ブラッドボーン主人公憑依転生→本編クリア→フリーレン世界転移   作:啓蒙61

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自分が書きたかったエピソード1つ目。


5.ソリテールと追跡と観察

あれからソリテールは、狩人を探し求めて、あちこち彷徨い歩いた。

しかし3か月ほど経った後、気が付く。

 

「このままでは、見つかるわけがないわね」

 

狩人というあの人間と出会った日から、2年の月日が経過している。

近隣地域からどこか別の場所へ移動してしまっているかもしれない。

だが、どうやって狩人の足取りを掴めばいいだろう。

ソリテールは魔力を探知することで、特定の魔力を持った魔族や人間の魔法使いを追跡することができる。

しかしあの狩人という人間は、一切魔力を持たない。

つまりソリテールが、狩人を見つけることは不可能に近かった。

 

「なんとか手がかりを集めるしかないわ」

 

そしてソリテールは、次の策を考えた。

 

それは長い年月を人間の研究に費やした彼女にしか、実行できないことだった。

 

 

 

 

北部高原のある都市の城門。

城門をひとりの衛兵が守っている。そこへ帽子を被った、緑髪の少女が近づく。

 

「衛兵さん、衛兵さん、この町に入れてくれないかしら?」

 

「ん、おお! お嬢ちゃん、ひとりで旅をしているのかい、危ないよ」

 

「ええ、危ない目にあったわ。現に死にかけたもの」

 

「それは! 大変だったな! では申し訳ないが、規定通り通行証を見せてもらうか」

 

帽子を被った緑髪の少女は、通行証を衛兵に見せる。

衛兵はしきりに頷いたあと、少女にこう言った。

 

「ん、帽子を上げてみてくれ」

 

「なにか気になることでも?」

 

少女は、帽子を外し、自分の額を見せる。

そこには、綺麗で真っ白なおでこがあった。

 

「私を魔族だとでも思ったの?」

 

「いいや、ただどんな髪型か気になっただけさ。よしっ、通って良いぞ」

 

緑髪の少女は、どこか不気味さを感じる笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

「案外、すんなりと通してくれたわね」

 

人間の姿に扮したソリテールは、帽子を深くかぶって、町の中へ入っていった。

 

『角を隠す魔法』

 

それはとある民間魔法。

今から140年ほど前、ソリテールは、興味本位に滅ぼした村で手に入れた魔導書から、それを学んだ。

いったい誰が、どういう意図で、こんな魔法を開発したのかは定かではない。

ソリテールには使用用途が不明な魔法など、いくらでも知っている。

これもそのうちのひとつだろう。

 

「意外と気づかれないものね。興味深いわ」

 

ソリテールの極めて精密な魔力操作により、一級魔法使いですら、この偽装を看破するのは難しい。

 

開発した人間は想像だにしていないだろう。

この魔法が魔族に手に渡り、魔族の証である角を隠すために使われるなんて。

魔族は己の魔法と魔力に誇りを持つ。それゆえに、人間の民間魔法を使用する者など存在するわけがない。

 

そう、異端の存在であるソリテールを除いて。

 

「狩人っていう名前の、黒装束の男? そんな目立つ奴は見たことないねえ」

 

「そう、残念だわ」

 

ソリテールは、町中にいる人間へ聞き込みをおこない、狩人の情報を集める。

ゴロツキが襲いかかってきたときも、魔族だとバレないように、人目のつかない場所で魔法の剣を用いて、細切れにして抹殺した。

そうして3日3晩の聞き込みの結果、情報は何一つ得られなかった。

 

その後、ソリテールは、周辺の街を滅ぼして、狩人をおびき出そうかと考えた。

だが、周辺地域にいない可能性もあるので、時間の無駄であると判断する。

 

「次の町ね」

 

飛行魔法で宙に浮かび上がったソリテールは、急ぎ足で次の街へ向かう。

速い方がいい。

たとえ狩人を知っている者がいたとしても、下手に時間が経てば、その人間は忘却し、手掛かりは失われるだろう。

 

いくつも町や集落を回ったソリテールは、ついに情報を掴む。

 

「黒装束の男? ああ、そんなやついたなあ」

 

「どこへいったの?」

 

「南の方だよ」

 

「教えてくれて、ありがとう」

 

ようやく、手がかりを掴んだ。

ソリテールは、いつもの作り物じみた薄っぺらい笑みではなく、少しだけ感情をにじませる。

 

「今日は機嫌がいいわ。次にあなたと会っても、殺さないであげる」

 

