば店がある程度並んでくる。
狼がダンジョンのある森を抜けてから、そこから町まで数時間歩いて、ついた先にある場所は街中にある普通の店だ。
扉を開いてお邪魔する。
「待たせたな…」
「いいよいいよ、それで今回の品を見せてくれよ」
先ほどの回想に出てきた、カルネルの元に来た。
彼は高値で狼の品を買い取ってくれる、以前に別のところで換金したら「俺ならもっと言い値で買ってやる」そう言ってきたので彼のところに来ている。
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カルネルSide
初めてアイツを見た時、俺は絶体絶命な状況だった。
確かその時は急ぎの用事で進路を見誤ったんだ。
予想していたより道が悪く、馬車の進みが遅かった。
商人として焦らないことは肝心なんだな、あの時は身をもって感じた。
気付けば日は沈み、魔物に囲まれた。
俺は今から魔物の牙で体を貪り尽くされるのだと、そう思うと怖くなって荷台に隠れて、身を縮ませる。
唸り声と足音が近くなる。
体が動かせない、目を開けられない。
護衛を雇っておけばよかった…
最後に食った飯は何だ…
痛いのは嫌だ…
何でこんな悪路を引いたんだ…
今からでも馬車を動かせば逃げれるか?
いろんな思いが去来してた。
ザシュッ
その時聞こえたのは、何かを斬る音。
馬が殺られたのか、でも悲鳴も何も聞こえない。
痛みで暴れるのならもっと馬車全体が揺れる筈。
或いは俺の肉が引き裂かれる音か…
実は自分は既に死んでてあの世にいるんじゃないかってその時は錯覚した。
しかし
一向に痛みはこない
目を小さく開いくと、そこがまだ現実で自分の体は五体満足だと知れた。
魔物の唸り声は以前聞こえる、それと同時に別の音も聞こえてきた。
それは何かがぶつかり合うような音、硬い金属が物を弾くような音にも聞こえた。
恐る恐る外を見ると、そこには刀を持った男が一人。
魔物を屠っていた。
流れるような動きで、淡々と斬っていく様子を見て思う。
カルネルは剣に関しては素人同然だが、まさにその様は達人の領域に見える。
特に最後の上から降りる際にトドメを刺す瞬間なんかはすごかった。
暫くして魔物は全員いなくなってた。
「あんたがやってくれたのか?」
あの時の俺の声は今思えば想像以上に振るえていたな。
「…」
その時の狼は言葉を喋れなかった、よく分からねえ言葉から察するに外国人の類い。
服装はここらでは見ない格好だ、確か剣の聖地って場所に居た剣士が似たような服装を着ていたような気がする。
顔は…助けてもらって言うのも何だが近くで見たら少し怖かった。
そこからは命を救ってもらった恩を返すべく、マルスの元に行き、そこで狼に読み書きを覚えさせた。
来たばかりの狼は人見知りな部分が多かった…いや、ただただ寡黙なたげかもしれない。
そう思うと今とあまり変わってないな、まぁ...その辺は狼の個性なのだろう。
そんなこんなで月日が経って、今は狼が俺の元まで品を持ってきて見せてくれる。
ダンジョン内で採れる薬草の上に、小さな結晶が並べられる。
大銅貨3枚……それに銅貨26枚。
よくもまあ、この額になるまで集めてきたものだ。
相も変わらず狼は強い、その強さはギルド内を通り越して、商人の間でも軽い噂になっている。
故に単独で先行してダンジョンを制覇できる。
当然、彼には他のチームからの勧誘も多く来たが、彼は全て断っているようだ。
もともと仕事は一人でこなす性分なんだろうな。
俺達商人は市場で競うためには、情報を得るための人脈が欠かせないから、狼の生き方は想像しずらい。
狼を見ていると、どうしても思ってしまう。
何か事情を抱えた、俗世離れした存在が、ふとした拍子に人里へ迷い込んでしまった――そんな風に。
「だいたい、このぐらいの値だ」
「助かる…」
コイツとサシで食うか
「狼、この後時間があれば一緒に店で昼飯を食べよう」
「何処の店だ」
「一週間前にお前と一緒に行った米料理が旨い店だ」
狼は俺に黙ってついてきている、コイツが米が好きであることは、もう店あの店に行った時点で確定済み。
コイツの地元は米が有名だったのだろうか、よく食べてから時折しみじみとした目をしている。
狼は表情筋がほぼ死んでいるため、顔から感情を読み解くのは難しい。
その変わりに目に感情がよく現れる。
「どうした」
「いや、何でもない」
横目で様子を見ていたら、バレた
俺達は数分歩き続ける。
目的の店に着いた俺達は扉を開ける、すると店長が元気な声で、ラッシャイマセーと言ってきた。
「よぉッ!!また来てくれたのか、狼の旦那!!」
そして狼は店長に顔を覚えられている。
その声を聞くと、狼は毎回、少しだけ寂しそうな顔をする。
席についてメニュー表を開く
この店はここら辺では珍しいタイプの料理の店で、米の産地であるサナキア王国から取り寄せた米を使って旨い飯を出す店だ。
米を炒めた物に、魚介スープで米を炊いたもの。店員が言うには、これは店長が試作を何度も重ねて、考案したこの店独自の米料理で本人は何回も店員や家族に試食させたのだとか。
