狼は今、冒険者御用達の商店にいる。
カルネルは日用品の買い足しに行くといってあの後別れた。
流石は都市に近いだけあって品揃えや品質も良い、
革袋や衣類に靴…大方は近くの店舗の列で揃った。
最後に探しているものはリュック、丈夫である程度荷物が入るのが望ましい。
店内を歩き回ること数分、狼はちょうど良さそうな品を見つけた。
収納スペースも十分にあって、身動きが取りやすそうなサイズ感。
アスラ銀貨1枚…
中々に値のはる額、そう簡単には手に入らないだろう。
しかし、狼はこの為に今日まで貯めてきた。
狼の支出が殆ど飯代ぐらいしかないため、直ぐにこの金額になった。
「お客様、此方の商品が気になりましたか?」
初老の店員が狼に話しかけてきた。
「そうだな…」
「此方の商品は壊れにくい繊維素材に防火と防水の術式が編み込まれておりまして、大変人気の商品にございます。」
「長旅に便利か?」
「はい、大変便利にございます。」
狼はこれを買うことにした、代金のアスラ銀貨1枚は高いが、また直ぐに貯まるだろう。
店を出てから、次に向かうのは本屋だ。
狼の目的は元の世界に帰還するために、この世界で情報を出きるだけ多く得ること。
故に狼はこのアスラ領国を出るまでに、他国の言語を習得しなくてはならない。
回りは当然の事ながら、身分の高そうな者ばかりだ。
本棚が並ぶ中で、周りは狼の存在に驚くが、本人は全く気にしていない。
ミリス大陸で使われている『獣神語』
ベガリット大陸で使われている『闘神語』
天大陸で使われている『天神語』
魔大陸で使われている『魔神語』
海全般で使われている『海神語』
様々な語学本がある中から、闘神語と魔人語の本を手に取って購入した。
本は紙が高価なせいか、なかなかの値段だった。カルネルが持っていればよかったのだが、聞けば、狼と出会う前に喋れるようになってから売ってしまったらしい。
本屋を出てから、歩いて数分で狼は広場を見つけた。
広場の椅子に腰を掛ける
カルネルが帰ってくるまでの時間を狼は本を読みながら考えていた。
広場では子供達がはしゃいでいたり、親が離れぬように子供と手を繋いでいる様子があった。
…
「別れの挨拶…」
カルネルには読み書きなんかを助けてもらった
マリスには働き場を紹介してもらった
ゾルダート達とは一緒に依頼をこなしたこともある
狼は何をどう伝えればいいか分からなかった、純粋に感謝を述べるだけでいいのだろう。
簡単なことなのだが、孤独な生に慣れきった狼は違和感を感じてまう。
主はいた…
師もいた…
知り合いも…
ならば友と呼べる存在は?
そういった関係を前の世界では築けていただろうか、修羅に堕ちる前までに自身のことを友と認めてくれた存在は果たしていたのか。
「…」
狼は自身の掌を見た。
いや、似たような関係はあったな…もう捨ててしまったが。
…
……
別れ…か…
その言葉を何度か脳内で思い描く。
狼がいた世界では、別れとは意味するところ…死である。
敵に殺されての死、人の道から外れた死。
そんな別れしかなかった。
狼は空を見た、あまり意識してみたことがなかった。
空とは案外、青いものだな…
小鳥が囀ずり、死臭や悲鳴もあまりない。
この世界の何処かにも矢の雨が降り注ぎ、地面は死体で埋め尽くされる。
そんな光景があるのだろうか
きっと有るに違いない、国もあれば、魔物もいる。
貴族などの階級構造まであるのだから。
血生臭い争いが無いと言うのは無理があるだろう。
それでも、今まで見てきた異世界は、狼にとってあまりにも平和だった。
…
この世界に愛着など抱かないようにしていた。ここから先は、行動も人間関係も、帰還のために必要最低限に抑えなければならない。
狼は義手を触る、そこには燃え盛る怨嗟の炎の熱はない。
ただ日の光を浴びて、反射された温かい光が手に伝わってくるだけだ。
ゆっくりと目を閉じて、ため息をつく。
そして、心の中から過去を掘り起こす。
絶望が…苦痛が…悲壮が…
この世界に来てから最初に強く襲われたのは森の中だ、あの時は何度も自身を刀で貫いた。
しゅ…らぁ…
再び、修羅を……
斬ることになろうとはなあっ!
