隻狼 修羅に落ちたが本気出す   作:わたぼう

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話し合い

狼とカルネルは現在場所を移していた。

 

周りを見れば普段は絶対に足を踏み入れないであろう、お洒落で品のある内装の店に来ていた。

 

そこは高級な喫茶店、店内は落ち着いた雰囲気となっている。

狼とカルネルの前には素晴らしい美貌を持った存在が現れていた。

 

「初めまして、私はアスラ王国第二王女のアリエル・アネモイ・アスラと申します。」

 

その後に続いて従者の二人も名乗る。

 

「アリエル様の従者、ルーク・ノトス・グレイラットだ」

 

「同じく、アリエル様の従者のデリック・レッドバット」

 

「狼だ…」

 

「狼の友人のカルネルです…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

今この場にいるのは、貴族の王女とその護衛、その対面にいるのは狼とカルネル。

カルネルはアリエル王女が来た時に退席しようとしたのだが、アリエルに居ても構わないと言われてしまったのだ。

 

テーブルの上には紅茶とお茶菓子が置かれている。

 

狼とカルネルは並んで座席に座り、その対面にアリエルが座っている。

 

後ろにはあの時の従者二人にもう何人かの騎士がいる。

全員が警戒心丸出しだ。

 

そんな中で狼は何を話せばよいか分からない。

 

沈黙が場を支配する状況で、紅茶や菓子には手を着けず、アリエルの目線は狼に集中している。

まるで何かを見つけ出そうとしているようだ。

 

「どうした…」

 

「いえ…今日は貴方の素性を確かめたいと思いまして。」

 

素性?

 

カルネルは内心でそんな言葉を呟く。

 

何故、お貴族様が狼の素性を知りたがるんだ?

 

カルネルはアリエルに疑問を抱く。

 

「貴方は私達の敷地内に無断で侵入していましたね」

 

「…」

 

「ハァッ?!」

 

カルネルが驚き、声を上げて狼に目を見開く。

 

「あっ...すみません」

 

「フフッ構いませんよ、親しいようですし、驚かれるのも無理もないことです。」

 

カルネルは戸惑っていた、狼が貴族の領地に不法侵入をしていたと言う事実に。

 

「そうか…貴族の敷地だったのか」

 

「はい、つまり、此から聞く質問は貴方自身の事です。」

 

尋問…

 

狼とカルネルはその言葉を聞いてそう思った。

 

「そんなに固くならずとも、安心してください、私達にその気はありません。」

 

後ろの護衛は念のための身の安全のためだと、アリエルは説明した。

それに狼は納得して、アリエルの質問に答えることにした。

 

「まず、最初に聞いておきたいのですが。

貴方はあの時あの場所で何をしようとしていたのですか?」

 

狼はそれを問われ、少し考えた。

 

あの時に自分の心にあったもの

 

 

絶望

 

失念

 

無意味

 

無価値

 

諦念

 

愚行

 

 

あの時は尋常でない程にそれらの感情が膨れ上がっていた。

 

今も尚、その気持ちは心の片隅にある。

 

重苦しい声が狼の口から出る。

 

「あの時の俺は全てを諦めかけていたのだ…それでも諦めようにも、それ事態が無駄なのだと悟った。」

 

そこの言葉に明るさは決してなく、声は低いまま、狼は内心を重点に語る。

 

「俺は誓いを守れず、使命を捨てた。」

 

「…」

 

「…」

 

「今はただ…具体的には言えんが、捨てた使命を拾っている最中なのだ…」

 

普段は無口な狼が自身の胸の内を話している。

 

アリエルは当然ではあるが、カルネルは親友と言う意味で彼の話を真剣に聞いていた。

 

狼は言い追えたようだ。

 

再び、沈黙が場を支配する。

 

そして今度はアリエルが口を開く。

 

しかし、開いた口から直ぐに言葉が出ることはなく、時間にして数秒、そこから出た言葉は。

 

「なら、狼様……私の従者になるというのはいかがでしょう?

私は貴族の身。きっと、貴方のお力になれると思います。」

 

そんな主の言葉を聞き、後ろの二人が困った顔をし始めた。

 

「悪いが…他を当たってくれ、手助けも要らん」

 

しかし、狼は断りをいれる。

 

「何かお気に召さない事があったでしょうか」

 

お気に召すも何も何故自分なのかが分からない。

狼は故意ではないにしろ、一度は敵対した身で相手からすれば危険人物な筈。

因みにあの時の狼に該当する罪は、不法侵入、不敬罪、そんなところだ。

 

狼自身も自分の罪の精算に他人の手を借りるつもりなどない、その他人に余りにも危険が伴うがゆえにそうするべきなのだ。

 

