蓮ノ空のアイドルクラブのマネージャーの話   作:桜紅月音

93 / 93
87.想いを叶える為に

 

乙宗家で未来、梢、花帆の三人で作曲をしてから二日後。トレーニング室にDOLLCHESTRAの二人の姿があった。

 

「こうやってこうなって、こうなって」

 

綴理は、考えた振り付けを踊っていた。

 

「で、こうなって」

 

「な、るほど、それで〆ですか?」

 

しかし、さやかの表情は良くなかった。

 

「から、こうやってこう」

 

「えーっと!」」

 

「感想募集中」

 

綴理の振り付けが悪い訳ではない。悪い訳ではないのだ…

 

「沙知先輩に贈る曲の振り、なんですよね」

 

「そう」

 

「そう、ですね。ひとつひとつの振りに想いが感じられて、積み重ねたものが表現されているような気がします」

 

「きっとこずもめぐもみくも、伝えたいことはいっぱいあるからね」

 

「とはいえ…んー…正直に言うと、あまり纏まりがないような…」

 

「やっぱり?ボクもそう思う。でも、どれも外せないんだー。どうしたらいい?」

 

さやかが感じた違和感は、綴理も感じていた。

そして、その解決案をなんとさやかに聞く事にした。無茶にもほどがある。

 

「っ、どうしたらいい!?ええ~っと、それは…!!」

 

「…あの、これってでも、二年生から沙知先輩に贈る曲、っておっしゃってましたよね?」

 

「うん」

 

「わたしに話して良かったんですか?」

 

「うん、だってボクの全力を出さないといけないから」

 

「そ、そうですか。ではわたしも、一助になれるよう粉骨砕身努力しなければいけませんね」

 

綴理の言葉を聞いたさやかは、覚悟を決めた。

 

「んー…僭越ながら、やっぱり振りが多すぎるのと、どれもばらばらなのが気になります」

 

「でも、多いのは、1個も落としたくないんだ。全部、思い出だから」

 

思い出に対して特にこだわりを持つ綴理にとっては、ひとつでも外すなんて選択肢は無いに等しい。

 

「それは」

 

「だから、そうだね。さやの言う通り、ばらばらなのをどうにかできればいいね。1本のリボンがほしい」

 

「…それはつまり、この振りをまとめるための軸のようなものでしょうか」

 

「うん。気持ちを詰め込んだプレゼントの…1番大事な見た目の部分」

 

「…分かりました。お手伝いできることがあるなら、なんでも言ってください」

 

「ありがと、さや、じゃあ、行こう」

 

「はい、…ぅ、え?どこにですか?」

 

綴理の唐突の発言に困惑するさやかだったが、二人は学校の外へと出ていくのであった。

 

 

 

 

******

 

二人の姿は、金沢市内にあった。

 

「向こうの方だ」

 

「綴理先輩、赤信号です、危ないですって」

 

綴理は、周りが見えてなくて、赤信号なのに飛び出しそうになった。

それをさやかが止める。

 

「あ、ごめん。止まるべき」

 

「はい、止まるべきです。学校出てからずっと空見上げて…どこ行こうとしてるんですか?」

 

さやかが綴理に聞くと、綴理は空を見上げた。

 

「雨降ってるとこ」

 

「…雲、追いかけてたのかあ…」

 

綴理の言葉で、さやかも気付いた。

 

「…雨、降ってるとこ。そっか、そういうことですか。ちょっと待ってくださいね。今、金沢全体の天気を…」

 

さやかは自身のスマホで天気予報を検索する。

 

「見つけました!雨の降っている場所。小雨ですが…きっと、行く価値はあります」

 

「ほんと?よし、行こう」

 

「でも…ふふ、綴理先輩が、沙知先輩と楽しくお話するようになって、本当に良かったです」

 

「そうだね、さやのおかげ…本当に」

 

「…元通りになったのなら、それが一番素晴らしいことかと思います」

 

さやかがそう言うと、綴理は首を横に振った。

 

「元通りじゃあ、ないんだ。昔のボクは、ろくにお礼も言えない子だったから…」

 

綴理はそう言って、昔の事を思い出す。

 

 

それは、未来、梢、綴理、慈の四人が入ってしばらくしてからの話。

 

「ねえ、さち」

 

「ん、どうしたんだい」

 

「言われた通り、スクールアイドルクラブに入ったよ。あとはどうやったら、ボクはスクールアイドルになれるの?」

 

「んーんーん」

 

「スクールアイドルっていうのは、自分がスクールアイドルだと思えれば、みんなスクールアイドルなんだけども…」

 

「?」

 

