なのでかなりなので中途半端な所で終了すると思います。
続編を望まれても気分次第で書くかどうか怪しいかと。
今回ははじめてAIと協力して文章を作成させてみました。
前半部分全て直筆ですが後半はAIの力を借りないと完成しなかったと思います。
どうしても長文になりがち、遅筆の自分には大変ありがたいです。
Backroomsに関してはにわかであり、設定や状況などは全て独自の物となっております。
「......なんだ、此処は?」
浅倉威は困惑していた。
自分はつい先程まで街中を蔓延る警官隊から逃走していた筈。
人気の無い裏路地を通り、何処かのビル同士の隙間に入った次の瞬間。
踏み込んだ筈の地面が透けた感覚を覚え落下。
目覚めたらここに居た。
脱獄犯である以上、時計も携帯も普段から持ち合わせてないので時間は感覚で理解するしかないが、
ここへ来て少なからず2時間以上は歩いている。
にも関わらず見える景色は古くて湿ったカーペット、単調な黄色の壁、ジジジと言う貸すかなハム音を発する古い蛍光灯の数々のみ。
どう見ても人工物の室内にも関わらず、人間どころか虫一匹も見掛けない。
自分の体に変化が無い事から、ミラーワールドではないのは確かだろう。
そもそも鏡どころかまともな反射物も見当たらない。
街中にこんな施設が有るなんて話は聞いた事も無い。
はじめこそ警察の追手が無い状況に感謝した。
が、こうも単調な光景が長時間続くのは流石に退屈過ぎる。
「なんで誰も居ない......オォイ! 誰か出て来ぉい!」
とうとう耐え切れずその場で怒鳴り散らす浅倉。
だが、これは決して孤独から救いを求める叫びではない。
「誰でも良いから殴らせろ.......
それが無理なら....誰か俺を殴れえぇ!! うううおおおおおおおおおあああああああああっっ!!!!」
イラ立ちが許容値を超え、激情しながら壁を蹴り、何度も殴った後、頭を数回壁に打ち付ける。
もし周囲に誰か居てもこんな危険人物に近付く者は警官ぐらいだろうが、この奇行は彼の禁断症状なのだ。
幼い頃から誰かを殴るか殴られるかしないと落ち着かない体質だった浅倉。
殴り相手が居ない時はこうして自傷行為に走る。監獄生活中は何時もこうして少しでも気を紛らそうとしていた。
警察から逃げるのも捕まるのが怖いなどと言う小物臭い理由は微塵も無く、拘束される事で自分の苛立ちのはけ口を失う事への拒否反応である。
一番腹立たしいのは、鏡どころか反射物すら一向に見当たらずライダーとして戦う事も出来ない事だ。カードデッキを所持してても相手が居ないのでは意味が無い。
只管殴りつけた衝撃で拳に血が滲もうとも、浅倉は自分を甚振る事を止めない。
そう願っても、状況は変わらない。
最後に強く自分の頭を打ち付けると、意識が朦朧とし地面に倒れ込む。
少しは頭が冷えたのか、倒れたまま冷静に見回す。
相変わらず変り映えしない黄色の壁、天井、蛍光灯の数々。
歩くのも疲れたし、この場で眠ってしまおうか?
そんな考えが過った時、数10メートル先に曲がり角が見えた。
苛立ちも相まって同じ色の壁ばかりだったので直ぐに気付かなかった。
「………」
どうせ変わらない景色だろうが、この際少しの変化でも頼りにするしかない。
暫し倒れた後、浅倉は気だるそうに立ち上がり曲がり角まで再び歩み始めた。
「あぁ??……」
曲がり角に差し掛かると同時に
これまでとは更に奇妙な光景が広がり眉をひそめる。
壁、床、天井は今までと変わらない通路だが、
左の壁には大人2、3人が座れそうな大きさのソファーが置かれ、隣には本棚が置かれ如何にもアンティークな分厚い本がずらりと並んでいる。
右の壁には一般家庭の浴槽で使われてるぐらいの大きさの鏡が掛けられている。
そして中央の床には洋式便器が一つ。
周囲を遮断する壁など一切無く、
トイレットペーパーの類は無く、廊下のど真ん中に洋式便器がポツンと設置されてるのだ。
どんな神経をしていればこんな意味不明なレイアウトを作成するのだろうか?
