魔法科高校のサーヴァント   作:綾辻真

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前話をご覧になり、『万能の天才』が登場すると思っていた方々。
申し訳ありませんが、彼(・)女(・)の本格的な登場はもう少し先になります。


後日談12『救世の四英傑』

九島が新たなマスターとなり、四葉家の地下で英霊召喚を行ってからしばらくして――。

全世界に向けて元造が新たな英霊召喚の情報を公開し、世の中が再び喧騒に包まれることとなる。

 

四葉家所有のとある施設を使って公表の場を設(もう)けた元造は、押しかけてきた多くの報道陣たちを前にして、英霊召喚について次の情報の公開を行った。

 

曰く、この英霊召喚のシステムはまだ『未(・)完(・)成(・)』であり、召喚できる英霊は最大でも四(・)騎(・)までしか呼べず、さらに多くの英霊を召喚するためには最低でも数年の時間と費用をかけてシステムを完成させる必要であるということが明かされた。

また、その『費用』に関しても莫大な資金が必要であることが明示され、多くの支援が必要であることも発表されたのである。

 

この発表を受け、既に【偽物(フェイカー)】やアスクレピオスの能力や活躍で英霊という存在に色んな意味で魅入られていた世界中の国々の反応は様々であった。

日本と友好的な同盟国の国々の中では、残り二騎の英霊を手に入れようと我先にと躍起になる者たちが現れ、中立を維持していた国々の中には、発表後に英霊召喚の研究支援の協力に名乗りを上げ、中立から日本の友好国に鞍替えし、あわよくばシステムが完成したあかつきには自分たちも英霊を手に入れようと画策する者たちが続出することとなった。

 

そんな国々を前に、元造は手始めに残り二騎の所有権利をどの同盟国にゆだねるかの選抜を始めた。

数日をかけてじっくりと厳選した結果、元造は日本において比較的信頼を置けるとある二国を選び、その二国が英霊のマスター権を得られることとなった。

しかし当然のように選ばれなかった他の同盟国の国々はそれに反論する姿勢を見せるも、既にそれを想定していた元造は次の手札(カード)を切っていた。

 

それは、真夜を誘拐した崑崙方院を【偽物(フェイカー)】が殲滅した際に押収した大漢の最重要機密データと世界中から連れ去られてきた捕虜の引き渡しであった。

 

大漢が保有していたその機密データは世界中に放たれていた大漢の諜報員たちが命からがらやっとの思いで手に入れてきた各国の国家機密、それをまとめたデータであった。

国外に漏洩するわけにもいかないその機密が多量に含まれた各国のデータ。その中には無論、今回英霊の所有権を手に入れられなかった国々も含まれており、何としても取り返さなくてはならない代物であった。

そしてそれは、崑崙方院に拉致されていた捕虜たちも同様で、特に捕虜に至っては各国の政府上層部の要人の縁者もその中に多く含まれていた。

 

元造はその機密データと捕虜を各国に返還し交渉する事で、今回マスター権を得られなかった同盟国からの反感を鎮静化させることに成功する。

無論、返還するにあたって機密データの内容を閲覧していた元造を含む四葉家の者たちや日本政府の一部の者たちには、他国に口外しないという情報漏洩防止、およびデータの複製禁止を幾重の書類契約によって誓約を交わした上ではあったが。

 

ともあれ、ようやくこれで下地が整い、英霊召喚に踏み切ることが出来るようになったのを見た元造は、次にその選ばれた二国と『どのような英霊を召喚するか』について協議を交わす。

しかし、その問題については早々に答えが出た。

というのも、今現在起こっている第三次世界大戦。それは、2030年頃に始まった急激な寒冷化による悪化した食(・)糧(・)難(・)問(・)題(・)。それを補うために始まったエネルギー資源の争奪戦がこの大戦の実態である。そしてその食糧問題で頭を悩ませているのはその二国も同じだった。

 

それ故に、マスター権を得られた二国が望む英霊は――共に『食糧問題を解決に導ける能力を持った英霊』であった。

 

二国の願いを聞き届けた元造は、早速【偽物(フェイカー)】や四葉家の研究員たちと協力して英霊召喚の準備に取り掛かる。

そうして、二国から選ばれ、選出された二人のマスター候補に【偽物(フェイカー)】が令呪を与えると、二国が望む通りの二騎の英霊がこの世界に呼ばれることとなった。

 

