白銀の妹   作:meigetu

3 / 3
1,400pvどもっす
更新が不定期すぎますけど頑張っていきまーす


三話

ナザリック地下大墳墓 第九階層 ロイヤルスイート

 

至高の四十一人に与えられた個室の一つ。

その中央、豪奢な寝台に一体の魔物が伏せていた。

 

どうしよう。

どうすればいい。

 

しかしそのモンスターの内心は荒れていた。

わかってはいる。

 

あの日、外に出て空の美しさからふと出た

「世界征服なんて面白いかもしれないな」

 

という一言。

勢いのままに冗談めかして言ったその一言。

だが隣にいたデミウルゴスは違った。

 

その一言は計画になり、理念になり、

いつの間にか“当然の未来”になった。

 

ナザリックのNPCは、至高のお方に対して世界をささげるのは当然だというように動いている。

 

気付けば計画書が積まれ、

気付けば根回しが済み、

気付けば実行案が出来上がっていた。

カルネ村侵攻案の最終認可書類が回ってきたとき、心臓があれば止まっていたかもしれない。

 

(私は、そこまで考えていない)

 

それでもNPCたちは疑わない。

 

自分が彼らより賢く、深慮遠謀で、

すべてを見通している存在だと。

 

……困る。

 

ベットに伏せていてもどうしようもない。

柔らかすぎる感触。

かつての世界の自分には縁のなかった贅沢。

 

そこに身を預けつつ、近くから遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)を取り寄せる。

映るのはカルネ村。

 

外は夜なのであろう。空は暗く、そして家々には月明かりに照らされている。

 

夜。

家々の灯り。

煙突から立ちのぼる煙。

家から漏れる温かい笑い声。

 

元の世界と違い、この村は不便だ。

だが――なぜか落ち着く。

 

鏡を操作し、一軒の家へ鏡を向ける。

質素な木造の家。

そこには四人の家族がいた。

 

父親。母親。

そして金髪のおさげをした姉と赤髪の妹。

 

夕食を前に笑いあっている。

 

(………………。)

 

目がそらせない。

 

母親が、皿を差し出しそれを姉妹が元気よく机に運んでいく。

湯気の立つおいしそうな料理。

 

(オムライス………………。)

 

ふと、記憶が走る。

 

あの世界ではほとんど手に入らない卵とご飯。

不格好な形。

 

『失敗しちゃったけど』

 

そう言って笑った母の顔。

 

「…………」

 

胸の奥が軋む。

 

――精神安定。

感情が霧散する。

骨の体には血も涙もない。

 

鏡では、四人が食卓を囲んでいた。

父親が笑っている。

 

(……私は何をしている)

 

他人の家を盗み見る。

人として最低だ。

だが視線は離れない。

カルネ村を見つけてから、これが日課になっていた。

 

侵攻すべきだと進言する者は多い。

地上拠点に最適。

政治的にも利用価値が高い。

正しい。

理屈は正しい。

 

(だが)

 

もし自分が関われば。

あの笑顔に、ひびが入る。

 

自分が触れれば、世界は変わる。

鏡を閉じる。

 

転移から一週間。

恐怖公と隠密部隊による周辺調査は順調だ。

近隣都市エ・ランテル。王国。帝国。地図は揃いつつある。

 

だが、自分は一歩も外へ出ていない。

 

ノック。

 

「モモンガ様、執務のお時間が」

「ああ」

 

感情を切り替える。

 

少なくとも、彼らの理想でなければならない。

 

骨の頬を軽く叩き、立ち上がった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

ナザリック地下大墳墓 第十階層 執務室

 

「なるほど。リエスティーぜ王国はここ数年で目覚ましい発展をしたと。」

「はい。詳しくはこちらの報告書に。」

 

玉座の間には、私の他に秘書としてのアルベド。

そして、目の前には王冠をかぶったゴキブリがいた。

それは儀礼がかった丁寧な仕草で私の執務机に書類をおく。

 

アルベドは微笑みながらも、虫の王からわずかに距離を取っている。

 

「恐怖公いつも助かっている。そなたの、虫が各地を調べることで様々な情報を得られている感謝する。」

「いえいえ、モモンガ様に支えることこそ、我がのぞみ。」

 

と、返される。

本当に整った所作だ。

恐怖公が、出ていくの見送った後、渡された報告書を読む。

 

書類に目を通す。

 

王国。前王のランポッサ三世が急死して以降、若き王子が実務を担い、立て直したとある。

 

(優秀な王か……)

 

もし会えればこの現状を相談できるやもしれない。

いや、さすがに無理か。

 

ここ一週間で、多くの情報が集まった。

 

付近の国の情報も大方、調べ上げ、ここから先はいざどのように動くかを決めなければならないフェーズに入ってくる。

 

「モモンガ様、緊急でご相談したいことが。」

 

執務室入り口から声がかかる。

声質的にセバスであろう。

 

「入れ。」

「は。」

 

と、扉が開かれる。

扉が閉まると同時に臣下の礼をする。

 

「突然の入室申し訳ありません。」

「かまわん。要件は?」

 

と、一週間でようやく慣れてきた魔王のロールを意識する。

 

「は、ナザリック周辺のダミーの山付近に冒険者と思わしき影が。」

「………………。」

 

………………。

冒険者???