狂人な浅倉でさえ流石に眉を顰める光景だ。
何か情報が有るかもしれない。取り合えず本棚から本を一冊取り出してみる。
しかし辞書ほど分厚い本は全ページ何も書かれていなかった。ただただ真っ白なページが並ぶだけ。
他の本も全て同じく何も書かれていない。
ますます意味が解らないので、浅倉は考えるのを辞めソファーに豪快に寝転んだ。
「まあ良い。ひと眠りするか....」
やっと一息付けそうな場所を見つけたのだ。
吹き曝しの便器は監獄を彷彿させて気に入らないが、この祭贅沢は言えない。
ここに来るまでかなり体力を使った。意味不明な状況ではあるが流石に休みたい気持ちが強い。
浅倉は周囲を警戒しつつ、ポケット内のカードデッキを握りながら目を閉じるのだった。
それから暫くして.....
恐らく1時間以上は眠っただろうか?
顔の周囲を飛び交う小さな雑音により浅倉は目を覚ます。
やたらしつこく顔に纏わり付こうと飛び交う虫。
浅倉は不機嫌さを露わにしながらそのを虫を殴り、壁に叩きつける。
手の甲を確認すると一匹のハエが潰れていた。
なんだ、ただの蠅か。
そう思い再び眠りに付こうとする浅倉。
しかし、ここで違和感を覚え閉じた目を開く。
「........ハエ?」
つい先程まで人間どころか生物の欠片すら見当たらなかった。
なのに、ここへ来て突如現れる蠅。
何か不信に思っていると再び別のハエが一匹、浅倉の元へ飛んできた。
鬱陶し気に振り払い体を起こす。
どうも気になる。
このハエは何処から来たのか?
室内で羽化しただけかもしれないが、何処かの隙間から侵入した可能性も有る。
外から侵入したとすれば、この謎に広い空間の出口が有るとも考えきれる。
「行ってみるか....」
このままじっとしてても何も変わらないし、何の情報も得られない。
浅倉はソファーから立ち上がり、気だるそうにハエが飛んできた方角を目指し進み始めた。
10分ほど歩いただろうか。
相変わらず黄色の壁が続いているが、見える景色に少しづつ変化が表れた。
先に進むにつれて、飛び交うハエの数が徐々に増えているのだ。
「ん?」
途中、靴に何かが当たり足元を見ると、銀メッキのオイルライターが一つ転がっていた。
拾い上げ試しに火をつけてみる。まだ十分使えそうだった。
不信に思いながらもライターを懐に仕舞い歩みを再開。
やがて更なる変化を見つけ、足を止める。
これまでと同じく長いカーペット上の床の中央部に染み込む、得体の知れない黒いシミが確認出来る。
シミは通路の先まで長く先まで続いており、どう見ても何かに引きずられた跡だった。
「........................」
浅倉は興味本位でその引きずられた跡を辿り足を進める。
歩けば歩く程、シミは濃くなっていき、周囲のハエの数も増えて来た。
次第に鼻を突くような異臭が漂い始める。
やがてシミは途中でカーブし、何かが細い通路へ入った跡があった。
通路へ近づこうとした途端、今までとは比べ物にならない程の異臭が浅倉の鼻を突く。
腐った肉の匂いを更に過剰にしたような、一度嗅ごう物なら吐き気を催すだろう匂いだが、
それでも浅倉は歩みを止めない。
異臭、周囲を飛び交うハエ、そして床の黒シミ。
ここまで情報が揃うなら見なくても解るが、それでも浅倉は好奇心を抑えきれず、シミの正体を確認せずには居られなかった。
通路は左程距離は無く、数メートル進んだ所で大きな個室の様な空間に出た。
そこで浅倉はついに見つけ出した。
黒いシミの根源を.......