その二騎の内――片方は【弓兵(アーチャー)】のクラスで呼ばれた日(・)本(・)の(・)英(・)霊(・)であった。

左肩をはだけた朱の着物を纏うその偉丈夫は、『無(・)尽(・)俵(・)』という宝具を有しており、それは半永久的に食料を生み出し続けることが出来るという型破りではありながらも正に食糧問題の希望とも呼べる代物だった。

 

そして同じく呼び出されたもう片方の英霊は、【槍兵(ランサー)】のクラスで呼ばれた神(・)話(・)の(・)女(・)神(・)であった。

誰もが知る豊(・)穣(・)の(・)女(・)神(・)として謳われたその存在は、凹凸のはっきりとした美しい容姿にそれに似つかわしくないほどに身の丈はあろう巨大な鎌と麦の意匠があしらわれた光背を携えていた。

そんな彼女は豊穣の女神という名にふさわしくそれに見合った権能を有しており、その力を用いて寒冷化によって枯れた大地を再び活性化させ、元の農耕が出来る地へと蘇らせることが出来たのである。

 

 

そんな二騎が召喚されたことで、世界はさらに大きく動き出す事となる――。

 

 

それぞれの役割を与えられた【弓兵】と【槍兵】がマスターたちと共に行動を開始する中。先に召喚されていた【魔術師】――アスクレピオスもそれに触発されてか行(・)動(・)の(・)範(・)囲(・)を(・)さ(・)ら(・)に(・)広(・)め(・)始(・)め(・)る(・)。

つい先日までほぼUSNA内のみで行動を絞っていたのに対し、今度は日本と自身を召喚する触媒を提供してくれた故郷の国にまで手を伸ばし、医療活動をさらに活発化させていったのである。

三者三様。それぞれがそれぞれの得意分野で活躍する様ははたから見ていても目を見張るものがあり、早くも寒冷化や大戦で悪化の一途を辿っていた世界情勢に一筋の光明が差し始めていた。

 

そんな中、一番最初に召喚された【偽物(フェイカー)】本人にも日本政府からお呼びがかかる。

 

その内容は、未だ未発見の地下エネルギー資源の開拓、その手伝いであった。

【偽物(フェイカー)】の持つ規格外な『気配感知能力』。それは遠く離れた水源をも感知することが出来、それに目を付けた日本政府と同盟国はその能力を応用して未開拓のエネルギー資源の発見が出来るのではないかと考えたのである。

それをマスターである真夜を通して提案したところ、あっさりと【偽物(フェイカー)】は承諾。

道具であることを自称し、それまで実験以外で四葉家で暇を持て余していた【偽物(フェイカー)】にとってその仕事の誘いは大いに有難かった。

そうしていざ、行動を開始すると他の三騎に負けず劣らずの活躍を【偽物(フェイカー)】は発揮する事となる。

日本国内……特に海域において大小問わず十か所を超える未発見のエネルギー資源の発見を行い、そのままUSNAなどの同盟国へ赴くとまるで水を得た魚の如く次から次へと未発見の資源を発見していったのである。

 

食糧問題解決に【弓兵】と【槍兵】。医療技術の発展に【魔術師】。そして新たなエネルギー資源の開拓に【偽物】と日本を含む同盟国内で四騎は分野は違えど正に八面六臂(はちめんろっぴ)とも呼べる快進撃を行い、瞬く間に同盟国の国々の経済情勢は快方へと舵を切ることとなった。

そうして、そんなかの者たちの活躍をメディアを通じて目を見張っていた各国の一般市民たちは、英霊たちを『現代に蘇った英雄』と大いに称え始める。

 

――後に、【偽物(フェイカー)】を含むその四騎は『救世の四英傑』と世間に呼ばれるようになり、数年後の戦後復興にも大いに貢献する事となる。

 

そんな英霊たちの活躍を見た中立国の国々もまた、日本……正しくは四葉にすり寄ろうとする者たちがさらに増えていく。

中立国のその行動を見た元造や九島は一計を案じる。

それは英霊のマスター権を餌に彼らを利用しようとする事だった。

これから始める聖杯生産化計画のプロジェクト、それを遂行させるには莫大な資金と人材が必要だ。

二人はそれらの下準備の大半を中立国で用意させようと企てたのだ。

 

中立を称するが故に敵にも味方にもならず、日本政府(こちら)の要望にも今まで聞く耳すら持たなかったというのに、いざ英霊という魅力的な存在が現れた途端、自分たちも英霊が欲しいとこちらににじり寄ってきたのである。