狩人を探す旅に出てから、ソリテールは『実験』も『おしゃべり』も一度だってしていない。

不思議なことに、なぜかやる気がまったく起きない。

今は、あの狩人という人間ばかり考えている。

 

 

 

 

次の町、その次の村、さらに次の街。

数か月間、ソリテールは人間の集落や街に潜入し、粘り強く狩人の追跡をつづける。

そしてついに、ソリテールは、狩人の居所を突き止めるに至った。

狩人を探す旅に出てから、ちょうど半年たったころである。

 

ある街の、狩人が宿泊していた宿のオーナーから、その情報を耳にした。

 

「ああ……ひどく冷たそうな男だったがね。意外と人の良いやつだったよ。酒を飲みながら『聖都で静かに暮らしたい』って言っていたな」

 

どうやら、狩人は中央諸国の聖都シュトラールに向かったらしい。

そしてそこで当分の間、居住するようだ。

ならば現在、狩人は聖都にいるとみて間違いない。

 

「ふふふ、ようやく見つけたわ」

 

話は早い。

迅速に聖都に向かい、狩人に会いに行こう。

そう思ったソリテールだったが、すぐにその考えを打ち切る。

 

「……だめね、自分らしくない。冷静さを欠いているわ」

 

まず、会ったところで、どうなるだろうか。

自分と話し合いに応じてくれるだろうか?

いや、その可能性は低い。

あの人間は自分を獣だと断じて、殺意を向けてきた。

突然興味を失って自分を見逃したとはいえ、まともに会話をしてくれるとは思えない。

 

では、力づくで捕まえる?

それも難しい。

あの人間は強かった。

自分が敗北へ追いやられたのだ。

しかもこちらの手の内が向こうに知られているのだから、もう一度戦っても、殺さず勝利することは困難だろう。

 

では、どうする?

ソリテールは、考え込んだ。

そして実にシンプルな答えに行き着いた。

 

ならば、新しい自分の手札を作ればいい。

狩人との戦いを脳裏で思い返す。

膨大な知識量から、相手がいまだに見せていない攻撃手段をいくつか想定してみる。

それを何十パターンも考え抜いたうえで、これから自分が新しく構築する魔法を練っていく。

 

そしてなにより重要なのは、自分だけが戦う必要はない。

 

「ちょっとだけ、寄り道をしようかしら」

 

ソリテールは、抑揚のない口調でひとりごちた。

 

 

 

 

北側諸国。人里から離れた渓谷。

ソリテールは、顔なじみを数十年ぶりに見かけて、声をかける。

 

「久しぶりね、アウラ。いつぶりかしら?」

 

「ソリテール……」

 

「あなたの配下は一緒じゃないの?」

 

「今は出払っているわ」

 

アウラは、警戒するような目でこちらを見る。

 

(当然ね……だってあなたの<服従させる魔法(アゼリューゼ)>は私に通用しないもの)

 

「……アウラ、あなたが勇者ヒンメルに殺されかけてから、しばらく表舞台から消えていた。てっきり葬送のフリーレンにでも仕留められたのかと思っていたわ」

 

「なによ、わたしを嘲笑いに来たのかしら? とっとと立ち去りなさい」

 

「まあ、少しは話を聞いてちょうだい」

 

それから、ソリテールはアウラに、次のように話した。

自分を追い詰め、見逃した狩人という人間を捕縛したい。

しかしひとりでは難しい。

なので、七崩賢の一角であるアウラの協力を仰ぎたい。

報酬は、ソリテール自身が契約魔法で条件を定め、アウラに100年間従う。

 

アウラの目の色が変わっていく。

 

アウラは七崩賢であるが、純粋な戦闘能力や魔力量では、ソリテールに及ばない。

格上である無名の大魔族が、自分に従う。

それは彼女にとって、あまりにも魅力的な提案に映ったはずだ。

 

「その話、乗ったわ」

 

アウラは喜悦をにじませた声でそう言った。

ソリテールは、目を細める。

 

「絶対にその人間を殺さないでね。いっぱいお話しないといけないから」

 

「わかったわ」

 

アウラは困惑したように、眉をさげる。

 

「……それにしても理解できないわね。どうせ人間なんてすぐに死ぬのに、どうしてその人間にこだわるのかしら」

 

「興味があるから」

 

「いいわ、じゃあ<服従させる魔法(アゼリューゼ)>でその人間を服従させて、あなたの前に引きずりだしてあげる」

 

ソリテールは、アウラのその言葉になぜか、胸がざわめいた。

 