故に、やっぱり、と言う気持ちと少し物珍し気な感情が混じった様に呟く。
「ほう.........コイツは....」
見つけたのは、壁に寄りかかった一人の遺体であった。
服装や体つきからして成人男性だろうが、かなり損傷しており腐敗臭が酷く、夥しい数のハエが止まっている。背中から寄りかかった背後の壁は大量の血痕がべたりと付着しておりドス黒い巨大なシミとなっている。
一番注目してしまうのが頭部だ。
顔まるごと巨大な針にでも串刺しにされたかのような、大きな風穴が開いている。
頭部の穴からは大量の蛆が湧いており、この遺体がハエの発生源であるのは確定だ。
常人の感覚なら発狂する程悍ましい光景だが、
既に何人も命を奪ってる浅倉にとって腐乱死体など驚くまでもない。
寧ろこれはこの空間と自分の状況を確認出来る貴重な情報源と思い、まじまじと遺体を観察する。
死体の状況からして、ある程度状況の推理は出来る。
恐らくこの男も、自分と同じように突然この空間に迷い込んだのだ。
よく見ると遺体のズボンのポケットに煙草の箱が入ってるのが確認出来る。
となると、先ほど拾ったライターはこの男の所持品と考えるのが有力だ。
ハエが卵から成虫になる期間は約2週間。
不敗するまで長期間放置されていると言う事は、やはりここには自分以外に人間は居ないのだろう。
最後に、ここからは一番重要な説。
傷口から考えるに、およそ人間の仕業とは思えない。
先程鏡を見かけたので、ミラーモンスターの仕業とも考えたが奴らが標的を食べ残すなど有り得ない。
つまり、
この場所にもミラーモンスターと同じく人間を惨殺する" 何か "が潜んでいる。
このままでは自分もこの男と同じ末路を辿る可能性が高い。
何もしなければ、の話だが。
以上の様な結論に至った時だった....
獣の咆哮の様な、低く異様な声が木魂してきた。
【――― oooooooo...............】
「!」
獣、と表現して良い物だろうか?まるでほの暗い地底から聞こえて来る様な。
少なからず人間でないのは間違い無いだろう。
その不気味な唸り声は、通路の先の先から聞こえて来る。
まだ十分距離は有りそうだが、気配と共に確実に此方へ近づいて来てるのが解った。
「.......っふ...」
声を聞いた途端、浅倉は回れ右をして来た道を駆け出した。
これまでの経験から直感した。
" あれ "は生身の人間で歯向かえる存在ではないと。
向かうは先ほどソファーが置かれてた場所。あそこには鏡も設置してあった。
だから戻るのだ。戦闘態勢を整える為に。
「ふ、ふはははっ!」
走ってる間、浅倉はずっと不敵な笑みを浮かべている。
表情に出ているのは恐怖では無く期待感のみ。
ようやく来た。
退屈が終わる瞬間が。
自分が求めていた非日常が。
この際人だろうが怪物だろうと構わない。
今まで我慢した退屈を払拭させろ。
先ほどのソファーの場所までたどり着いた。
足を止め後ろに向き直る浅倉。ポケットのカードデッキを握りしめる。
謎のうめき声は無機質な通路を児玉しながらみるみる近づいてくる。
やがて数百メートル先の曲がり角から" それ "は現れた。
それは一概には形容しがたい、メカニカルな外見のミラーモンスターとは全く毛職の違う、酷く悍ましく、気味の悪い生物だった。
簡単に表現するなら「黒い触手の化け物」とでも呼ぶか。
全身は只管黒、両手足と思わしき部位は無く、数えきれない数の触手を蜘蛛の手足の様に動かし、曲がり角から這い出てきた。
遠くから見ればまるで何百本も広がった黒い髪の毛の塊が蠢いてる様に見え、生理的嫌悪感を覚えさせる。
それが得体の知れない咆哮を轟かせながら、此方に近づいている。
この吐き気を催す様な光景を前に、浅倉は意気揚々とカードデッキを取り出す。
側の鏡にカードデッキが映りこんだ事から、腰にVバックルが巻かれ、ポーズを決めて叫ぶ。
「変身!」
デッキを装填し、仮面ライダー王蛇と姿を変える浅倉。
