最狂の呪詛師   作:ボタン

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代償

 

 真人との戦闘後、七海、虎杖は高専に無事に帰還。

 

 真人により重症を負った天神崇徳は上層部の指示により、地下施設に幽閉されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚めるとそこに景色は無く、ただ目を塞ぐ布の感触があるだけである。

 

「なんだ……ここは?」

 

「あ、ようやく目覚めた?おっはよー崇徳!!グットティチャー五条悟だよ〜!!」

 

「ーー悟か。ここどこ?」

 

「うーんとね、ここは高専の地下かな?あぁそれと、君の術式封じの為に、目隠ししてるから。ごめんね!!」

 

「いや、目隠しは良いよ。そんな事だろうとは思ってたよ。それに四肢を切り落とされてる時点で、俺に出来る事はそんなに無い」

 

 目隠しだけで無く四肢を切り落とされ、イモムシのような姿で寝台に寝させられている。

 

「んで?現代最強さんが、わざわざ時間を作ってまで俺に聞きたい事は?」

 

「たはー!次の瞬間に死ぬとか、そんな事思わないわけ?」

 

「ハッ、それじゃあ俺の意識が無い時に、呪具で俺を殺すべきだな。起きてる時の俺はゴキブリ並みのしぶとさだぜ?」

 

 五条悟の雰囲気が変わる。先程までのような、おちゃらけた空気では無く、『特級呪術師』としての空気に。

 

「もしかして、傑の居場所か?」

 

「ーーあぁそうだよ。崇徳に聞きたい事が二つあるんだけど、その内の一つね。上の連中がうるさいの、傑は何処だーって」

 

 崇徳はため息を一回、はさんで口を開く。

 

「ーー結論から言うと、傑の居場所は知ってる」

 

「ーーなら!!」

 

「でも、教えない」

 

「ーーふーん。そんな事言うんだ。俺に?」

 

 俺が押し潰されそうな程の呪力が、怒りと共に悟から放たれる。

 

「っ……傑の術式は知ってるよな?」

 

「あぁ知ってるよ。『呪霊操術』自身の取り込んだ呪霊を操れるってやつだろ?」

 

「その術式が、ある人物に狙われてんだよ。そして上層部の何人かはそいつと繋がってる」

 

「マジで?」

 

「マジで」

 

 はぁー、とため息をついて五条悟は上を見上げる。そのため息は、ここにいない親友への憂いなのだろう。

 

「安心しろよ悟。傑は俺が作った特殊結界の中に幽閉してある。傑が自ら出ない限り、誰にも気付かれないし気付いたとしても、物理的に行けない場所にある」

 

「いや、何処だよ」

 

「教えるわけねぇだろ。少なくとも日本じゃ無いね」

 

「まぁ、今はそれで良いよ。ついでにもう一個、聞いて良いかな?」

 

「あぁ、良いぜ?」

 

「何で君は自分の寿命を削ってまで、呪霊達を助けようとしてるんだい?」

 

 結構えぐってくるな、悟……

 

「“六眼”で見えちゃったんだけどね。崇徳さもう、十年も生きれないでしょ。何でそんなに呪霊に固執してるのか、教えてくんない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京都立呪術高専高等学校、地下資料室。

 

 過去数百年にわたって、術士や術式。過去に起きた呪霊の事件や、呪術に関する事故事件が詳しく書かれた本を保管している場所。

 

「七海さん?こんな夜中に何してるんですか?」

 

「伏黒君。こんばんわ」

 

「あぁ、はい。すいません、取り込み中でしたか?」

 

 資料室のベンチで資料を広げ、考え事をしていた七海に、任務帰りの伏黒が不思議そうにたずねた。

 

「いえ、少し天神さんの術式について調べていたんです」

 

「『数値化呪法』でしたよね?確かコンピュータが生まれた時に発生した術式らしいですけど、それがどうかしたんですか?」

 

「伏黒君、世界初のコンピュータが生まれた年がいつか、知っていますか?」

 

「確か……1940年頃だった気がします。意外と浅いんですね、『数値化呪法』の歴史は」

 

「えぇそうです。だからこそ異常なんですよ、この術式は」

 

 そう言って、七海は伏黒に手元にあった資料を見せる。

 

「これは……」

 

「約80年で、少なくとも一般人、術士含めて200名以上がこの術式に似たナニカを発症し、その9割近くが自殺しています」

 

「高専では20名を保護しましたが、全員3年以内に自殺したいます」

 

「いくら何でも、こんな短期間で沢山の人が同じ術式を持つなんて……はっきり言って異常ですよ、これ」

 

