蓮ノ空のアイドルクラブのマネージャーの話   作:桜紅月音

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86.信頼の証

 

あの後、未来もやってきて作曲作業を行っていた。

あーだこーだでやっていると、時間はあっという間に過ぎて行き、外の景色は真っ暗になっていった。

 

「あら…いけない、もうこんな時間だわ」

 

「あ…ちょっと、熱中しすぎちゃいましたね。でも、かなり進みましたよね?」

 

「うん、これなら明日には形になると思う」

 

「花帆、助かったわ。…フフッ」

 

「いえ、この前は作詞をしてもらって、今度は作曲のお手伝い。最近ますます頼りになるわね、花帆。それが嬉しくなっちゃって」

 

「ほんと、花帆ちゃん頼りにしてるよ」

 

「えええ~!そんなこと言われたら、あたしこそ、もう嬉しさでバクハツしちゃいますよ~~!」

 

花帆ちゃんは、僕とこずに誉められた事で、身体を揺らしながら顔を紅くしていた。

 

「ふふっ。それじゃあ、食事にしましょう。私の大切な後輩が泊まりに来るからと言ったら、普段は料理人任せの母が、珍しく腕を振るってくれたのよ」

 

「はい!…って、センパイのお母さん!?」

 

「そんな驚かなくても」

 

僕がそう言うと、花帆ちゃんは自分の服装を眺めた。

 

「あたし、こんな格好ですよぉ!?」

 

花帆ちゃんはそう言うけど、特に気にするような恰好ではない。

 

「か、かわいいんじゃないかしら…?」

 

「そこははっきりと可愛いって言っていいんじゃない?」

 

その後、こずのお母さんと食事を一緒に取ってたのだが、花帆ちゃんはガチガチに緊張してておかしく内心笑って、楽しい食事会だった。

 

食事を取って、お風呂にも入って。こずのお母さんに一緒にお風呂に入ってもいいって言われたけど、流石に…ね?その後、こずの部屋で三人で昔のアルバムを見ていた。

 

「これが、小学四年生の時。バレエの発表会ね」

 

「この頃のこず、可愛いんだよな~もちろん今もだけど」

 

「もう//」

 

「わあ、わあ~~!梢センパイかわいい~~!写真に撮ってもいいですか!?」

 

「…他の人に見せそうだから、だめよ」

 

「ええ~~~!うう、わかりました。それじゃあ今ここで目を焼きつけて…」

 

「まったくもう」

 

「花帆ちゃんらしい」

 

アルバムの写真に食いつく花帆ちゃん。

本当、こずの事大好きだよなぁ

 

「それにしても、お母様には困ってしまったわね…あんなに口を滑らせるだなんて」

 

「楽しかったですよ!梢センパイの昔話!最初はとても緊張しましたけど…でも、すっごく優しくて。さすが梢センパイのお母さんですね!」

 

「どうかしらね。きっと、花帆に会えて、上機嫌になっていただけよ。あの人、花帆の配信だって追いかけてるんだから」

 

「確かにね。僕のお母さんも花帆ちゃんの事追いかけてるって連絡来てたな」

 

「考える事は一緒ね」

 

「そうなんですか!?」

 

すると、こずは視線をアルバムの写真に落とした。

 

「でも…本当に…。この頃は、笑っている写真が少ないわね」

 

「確かに。なんだかキリッって感じですね!」

 

「そういう割には笑っていたこずの印象が強いんだけど」

 

「それは、きっと未来にだけは心を許していたのよ。蓮ノ空に入るまでの私は、どこか、心に壁を作っていたような気がするわ」

 

「そう、なんですか?」

 

きっとなのか…

 

「ええ、生真面目で、頑固。あの頃は、一対一で向き合わなければ、本当の音楽にたどり着くことはできないと思っていた、だから、この頃は、未来とも衝突して、でも未来は私の話を聞いてくれた」

 

「あの頃のこずは、余裕が無かったんだと思う」

 

「それに、自分が理想に手を伸ばすために精一杯で、周りがどんな気持ちでいるのかなんて、二の次だった」

 

「でも、今の梢センパイはぜんぜん違いますよね!いっつもあたしの気持ちに寄り添ってくれて」

 

「それはきっと沙知先輩のおかげだよ」

 

「ふふっ、そうね。それを教えてくれたのもやっぱり、 スクールアイドルクラブであり……沙知先輩だったわ」

 

「うんうん」

 

「沙知先輩とユニットを組んで、お互いの意見を交換しながら、曲を作る。その過程で新しいものが生まれ、私の想像を超えた、素敵なステージが形作られてゆく、その初めての体験はとても鮮烈で、刺激的だった。私ひとりの世界に、次々と色が生まれて……。楽しかったのよ。夢を追いかけることだって、ぜんぶ。これがスクールアイドルなんだって、ようやくわかったの」

 

「だからね。自分ひとりの限界を知っても、今はもう絶望しないわ。心と心を繋げていけば、世界はどこまでも広がってゆくんだって、知っているから、それに今の私には、未来、花帆がいるもの」

 

そう言ってもらえると、ここまで支えてきて良かったと思う。

 

「はい!」

 

「うん」

 

「花帆がついてきてくれて、よかったわ、沙知先輩には、返しても返し切れない、恩がある。だからせめて、素敵な曲を作りたかったの」

 

「えへへ…。沙知センパイへのお礼の曲…ぜったい、いいものにしましょうね!先輩!」

 

「!ええ、もちろん」

 

「それじゃあ、時間も時間だからそろそろ寝るか」

 

「そうね。明日のためにもう寝ましょうか」

 

こずがそう言うと、花帆ちゃんは身体をもぞもぞとし始めた。

 

「あの、それなんですけど、梢センパイ~…」

 

「なぁに?」

 

「シンとした廊下を通って客間に戻るの、なんだがすごく寂しくて…きょうはせっかくなので!梢センパイと一緒に寝てもいいですか!?」

 

花帆ちゃん。可愛いところあるじゃん

 

「ふふふ、だめよ、ベットが狭くなるもの」

 

「がーん!!」

 

「花帆ちゃん、こう言ってるけど、大丈夫だから」

 

「え?」

 

「ふふっ、確かに、蓮ノ空に入る前の私なら、言っていたでしょうね。もちろんいいわ。かわいい後輩の頼みだもの」

 

こずがそう言うと、花帆ちゃんはとっても満面の笑顔を浮かべて

 

「うわーん!梢センパイを優しくしてくれて、ありがとうございます!沙知センパイ~~~!」

 

「ふふふふ、未来も久しぶりに一緒に寝ない?」

 

「それこそ、ベットが狭くなるって」

 

「大丈夫よ、私のベット大きいから」

 

その後、こずを真ん中にして花帆ちゃんと三人で一緒に寝るのだった。

 

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