真夜と【
四葉のメイドが淹れてくれた紅茶を飲んで一息ついた九島は、対面に座る元造と真夜、そして真夜のそばに佇む【
「……いやぁ、今日はご無理を言って申し訳ありませんでしたな。元造殿、真夜さん」
「いえ、大したことではありませんよ」
「私もです。本日はわざわざお越しくださり、ありがとうございました」
元造と真夜が続けてそう言い、九島はそれを聞いてフッと小さく笑って見せる。
しかし、そこでそのやり取りと見守っていた【
「――それで、そろそろ
「【
九島にはなった【
その視線を受けてフッと口角を上げた【
「……ただ僕という存在を見物に来ただけじゃない。もちろん僕という脅威を『見極めに来た』という目的もあっただろうけど……それを踏まえた上で、キミは僕と
「……いやはや、参ったね。さっきの私に対する観察眼と言い、古代の神造兵器というのは人の心が読めるのかね?」
「まさか。今のところ、僕にそんな機能はないよ。……ただの過去の
九島の言葉に【
「九島先生?」
「……すまないね、元造殿。……先も言ったように、今世界は四葉に文字通り釘付けの状態だ。そこな【
「――!まさか、九島先生……!」
そこで、九島が何を言いたいのかを察した元造は、目を見開いて九島を凝視し、その視線を一身に受け止めた九島は静かに頷いた。
それを元造の隣で見ていた真夜は、未だに話の内容の理解が追い付けず、視線が元造と九島の間を行ったり来たりする。
そんな真夜に【
「つまり、彼は
「えっ!?」
【
「……もちろん、今提供を行うのは日本と同盟を結んでいる国だけです。日本に友好的な国々にこの技術を……英霊を提供すれば、パワーバランスを回復するだけでなく、国と国との結びつきもより強固なものになるでしょう。さらに、【
「……なるほど。各国間の結びつきをより盤石にするだけでなく、英霊たちの力でそれらの国々を繫栄させることが出来れば、大きな恩を売ることもできる。……そういう事ですね?」
あまりにも
そんな真夜を宥めるように、【
「落ち着いて
「…………言いたいことは、何となく分かるけれど……。けど、それでも……やっぱり、面白くない……」
【
そんな真夜と【
「……貴方の言いたいことは理解しました。しかし、分かっているとは思いますが『それ』にはリスクも伴います。この英霊召喚の技術を同盟の国々の中だけとは言え広めてしまえば、自然と敵対している国々にもその情報が漏洩する可能性も高まります。……人の口に戸は立てられませんよ?」
「ええ、分かっております。……しかし、これほどまでにとんでもない魔法です。その
「…………」
九島のその指摘に元造は黙り込み、それを肯定と受け取った九島は言葉を続ける。
「ならば、その秘密と英霊召喚の生みの親という立場を利用してその魔法の最高管理者という地位を手に入れればいい。四葉の許可なく英霊召喚は行えないという『事実』を世界に広め、四葉の管理下のもとに英霊召喚のシステムを運用するのです」
「……『世界に広める』というと、やはり……」
真剣な顔でやや前のめりになってそう尋ねる元造のその視線を受けて、九島はニヤリと笑って見せる。
「それはもちろん――」
「――
◇◇◇
――九島烈の来訪から翌日の昼過ぎ、真夜は姉の深夜とともに自室で午後のティータイムを楽しんでいた。
真夜のそばにはいつものように【
「――それで、九島先生が提案したって言う『実演』の詳細について、その後何か連絡があったの?」
紅茶とともに出されたクッキーをポリポリと食べながら、深夜は正面に座る真夜に唐突にそう尋ねた。
真夜は何故か
その視線を受けた【
画面には見知らぬ男性の顔写真とその男性のプロフィールが映し出されている。
そのプロフィールを読む深夜に向けて真夜が口を開く。
