シャーレの先生最終学歴:才囚学園卒業   作:鳩胸な鴨

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思いついたので供養

ここのモノクマはアイランドモードばりの負け犬です。いや、負けクマです。

ちょっと修正しました


超高校級の発明が運んできたもの

ケース4.ミレニアムの場合

 

「入間先生が作ったゲームの中から謎のデータファイルが見つかった?」

 

コロシアイの情報による衝撃冷めやらぬ中、ゲーム開発部より舞い込んできた報告に目を丸くする少女…早瀬 ユウカ。

ミレニアムサイエンススクール、その中枢たるセミナーの一員たる彼女にとって、ゲーム開発部は管理すべき部活の一つだ。

それを抜きにしてもゲーム開発部との距離は近い。だからこそ、彼女にそんな報告が来ることはなんら珍しいことではない。故に、身構える必要などほとんどない。

 

だが、今回は違う。問題発言の数々により現在謹慎を喰らっているエンジニア部顧問…入間(イルマ) 美兎(ミウ)が絡んでいることで、身構える必要性が出てきたのだ。

彼女は気が強いようでいて、非常に打たれ弱い。ちょっと怒鳴るだけでも半泣きになるし、捲し立てるようにお願いすればなんでも作る。

しかしながら、作り物とはいえ「超高校級の発明家」という称号は伊達ではない。その技術は無二のもので、ミレニアム生でも追いつけるのはごく一部だ。

そんな彼女が作ったゲームに、謎のデータファイルが混入するなどあり得るだろうか。

ユウカが訝しむと、ゲーム開発部の1人…天童 アリスが胸を張った。

 

「はい!フルダイブ式のシミュレーションゲームをしていたら、アリスが見つけました!」

「そーそー。結構強いプロテクトがかかってて、私たちじゃ見れなかったんだよねー」

「キーボ先生はファイル名を見て『碌でもないものだから絶対に見ないでください!』って言ってたけど…、そう言われると逆に気になるっていうか…」

 

言って、ゲーム開発部が使用しているノートパソコンを見せる。

開発中か、それともプレイ予定なのか。数多のゲームデータが並ぶ中、その文字列は異様な存在感を垂れ流していた。

 

「『おしおき集』…?」

「2分くらいの映像が数百件あってさ。中には先生たちの名前と、変な一文がついた文章ファイルもあったよ」

「おしおきだなんて可愛らしい響きだけど…、なんでそんなものがゲームの中に?」

「わかんない。アリスが白黒のクマの敵キャラをやっつけたら出てきてさ」

「白黒のクマ…?」

「はい!モノクマと名乗っていました!」

 

モノクマ。その名に聞き覚えはない。

白黒ストライプの可愛らしいクマを思い浮かべつつ、ユウカは携帯を取り出した。

 

「ちょっと待ってて。入間先生に確認するわね」

 

現在、時刻は午後15:00。「いかに寝ながら生きられるか」などという自堕落の塊みたいなテーマで発明に明け暮れる彼女でも、流石に起きているだろう。

ユウカがしばらく待つと、5コール目あたりで通話がつながった。

 

「もしもし、入間先生?」

『おう、なんだ早瀬?柏生のチン長でも知りたくなったか?』

「ちっ…、あなたに聞きませんよそんなの!!

そうじゃなくて、開発部に渡したVRゲームについて聞きたいんです!!」

「むっつりユウカ」

「だまらっしゃい!!」

 

ゲーム開発部の1人…才羽(サイバ) モモイの脳天にユウカのゲンコツが落ちる。

ユウカは眉間の皺を伸ばし、入間に問いかける。

 

「アリスちゃんが『モノクマ』って敵キャラを倒したら、『おしおき集』って名前の映像ファイルが出て…」

『消せ!!今!!すぐ!!!』

「ひゃあっ!?」

 

鬼気迫る勢いで叫ぶ入間に驚くユウカ。

いつもの誰かを小馬鹿にする傲岸不遜な大声とは違う。明らかに焦っている。

その違和感に、ユウカは思わず声を漏らす。

 

「急に大声出して、どうしたんです…?」

『そんなん言ってる場合じゃねー!!誰かが見る前に消せ!!いいな!?』

「えっ、えっ…、な、なにを…」

『そのファイルはな、クソ悪趣味なスナッフフィルムなんだよ!!』

「すな…?」

『殺人映像って意味だ!!セミナーの一員ならそんくらい知っとけ大根ふともも!!』

「だっ…!?」

『文句は後で聞くからまずは調月(ツカツキ)のババアか明星(アケボシ)のペタンコ呼べ!!入り込んだモノクマウイルスをデータの一片も残らず殲滅しろ!!』

 

「まだ懲りてなかったかあのクマやろーっ!」と叫び、別れの言葉すら告げず通話を切る入間。

ユウカはゲーム開発部の面々と顔を見合わせたのち、言われた通り2人に連絡を取った。

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「…残っていたデータの除去、終わりました。

そのパソコンとゲーム機が独立した状態で動いていたのが幸いしましたね。下手にネットに繋いでいれば、あっという間に増殖し、ミレニアムのネットワークを支配していたでしょう」