軽く首を回した後、王蛇はベノサーベルを装備し躊躇い無く怪物に向かっていった。
《SWORD VENT》
「あぁ~...........ハハ!」
王蛇はベノサーベルを手にすると、迷うことなく黒い触手の塊へと突っ込んでいく。
通路の奥から這い出てきた黒い影、無数の触手が蠢く異形が王蛇の姿を捉える。
途端に怪物は挨拶代わりとばかりに数本の触手を槍のように一斉に放つ。
「フンッ!」
王蛇は鼻で笑い手にしたベノサーベルを振るった。
火花が散り、肉を叩く音とは思えない金属的な衝撃が浅倉の腕に伝わる。
弾かれた触手がのたうち回りながら壁や床を叩き黄色いカーペットを無残に引き裂いていく。
「おいおい、それだけか?」
挑発するように首を鳴らす王蛇。
直後、怪物の動きに変化が見えた。
蠢く触手の先端がどす黒い光沢を帯びて鋭く尖り冷酷な鉄の色へと変貌したのだ。
「――シュルルッ!」
空気を切り裂く音と共に一本の触手針が王蛇の側頭部を狙って突き出された。
王蛇が僅かに頭を傾けた刹那、針は背後の壁を易々と貫通してしまう。
「……あァ?」
王蛇は自分のすぐ横に突き刺さったその「鉄の針」をまじまじと見つめた。
壁の奥深くまで潜り込み、コンクリートを砕いたその無機質な凶器。
それは先ほど見たあの腐乱死体の頭部に開いていた風穴と形状が一致していた。
「……なるほど。これでアイツを始末した訳か.....」
浅倉の脳裏にあの無残な死体が浮かぶ。
そして浅倉の内にあった「退屈」が更にどす黒い「歓喜」へと一気に反転した。
目の前の化け物はただの動く肉塊ではない。
確実に人間を「殺す」ための牙を持っているのだ。
「ハハ……いいぞ、もっと来いよ……!」
王蛇はベノサーベルの柄を強く握り直し切っ先を怪物に向けた。
死体という「結果」を見せた獲物に対し浅倉は最大級の敬意――
すなわち一方的な蹂躙をもって応えようとしていた。
「そうだ来い、もっと来い! この俺を楽しませろぉっ!!」
叫びと共に王蛇は自ら死の針の雨の中へと踏み込んだ。
何本もの触手が襲い掛かる中、王蛇は最小限の動きでそれを捌いていく。
だがその内の一本鞭のようにしなる太い触手が王蛇の左肩に叩きつけられた。
「うお!」
火花を散らし体制を崩して僅かに膝をつく王蛇。
まるで動きが止まったかのような一瞬の隙。
その好機を逃すまいと怪物は残ったすべての触手を一斉に鋭利な鉄の針へと変貌させ、容赦なく王蛇へと殺到させた。
先ほどの無残な死体を作り出した、必殺の一撃と言ったところだろうか。
しかし、それは王蛇の「誘い」だった。
仮面の奥で不敵な笑みを浮かべる浅倉。
王蛇は膝をついた体勢から瞬時に反応。
身体を低く屈ませながら、迫り来る針の嵐の僅かな隙間を潜り抜ける。
そして最も間近に迫っていた一本の触手針をベノサーベルの切っ先で正確に捉えた。
「オラぁっ!」
鋭い突きと共に、サーベルの刀身が金属化した触手の根元深くへと食い込む。
怪物は「ギイィィッ!」と悲鳴を上げる間もなく、王蛇はそのままサーベルを握る手に力を込め、無理やり触手を引きちぎる様に切断する。
金属が削り取られるような嫌な音と共に、切断された触手の一部が床に落ちる。
切断された断面からは血液と思わしき黒い粘液が流れ、黄色いカーペットに不気味なシミを作る。
「ハハ、どうしたぁ?....その程度か?」
王蛇は返り血ならぬ黒い体液を浴びながら、さらに高揚した笑みを浮かべた。
「GIYYYYYYYYYYYYY!!!!」
切断された触手の断面からどす黒い体液を撒き散らし、怪物は身をよじるようにして後退した。
この謎空間の静寂を切り裂くような、金属を擦り合わせたような悍ましい悲鳴。
それは強者が獲物を追い詰める時の咆哮ではなく、明確な「生存本能」が引き起こした敗北の叫びだった。
怪物は無数に残った触手をムカデの足のように動かし、驚くべき速度で通路の奥へと逃走を始める。壁や天井を縦横無尽に這い、迷宮の闇へと消えようとするその姿。