「……つい、一時間ほど前に九島先生がお父様に送ってきた『実演』の詳細資料よ。
「ふぅん……私たちの知らない人を選んだのは、『やらせ』の可能性を疑われないため?」
「間違いなく、そう。対象の男性とは実演当日まで四葉の人間は接触はおろか連絡すら一切禁止だって。……日時は一週間後、場所はUSNA国内のとある郊外。その日までに
「……同盟国とは言え、海外に行くんでしょ?……大丈夫?」
「『元老院』の方は九島先生が事前に根回しをしてくれてたみたいで許可は下りてる。日本とUSNA政府との政治的交渉もすでに済んでいて、そっちの方もOKだって」
「……違うわよ」
唐突に深夜の声のトーンが落ち、目の前に座る
「向かう国が違うとは言え、
「あ……」
深夜のその指摘で何を言いたいのかを察した真夜はハッとし、それと同時に台北で受けた辱めと恐怖の記憶が脳裏を一瞬フラッシュバックする。しかし――。
「――大丈夫よ、深夜」
「!」
直ぐに姉を安心させるかの如く、柔らかいほほ笑みを浮かべる真夜。その笑みに一点の曇りがない事を察した深夜は目を見開く。
そんな深夜を前に、真夜は視線を深夜から自身の真横に立つ存在へと移し、そのモノを見上げる。
やがて、そのモノと視線が合うと真夜は笑みを深くしながら静かに言葉を続けた。
「今の私には【
真夜からのその言葉と視線を受けて、【
そんな妹と英霊のやりとりをみた深夜はポカンとした表情を浮かべると、やがて無意識的に今の本音を
「……うらやましい」
「え?」
「あぁ~いいなぁ~!真夜ばっかりズルい!私も
「ちょ、ちょっと深夜。
「あ、うん……まぁ、分かってはいるけどぉ~……」
先程までの令嬢としてのマナーは露ほども無く、テーブルにだらしなく突っ伏した深夜は駄々をこねた子供のごとくそう喚いて見せ、それを見た真夜は呆れと困惑を混ぜたような表情で深夜を窘める。そして【
やがてほほを膨らませながら深夜は突っ伏していたテーブルから顔を上げる。
「もぅ……何で
「ああ、その事なんだけどね」
ふいに深夜が疑問に思ったことを口にし、それを【
「実を言うと呼び出す予定の英霊は
「え、そうなの?……ちなみに、どんな英霊を呼ぶ予定?」
【
「うん……それがね、呼び出す予定の
「――■
真夜から呼び出す予定の英霊の真名を聞き、深夜は驚きに目を丸くする。
「うっそ、神様じゃない……。そんな凄い存在、本当に呼び出せるの?」
「当日は僕が『聖杯』として呼び出す予定なんだけど、流石に僕だけじゃ特定の『神霊』を意図して呼び出すのは難しいね。……でも大丈夫だよ。そこの問題解決は既に考えがあるんだ」
「ふぅん……。でも何でその英霊を呼び出そうと思ったのかしら?」
【
そんな真夜の様子の変化に怪訝な顔を浮かべる深夜。そんな彼女の前で真夜はその理由を口にする。
「……実は、その官僚の男の人――」
――そうして、真夜からこれからマスターとなる予定の官僚男性の事情をあらかた聞いた深夜は、理由を理解すると同時に真夜同様に顔を曇らせていた。
「ああ……まあ、確かにそれは……
そう呟きながら、深夜は
そこには
その写真立てに入れられた写真は
どこにでもあるごくありふれた家族写真であり、そこに写る真夜たちも皆幸せそうな笑顔を浮かべたほほえましい光景がそこにあった。
そんな家族写真を一緒に見ていた【
「そう言えば、キミたちのお母さんも確か数年前に……」
「うん……」
そう小さく頷く真夜の視線は家族写真に写る
しかし、脳裏ではかけがえのない母親の事を想うと同時に、母とはまた別の人物の顔も真夜は思い浮かべる――。
――それはあの忌まわしい台北での一件で自分を命がけで助け出してくれた――。
――魔法師であり、転生者でもあるという……自分に【