平行線機能不全   作:キユ

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第二章「サマーバケーション⑤」

10

 

 空はどこまでも青く晴れ渡り、太陽は眩しく輝いている。

 

「きゃー! はじめちゃん! 見て見て、すっごくきれいな砂浜ぁー!」

 

 無邪気な声を上げて、美雪ははしゃいだ様子で早く行こうとばかりにこちらの手を引っ張った。ハジメは彼女に手を引かれるまま道路を横切り、目の前の白い砂浜に小走りで向かう。

 ここは那覇空港からほど近いところにある人工のビーチだ。

 この旅行も今日が最終日。飛行機の搭乗時間などを考えた結果、ハジメたちは下手にウロウロと観光するのはやめにして、空港へのアクセスもいいこのビーチで時間を潰すことにした。人工ビーチというだけあって、そばには整備された大きな駐車場や清潔なシャワー室やロッカールームまで完備されている。

 サンダル越しに踏みしめた砂浜はゴミ一つ落ちていない。柔らかな白さを持つ砂はとても細かくて、これなら裸足で歩いても少しも痛くなさそうだった。

 ところどころに白波の立つ青く透き通った海はとても人工物だとは思えない。

 美雪は打ち寄せる穏やかな波が足元にかかるか、かからないかという場所で立ち止まり、ちらりとハジメを見た。その瞳はいたずらっぽく輝き、口の端には隠し切れない笑みが浮かんでいる。美雪がしたいことなんて、言葉にされなくてもわかった。

 ハジメは同じように二ッと笑い返し、了承の代わりに彼女と繋いでいた手に力を込める。

 

「「――せぇーの!」」

 

 かけ声はぴったりとそろった。

 ふたりして手を繋いだままそこから数歩駆け出し、青い海へとダイブする。当然たいした深さはないので、ばちゃんっと海水に飛び込んだところでそのまま潜っていけるわけではない。海水の冷たさを感じたときにはもう手や膝が底についていた。

 四つん這いになってぷはっと海面から顔を出す。灼けて熱を持った肌が、海水でほどよく冷やされて気持ちがいい。

 

「金田一君!」

 

 かけられた声に後ろを振り返れば、なにかが自分の方に飛んでくる。それは絶妙なコントロールで、まるで輪投げのようにスポンとハジメの頭をその中央に収めた。――浮き輪だ。

 ぞんざいな扱いに「俺は的棒じゃねぇぞ」と憤慨しつつ、ハジメは立ち上がって身体を輪の中心に入れ、両手で浮き輪を持ちながら高遠へと文句をぶつける。

 

「どうせなら普通の浮き輪じゃなくてシャチとか借りてこいよ」

「シャチ?」

「もうっ! わがまま言わないの!」

「痛ぇ!」

「ほら、それ持って沖に行きましょ。高遠さん、ありがとうございます!」

 

 叩かれた頭をさすりつつ、美雪に背を押されて沖へと進む。少しして足がつかない深さになれば、ハジメは浮き輪に掴まってプカプカ浮いているだけでよかった。

 

「おー、楽ちん楽ちん」

「もー。ちょっとは自分でも進みなさいよ」

 

 進むのを美雪に任せ、ハジメは浮き輪に頭を預けるように空を見上げる。燦々と降り注ぐ日差しに目を閉じれば、瞼の裏に浮かぶのは昨日訪れた『紺碧島』の姿だった。

 水平線の彼方、蜃気楼のような青味を帯びた島影。

 

(……ああ、違う)

 

 これは一回目の記憶だ。

 悲しみと後悔に染まる深い青に呑まれそうになり、ハジメは小さく頭を振ってその幻影を追い払う。

 実際いまの紺碧島には南国のリゾート風のおしゃれな木製の桟橋も、極彩色の花や果実もない。それでも、あのときは見ることのできなかった本物の『手つかずの自然』なままの紺碧島は、水城龍之臣や龍壱がその手を罪に染めてまで守りたいと思ったのもうなずける美しさだった。