悲鳴も
血の臭いも
骨や内蔵を断つ感触も
死んだ後の表情も
……違う、そなたは……
そなたは…修羅ではないッ!!
「そうなのでしょうか…九郎様…」
久しぶりに前世の言葉を口にした。
今の自分は修羅なのか、それとも人なのか。考えても答えは出なかった。
…
「その言葉…」
後ろを向くと買い物を終えたであろう、カルネルが立っていた。
「何て言ったんだ?」
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カルネルSide
「いたのか」
「何て言ったんだ」
その口調の強さはいつものカルネルらしくなかった。
「…」
「…」
今のは、異国の言葉か?
よく聞き取れなかった、旅商人の俺ですら聞いたことの無い発音だった。
「狼、今何て言ったんだ?」
「…」
「何か喋ってたよな?」
カルネルは自身の追求を止められなかった、今まで触れてこなかった謎に踏み込んだ。
別れ際というのもあって、尚更に聞いておきたくなる。
狼の素性…
別に根性の別れでもない、また会った時に話せばなんて思っていた。
でもこのままだと、何かが擦れ違ったまま元に戻らない気がする。
「アリエル様の時に確信したが、何か…」
「カルネル」
「…何だよ」
狼は座ったまま、カルネルを見上げる。
「俺は強いか?」
「んあぁ?まぁ…強いだろ、単独であれだけ依頼をこなしてるのはお前くらいだ。」
いきなりなんだ、自分が強いかどうかを聞くなんて。
そんなもの火を見るより明らかだろうに…
狼の表情がいつもより険しくなる。
「俺には師がいたのだ…」
「師から教わったのは、敵を殺す方法だけだった…」
そこから聞かされたのは、狼の培ってきた技であり。狼の忍びとしての生き方だった。
カルネルは狼の過去を聞いて、初めてそこから特定の人物らしき存在を聞いた。引き続き静かに狼の言葉を聞く。
「だが…俺は…致命的なものを知ろうとしなかった」
師匠ってことは、あの身のこなしはその師匠の賜物か。
でも…そんな狼の致命的なもの?
カルネルの心に少しだけ緊張が走る。
あれだけ強い狼に致命的な弱点があるとは思わなかったからだ。
「…」
…
「俺は...敵が何なのかを知ろうとしなかった…」
「今口にしたのは、その過程で俺が失ったものだ…」
失ったもの…曖昧で断定できないが、文脈的に人なのか?
「お前が自分で言った、拾ってる最中ってヤツ?」
「そうだ…」
何か…
これって…自分が想定してる以上に重い話しだな
「それはまだ間に合うのか?」
「分からん」
「それでも、しないわけにはいかない」
狼には使命のようなものがあるみたいだな、今日でそれがはっきりした。
「狼…」
「俺もその旅についていく」
「駄目だ」
当然のごとく断られる、しかし。絶対にここは押しきる。
「行く」
「駄目だ」
「行く」
「駄ッ「行く」…」
…
……
「後悔するぞ…」
「それはこっちのセリフだ、第一にお前はまだアスラ語しか習得してないだろ」
「…」
図星だな…ていうか、今その手にある本は闘人語か?
「俺が旅の道中で教えてやる」
狼の学習スピードなら、遅いとまでは言わないが。決して早くは習得できないだろう、なら誰かが隣で教えてやる環境が必要だろう。
「何故...そこまでする」
狼は理解しがたいと言いたそうだった。
「忘れたのか?」
「お前は命を救った、その分を助けさせろ」
「…」
沈黙は肯定と見なす
「ヨシッそうと決まれば、さっさと他のメンバーの別れの挨拶を考えるんだね。」
後ろでため息が聞こえたが気にしないでおこう。
カルネルが聖人過ぎる件
増やして欲しい描写
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戦闘シーン
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日常会話
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今のところ問題ない