「そもそもキミ有名人だろ?外部のダンスクラブ含め、引く手あまただろうに、どうしてスクールアイドルクラブを選んでくれたんだい?」

 

「みんなでやりたいし」

 

「みんなで…なるほど。…孤高の存在として持ち上げられていた裏側…なんで、仰々しいことを言うつもりはないけれども…」

 

「?」

 

「キミはもう、いつでもスクールアイドルで良いんだぜ?」

 

「んー…だとボク、たぶん今『ス』だから」

 

「スクールアイドルの『ス』ってこと!?み、道は厳しいねぇ!?」

 

「スクールアイドル見習いのスだよ」

 

「道は果てしないねえ…でも、そうだねぃ、こういうのは、ぱっと出来るものでもないか。あるいは…ひとつひとう、積み重ねていく他ないのかも…」

 

「さち?」

 

「安心したまえ、綴理。キミはこの3年の間に、必ずスクールアイドルになれる」

 

「ほんと?」

 

「ああ、まず、その一歩目は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あたしとーーDOLLCHESTRAをやろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は現在に戻る。

 

 

 

******

 

「あ、降ってきた」

 

綴理が思い出に浸かっていると、自身の額に雨粒が当たった。

 

「今日この辺りは、少しだけぱらつくみたいです。とはいえ、傘がないので、入りましょうか」

 

さやかが指差す先には、もうお馴染みの所だった。

 

「入る…あ、そっか、この辺って」

 

そう、スクールアイドルクラブにとっては、馴染みのある近江市場だった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

伝統を愛する君となら(作者:桜紅月音)(原作:ラブライブ!)

蓮ノ空学院。寮制で100年に渡る金沢にあり伝統のある学校。▼主人公、堀川綾羽は、幼馴染の百生吟子とともに学院に通う事になる。▼芸学部に憧れを持つ吟子に連れて行かれるがまま付いて行くと、そこはスクールアイドルクラブだった。彼は、スクールアイドルクラブで何をするのかそんな物語。▼*104期編からのスタートになります。▼*共学設定▼*リンクラストーリ基準で物語は進…


総合評価:18/評価:-.--/連載:7話/更新日時:2026年09月17日(木) 00:00 小説情報

瑠璃色の君に赤いバラを(作者:桜紅月音)(原作:ラブライブ!)

▼共学となった蓮ノ空に入学する事となった主人公である音羽蒼。▼彼は幼馴染である藤島慈と再会し、蓮ノ空での寮生活を始める。▼また、もう1人の幼馴染である大沢瑠璃乃は、彼と幼き時にした約束『再会したら結婚を前提に付き合う約束』を彼が忘れていない事に喜び、再会の時を待ち侘びる。しかし、彼はスクールアイドルに興味は無く、約束の内容も勘違いしていて…▼そんなわちゃわち…


総合評価:19/評価:-.--/連載:9話/更新日時:2026年09月15日(火) 00:00 小説情報

壊れた如雨露といつか花咲く大輪の花(作者:坪継)(原作:ラブライブ!)

 石川県金沢市から奥まった場所にある、私立蓮ノ空女学院。出会いも別れも、旅立ちも。全てが混ざり合う学び舎▼ これは、ただがむしゃらに今を駆け抜ける少女たちと、ひとりの教師の物語▼※この小説は蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ公式YouTubeチャンネルに上がっている活動記録を見ながら、もしくは把握した上でお読みください


総合評価:14/評価:-.--/連載:17話/更新日時:2026年09月16日(水) 00:05 小説情報

偽典・蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ106期小話(作者:マーケン)(原作:ラブライブ!蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ)

石川県金沢市にある蓮ノ空女学院。▼106期を迎えた学舎で今日もまたスクールアイドルクラブの面々が日々を過ごしている。▼これはそんな少女達のちょっとした日常風景。▼重大な話などなにもない、本当にちょっとした物語。▼リアルタイム、より半月ほど遅い更新。▼視点が毎話変わります。▼※Link!Like!ラブライブ!のサービス終了、ならびに106期のストーリーがアニメ…


総合評価:15/評価:-.--/連載:148話/更新日時:2026年09月16日(水) 23:26 小説情報

蓮ノ空スクールアイドル録(作者:松兄)(原作:ラブライブ!)

俺の名前は日野下淳平。ここ、蓮ノ空学院スクールアイドルクラブでマネージャーを努めている。▼そこへ、従兄弟の花帆や後輩、後に幼馴染達も加わりてんやわんやの毎日が始まる!!(そして時々恋模様)▼石川県金沢市を舞台に、スクールアイドルに青春を賭ける少女たちと、それを支える男子生徒の物語が始まる!!


総合評価:186/評価:6.33/完結:347話/更新日時:2026年08月31日(月) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>