「ーー高専で保護していた最後の1人が、遺した日記にはこう記されていました。『何で皆んなアレを見て、正気なのだろうか、私には到底耐えられない物だ。呪霊を視界に入れた瞬間、少なくとも50人鬼の様な形相で呪詛を呟きながら、私の足に噛み付いて、体をよじ登ってくる』この時、記録によると見ていた呪霊は、()()()()です」

 

「ーーまさか、術式の影響?」

 

「おそらく、そうでしょう。これは私の予想ですが、『数値化呪法』を持っている人は皆、個人差はあれど“六眼”を超える目を持っていたと思われます」

 

「“六眼”は『呪力の流れを見る目』に対して『数値化呪法』は、『既に起こった呪力現象の再現』です。つまり、()()()()()()()()んですよ……呪霊が生まれる手順を逆算して、()()()()()が見えていたんでしょう。恐らく、呪霊に対する恐怖は私たち以上でしょう」

 

「じゃあ、何で……何故、天神は呪霊を救おうとしているんですか?」

 

「それは、本人に聞かないとわかりません。ここで考えても、それは考察の範囲を逸脱しません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーどうしても、見えちまうんだよ。泣きながら、鳴きながら、俺の足に縋る人達が、呪霊の影が。だから、理由無く殲滅する事がさ、すっげぇ可哀想だって思っちまったんだ。それにさ、俺が助けなきゃ増えるんだよ、声が」

 

「お前達と意見が合わない事なんて、百も承知だよ。でも、これは俺がやらなきゃいけない。そう思ってる」

 

「ーー知ってるか?『特級呪術師(俺たち)』を見た時の呪霊の反応を、アイツらすげー怯えてるんだよ。()()死ぬんじゃねぇかって、そう思ってる。初めてそれを見た時、『あぁ、呪霊も人間なんだな』って思ったんだ」

 

 部屋に深い沈黙が流れる。天神崇徳がこぼした言葉は、信念にしてはあまりに歪で、義務にしてはあまりにも恐怖に駆られている物だった。

 

「仮にだ、仮に崇徳の理想が叶ったとして、呪力が使えない非術士がいる以上、呪霊は消えないよ?」

 

「そこについては、もう答えは出ているよ。俺の命を担保に、全国に必中のみの【無量空処】と酷似した【領域】を展開して、情報を呪力の扱いだけに絞って全国民に入力するつもりだ」

 

「それさ、絶対死人が出るよね?何?崇徳の理想の未来ってのは、自分が死ぬんで、ついでで何人か一緒に死んで下さいって言ってるもんだよ?」

 

「あぁ、そうだろうな。俺の予想だったら、少なくとも一万以上は死ぬだろうな」

 

 その言葉を聞いて、五条の雰囲気がより一層、圧を増していく。もしこの男が傑の居場所を知っていなければ直ぐに殺しにかかっていただろう。

 

 

「うるせぇんだよ。お前の目は節穴なんだな?」

 

 崇徳の言葉は、まるで泣きそうな子供のような様子だった。

 

「ーーあ?」

 

「お前の“六眼”は、呪力という因果を廻る物を見通す目だ。でも……そこに“人”の感情は入って無い、いや“六眼”が不要と判断したんだろうな」

 

 まるで羨むような目で五条を見つめる。

 

「“他人”を理解しようとしない化け物に、上から目線で説教される謂れはねぇぞ?」

 

 その時、崇徳の目を隠していた布が地面に落ちる。

 

「ーー反転術式」

 

 五条悟の目の前には左腕意外、完全に完治した崇徳が一矢纏わぬ姿でそこに立っていた。

 

 直ぐに悟は、人差し指を立てて【赫】を撃つために呪力を練るが、途中で霧散する。

 ゆっくりと、ゆっくり上げていた指が下がっていく。あの時の自身の言葉が心に刺さっている。

 

 

 

『俺に救えるのは、他人に救われる準備のある奴だけだ』

 

 あぁ僕に、彼を止める資格は有るのだろうか。

 

 

「やめとけよ、五条悟。俺を殺してもさっき言った【領域】は展開される。今、お前は見ている事しか出来ねぇよ」

 

「安心しろよ、今直ぐはしねぇよ。まだ問題は山積みだ。あと二年はかかるだろうな」

 

 そう言い残し、天神崇徳は高専を後にした。

 

 道中、大勢の術士や補助監督にその姿を確認されて、七海建人一級術師、虎杖悠仁特級術師、伏黒恵二級術師が立ちはだかったが、天神崇徳特級呪詛師は術式を使う事なく、彼らを抑え込んだ。報告によると終始、会話が噛み合わない様子が確認された。

 

 その後彼は泣きながら歩いていたそう。その姿はまるで迷子の子供のようだったと。




 すいません。虎杖の階級がわからなかったので、とりあえず宿儺が中にいるので特級にしました。間違っていたら教えて下さい。
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