あの後、未来もやってきて作曲作業を行っていた。
あーだこーだでやっていると、時間はあっという間に過ぎて行き、外の景色は真っ暗になっていった。
「あら…いけない、もうこんな時間だわ」
「あ…ちょっと、熱中しすぎちゃいましたね。でも、かなり進みましたよね?」
「うん、これなら明日には形になると思う」
「花帆、助かったわ。…フフッ」
「いえ、この前は作詞をしてもらって、今度は作曲のお手伝い。最近ますます頼りになるわね、花帆。それが嬉しくなっちゃって」
「ほんと、花帆ちゃん頼りにしてるよ」
「えええ~!そんなこと言われたら、あたしこそ、もう嬉しさでバクハツしちゃいますよ~~!」
花帆ちゃんは、僕とこずに誉められた事で、身体を揺らしながら顔を紅くしていた。
「ふふっ。それじゃあ、食事にしましょう。私の大切な後輩が泊まりに来るからと言ったら、普段は料理人任せの母が、珍しく腕を振るってくれたのよ」
「はい!…って、センパイのお母さん!?」
「そんな驚かなくても」
僕がそう言うと、花帆ちゃんは自分の服装を眺めた。
「あたし、こんな格好ですよぉ!?」
花帆ちゃんはそう言うけど、特に気にするような恰好ではない。
「か、かわいいんじゃないかしら…?」
「そこははっきりと可愛いって言っていいんじゃない?」
その後、こずのお母さんと食事を一緒に取ってたのだが、花帆ちゃんはガチガチに緊張してておかしく内心笑って、楽しい食事会だった。
食事を取って、お風呂にも入って。こずのお母さんに一緒にお風呂に入ってもいいって言われたけど、流石に…ね?その後、こずの部屋で三人で昔のアルバムを見ていた。
「これが、小学四年生の時。バレエの発表会ね」
「この頃のこず、可愛いんだよな~もちろん今もだけど」
「もう//」
「わあ、わあ~~!梢センパイかわいい~~!写真に撮ってもいいですか!?」
「…他の人に見せそうだから、だめよ」
「ええ~~~!うう、わかりました。それじゃあ今ここで目を焼きつけて…」
「まったくもう」
「花帆ちゃんらしい」
アルバムの写真に食いつく花帆ちゃん。
本当、こずの事大好きだよなぁ
「それにしても、お母様には困ってしまったわね…あんなに口を滑らせるだなんて」
「楽しかったですよ!梢センパイの昔話!最初はとても緊張しましたけど…でも、すっごく優しくて。さすが梢センパイのお母さんですね!」
「どうかしらね。きっと、花帆に会えて、上機嫌になっていただけよ。あの人、花帆の配信だって追いかけてるんだから」
「確かにね。僕のお母さんも花帆ちゃんの事追いかけてるって連絡来てたな」
「考える事は一緒ね」
「そうなんですか!?」
すると、こずは視線をアルバムの写真に落とした。
「でも…本当に…。この頃は、笑っている写真が少ないわね」
「確かに。なんだかキリッって感じですね!」
「そういう割には笑っていたこずの印象が強いんだけど」
「それは、きっと未来にだけは心を許していたのよ。蓮ノ空に入るまでの私は、どこか、心に壁を作っていたような気がするわ」
「そう、なんですか?」
きっとなのか…
「ええ、生真面目で、頑固。あの頃は、一対一で向き合わなければ、本当の音楽にたどり着くことはできないと思っていた、だから、この頃は、未来とも衝突して、でも未来は私の話を聞いてくれた」
「あの頃のこずは、余裕が無かったんだと思う」
「それに、自分が理想に手を伸ばすために精一杯で、周りがどんな気持ちでいるのかなんて、二の次だった」
「でも、今の梢センパイはぜんぜん違いますよね!いっつもあたしの気持ちに寄り添ってくれて」
「それはきっと沙知先輩のおかげだよ」
「ふふっ、そうね。それを教えてくれたのもやっぱり、 スクールアイドルクラブであり……沙知先輩だったわ」
「うんうん」
「沙知先輩とユニットを組んで、お互いの意見を交換しながら、曲を作る。その過程で新しいものが生まれ、私の想像を超えた、素敵なステージが形作られてゆく、その初めての体験はとても鮮烈で、刺激的だった。私ひとりの世界に、次々と色が生まれて……。楽しかったのよ。夢を追いかけることだって、ぜんぶ。これがスクールアイドルなんだって、ようやくわかったの」
「だからね。自分ひとりの限界を知っても、今はもう絶望しないわ。心と心を繋げていけば、世界はどこまでも広がってゆくんだって、知っているから、それに今の私には、未来、花帆がいるもの」
そう言ってもらえると、ここまで支えてきて良かったと思う。
「はい!」
「うん」
「花帆がついてきてくれて、よかったわ、沙知先輩には、返しても返し切れない、恩がある。だからせめて、素敵な曲を作りたかったの」
「えへへ…。沙知センパイへのお礼の曲…ぜったい、いいものにしましょうね!先輩!」
「!ええ、もちろん」
「それじゃあ、時間も時間だからそろそろ寝るか」
「そうね。明日のためにもう寝ましょうか」
こずがそう言うと、花帆ちゃんは身体をもぞもぞとし始めた。
「あの、それなんですけど、梢センパイ~…」
「なぁに?」
「シンとした廊下を通って客間に戻るの、なんだがすごく寂しくて…きょうはせっかくなので!梢センパイと一緒に寝てもいいですか!?」
花帆ちゃん。可愛いところあるじゃん
「ふふふ、だめよ、ベットが狭くなるもの」
「がーん!!」
「花帆ちゃん、こう言ってるけど、大丈夫だから」
「え?」
「ふふっ、確かに、蓮ノ空に入る前の私なら、言っていたでしょうね。もちろんいいわ。かわいい後輩の頼みだもの」
こずがそう言うと、花帆ちゃんはとっても満面の笑顔を浮かべて
「うわーん!梢センパイを優しくしてくれて、ありがとうございます!沙知センパイ~~~!」
「ふふふふ、未来も久しぶりに一緒に寝ない?」
「それこそ、ベットが狭くなるって」
「大丈夫よ、私のベット大きいから」
その後、こずを真ん中にして花帆ちゃんと三人で一緒に寝るのだった。