 那国守彦は三年ほど前からスポンサーを集い、国立大学や関係機関と協力して、歴史的発見である海底遺跡『ディープブルー』の遺跡発掘事業に乗り出している。

 メディアなどにはまだそれほど大きく取り上げられていないので、観光客より発掘事業の関係者が多いような状態だが、島内はロマンを追い求める人々の熱気で不思議と活気づいていた。

 あと数年もすれば世界中から観光客が集まるようになるのだろうか。

 ハジメには海底にあるあの遺跡が、本当に数千年も前の古代文明のものなのかはわからないけれど、昨日見た島の自然がこれから先もずっと残っていけばいいと思う。

 

「ねぇ、はじめちゃん」

「ンあ?」

「そろそろ交代!」

「あー、はいはい」

 

 ぱちりと目を開け、美雪に浮き輪を譲るために海のなかへと潜る。遊泳用に造られているからサンゴや岩などはなく、海のなかはきれいだけれどどこか素っ気ない。

 糸満の海で見た魚の群れなどはさすがにここでは見られないな、とハジメは一度下まで潜り海底を蹴ってから勢いよく海面に顔を出した。

 

「――ぷはっ!」

「きゃっ! もー、びっくりした! なかなか上がってこないから溺れたのかと思ったじゃない」

 

 べつに驚かそうとしたわけではなかったので、言葉通り心配そうな顔をしている美雪にごめん、ごめんと素直に謝る。

 

「あーあ、もうお昼食べたら帰らなきゃいけないのかぁ」

「楽しかった?」

「うん。ホテルも素敵だったし、美味しいものいっぱい食べれたし、エステもすっごく気持ちよかった。はじめちゃんも恥ずかしがらず受ければよかったのに」

 

 水難事故があったあの日。

 ホテルでの食事とスパを終えたあと、エステの施術を待つ間に高遠から連絡が来たので、ハジメはこれ幸いと美雪を残して草凪のいる病院に向かった。あんな紐みたいな紙のパンツだけを履いた状態で、同性とはいえ見知らぬ相手に身体中を触られるなどどんな羞恥プレイなのか。世の女性がエステを好む理由がハジメにはちっともわからない。

 

「お肌だってスベスベになったんだから」

 

 にゅっと目の前に伸ばされた腕を撫でる。毎日風呂上がりにボディクリームを塗っているらしい幼馴染の肌は滑らかで触ると気持ちがいい。

 

「いつもと一緒じゃね?」

「そんなことないわよ。エステのお姉さんも、肌が引き締まったって言ってくれたし」

 

 そりゃ、仕事だからだよ。

 口をついて出そうになった本音は、海のなかでつぶやくことでブクブクと泡にして流した。男のときはできなかったこの気遣いは、果たしてハジメにとって成長なのか否か。

 まあ、きれいになったでしょと笑う美雪の喜びに水を差すこともあるまい。

 ふたりでプカプカと海を漂いながら、この旅行での思い出を話す。

 昨日は紺碧島以外にも沖縄北部や中部を見て回った。美ら海水族館に行ったり、アメリカンビレッジでグルメやショッピングを楽しんだり、残波岬の灯台から水平線に沈む夕日を鑑賞したり。正直、ハジメ自身もびっくりするほど、旅行らしい旅行になったと思う。……それが誰のおかげかなんて、美雪に指摘されなくたってわかってはいるけれど。

 

(楽しかった、って礼を言うのは……なんか、違う気がすんだよなぁ)

 

 高遠にとってこの旅行は、ハジメが望むからしている『協力』という意味しかないわけで。

 悲劇を回避するための協力についてはなんの衒いもなく礼が言える。あの男がたいして興味のない、起こるかもしれない悲劇の芽を摘むのは自分のためなのだと、ハジメはもう自覚している。

