蓮ノ空のアイドルクラブのマネージャーの話   作:桜紅月音

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87.想いを叶える為に

 

乙宗家で未来、梢、花帆の三人で作曲をしてから二日後。トレーニング室にDOLLCHESTRAの二人の姿があった。

 

「こうやってこうなって、こうなって」

 

綴理は、考えた振り付けを踊っていた。

 

「で、こうなって」

 

「な、るほど、それで〆ですか?」

 

しかし、さやかの表情は良くなかった。

 

「から、こうやってこう」

 

「えーっと!」」

 

「感想募集中」

 

綴理の振り付けが悪い訳ではない。悪い訳ではないのだ…

 

「沙知先輩に贈る曲の振り、なんですよね」

 

「そう」

 

「そう、ですね。ひとつひとつの振りに想いが感じられて、積み重ねたものが表現されているような気がします」

 

「きっとこずもめぐもみくも、伝えたいことはいっぱいあるからね」

 

「とはいえ…んー…正直に言うと、あまり纏まりがないような…」

 

「やっぱり?ボクもそう思う。でも、どれも外せないんだー。どうしたらいい?」

 

さやかが感じた違和感は、綴理も感じていた。

そして、その解決案をなんとさやかに聞く事にした。無茶にもほどがある。

 

「っ、どうしたらいい!?ええ~っと、それは…!!」

 

「…あの、これってでも、二年生から沙知先輩に贈る曲、っておっしゃってましたよね?」

 

「うん」

 

「わたしに話して良かったんですか?」

 

「うん、だってボクの全力を出さないといけないから」

 

「そ、そうですか。ではわたしも、一助になれるよう粉骨砕身努力しなければいけませんね」

 

綴理の言葉を聞いたさやかは、覚悟を決めた。

 

「んー…僭越ながら、やっぱり振りが多すぎるのと、どれもばらばらなのが気になります」

 

「でも、多いのは、1個も落としたくないんだ。全部、思い出だから」

 

思い出に対して特にこだわりを持つ綴理にとっては、ひとつでも外すなんて選択肢は無いに等しい。

 

「それは」

 

「だから、そうだね。さやの言う通り、ばらばらなのをどうにかできればいいね。1本のリボンがほしい」

 

「…それはつまり、この振りをまとめるための軸のようなものでしょうか」

 

「うん。気持ちを詰め込んだプレゼントの…1番大事な見た目の部分」

 

「…分かりました。お手伝いできることがあるなら、なんでも言ってください」

 

「ありがと、さや、じゃあ、行こう」

 

「はい、…ぅ、え?どこにですか?」

 

綴理の唐突の発言に困惑するさやかだったが、二人は学校の外へと出ていくのであった。

 

 

 

 

******

 

二人の姿は、金沢市内にあった。

 

「向こうの方だ」

 

「綴理先輩、赤信号です、危ないですって」

 

綴理は、周りが見えてなくて、赤信号なのに飛び出しそうになった。

それをさやかが止める。

 

「あ、ごめん。止まるべき」

 

「はい、止まるべきです。学校出てからずっと空見上げて…どこ行こうとしてるんですか?」

 

さやかが綴理に聞くと、綴理は空を見上げた。

 

「雨降ってるとこ」

 

「…雲、追いかけてたのかあ…」

 

綴理の言葉で、さやかも気付いた。

 

「…雨、降ってるとこ。そっか、そういうことですか。ちょっと待ってくださいね。今、金沢全体の天気を…」

 

さやかは自身のスマホで天気予報を検索する。

 

「見つけました!雨の降っている場所。小雨ですが…きっと、行く価値はあります」

 

「ほんと?よし、行こう」

 

「でも…ふふ、綴理先輩が、沙知先輩と楽しくお話するようになって、本当に良かったです」

 

「そうだね、さやのおかげ…本当に」

 

「…元通りになったのなら、それが一番素晴らしいことかと思います」

 

さやかがそう言うと、綴理は首を横に振った。

 

「元通りじゃあ、ないんだ。昔のボクは、ろくにお礼も言えない子だったから…」

 

綴理はそう言って、昔の事を思い出す。

 

 

それは、未来、梢、綴理、慈の四人が入ってしばらくしてからの話。

 

「ねえ、さち」

 

「ん、どうしたんだい」

 

「言われた通り、スクールアイドルクラブに入ったよ。あとはどうやったら、ボクはスクールアイドルになれるの?」

 

「んーんーん」

 

「スクールアイドルっていうのは、自分がスクールアイドルだと思えれば、みんなスクールアイドルなんだけども…」

 

「?」

 

「そもそもキミ有名人だろ?外部のダンスクラブ含め、引く手あまただろうに、どうしてスクールアイドルクラブを選んでくれたんだい?」

 

「みんなでやりたいし」

 

「みんなで…なるほど。…孤高の存在として持ち上げられていた裏側…なんで、仰々しいことを言うつもりはないけれども…」

 

「?」

 

「キミはもう、いつでもスクールアイドルで良いんだぜ?」

 

「んー…だとボク、たぶん今『ス』だから」

 

「スクールアイドルの『ス』ってこと!?み、道は厳しいねぇ!?」

 

「スクールアイドル見習いのスだよ」

 

「道は果てしないねえ…でも、そうだねぃ、こういうのは、ぱっと出来るものでもないか。あるいは…ひとつひとう、積み重ねていく他ないのかも…」

 

「さち?」

 

「安心したまえ、綴理。キミはこの3年の間に、必ずスクールアイドルになれる」

 

「ほんと?」

 

「ああ、まず、その一歩目は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あたしとーーDOLLCHESTRAをやろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は現在に戻る。

 

 

 

******

 

「あ、降ってきた」

 

綴理が思い出に浸かっていると、自身の額に雨粒が当たった。

 

「今日この辺りは、少しだけぱらつくみたいです。とはいえ、傘がないので、入りましょうか」

 

さやかが指差す先には、もうお馴染みの所だった。

 

「入る…あ、そっか、この辺って」

 

そう、スクールアイドルクラブにとっては、馴染みのある近江市場だった。

 

 

 

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