だが、それを逃がすほど、浅倉威という男は甘くない。
「……鬼ごっこがしたいのか?」
王蛇の面(つら)の奥で、浅倉が愉悦に歪んだ笑みを浮かべる。 彼はゆっくりと歩き出し、そして一気に加速した。
「今度は俺が鬼だぁ!!」
叫びと共に、王蛇は獲物を追う猛獣と化した。 逃げる怪物が角を曲がれば、王蛇は壁を蹴って最短距離で肉薄する。
逃げろ、もっと足掻け、そんな感情を抱きながら
逃走を続ける巨大な肉塊を追い、王蛇は黄色い通路を突き進む。
獲物が撒き散らす黒い体液を土足で踏みつけ、その背中を捉えようとした、その時。
凄まじい破壊音と共に、進行方向左側の壁が爆発するように弾けた。
土煙の中から飛び出したのは、鋼鉄のように硬質化した、太く鋭利な一本の触手針。
それは王蛇の顔面を正確に狙っていた。
「……っ!」
反射的に首を傾け、回避する。
軽く火花を散らしながら、針は王蛇のコブラを模した額の装甲を僅かに掠め、
背後の壁へと深く突き刺さった。
コンクリートの破片が仮面に撥ねる。
「ほう……」
王蛇は足を止め、壁に開いた巨大な穴を見やった。
そこからは、逃げている獲物と同等、あるいはそれ以上の質量を持った二匹目の触手の怪物が、壁を食い破りながら這い出てくるところだった。
無数の目が王蛇を睨みつけ、千切れた壁の隙間から新たな針が次々と形成されていく。
「お友達が居たか。なら……」
王蛇は心底愉快そうに喉を鳴らし、
カードデッキから三枚のカードを流れるように引き抜く。
《 ADVENT 》
《 ADVENT 》
《 ADVENT 》
「シャアアアァァァ!」
「グオォォォォオ!」
「キュイィィ!」
通路に響き渡る三連の電子音。
ソファーの近くに設置された鏡の境界を破り、王蛇の呼び声に応えた三体の捕食者が具現化し、王蛇の元へ駆けつける。
紫の毒霧を吐きながら鎌首をもたげるベノスネーカー。
狭い通路を巨体で圧迫し、角を研ぐメタルゲラス。
天井を影のように滑走し、鋭い鳴き声を上げるエビルダイバー。
「大人数の方が、楽しいよなぁ? ……遊んでやれ」
王蛇は二匹目の怪物をモンスター三体に任せると、一歩も止まることなく、再び駆け出した。
その視線の先には、仲間が現れた隙にさらに距離を稼ごうとしていた「一匹目」の背中?がある。
背後で始まる、ミラーモンスターと怪物の凄まじい共食いの音をBGMに、王蛇は狂喜に満ちた足取りで再び「鬼ごっこ」を再開した。
視界から1匹目の姿は既に消えていたが、逃げた方角はすぐに判明する。
先ほど切断した触手の切り口から、黒い血液が絶え間なく滴り落ち、無機質な黄色いカーペットに逃走経路の道しるべを作っていた。
「かーいぶーつくーんは、よーわむーしだー……」
王蛇は獲物を追い詰める悦びに喉を鳴らしながら、静かに歌を響かる。
「みーかけーだーおしで、逃ーげだしたー……」
かつて自分を忌み嫌う弁護士事務所にお邪魔(無断で)した時、その留守を嘲笑うように口ずさんだあの旋律。
今それはこの終わりのない「出口のない監獄」に、死の予兆として反響する。
歪んだ歌声を響かせながら、
王蛇は血の道標の終着点へと辿り着いた。
そこはそれまでの窮屈な通路が嘘のように思える、広大な空洞だった。
壁の黄色、床の湿ったカーペットの質感は変わらない。だが、天井は遥か高く、広さは優に学校の体育館ほどもある。等間隔に並ぶ無数の蛍光灯が、その巨大な虚無を無機質に照らし出していた。
「……さっさと出てこい……」
王蛇は静かに獲物に呼び掛け、広場の中央へと歩を進めた。
広場は静まり返り、自らの足音だけが反響して帰ってくる。したたり落ちていたはずの黒い血液は、この広大な空間のどこかで途絶えていた。
ベノサーベルを肩に預け、獲物を探して周囲をゆっくりと見渡す。
広場の隅々、並び立つ柱の影……。だが、どこにもあの巨大な肉の塊は見当たらない。
ここには居ないのか?