 ただ、この旅行をハジメが楽しめるようにと高遠が意図して行動したのかはわからない。そんな気持ちは微塵も持っていない可能性だってある。

 楽しかったと伝えて、あの男から美雪みたいに「自分も楽しかった」と答えが返ってくるわけがないのだ。そう、自分は高遠がこの楽しさを共有していないと知るのが嫌なのかもしれない。

 協力者で、美雪との旅行の保護者でしかないはずの男にも、楽しんでいてほしいと思っている自分がいる。本人に伝えようものなら、またお節介だと疎ましげな顔をされて終わるのは火を見るよりも明らかで、ハジメはそれが容易に想像できるだけに悔しかった。

 

 ミス研の合宿で、ただの日常をつまらないと言った男の瞳の冷たさを覚えている。

 

 高遠は自分がつまらないと切って捨てた日常の尊さにいつ気づくのだろうか。それとも……冷え切った心のまま、彼はずっと()()()側に立ち続けるのか? ハジメが決して許せないその場所に?

 

「……んなこと、許すかよ」

 

 小さくこぼれた言葉はそれでも強い決意に満ちていた。

 

 

 

11

 

 パラソルの下、高遠はキャッキャッと海を楽しむ少女たちをなにをするでもなく眺めていた。

 この旅行の目的はおおむね果たせたと言ってもいい。草凪蓮の水難事故についてもそうだが、件の紺碧島にハジメをうまく連れ出せたことも高遠的には大きな成果だった。

 あの子どもは意識して、必要以上に一回目の事件関係者と会わないようにしている。それがいわゆる彼女なりのけじめであることは察していたが、じつに馬鹿馬鹿しい意味のない自制だと思う。

 井沢研太郎も、常葉瑠璃子も、時田若葉も……会わないから、いつまでも一回目の彼らのことを引きずるのだと言ってしまいたい。たとえ悲劇を回避してもハジメのなかからそれらの記憶がなくなるわけではないが、いまの彼らを知ることである種の気持ちの整理はできる。区切りがつけば、いずれ過去は現在に置き換わる。

 高遠の望みは一回目の亡霊たちを早々に少女の心から取り除くこと。

 彼女の心に、その一番柔らかく深い場所に、消えない傷として残るのは自分だけでいい。いまはそのために必要な準備期間だ。

 

 もう、ハジメは紺碧島に愚かな復讐者の影を見ることはないだろう。

 

 

 

 暑さに辟易しながらもいくつかの雑事を片付けていると、沖の方で泳いでいたハジメがひとりでこちらに戻ってくるのが見えた。浮き輪は美雪に譲ったのか手ぶらだ。

 ひょっとしたら浮き輪を渡したときに言っていた『シャチ』がほしくなったのかもしれない。調べたら海洋生物型のフロート遊具は比較的一般的なもののようだった。高遠はあの浮き輪を遊具としてではなく、事故防止の安全策として渡したのだが。

 

(ああ、それともお腹が空いたんですかね?)

 

 さすがの高遠もこんな炎天下の浜辺では、彼女の空腹を紛らわす甘味のストックは用意していない。管理棟の横に売店や食べ物の屋台があるのでそこで調達するかと、ハジメがこちらまで来るのを待っていれば、少女はなにやら高遠の視線先でほかの遊泳客に呼び止められていた。

 彼女と同じか、一つ二つ年上と思しき少年ふたり。

 暴力的な気配はないがからまれているのだろうか。振り返る形で少年たちと対峙しているハジメの表情は見えないが、その背中は至って平静で高遠の手助けがいる状況ではなさそうだった。だから、べつにこのままここでハジメを待っていてもよかったのだけれど。

 小さく波立つ感情に従い腰を上げる。

 ハジメへと近づけば、その少年たちの目的がナンパであることは彼らの会話の内容が聞こえずともわかった。

 金田一一の自身の性別に対する自覚はかなり乏しい。

 彼女の立ち振る舞いは生来の気質によるものなので仕方がないとしても、本来なら女性が持っているべき異性への警戒心のなさは、男性だったときの記憶による弊害だろう。ハジメは無意識に自分がそういった対象にはならないと思っている。