不干渉を貫くだけならまだしも、こちらのお願いは聞かずに自分たちのお願いを必死に訴えてくるその厚顔無恥な行動に内心苛立ちをぬぐえなかったのが二人の主な理由であった。

 

かくして、中立国の要人たちを前に協議を重ね、莫大な資金と人材を手に入れることに成功する。

 

中立国に英霊召喚システムを完全なものにするためと称してと(・)あ(・)る(・)場(・)所(・)に(・)聖杯の研究施設及び生産工場建設を要請。

それを四葉、九島の両家で監督を行うかたわら、両家は自分たちの抱える優秀な研究者たちを重要な役職(ポスト)に就かせ、未(・)発(・)表(・)の(・)五(・)騎(・)目(・)の(・)英(・)霊(・)の指示の下その研究基盤を整えていく。

莫大な資金。莫大な人材が多く動く故か、聖杯生産施設は難航するであろうと考えていた元造たちの予想を上回る形(スピード)で建設と研究が進んでいき、この分だと当初の予定通りに数年で念願が叶うだろうと、九島と元造は内心でほくそ笑んだ。

 

 

こうして、同盟国内での情勢の回復。および聖杯生産化計画の進行が当事者たちの予想を良い意味で外れ、順調な滑り出しを見せていく――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――しかし、それを快く思わない勢力も少なからずいた。

 

 

 

 

それは、まだ英霊という存在が現れる前――日本やその同盟国相手に明らかな敵意を表していた国々であった。

 

崑崙方院、および大漢崩壊の一件で突如として現れた英霊と呼ばれる強大な存在。かの者たちの規格外な能力は敵国の者たちから見ても非常に魅力的に映った。

しかし、その英霊召喚のシステムを生み出したのがあろうことか敵対する国の一つである日本。

今更ノコノコとかの国に尻尾を振ってすり寄ろうなどという屈辱的なことが出来るわけもなかった。

 

故に、敵国(かれら)の行動は英霊召喚システムの『奪取』、その一択へと自然と方針が固まる。

 

しかし、目標は定まってもそれを成功させるまでの道筋がまるで見えなかった。

強引に武力で殴り込もうものなら、【偽物(フェイカー)】によって大漢と同じ末路を辿りかねない。

なら、スパイを多く送り込み四葉からその技術を国外へ持ち出すか?……いや、四葉もそうだが、日本政府やそ(・)れ(・)を(・)裏(・)で(・)操(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)勢(・)力(・)もそれは予想しているはず、まず間違いなくアリの子一匹通さないほどの守りを固めて来るだろう。

かといって、このまま日本やその同盟の国々が英霊の力によって繫栄していく様をただただ指を加えて見ているのも耐え難い。

敵国(かれら)は何度も協議を重ね、これからどうすれば良いか。どうすれば英霊を手に入れることが出来るのか。それらの議論をしばらくの間、悶々とした面持ちで繰り返した――。

 

 

 

そうして時が経つにつれ、敵国(かれら)の集まりは一つの『組織』へと変貌を遂げていくこととなる。

英霊という存在に魅入られたが故の欲望がそれを誇張させるのか、それとも未知なるモノへの異常なまでの執着心か、はたまた日本を含む敵対国への対抗心が彼らを突き動かすのか……どちらにしても、英霊に対する異常なまでの妄執がその『組織』を一つの巨大な勢力へと拡大させていくこととなる。

それは、『組織』の発足からわずか一年にも満たない内に急激な速さで成長し、直接関わりのない周囲の国々すらもその巨大化の異常性に無視できず、言葉を失いただただ唖然とするばかりであった。

 

 

英霊に魅入られ、英霊を欲し、英霊の独占を願望とし、そして……英霊に妄信執着し、それのみに執念を燃やす。

 

 

そうして築き上げられたその『組織』を敵国(かれら)はやがて正式名称を『国協英霊探求機関(こっきょうえいれいたんきゅうきかん)』と名付け、『組織』もそれを名乗るようになる。

されど事情を知った敵国(かれら)以外の周辺の国々から、その異常な経緯から生まれたが故に、怖れと侮蔑を込めて俗称でこう呼ばれることとなる――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――俗称、『英霊狩り』と……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――かくして英霊とマスターたちだけでなく、四葉家やその関係者たちにおいても明確な敵組織が生まれた瞬間であった。




(注):今回の話で登場した【槍兵(ランサー)】こと、豊穣の女神についてですが、彼女はあくまで『汎人類史側』の側面のみで、『エリニュス』や『機神』などの側面は全く持ち合わせておりません。
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