【特別短編集】魔女と毒殺文芸部 Curse.Ex 

記載内容
①・孤紺糖財の失態【著者書き下ろし】

あらすじ①:
MF文庫Jより発売中の『魔女と毒殺文芸部』に登場するヒロイン、孤紺糖財の誕生日記念ショートストーリーです。

本編未読の方でも楽しめる内容となっております。

※通常、他者の著作物の二次創作は禁止ですが、私は『原作者本人』であり、出版社(権利者)の許諾を得ています。なんだこのハイパーレアケースは!!

商業作家が無料でSSを公開してるとは何事だ!!
と思った方は走って駆け付けてください。

かわいいヒロインたちが、あなたを待っていますよ。

『魔女と毒殺文芸部』
一巻(Amazon)はこちらから。
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孤紺糖財の失態

 

 ■

 

 2月19日・バレンタインから五日後。当然のように木曜日、その日は『特別記念日』でも『休日』でもない。高校三年生なら『自主登校期間』でお休みなのですが、残念なことに私たちは高校一年生。

 

 2月19日が私の誕生日である、ということを除けば、何の変哲もない一日ですとも、ええ。

 

 申し遅れました。私は、孤紺糖財(ここんとうざい)と言います。ふふ、珍妙な名でしょう?

『古今東西?』とよく聞き返されます。実際、そのイントネーションで合っているのが腹正しいです。

 いえ、両親はしっかり考えたうえで私の名前を付けたんですよ?

 

【砂『糖』のように甘い、かけがえのない『財』産だから】

 

 ――糖財(とうざい)。不思議な名前ですよね。一般的な名前ではない。

 それは重々両親も承知で、ちゃんと他にもいろいろと候補はあったみたいです。

『愛理』とか『恋詩(こいし)』だとか。

 でも、他の案を全て跳ねのけて、私は『糖財』と名付けられました。

 

 孤紺糖財(ここんとうざい)。ふふ、素敵な響きでしょう?

 是非・皆様方にはココンと呼んでもらえれば幸いです。

 

 ……ところで、そろそろ困惑されていることでしょう。これはいったい何なのか。

 ええと、説明しますね。皆様は今、私の文章を読んでいますよね?

 

 これは、私たちが今から築いていく歴史そのものです。

 私たちは『命鏡学園』の一年生で文芸部に所属している、文芸部員です。

 

 ――いえ、これをあなたが読んでいるころには、二年生、つまり先輩になっているかもしれません。気軽に『ココン先輩』と呼んでください。そうしたらジュースを奢ってくれます。アサギくんが。

 

『これ』は――そうですね。

 

 文芸部としての体裁を保つための試みというか、誕生日にあった出来事を・その日の終わりにまとめて書き出す、という。『誕生日日記』というやつです。部員は誕生日の日にこの日記を持ち帰り、眠る前などにその日・どんなことがあったかを書き出すことになっています。

 

 これを読んでいいのは、ちゃんと『誕生日日記』を書いた人だけです。たぶん私かアサギくんが説明すると思うので安心してください。すいません、私が色々と前提条件を理解しなければいけませんね。

 

 ええと、おそらくこれを読んでいるのは、おそらく、『誕生日日記』を書いたことのある文芸部員の方だと思います。あ、盗み見とかしたらわき腹をくすぐりますよ、アサギくんが。私はセクハラに加担するつもりはないので、彼にすべて押し付けます。ふふ、きっと、これを読んだあなたとは、仲良くなれるかもしれませんね?

 

 あなたが私をどこまで知っているのか知りませんが――ちょっと、悪い子なんですよ、私。評定平均10.0の女にしては意外でしょう?

(私たちの高校は進学校で、評定は10段階で評価されます。あなたは知っているかもしれませんが)

 

 ここだけの話にしてくださいね。性悪なんです、私。

 ふふふ、彼氏ができてから、さらに性格が悪くなったと思います。

 

 秘密にしているので言わないでくださいね?(言ったら私がちゃんと怒ります)

 私はアサギくんと、『浅葱虎徹(あさぎこてつ)』くんと交際関係にあります。

 

 えぇ、冬休みでしっかりと仕留めてやりましたよ。

 ふふふ、中々手こずりましたが……まぁ、力押しでなんとか。

 

 ……すみません、私はあなたがどこまで、私のことを知っているのか知りません。

 

 あなたにとっては既知・周知の出来事だとしても、執筆当時(2026/2/19)の私は、あなたが私について何も知らないという前提で書きますからね。

 

 あるいは、未知・秘匿されている出来事なのかもしれません。

 ええと、でしたら、ご内密にお願いします……。今書いていて恥ずかしくなりました消しちゃいたい。

 でも『消さずにその時の感情をリアルに描く』……私小説の一種なのです、これは。だから、ええ、嘘はつけないし、消せない。この文章の中は、『→』のように一定の方向に流れが決まっているのです。推敲は許されません。リアル、です。

 

 本当に、私と彼は付き合っています。

 ああ、書いていて耳が赤くなっています。

 

 彼に後ろから笑われているんです!