 そんなハジメが、ナンパされたことにどんな反応をするか気になった。そしてそれと同じくらい、この状況を不愉快に感じている自分がいる。

 

(嫉妬、など……私もずいぶんとくだらない人間になったものだ)

 

 以前、ハジメとともに間久部青次の個展で明智を見かけたときに感じた激情は、つまりはそういうことなのだと理解している。この想いは自覚してからもこうして高遠を蝕んでくるので厄介だ。

 自分を望まぬ形に変えられてしまうのは、やはりどうにも腹立たしかった。

 

「だから、穴場なスポットがあるんだって」

「友だちと来てるんでしょ? 俺らもふたりだし、ちょーどイイじゃん。一緒に遊ぼうよ」

「いや、そういうのは間に合ってるっていうか……」

 

 芳しくない返答に焦れたのか、少年のひとりがハジメに手を伸ばす。

 

「――はじめさん」

 

 気づけば、その手がハジメの肌に触れる前に声をかけていた。相手の意図を察しているのかいないのか、呑気に突っ立ている少女の腰を掴み抱き寄せる。

 

「高遠っ!?」

「どうかしました?」

 

 あえて少年たちではなくハジメに問いかけた。驚きでまん丸に見開かれた目が真っ直ぐに高遠を見る。腰を抱く手に力を込め、覗き込むようにわざとらしくにっこりと笑ってやれば、ハジメはその口の端を小さく引き攣らせた。余計なことは言うなという意図が伝わったようでなにより。

 

「ええっと……ひょっとして、カレシさん?」

 

 その困惑ぎみの声にハジメは一瞬ひどく物言いたげな顔をしたが、不貞腐れたようにそっぽを向いただけで否定の言葉は口にしなかった。

 この子どもは本来この手の嘘に抵抗があるタイプではない。

 同じシチュエーションでも、きっと相手が高遠でなければ適当に話を合わせただろう。こういう態度は、それだけ特別だと示されているようで悪くない。

 

「この子になにか用でも?」

「あー、いや、なんでもないっス……」

 

 少年たちは高遠とハジメを見比べ、少々気まずそうな顔つきでそそくさとアクティビティエリアの方に歩いていった。

 

「なんだよ、いまの」

 

 彼らの姿が声が届かないところまで離れてから、ハジメは腰を掴んでいる高遠の手をペシリと叩き落し、こちらを睨みつけてくる。よく目にするふくれっつらだが、その瞳に浮かんでいる感情は怒りよりも訝しむような色が強い。

 少女にとって高遠の対応はそれだけ予想外だったわけだ。

 

「なに、とは?」

「……もっとほかに言い訳があっただろ」

「一番無難なものを選んだつもりなんですが、お気に召しませんでしたか? まあ、相手が警察官なら少々リスキーな選択肢ではありましたね」

 

 高遠とハジメはどうやっても同い年には見えない。

 ハジメも最近になってようやくまともな成長期に突入したらしく、年齢を疑われるほどの幼さはなくなってきたが、成人男性である高遠が異性として連れ歩く相手としては子どもすぎる。

 

「そのうち未成年淫行で捕まっても知らねえぞ」

「おや、それは困りますね。そのときは君が冤罪だと証明してください。――私たちは清い関係だと」

「きよ……っ、ゴホッゴホッ」

 

 こちらの言葉に驚いてむせ込む少女を愉快な気持ちで眺める。

 彼女は冗談のつもりでその罪状を口にしたのだろうが、性行為という部分が当てはまらないだけで、あながちそれが間違っていないと知ったらどんな顔をするのか。

 怒るのか、嫌がるのか……想像するとじつに楽しい。しかし、いまのハジメの様子からすると、そもそもそのときになっても信じない気もした。それはそれで、思い知らせてやる楽しみがあっていいかもしれない。