狼はいち早く帰りたかった、でも目の前の王女はそう簡単に逃がしてくれるか分からない。

 

「従者にはならん…それが今の俺の望みだ」

 

此が狼の答えである。

 

従者になれば長時間の旅はおろか、単独行動すら制限される。

それに狼には竜咳がある、王女の護衛と言うなら暗殺等を警戒するのは当然、もし其で自分が死亡して、近くに主が居た場合、竜咳に掛かる可能性もある。

 

この仕事は狼には積めることができない。

 

アリエルは何かが引っ掛かったような表情をした後、そこから目線を紅茶に向けて、そのまま狼に問いかける。

 

「では…最後に幾つか質問をさせてください。」

 

その声には今まで以上の緊張感があった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

アリエルside

 

場面は狼がアリエルの護衛から逃げきった所まで遡る。

 

「デリック…動けるか」

 

デリックは「すまない」と言ってルークの肩を借りて立ち上がる。

 

「はぁ…素手であの威力を出されせるとは」

 

デリックは目眩と吐き気を治すために治癒魔術を自身に掛ける。

 

「あの男は何者なんだ、暗殺者ではなさそうだな」

 

「どうだかな」

 

ルークはその言葉を聞いて考える

 

確かに暗殺者であれば目立つ行為は御法度だろう、あんな自傷行為はしない筈だ。

そもそもあの男は何処からやって来た、どうやって敷地内に侵入したんだ。

 

幸いアリエル様は軽傷や重傷もなく無事

 

一先ずはこの事を仲間に報告をしなければ。

 

報告したら文字通り陣営内は混乱した。

 

皆がその男の素性を突き止めようとした。

情報は刀を持っており、服装は剣の聖地の服装に似ている。

顔付きも印象的な人物で記憶に残っている。

そして一番驚愕なのが、現場の地面にあった大きな血溜まり。

 

あの男は刀を自身に刺していた、普通なら死んでいるであろう出血量だ、血の匂いも酷かった。

 

アリエルは今でも鮮明に覚えている。

 

「自殺でしょうか…」

 

その言葉にルークが反応する。

 

「だとすれば、態々領内でしないでほしいのですが」

 

「確かに自殺をするような、場所ではないですね。

今度会った時は直接聞きましょう。」

 

ルークは困惑した、まさか会いに行くわけではないだろうなと…

 

男の正体の話し合いから数時間、取り敢えず今出せる情報をまとめた。

 

貴族の敷地内に侵入した不審者、格好も分かりやすく、無詠唱魔術師にも打ち勝てる手練れの剣士。

 

今日の1日はそれで終わった。

 

そこから数週間が経って

 

それらしい人物の噂がアスラ首都周辺で立った。

 

噂は概ねあの男に当てはまりそうなものばかりだ。

 

凄腕の剣士だとか…

 

寡黙だとか…

 

顔が怖いだとか…

 

従者は各々の意見を交わしていた、それがアリエル王女の命を狙う、暗殺者なら大問題だ。

 

何せ彼女の従者で、側近である陣営内一の実力者であるデリックが容易く倒されたのだ。

そんな男が王都に近い首都にいると言うのも謎なのだが。

 

そんな従者の主はそんな意見とは違うことを考えている。

 

アリエル的には今までの会話で交わされた意見はあまり重要ではない。

 

あの風貌をもう一度見てみたい、あの恐ろしい何かを。

あの時に私は確かに恐怖を感じた、普段の私ならもっと違った反応を示す筈。

 

とはいっても、あんな血だらけの得たいの知れない男を見て怖がらない人は居ないでしょうが。

 

アリエルが抱いたのは死への恐怖ではなく、もっと別の何かだった。

 

きっと、デリックやルークには反対されるでしょう…

 

というより、ルークやデリックは薄々感づいている。

 

何故…私はあの男に会いたいと思うのでしょうね…

 

 

場面は喫茶店に戻る。

 

紅茶はまだ温かく、アリエル自身の表情を写していた。

 

思わず口にしてしまった言葉でした…

 

私の従者にならないかと

 

結果は失敗でしたけれど…

 

アリエルは本気で言ったわけではない。

でも少しショックを受けていた、何故かを考えるが答えは出ない。

 

アリエルは口を開く。

 

「では…最後に幾つか質問をさせてください。」

 

「貴方から見て、私はどう見えます?」

 

狼は黙って、此方に目線を向けて言った。

 

「後ろの従者は、ルークとデリックと言ったな…」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

………

 

 

 

 

「いい主を持ったな」

 

 

は?…

 

 

その優しげな口調は誰の事を言ったのかアリエルは理解出来なかった。

 

 

増やして欲しい描写

  • 戦闘シーン
  • 日常会話
  • 今のところ問題ない
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