そう思った時、
彼の足元の地面に、一滴の黒い液体が落ちてくる。
「!!」
瞬時にその場を離れる王蛇。
さっきまで王蛇が立っていた場所に、天から巨大な黒い「触手の槍」が直撃、床を貫く。
怪物は広場全体の天井に張り付き、待ち伏せしていた。
やがて怪物が目の前に着地。無数の触手がクモの脚のように床に突き刺さり、怪物の巨体を支える。
切断された箇所からは依然として黒い体液を滴らせながらも、その殺意はより鋭く、より巨大に膨れ上がっていた。
「よお。鬼ごっこは終わりか?」
着地した王蛇が、獰猛な笑みを浮かべて振り返る。
怪物は即座に応戦。
十数本の触手を同時に金属化させ、広場の高い天井を活かした立体的な槍の雨を降らせた。
「さぁ、さっきの……続きだ!」
王蛇はベノサーベルを旋回させ、向かってくる触手の槍を叩き落としながら駆け出す。
広大な空間を縦横無尽に叩きつけられる触手の嵐。だが、王蛇はその破壊の渦中を、まるで見えない道があるかのように悠々と歩き、あるいは鋭く踏み込む。
襲いかかる針のような触手を王蛇は最小限の動きでいなし、その懐へと潜り込んだ。
「オラァっ!!」
ベノサーベルが一閃する。
硬質化した触手が、ガラス細工のように脆く砕け散った。
怪物は悲鳴を上げ、残った触手を狂ったように振り回すが、
王蛇はもはやそれを脅威とも思っていない。
一太刀、また一太刀。
無機質な広場に、肉を裂く鈍い音と、黒い体液がカーペットにぶちまけられる音だけが響く。
もはや、それは「戦闘」ですらなかった。
それは一方的な解体作業。
王蛇は逃げようと悶える怪物の中心核を左手で無造作に掴み上げる。
表情が解らない怪物の肉体が、小刻みに震えている。
まるで目の前の悪魔に恐怖するかの如く。
「……じゃあな……」
王蛇は至近距離からベノサーベルを怪物の中心部へと深く、根元まで突き立てた。
「――ッ!!」
怪物は声にならない咆哮を上げ、全身の触手を硬直させる。
爆発など起きない。
ただ突き刺された傷口から、ドクドクと不気味なほど大量の黒い血液が噴き出し、王蛇の紫の装甲を、そして黄色い床を深く汚していく。
やがて鋼鉄のようだった触手は力を失い、ただの腐った肉の束のように、床へと崩れ落ちた。
王蛇は死体に一瞥もくれずベノサーベルを引き抜くと、
そこに付着した黒い粘液を床で拭った。
「…………おいおい、この程度かよ……」
ファイナルベントを使うまでもなかった。
あれほど王蛇を、浅倉を昂らせた「怪物」は、最後にはただの脆い肉塊に過ぎなかった。
なんともあっけない幕切れに、浅倉の心には空虚な苛立ちさえ募る。
「シケた祭りだ……」
王蛇は重い足音を響かせて広場を後にした。
背後にはただ黒いシミとなった怪物の残骸と、
静まり返った広大な黄色の空洞だけが取り残される。
広場を後にした王蛇が向かった先は、もう一つの「パーティ会場」だ。
そこではベノスネーカー、メタルゲラス、エビルダイバーのモンスター達がもう一体の肉塊を囲むようにして蠢いている。
しかしそれも「戦闘」呼べる光景ではない。
モンスターたちは動かなくなった肉の塊を貪り食っている。
骨を砕き、肉を啜る湿った音が、不快な旋律となって通路に響く。
「……なんだ、そっちも終わりか」
王蛇は面白くなさそうに呟くと、カードデッキを引き抜き変身を解除。
紫の装甲が消え、いつもの蛇革のジャケット姿に戻った浅倉は、
最初に自分が引きちぎった「あの触手」が転がっている場所まで歩み寄る。