 

「つーか、あんたって人にそういう勘違いされるの嫌なんだと思ってた」

 

 息が整ったらしい子どもがつぶやくように落とした言葉は、高遠の心理をよく理解したものだった。有象無象に訳知り顔で彼女との関係を語られるなど虫唾が走る。

 余人に自分たちの関係が理解できるわけがない。理解されたくない。

 だが、他人はしょせん他人でしかないのも事実だ。

 

「他人からどう認識されていたって、べつに構いませんよ。僕たちの関係なんて、僕らが……君が、知っていたらそれでいいんです」

「平行線だって……?」

 

 苦しさの滲むその問いかけには答えなかった。

 高遠遙一はもう金田一一の平行線ではいられない。たとえ地獄の傀儡師に戻ったとしても、その在りようは一回目とは決定的なまでに変わってしまっている。

 それでもハジメにだけは、高遠が自身の平行線であることを覚えていてほしかった。高遠が手放した『地獄の傀儡師』という存在を、いつまでも痛みとともに抱えていてほしい。

 折に触れて、彼女のなかに自分がつけた傷が生々しく残っているのを見るのが好きだった。それはなによりもたしかな、ハジメのなかにある高遠の居場所。ほかの誰も入ることのできない特別な場所。

 もしも、それだけで満足することができたのなら――。

 

(平行線でもよかったんですけどね)

 

 この二回目の人生で、どうやら自分は己がそうと自覚するよりも欲深いらしいと知ってしまった。そして、高遠にそれを気づかせたのはほかならぬハジメである。

 まだ想いを伝えるつもりはない。

 彼女に差し出した手のひらの上になにが載っているのか。それを明らかにするのは魔法のカウントが終わり、視界を遮っていたベールが外されたそのときだ。

 あっさりと気持ちを切り替えて、小腹を満たさせろと要求してくる少女の隣を歩く。

 

「そういえば、草凪蓮から連絡が来ていましたよ」

「……なんて?」

 

 彼が出した答えを告げれば、ハジメはほっとしたような柔らかな笑みを浮かべた。これでまた一つ少女の憂いが消えたことに、高遠の表情も自然と穏やかなものになる。

 

「よかったですね」

「…………」

「なんです? なにか不満なんですか?」

「いや、あんたも……この旅行に来てよかったって思うんかなってさ」

「目的は十全に果たせましたし、君が旅行自体をそれなりに楽しく過ごせたのなら、回りくどい方法を取った甲斐はあったと思いますが」

 

 ハジメはなぜかなんとも言えない顔でこちらを見た。開きかけてから躊躇ったように震え、言葉を発することなく閉じられた唇から、どうしてか目が離せない。

 高遠の視線に気づいたハジメが真っ直ぐに唇をつぐむ。その仕草で、彼女が自分の言葉に動揺したのだとわかった。珍しい相手の反応に好奇心がくすぐられる。

 

「金田一君……」

「バーカ!」

「は?」

「バーカ! バーカ! 高遠のバーーカ!!」

 

 突然の罵倒はこちらの意表を突くにはぴったりで。

 わけがわからず固まる高遠にくるりと背を向け、ハジメは管理棟の方へと駆けていく。彼女が背を向ける前、一瞬だけ見えたその顔はどこか笑っているように感じられた。

 それはつまり、先ほどの彼女の動揺は自身の喜びを隠そうとしたことに起因するものだということだろう。

 

「ならば、後学のためにも理由を教えていただかなくては」

 

 さて、どうやって口を割らせようか。

 オリエンタル号のときはなんだかんだと有耶無耶にされてしまったので、今回は見逃してやるつもりはない。

 足取りも軽く少女のあとを追う高遠の顔にも楽しげな笑みが浮かんでいた。

 

 

 

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