 

 私の背後には虎徹くんがいます……だ、だって誕生日ですし?

 彼氏を家に招いて家族全員に紹介するのは自然な流れですよね??

 

 彼はお姉ちゃんと対面して胃をキリキリと痛めていましたが、まぁ、私の彼氏となるからには、乗り越えなければいけない試練ですよ、ふふ。

 

 まだ見てる。もう、虎徹くん。

 

 バカ。馬鹿。ばーか。ばーーか。

 

 これ以上見続けるつもりなら、もっと悪口言っちゃいますけど、どうしま

 

 ■

 

「う、後ろから抱きしめてくるのはズルいです」

「何がどうズルいんだ」

「どっ、ドキドキします。離れてください」

「本当にかわいいな、お前」

「……っ、あなたが私を選んだんですからね⁉ 責任は取って下さ――」

 

 ええと、このことをさすがに文章に残すのはなしにしましょう。

 わ、私の生意気な口を、私の嫌ではない、合意の伴った、愛情で防がれた、というだけ。

 

「責任は取る」

「わかってますよ……」

 

 そういう人ですよね……だから付き合ったんですし。

 えぇっと、誕生日日記――を書く前に!

 

 

「こ、今度は邪魔しないでくださいよ! 悪口はもう書きませんから!!」

 

 

 わかったよ、と彼は反抗期の娘に手を焼く父親のように笑いました。

 ……私が子供みたいじゃないですか。違います、もう立派なレディですから!

 

 というか、あなたが私をレディにしたんでしょう?

 

 文芸部での合宿は楽しかったし、クリスマスのイルミネーションはきれいでした。

 楽しかったし、きれいだったけれど、私はずっと横目であなたのことを見ていました。

 

 案外、私ってばストーカー気質かもしれませんね。

 

 私は合宿での線香花火を見ていたわけでもなければ、イルミネーションに目を奪われていたわけでもない。『きれいだな』と微笑む横顔が好きでした。何気ない出来事で、子供のように瞳を輝かせる、無邪気なところが好きです。……これ以上は恋文ですね。読みたいんですか、この変態。

 

 変態に邪魔をされなかったので続きを書きます。彼は確かに私のおっぱいが好きなことだけ

 あっ

 消したい

 

 ちょ。違います。違います。変態は変態という話です。

 変態変態変態!

 ダメですこれ、性的に露骨なコンテンツとして怒られます。

 

 この程度じゃ怒られないってなんですかあなたは。運営か何かですか?

 リアルファイトしますか?

 私が護身術を習っているのは知っているでしょう?

 

 さっき軽くしたばかりでしょう。二回戦をしたいならどうぞご自由――

 

 ■

 

「何を書いてるんですか私っ!!」

 

 アホ、間抜け、頓珍漢。

 何を言われても反論できません。恋が成就できたからって浮かれてます。恋敵に勝ったからって浮かれてます。馬鹿なんです私。馬鹿ですバカバカバカバカ!

 

「どうした、書かないのか?」

「ぶっっっ飛ばしますよ……!」

 虎徹くんはせめてもの敵愾心を鼻で笑いました。

 

「――二回戦をしたいならどうぞご自由に」

「最低な引用ですねッ……!」

「どうする?」

 

 彼はにやりと笑っています。最低です。最低な男を好きになってしまいました、私は。

 最低で、純真で、子供みたいな人です。それが私の好きな人です。私のことを大切にしてくれる人です。私のことだけを、抱きしめてくれる人です。

 

 文章には余白が大事、という話を聞きました。

 だから、これ以上のことは皆様の想像にお任せしますね。

 

 

 ――では、皆様、いい一日を。

 

 

 

 

 誕生日日記.vol1

 執筆者:孤紺糖財

 記載日:2026/02/19/(Thu.)

 題名:失態

 

 

 ■

 

 

「二度とあんな失態は晒しませんからね……」

 

 そういって私は、『誕生日日記』を文芸部の戸棚にしまいました。

 次は、誕生日順的に加恋ちゃんと花梨さんですね。

 

 私の失態を知るんですから、それ相応の失態を犯してくれないと困ります。

 

 

 ――その日を、楽しみにしておきましょうか。

 

 

 

 

 

 

 


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