彼は無造作にその黒い肉の塊を拾い上げた。
まだ僅かに脈打つような感覚があるが、彼はそれを気にするどころか品定めするように見つめる。
やがて浅倉は、鏡やソファが置かれた最初の奇妙な空間へと戻った。
そして何を考えたのか、彼は本棚から背表紙に何も書かれていない分厚い辞書を数冊掴み出す。
それを少し離れた通路の床に無造作に積み重ねると、先ほど拾ったオイルライターを手に取る。
ボォッっと言う小さな火が灯り、無機質な辞書の紙に燃え移る。
黄色の迷宮の淀んだ空気の中で、紙が焦げる匂いと青白い炎が静かに揺れ始めた。
浅倉は積み上げた辞書が薪(まき)のように燃え上がるのをじっと待つ。
そして、火勢が強まったところで、拾ってきた怪物の触手を火にかざした。
黒い肉が熱に焼かれ、悍ましい臭気と共に脂が滴り落ちる。
パチパチとはぜる辞書の火が、浅倉の顔を赤く照らす。
焼かれた怪物の肉からは、およそ食欲をそそるとは言い難い、焦げたゴムのような異臭と黒い脂が立ち昇っていた。
普通の人間なら嘔吐するような光景だが、浅倉の瞳には獲物を見つめる獣の様な、飢えた光欲が宿っていた。
やがて浅倉は
十分に火が通ったかも怪しいその肉塊を鷲掴みにし、その黒い肉に躊躇なく、深く嚙みついた。
ギチリ、と硬質な繊維を噛み切る音が響く。
口の中に広がるのは、ひどく土臭く、鉄の味が混ざったような不快な味。
かつて口にした泥よりも粘り気があり、
トカゲの肉よりもずっと禍々しいエネルギーが凝縮されている、気がした。
「……はッ」
それでも浅倉は一口噛みしめると、口元を黒く汚したまま、短く笑った。
美味いか、不味いか。そんな基準は彼にはない。
あるのは、自分を殺そうとした相手を食らい、その存在を完全に否定し、
勝利を確定させたという確信ぐらいである。
「……まあ……何も無いよりマシか……」
彼はガツガツと、獣のような手つきで触手を食らい続ける。
これが人体にどんな影響を与えるか、細菌や寄生虫の危険性は?などと言う常人の疑問など、この男には通用しない。
幼少期の頃から彼の人生は常に生きるか死ぬかの瀬戸際だった。
だから食べる物が何もない時は泥でもその辺のトカゲでも平然と口にする等手段は択ばない。
「しかし……これからどうするかねぇ…………」
辞書の炎に照らされながら、黒く焦げた触手の身を豪快に引きちぎり、
浅倉は誰に聞かせるともなく吐き捨てた。
口の周りを黒い体液で汚し咀嚼するその姿には、
この異様な世界に対する恐怖など焦燥も微塵もない。
この場所が地獄なのか、あるいは神の悪戯で作られた箱庭なのか。
そんなことは浅倉にとってはどうでもいい。
敵がいれば殺し、腹が減れば食らう。
彼にとって生存のルールはどこへ行こうと変わらなかった。
パチパチと辞書が燃え尽きる音が、静かな通路に消えていく。
最後の一片を飲み込んだ浅倉は、重い腰を上げると、再び目的のない歩みを始めた。
その背中が通路の曲がり角に消え、足音が完全に途絶えた後、
そこにはただ湿ったカーペットの匂いと、無機質な蛍光灯の唸りだけが残された。
一体どこを目指せば良いのか、それは浅倉本人にすらも分からない。
もし、このまま命尽きるまで永久に謎の迷宮の世界から出られないとしたら。
それが大勢の命を奪い続けた、浅倉威と言う大罪人の末路とでも言うのだろうか。
彼はこの謎の空間の出口にたどり着くのか、あるいはこの迷宮そのものを食い尽くしたのか。
それを知る者は、この世界には誰もいない。
終