あの後、再び正装に着替えた僕達は、女将の元に訪れた。
「ここまではやると思ってなかった…」
「いいのよ~むしろここまでバスったのがびっくりだわ~」
「えっと…みく、女将さんと知り合いだったの?」
慈は、女将と気の抜けた会話をしている事に、困惑していた。
「うん、お母さんの知り合いだから、面識はあったよ。みんなには黙ってたけど」
「ええ!?」
これに関しては、梢も知らない話。
「ふふふ、小さい頃から未来の事を知ってるからね~」
「それについて詳しくって言いたい所なんですけど…この混雑が落ち着くまで、お手伝いしますね!」
「助かるわ~!」
おば…もとい、女将はそう言って、厨房の方へと消えて行った。
「よし、受付は慈に任せるから、部屋の掃除はこっちに任せて」
「分かった、こっちも人が居なくなったタイミングで行けたら行くね」
「はいはーい!」
僕は慈とハイタッチを交わして、それぞれ持ち場へと向かった。
掃除が出来てない部屋を順番に回る。
タオルやシーツの交換に洗濯、アメニティーの交換。ゴミを回収して、掃除機をかける
それを何回も繰り替えす。
「本当に未来君がやってくれると早いわね」
「昔からやってきたから…これくらいはできるよ」
「じゃあ、その調子でお願いね」
「うん」
女将から言葉を受け取って作業を再開した。すると_
「ぎゃー!この部屋めちゃくちゃ散らかってる!」
と叫ぶ慈の声が聞こえてきた。
「この部屋の掃除が終わったら手伝いに行くか」
その後、慈の所まで行って掃除を終わらせると、今度は受付対応が追い付いていないと言われたので、二人で受付対応に回る。
「ええと、お次でお待ちの方、診察券と保健所をご用意してーーって違う違う。これ一日看護師でやったやつだ…えっとえっと…!」
「とりあえず落ち着け」
電話で予約対応をしながら、慈の事を気にかけるが…完全に疲れてる慈…
「めぐちゃん!みく先輩!」
「って、え!?めぐちゃん!?」
慈が返事を返すと、そこにはみんなが居た。
「みんなも…なんで…?」
「なんでもなにもないでしょう!」
あっ…梢、怒ってますわ…これ…
「大急ぎでライブの準備を終わらせてきましたよ!」
「それで、すぐにバスで戻ってきた…というわけです」
「みくがこうすれば早く終わるってメッセージまで送ってきて、その通りにやって時間は稼いできた。といっても、ほんの少しだけど」
「ライブ、間に合わなくなっちゃうかもしれないのに…」
「そのために、ルリたちが戻ってきたんでしょー!めぐちゃんのばか!自己チューギリギリライン越え!」
「さ、みんな。二人の事を叱るのは、また後でね。混雑が落ち着くまで、もう一働き。ライブ時間のギリギリまでは、粘りましょう」
「梢…」
「未来がバスに乗り遅れたってメッセージに、ライブ会場の準備の仕方をこうすればってメッセージを送ってきた時に、こんな事だろうと思ったわ。まったくもう、せめてなにか一言、言ってくれればよかったのに」
「べ、別に、私ひとりでどうにでもなるって思ったんだよ!」
「はいはい」
慈の言葉に、梢はそう言って返した。
「それじゃあ花帆さんと私は、お部屋の掃除に回りましょう。昨日も少し手伝ったから、やり方は大丈夫よね」
「はい」
「では、わたしたちは夕食の準備ですね。なるべくお使いを引き受けて、厨房の負担を減らせるように頑張りましょう」
さやかちゃんがそう言うと、綴理は頷いた。
「ね、ルリはどうすればいい?めぐちゃん」
「ん…それじゃあるりちゃんには、電話対応やフロント業務を手伝ってもらいたいな。るりちゃん、できそう?」
「なんとかなるなる!ならなかったら、そんときはそんとき!」
「蓮ノ空スクールアイドルクラブ!各自、出動ー!」
『おー!』
みんなで手を挙げて、それぞれの持ち場へと散っていった。
その後、フロントの方に人がやってきてくれたおかげで、僕は部屋掃除の方に戻った。
「あー終わらん…」
「そう言いながら手は止めないのね…」
「止めた方がもっと終わらないからね、動かせるものは動かすの」
そう言いながら、パッパッと掃除を終わらせていく。
そして、ある程度終わらせて、後は一人でもなんとかなりそうだと思い、二人に声をかけた。
「よし、花帆ちゃんと梢、一旦休憩に行ってもいいよ」
「先輩を置いてまで行けませんって」
「違う違うって、休憩を取るついでに、他の所がどうなってるか聞いて来てほしいの」
もし、終わらなそうならそっちに回ろうと考えてるから…
「そう言う事なら、あたし、行ってきます!」
そう言って、花帆ちゃんは走っていってしまった。
「私は行かないわよ」
「いや…ここは一人でもなんとかなるから…大丈夫だって」
「…そう言いながら無理してる表情をしてるわよ…」
「これぐらい大丈夫」
その後、梢を休憩させて、戻ってきた花帆ちゃんに話を聞くと。女将が他の旅館からお手伝いがやってくるという話を聞いて、ちょっとホッとした。
そして、慈が一人でライブ会場に向かって。一人で僕達が行くまで場をもたせると言ったらしい。
「へぇ~言うじゃん」
「はい!なのでなるべく早く終わらせないと」
「なら、あそこの部屋とこっちの部屋_」
そんな感じでみんな合わせて、旅館の掃除を終わらせた。
そして、お手伝いできた人達と入れ替わり、僕達はライブ会場まで向かった。
そして、その日の夜
慈が素直に謝った事、誰かが怠け出した頃には、私がビシッッッと言ってやると言った事などを梢から聞いた。
「慈は自分のやりたい事をやる奴だし、今回の事だって、みんなの事を思って行動したんだし、僕から何か言う事はないかな?」
「未来ならそう言うと思ったわ」
「まぁ…僕からも明日、慈に感謝の言葉ぐらいは言ってあげないとね」
「ええ、それはそれとして…」
「ん?」
「最近、慈の事を構いすぎじゃないかしら…?そ、その、私、彼女なんだから…その…」
「なら、今度の休みの日に二人でどこか行く?」
僕がそう言うと、梢は明るい表情になって_
「ええ」