「ひょえ〜…」

 

ユウカから連絡を受けた明星 ヒマリが、VRゲーム機本体を前に汗を拭う。

ミレニアム生でも随一の才能を誇る彼女でも手を焼き、甚大な被害をもたらしただろうウイルス。

意図せずその進行を食い止めたアリスに、皆が称賛を送る。

 

「お手柄だね、アリス!魔王級のモンスターを倒しちゃった!」

「つまり…、アリスはミレニアムを魔王モノクマから救った勇者ということですか!?」

「ええ。世辞抜きに」

「わーい!!」

 

シャーレへと報告に向かったゲーム開発部顧問…超高校級のロボットことキーボがここに居れば、「魔王の方が可愛いと思いますがね」と苦笑を浮かべたことだろう。

ゲーム開発部が思わぬ手柄に喜んでいる横で、ユウカはヒマリに問いかけた。

 

「でも、そんなウイルスがどこから…?」

「出所はおそらく、入間先生がゲームを作る際に使ったパソコンからでしょう。あれはキヴォトスの外から来たものですしね」

「キヴォトスの外からそんなものが…?」

「先生方の才能を作ったという技術があるくらいです。あまり舐めない方がいいかと」

 

ミレニアムでもそのような研究開発は進んでいない。というか、進めていいものではない。

キヴォトスの外は倫理観がまるで機能していなかったりするのだろうか。

ユウカは浮かんだ疑問を置き、目の前の問題に意識を持ち直した。

 

「で、例のファイルは…」

「わんさか出てきたので、ほとんどは破棄しておきました。モノクマとやらの基礎データのそこかしこに圧縮したものが組み込まれていましたよ」

「そう…。中身は見ましたか?」

「いえ、まだです。気にはなりますが…、キーボ先生たちの取り乱しようから、恐らくは例の映像かと」

「コロシアイ…」

 

ゲーム開発部の皆が目の当たりにすることがなくて良かった、とユウカは胸を撫で下ろす。

 

「連邦生徒会に提出した方がいいかと思いますが」

「いえ、やめておきましょう。先生たちも掘り返されたくはないだろうし…。なにより、これがもたらす阿鼻叫喚が透けて見える」

「わかりました。破棄しておきますね」

 

気にならない、と言えば嘘になる。

カリギュラ効果が強まらないうちに消してしまおう、とヒマリがファイルの中身を確認する中、ふと訝しんだ声を漏らす。

 

「………ん?」

「あれ?破棄しないんですか?」

「いえ、どうやら一手間挟まないと消せないデータのようで。映像を2分ほど流さないと消せないようになっています。

モノクマウイルスの特性からして、下手に破棄したら、ミレニアム中の映像機器を乗っ取りかねません」

「……キーボ先生にだけ見てもらうとかは…」

「それだと入間先生、果ては先生までも見るハメになります。私たちだけで処理しましょう」

 

キーボは定期的に入間によってメンテナンスが施されている。

そのデータが巡り巡って、先生にまで辿りついてしまうかもしれない。

そう考えると、どうしても彼らに見せるという選択肢は取れなかった。

2人がファイルを開こうとした矢先、ひとしきり騒ぎ終わったゲーム開発部がパソコンの画面を覗き込む。

 

「なになに、なんか見るの?」

「あなたたちは見なくてよろしい!あんまり楽しいもんじゃないわよ!」

「アリスが見つけたデータなのに?」

「だから余計にダメなの!ほら、さっさと部室に戻りなさい!」

 

ぶー、ぶー、とブーイングをかますゲーム開発部を追い出すユウカ。

流石というべきか、彼女らを追い出す動きに無駄がない。ヒマリはそれに感心を向けたのち、パソコンへと向き直った。

 

「……さて。どのファイルを見ましょうか」

「どれも人殺しの映像なんでしょう?どれを見ても一緒では?」

「では…、適当なものを再生しましょうか」

 

開いて一番カーソルが近かった映像データ。そこにカーソルを置き、並ぶ一文を読み上げる。

 

「『桑田(クワタ) 怜恩(レオン).千本ノック.リアルフィクションショーver』…?」

「それだけ聞くと、ただ練習風景を収めた映像のように見えますね」

 

別バージョンがあったりするのだろうか。

そんなことを思っていると、ヒマリがファイルをクリックする。

画面に映ったのは、思っていたものよりも邪悪さを感じるデザインの白黒のクマ。これがモノクマなのだろうか。

そのクマが眼前にせり出たボタンに、ガベルを叩きつける。

 

『クワタくんがクロに決まりました。おしおきを開始します』

 

ボタンに備わったモニターに派手派手しい髪の少年を描いたドット絵が現れ、同じくドット絵の白黒のクマに引き摺られていく。

瞬間。ぱっ、と画面が切り替わり、冷や汗を垂らす少年が取り乱す様が映し出された。

 

「なにここ、裁判場…?」

「この冷や汗をかいているのが『クワタ』という人なのでしょうか…?」

 