これはいったいなんだろう。

なにか、気持ち悪い。

 

「一つ聞くけど、アウラ。あなたの<服従させる魔法(アゼリューゼ)>は解除可能?」

 

不可逆性というものがある。

たとえば、七崩賢マハトの<万物を黄金に変える魔法(ディーアゴルゼ)>。

この魔法は物質を黄金に変える魔法だ。そして一度物質を黄金に変えてしまえば、もとの状態に戻すことはできない。

 

アウラの魔法も、その性質があるのではないだろうか。

一度服従させてしまえば、あとは人形のようになって、本人の意思で体を動かせなくなる。

 

「できないわね。一度かけたら、解除は不可能よ」

 

「そう……」

 

ソリテールの脳裏でイメージが浮かんだ。

珍しいことだった。

魔族という生物は、人間と違って、何かを想像することはあまりない。

 

自分が追い求めた、あの人間がいる。

彼は、まるでマリオネットのように意思を失い、アウラの指示に従う存在と化していた。

 

なぜか思った。実に不愉快だ。

目の前にいるアウラを殺してしまいたいほどに。

 

「別にいいじゃない。お話できれば、それでいいじゃない?」

 

次の瞬間、ソリテールの周囲に無数の剣が浮かんでいた。

その剣がすべて、アウラに殺到する。

360度、アウラの全方位を魔法の剣が囲む。

 

「じゃあ、あなたの首をはね飛ばして、私だけの物にすればいい」

 

「や、やめなさい、ソリテール、殺さないで」

 

アウラの首筋に剣の切っ先が刺さり、そこから血が流れていく。

 

「……」

 

ソリテールは我に返って、魔法で生み出した剣をすべて消失させる。

恐怖で肩を震わせているアウラを、静かに見下ろした。

 

「ちょっとした冗談よ。ごめんなさい、アウラ。さっきの話はなしにして」

 

ソリテールはそう言い捨てて、アウラの元を去った。

それから荒野の上空を飛びながら、ソリテールは疑問に思う。

 

「……どうして私は、さっきアウラにあんなことをしたの?」

 

普段の自分ならば、絶対に取るはずのない行動だ。

 

ソリテールは、冷静に自分の状態を観察する。

なぜ、不愉快だと思った?

どうして、アウラを殺したくなった?

 

どうやら自分は怒りの感情に駆られているようだ。

 

ソリテールは驚いた。

めったに怒りの感情を抱くことはない。衝動的になるなんてなおさらだ。

1000年以上生きた中で、片手でかぞえるほどもない。

 

「なんで? どうして私は怒ったの?」

 

ソリテールは、自分の感情の動きを冷静に分析する。

 

まず自分は、アウラの魔法で操り人間と化した彼の姿を想像した。

そしてそれに怒りを感じた。

 

なぜだ? これが理解できない。

 

「自分の探求が妨げられる可能性が存在したから?」

 

ソリテールにとって、狩人という人間は、いまだかつてない研究対象だ。

自分は彼と対話したい。

もしあの人間がアウラの傀儡となれば、ありのままの反応を引き出すことはできなくなる。

そうなってしまえば自分の実験は台無し。だから怒りに駆られたのだろう。

 

おそらくそうだ。

いや、そうに違いない。

それ以外に考えられない。

 

⋯⋯本当にそれだけ?

 

「アウラ以外で……他の誰かを当たろうかしら」

 

他の候補となれば、マハトはどうだろうか。

いや、だめだ。時間がかかりすぎる。

今まで来た道を引き返して、城塞都市ヴァイゼに向かい、ヴァイゼの結界を解除する必要がある。それにマハトを協力させるための、魅力的な報酬を用意できる自信がなかった。

 

では、他に誰が……。

 

「いいこと、思いついた」

 

 

 

 

中央諸国、グレーゼ森林。

 

グレーゼ森林の、誰も立ち入ることを許されていない禁足の地。

そこには、石像と化した巨大な魔族の姿があった。

その魔族こそ、今から80年程前に勇者ヒンメル一行によって封印された、腐敗の賢老クヴァールである。

 

ソリテールは、石像となったクヴァールに触れて、封印の解除をおこなう。

 

「ひとりでこの封印魔法を編み込んだんだ……流石、葬送のフリーレン」

 

クヴァールがかかっている封印魔法は、魔法使いフリーレンによってかけられたものである。

幾重にも重ねられた複雑な、魔法式。

並の魔法使いではこれを解除することはできない。

だが、人類の魔法を知り尽くしたソリテールにとってみれば、2週間もあれば解除できる代物だった。

 