メニュー表を眺めて、料理を決めていると。
店員がお冷やを持ってきた。
「カルネルさんと狼さん、また来てくれて嬉しいです。」
カルネルは笑顔で対応して、狼は真顔で受け答えする。
あれ依頼店長が狼の事を旦那と呼び、この店で店長は勿論、店員にも何名かには完全に覚えられたのだ。
狼とカルネルは注文を決めて、しばらくの間、主にカルネルの方から世間話をすることにした。
「にしても旦那ねぇ…」
「何だ…」
狼は低い声でカルネルに返す。
「いや?狼にとって良い呼び名だなと思ってな」
それに対して狼は「そう呼ばれているのは俺だけじゃないだろう」とマリスに返す。
「いや、俺は正直言って旦那って顔はしてないからな~」
カルネルは笑って狼に言う
「…」
「俺もお前の事、旦那って読んでもいいか?」
すると、狼の瞳が少し揺れた後、少し下を向いてしまった。
カルネルは狼の生い立ちを知らない、何かあることは察しているが、深く踏み込んではいないのだ。
「好きにしろ…」
その言葉を聞いてカルネルは直ぐにそれを嘘だと悟った。
どうでもいいわけではない、今の言葉に賛成も反対もないが、暗い表情から察するに、そこから出ている思いは良いものではないと想像できる。
つまり狼は下手に反応しない方がいいと判断したのだろう。
店長が嫌いと言うわけでもない、店長との受け答えにも平然としていたし、そのような様子は見受けられなかった。
つまり、推測するにあの会話の中にある"旦那"と言うワードが何か狼の中で引っ掛かっているのだろう。
「そうか、まぁいいや」
一旦この話はここまでにしておこう。
変に長引かせるような話でもない。
次に話すのは、最近の狼の人間関係についてだ。
「そう言えば、最近はマルスやゾルダート達とよく一緒に居るみたいだが
依頼は上手くこなせてるのか?」
「ゾルダートにはよく勧誘を受けている」
相変わらずゾルダートは狼をステップトリーダーに招き入れたいらしい、失敗しているらしいが。
それでも気さくに話しかけてくれるし、狼には良い対応をしているから、狼も悪い印象は抱いていない筈だ。
「お前もよく断り続けるような、根負けするよ俺だったら
実際アイツのチームはかなりの実力派なんだぜ?」
「そうか」
ゾルダートは近い内に中央大陸北部の高原に向かうだろう、その時までに狼を仲間にすれば戦力が安定てして団員的に凄く助かるんだろうな。
あとは純粋にゾルダートが狼を心配していると言うのもあるんだろうが。
そう思って狼を見るが、狼は特に気にした様子はない。
迷惑していると言うわけでもなさそうだが…
「…」
そんな反応するなよ…
お前をしつこく勧誘してるゾルダートが不憫に思えてくるぞ…
人に関心がない訳じゃないと思うんだがな。
すると、注文していた料理が来たようだ。
二人の間に置かれた大皿、それはそこが浅く表面に米が敷き詰められており、上には魚介類が乗っている。
料理名はパエリアだ
2~3人前の量
この二人なら普通に食べきれるだろう量だ、味は美味しく、トマトの味と魚介の旨味が染みている。
そしてお焦げが香ばしく、アクセントとしてもいい感じだ。
「結構いけるな」
「あぁ…」
狼にも口に合ったらしい
「マリスは家でどうしてるんだ」
「最近はダンジョンや魔物の生体に関して、俺の為に調べてくれているな…」
そっか...
カルネルは少しだけ安心した。
少なくとも狼の周りには、狼自身を邪険に扱うような存在はいない。
…
しかし、安心したはいいが会話が弾まない。
自身の気分転換で狼と飯を食うことにしたが。
マリスやゾルダートみたいな盛り上げ隊が居ないため、狼とのサシ飲みキツイことが判明した。
「…」
「…」
俺と狼は親友かどうかと訪ねられると、正直どう答えて良いか分からない。
商人の気質か、それとも単なる俺の悪い癖か。
相手の利益や損害を、会話や仕草から見抜く力がこんな形で発揮されることはよくある。
それを見誤り、損害を被って落ち着かない日々を過ごしてきたこともある。だからこそ、本来なら他人の利害には人一倍敏感なはずなのだが。
命を救われた礼として、言語や人脈を与えはした。
だが――狼は何かを隠しているような気がする。
狼に関しては、まだ利害が見えてこない。
一番それを感じたのは、始めてあった時だ。
狼は俺達に自分の私物を触らせないようにしていた、別にそれ事態は変なことではない。
人には見せられないようなものが狼にもあるんだろう、
しかし、刀に触れようとしたときは露骨に警戒していたな。
あの時はやることが沢山合ったから何とも思わずに流せたが、今思うと気になりはする。
友として踏み込むべきかどうか…
最初は直接的に聞かず、遠回しに聞いていくか。
「狼…お前、冒険者になるんだよな」
「なら…」
その時、酒場の扉が開いた。
そこにいたのは
デリック・レッドバット
ルーク・ノトス・グレイラット
アリエル・アネモイ・アスラだった
増やして欲しい描写
-
戦闘シーン
-
日常会話
-
今のところ問題ない