白銀の妹   作:meigetu

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九話

「あら、お帰りなさい、お兄様。」

「生きて帰ってこられたのですね、お兄様。」

 

聞き慣れた声。

王城、自室。

 

扉を開けた瞬間。

そこには、我が物顔でくつろぐ二人の妹がいた。

 

ラナー。

そして妹であるミラー。

 

二人は窓際のティーテーブルを挟み、優雅に紅茶を飲んでいる。

 

香りの良い茶葉。

そういった情報に疎い自身でも知っているほど、限られた店でしか手に入らない焼き菓子。

磨かれた銀食器。

 

そして。

その横に積み上がった、大量の書類。

 

「……お前たち。」

 

ザナックはそれだけ言って。

もう何も言う気力がなくなった。

 

そのまま、重たい身体を引きずるようにしてベッドへ倒れ込む。

 

柔らかい。

だが休まらない。

エ・ランテルまでの長距離移動。

神にも等しい存在との会談。

意味の分からない圧力。

 

疲れが、全部まとめて押し寄せていた。

 

「まあいい……。」

 

ぼそり。

 

「もう突っ込むのも疲れた。」

「張り合いがありませんね。」

「そうねぇ。」

 

二人はくすくす笑う。

 

「勘弁してくれ……。」

 

本気だった。

 

この姉妹が自分の部屋で待っている時点で、

ろくでもない話が追加されるのが確定している。

まあ、今回のところは予想はできるが…。

 

それを話すこと自体が、少し嫌になっていた。

 

「そんなことないわ。」

「そうですよ、お兄様。今回は私たちもちゃんと働いたのですから。」

 

しれっと返される。

 

視線を向ける。

ティーテーブルの端。

そこには、山積みだったはずの書類が綺麗に片付けられていた。

 

決裁済み。

分類済み。

署名待ちまで整理されている。

 

自分が不在だった一週間分。

 

それがほぼ終わっていた。

 

「……。」

 

ありがたい。

ありがたいのだが。

 

「で?」

 

 ザナックは天井を見たまま言う。

 

「今度は何を企んでる。」

 

「あら、失礼ね。」

「私たちはいつだって王国のためですよ。」

 

「その言葉を信じられるほど楽観的じゃない。」

 

即答だった。

ラナーは小さく笑う。

 

ミラーは楽しそうに焼き菓子を口へ運んだ。

 

そして。

ラナーが紅茶を置く。

 

「それで?」

 

金色の瞳が、まっすぐこちらを見る。

 

「会ってきたお方は、どういう方だった?」

 

部屋の空気が少し変わる。

ザナックはゆっくりと目を閉じた。

やはり、本題はそれか。

思い出す。

 

死そのもののような骸骨の王。

 

だが同時に。

 

妙に人間臭かった存在。

 

王として振る舞いながら、

時折、妙に気安い空気を見せた男。

 

そして。

 

自分と同じように、

苦労しているようにも見えた存在。

 

「……。」

 

なんと言えばいいのか分からない。

 

神。

怪物。

支配者。

 

どれも間違ってはいない。

 

だが。

 

「……普通の男だった。」

 

ぽつり。

 

思わず、そんな言葉が漏れた。




一章 完

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よろしくお願いいたします。

2章出来上がり次第投稿していきます
meigetu先生の次回作にご期待ください。
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