クヴァールが、動き出した。じろりとその視線がソリテールに注がれる。

 

「ふぅむ、おぬしが儂を封印から解き放ってくれたのか、ソリテール」

 

「久しいわね、クヴァール。外の空気を吸ってばかりでそうそう悪いんだけど、手伝ってほしいことがあるの」

 

それからソリテールは、アウラと同じように頼み込んだ。

狩人という人間を生きたまま捕縛したい。しかし自分ひとりだけでは難しいので、協力してほしいと。

 

「いいだろう。協力しよう」

 

「ありがとう……意外とすんなり手伝ってくれるのね」

 

「当然だ、儂の封印を解いてくれたからな」

 

「よし、いいこと教えてあげる」

 

それからソリテールは、クヴァールに現在の大陸情勢について説明する。

現在は、クヴァールが封印されて80年程が経過していること。

魔王が勇者ヒンメル一行によって討伐されたこと。

戦争は人類側の勝利に終わり、魔族は残党勢力が各地に散らばっている状態となっていること。

 

これらをざっくり言い終わったあと、ソリテールはこう続けた。

 

「あなたのゾルトラークは、人間たちの手によって解析されている。

今では、一般攻撃魔法として人類側で広く流通しているわ。そしてこのゾルトラークを防ぐ、防御魔法もね」

 

クヴァールは動揺する素振りすら見せず「そうか」と一言返すだけだった。

 

「ソリテール、おぬしは人間の魔法に詳しいのだろう。人間たちが生み出した防御魔法を見せてくれ」

 

クヴァールはそう要望してくる。

望み通り、ソリテールはクヴァールの目の前で防御魔法を展開する。

クヴァールは、しげしげと興味深そうに顎に手をあてて、防御魔法を観察している。

 

「……なるほど、中々悪くない。だがやや魔法式に粗がある。改良の余地はあるな」

 

そう言って、クヴァールは自分の手に魔力を集め、半透明の障壁を生み出す。

わずかこの一瞬で、クヴァールは防御魔法の魔法式を読み取り、再現したのだ。

それどころか、改良点を見抜いてみせた。

 

(……腐敗の賢老だわ。あいかわらず化け物ね)

 

自分ならば、魔法式を読み取れるが、それを瞬時に再現などできない。

さらにそれを行いつつ、人類の英知が総集結して生まれた防御魔法の改善点を、見つけだす。

ソリテールからすれば全く訳が分からない芸当だ。

 

「クヴァール、もうひとつお願いがあるの」

 

「ふむ?」

 

「魔法を開発してほしい。主に三つ」

 

「聞かせてみろ」

 

「一つ目、人類の防御魔法を貫通する、改良されたゾルトラークを開発してちょうだい」

「最初からそのつもりだ」

 

「二つ目に、さらに頑強になった防御魔法を開発してほしいわ」

「それに関しては4割ほど完成した」

「え?」

 

クヴァールの手から、防御魔法と思わしき障壁が生成される。

一見、ただの防御魔法のように見える。

だが、中身はまったく異質のものだ。

魔法式の構造も、一つ一つ組み立てられた式も、そのすべてが別のものに置き換えられ、洗練されている。

 

「まだ改善と実証を積み重ねなければいけないが、今の段階でも、現在人類が使用しているものより、性能においては上だ。ただ魔力の消費効率が悪い」

 

ソリテールは、あらためて、このクヴァールという魔族の天才性に戦慄するのだった。

 

「……じゃあ最後に一つ、これは個人的なお願いね」

「ほお」

「私が今、作っている魔法の開発を手伝ってほしいの」

 

ソリテールは、それからクヴァールに自分の構想している魔法について語った。

 

「それはね――――」

 

クヴァールの、異形の顔が少し引きつっているように思える。

驚いているのだろうか。

思えば、ソリテールはクヴァールが感情を露わにするところを見たことがない。

 

「正気か?」

「ええ。これしかないと思ったの」

「……承諾した」

 

これであらかたの準備は整った。

 

「では、いきましょう。聖都シュトラールに」

 

それからソリテールは、クヴァールを引き連れて、グレーゼ森林を抜け出した。

 

 

 

 

ソリテールの中には、生まれついて強い好奇心がある。

それは生涯尽きることはない、ソリテールにとっての原始的な欲求なのだろう。

その好奇心は、人間という種族に注がれている。

 

人間の感情。慣習。文化。

もしこうしたら、人間はどう感じ、どんな言葉を発する?