まさか、あそこまで隠したのにばれたのか?

マーレが手を抜くことはありえない。

 

「どのような姿をしていた?」

「全員女性のようです。3人おり、一人は大柄の女性。身長の低い女性とロングヘアの金髪の女性です。またトブの森方面に二人。仮面をつけた女性がいます。」

「モモンガ様。討伐のご指示であればすぐに。」

「まて。」

 

と、止める。

どうしよう。アルベドやる気になってるし…。

内心パニックになるのを自覚しつつ、対処を考える。

攻撃。いやだめだ。

 

えっと、大柄の女性と、仮面の女性………………。属性盛りすぎじゃないか。そんなことはいい。

仕方がないので落ち着くためにも恐怖公が持ってきたレポートをめくる。

 

あ………………。

 

「セバスよ。」

「は。」

「もしかしてその冒険者は、このような姿をしていなかったか?」

 

と、ページの一枚を見せる。

そこには、王国アダマンタイト級冒険者、青の薔薇

と書かれたページがある。

 

「は、その通りです。」

 

あぶなかった~。

恐怖公のレポートに助けられた。

いや、そんなことより。そのページを読み込む。

 

最上級冒険者。この世界でトップ。

この世界の実力がわからない以上安易な排除は危険。

沈黙。

アルベドが一歩出る。

 

「討伐のご命令を」

「待て」

 

自分の声が、思ったよりも冷静に響く。

ではどうするか?

ナザリック全勢力であれば叩き潰せるかもしれない。

正直、実戦経験がない以上何が出てくるのかわからない。

また、最上級冒険者が死んだとなれば王国にばれると、ここに何かがあることがばれてしまう。

であるならば。

 

「歓迎する。私が出向く」

 

空気が凍る。

 

「モモンガ様、自ら……?」

 

アルベドの瞳が揺れる。

 

「最上級であれば、この世界の情報を握っている可能性が高い。敵対よりも、まずは観測だ」

 

理屈は通る。

有無を言わさず、私は執務机から立ち上がった。




お気に入り登録、評価、感想をいただけるとやる気が出ます。
よろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

クレマンティーヌを愛でるだけ(作者:鵲一号)(原作:オーバーロード)

1から100までタイトル通り。▼オーバーロードの中ではクレマンティーヌが一番好きです、というもの好きのための短編。


総合評価:1749/評価:8.44/短編:7話/更新日時:2026年05月02日(土) 12:00 小説情報

ギルド長が過保護すぎる(作者:ピロリ菌ex)(原作:オーバーロード)

主人公は会社の先輩でありギルド長でもある鈴木悟(モモンガ)と共にユグドラシル最後の時間を過ごす。しかし彼らを待ち受けていたのはサービス終了なんてものではなく、ユグドラシルのアバターでの異世界転移だった。▼『支援職』いわゆる回復やバフ・デバフを扱う主人公は直接戦闘能力がほとんどないためモモンガは彼の身の安全を確保するために、彼の外出や自由行動をとても嫌がり禁止…


総合評価:1362/評価:8.34/連載:7話/更新日時:2026年05月05日(火) 10:33 小説情報

至高の御方転生記 〜現地人になった御方達〜(作者:ハチミツりんご)(原作:オーバーロード)

至高の御方が、人間になって異世界を満喫しているお話▼※アインズ・ウール・ゴウン一同が現地人に転生しているという小説です▼※ナザリック及びNPCは登場しません。現地人のみです▼※まとめてではなくバラバラに転生しています。短編形式で色んな国、人物を登場されられれば、と▼※設定の間違い、矛盾などありましたらご報告お願い致します


総合評価:8627/評価:8.74/連載:14話/更新日時:2025年09月01日(月) 00:31 小説情報

ようこそ青春至上主義の教室へ(作者:イノセ)(原作:ようこそ実力至上主義の教室へ)

▼赤井萌。少し特殊な過去を持ち、特殊な環境で育った女の子。▼普通の女子高校生を目指す彼女に立ちはだかるは、高度育成高等学校の特性と、同級生たちの画策。果たして彼女は、普通の女子高校生としての青春を謳歌できるのか……?▼※基本的に女の子がイキって女の子を堕とします▼※オリ主無双とまではいきませんが、物語の都合上オリ主つえーになる場合があります▼※多少、もしくは…


総合評価:862/評価:7.69/連載:21話/更新日時:2026年05月04日(月) 12:39 小説情報

転生した狐はメイドになる(作者:くまんじゅう)(原作:転生したらスライムだった件)

転生して狐になってしまった主人公が、何んやかんやあって魔王に覚醒したり究極能力(アルティメットスキル)ゲットしてもそれを隠したりしてメイドとして生きていく物語です。なお、一部にはバレている模様▼*アンチ・ヘイト、クロスオーバーのタグは保険です*所々他作品の能力入るかもです*パッションやテンションやその他諸々で書きました*メイドになるまで結構な話数かかると思い…


総合評価:2844/評価:8.09/連載:42話/更新日時:2026年05月08日(金) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>