助けを求めるように視線を右往左往させる「桑田」だろう少年。

その背後から放たれた鎖が首に巻きつき、彼の体を掻っ攫う。

 

「わっ…!?」

「引きずられてる時点でもう死にそうなものですが…」

 

引き摺られていく先は、野球場を模した空間。ピッチャーマウンドに突き立つ棒にその体が叩きつけられ、鎖によって拘束される。

 

「あれ…?や、野球場…?」

「あっ、磔にされて…………はっ?」

「えっ?」

 

映像の中の「桑田」と同じく、困惑を見せる2人。その視線の先にあるのは、ガトリングを模した投球機。

ぶしゅう、と音を立てて回り始めるそれを前に、野球用ヘルメットを被ったモノクマが金属バットを鳴らした。

 

『千本ノック:超高校級の野球選手 桑田(クワタ) 怜恩(レオン)処刑執行』

 

千本ノック。その文言がこれほど悍ましく思えたことはない。

放たれた球が「桑田」の体にあたり、ごっ、ごっ、と軽く、しかし鈍い音が響く。

 

「えっ、えっ…、えっ…!?」

「うそ…、うそっ、うそっ!?」

 

その間隔はすぐに短くなり、絶えず鳴り響くようになる。

まさしく、滅多打ち。

ぐるぐると投球機が「桑田」を囲むように回り、その体を壊していく。

 

「……………」

「……………っ」

 

命だけではない。野球選手としての尊厳すらもぐちゃぐちゃに踏み躙るかのような処刑。

痛みに目を瞑るも、更なる痛みに耐えきれず、ぐわっ、と目を開く「桑田」。

そんな彼の顔を覆い隠すように、放たれたボールが殺到した。

 

「か、彼…、『超高校級の野球選手』…なのですよね…?」

「…………え、ええ…」

「こ、この球、全部見えてるんじゃ…」

「…………………」

 

びーっ。そんな音と共に、投球機が止まる。

そこにあったのは、絶望。

ただただ惨たらしく「桑田」の命を奪ったボールが、コロコロと転がる。

こんな地獄をエンターテイメントとして見ていた人間がいた。

そして、先生たちがそれに巻き込まれていた。

その事実を前に、2人は顔を青く染め、互いを見る。

 

「…………………」

「…………………」

 

血の気が抜けている。互いにそうとしか言えない顔色だ。

ぽた、ぽた、と垂れる冷や汗を拭うことすら忘れ、2人は震える手でファイルを消す。

 

「………これを見たことは、2人の秘密にしておきましょう」

「ええ…」

 

♦︎♦︎♦︎♦︎

 

「と、いうわけで。モノクマウイルスについてはすでに殲滅済みなので、ご安心ください」

 

翌日の夜、ミレニアムの一室にて。

所用でミレニアムに泊まることになった先生を挟むように、部屋に忍び込んだユウカとヒマリがその腕を絡める。

まさしく、両手に花。可憐な少女に囲まれることはやぶさかではないが、それが生徒ならば話は別。

教員として節度を持つべきだ、と今更なことを思いつつ、先生は声を絞り出した。

 

「それはいいんだけどさ…。年頃の子が寝巻き姿で先生に抱きつくのはどうかと思うよ…?」

「私たちがしたいんです。大人しく抱き枕にされてください」

「…………う、うん」

 

結局。彼女らの圧には勝てず、先生は抱き枕として一夜を過ごす羽目になった。




入間 美兎…エンジニア部顧問だが、あまりに問題発言が多く、ユウカの逆鱗に触れて謹慎処分を喰らった。尚、そんなこと知ったことかと言わんばかりにふらりとミレニアムに来ては暇つぶしに開発に明け暮れているので無意味。たびたび自分の元に現れるモノクマウイルスに手を焼いてる。

キーボ…ゲーム開発部顧問。書類上、自分が備品扱いされてることはまだ知らない。顧問になった理由は、アリスの経過観察。入間やエンジニア部の魔改造により、武装すると生徒を簡単に制圧できるくらいには強い。

モノクマウイルス…入間のパソコンに紛れ込んでいたウイルス。下手したらゲーム開発部とゲームに入った生徒たちを巻き込んでコロシアイを始めていた。尚、入間が「本人のフルスペックそのままでダイブできるようにした」せいでフルスペックアリスとかいう化け物が爆誕し、ワンパンされた模様。せめてもの嫌がらせに映像を見ないと消えないように細工した。

明星 ヒマリ…手が空いてたのと気が向いたので来て見たら、とんでもない映像見せられた子。ユウカと結託し、先生のベッドに入り込んだ。

早瀬 ユウカ…ゲーム開発部が持ってきたデータを処理しようとしたらとんでもない映像見せられた子。ヒマリと結託し、先生のベッドに入り込んだ。

ゲーム開発部…調子乗りの入間を一番上手く乗せて利用してる勢力。顧問のキーボのことは仲間として認めているものの、モモイを筆頭に人型ルンバみたいな扱いをしている。「ロボット差別しない分、余計にタチが悪いです!」とたびたびキーボからシャーレに苦言が寄せられる。コロシアイのことは知らない。
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