もしこんな状況になったら、人間はどんな反応を見せる?

 

だが、1人の人間に興味を抱き、固執するなど初めての経験だった。

 

自分は魔族において、異常な行動を取っている。

人間一人に執着する魔族など、聞いたことがない。

自分は気が触れてしまったのか?

 

いや、至って正常だ。

 

ただ探求の範囲内が、狭まったのだろう。

人間という種族から、狩人という人間個人に、焦点が絞られただけにすぎない。

 

「そうだわ、私は人間を知りたいだけだもの」

 

自分の目的はなんだ?

狩人と会い、言葉を交わし、その心の内を知ることだ。

その果てに何を得たい?

人間という存在の、完全なる理解だ。

 

自分は、何も変わっていない。

決して、これからも自分の在り方は変わらない。

 

 

 

クヴァールを引き連れたソリテールは、ついに中央諸国の聖都シュトラール近郊までたどりつく。

自分の拠点である造船所を出てから、ちょうど1年の歳月が経過していた。

 

「クヴァール、隠れていて。少し聖都の中を見てくるから」

 

「うむ、気を付けてな」

 

ソリテールは、人目がつかないようにクヴァールを近くの洞窟に潜伏させる。

一応、幻惑魔法や結界を張って、中に人間が入ってこないようにしておく。

 

それからソリテールは、これまでのように人間の姿に扮して、都市の内部に侵入する。

 

「探すのに手間がかかりそうね。全部破壊して、人間を殺して回ろうかしら?」

 

聖都は、中欧諸国最大の都市だ。

狩人の住処を探すのには、骨が折れそうである。

破壊行為をしまくり騒ぎを起こせば、狩人が自分の前に現れてくれるかもしれない。

 

「だめね、それじゃあ、話し合ってくれそうもないわ」

 

ソリテールとしては、まず接触して、会話を試みる。

それが不可能だった場合として、クヴァールと連携して、戦闘不能に追いやり、捕まえる。

そういうプランのつもりである。

 

数日かけて、ソリテールは狩人の居場所を探した。

 

「ああ、狩人さんね? たしかハイター様の護衛で雇われている戦士の方でしょ」

 

「どこにいるのか知っているの?」

 

「あの方は、ハイター様の屋敷に滞在していますよ。時々、祭事でハイター様がこちらに来るとき、同行されますね」

 

……ハイター。

 

その人物をソリテールは、一度目にしたことがある。

かつてソリテールは、北部高原キーノ峠で勇者一行と接敵したことがある。

姿を隠していたので、勇者一行にこちらの素顔を知られなかったが、ソリテールは彼らの容姿をしっかり覚えている。

 

「ハイターの屋敷はどこなの?」

 

「聖都を出て、すぐのところですよ」

 

「どうもありがとう」

 

ソリテールは聖都を出て、ハイターの屋敷へ向かった。

 

 

 

 

「見つけた」

 

その一言が、思考よりも先に、ソリテールの口からこぼれ落ちた。

 

 

感知されないように魔力を遮断しつつ、草むらに身を隠しながら、ソリテールは、ハイターの屋敷まで近づく。

屋敷の前まで来たソリテールは、ある人物の姿を見かける。

 

狩人だ。

間違いない。忘れるわけがない。

あの顔も、姿も、声も、一度だって考えない時間はなかった。

 

「やっと、会えた」

 

じっくりと、狩人の姿を目に焼きつける。

気のせいか、彼はまるで、この世界では存在しない異物のように感じる。

自分が興味が引かれたのは、彼が纏う空気も要因の一つなのだろう。

 

「教えて」

 

どうしてあの時、見逃したの? 

君の本当の名前は?

君はなにが好き? なにをするのが好き? 好きな食べ物は? どんな魔法が好き?

 

ソリテールは、今すぐ草むらから飛び出して、狩人の元へ近寄ろうとする。

だが寸前で、その衝動を抑えこんで、どうにか立ち止まる。

 

「葬送の……フリーレン」

 

狩人のすぐそばに、見知った白髪のエルフがいる。

あれは人類の英雄であり、歴史上最も魔族を葬った魔法使いだ。

 

「だめね、今飛び出せば、フリーレンが攻撃してくるわ」

 

そうなれば、狩人と接触することはできない。

ソリテールがその場でとどまっていると、狩人とフリーレンが屋敷の中へ入っていく。

屋敷に取り付けられた窓から、室内にいる彼らの姿が見える。

 

ソリテールは、草むらからそっと顔を出し、熱心に狩人を観察しつづけた。

 

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