葬送のフリーレン ~ 鋼の英雄の物語 - Path to Stahl - ~ 作:rvr75_raiden
かつてオレオールへと旅をしたフリーレン一行は長い旅の末にシュタルクの故郷であるクレ地方の戦士の村の跡地に根をおろした。
そして、朽ちた村を人の住める形に復興させ平和な故郷の地を取り戻したいうシュタルクの希望の元、周辺を再開拓を開始して十数年の時が過ぎていった。
様々な人々の協力の元、シュタルクとフェルンが村の跡地周辺一帯を領地として治めることで平穏な日々が続いていたそんなある日、
シュタルクが不在な期間を境に盗賊による襲撃被害が急増し始めた。
ちょっとした野盗や追い剥ぎ程度であれば、周辺の街で協力して防衛機構で制圧したのだが尽く失敗に終わる。
状況の悪化に悩む領主代行のフェルンに、シュタルクとフェルンの子であるシュタアルは盗賊の討伐任務を申し出る。
我が子の申し出に母として反対するフェルンだったが、フリーレンや彼女の教え子のルーエの後押しもあり、フェルンは渋々これを了承する。
そして、出発の日を迎えた朝。移動中のフリーレンの「昔にもこんな事があったね」という言葉から
現地へ馬車での移動中の時間つぶしとして、シュタアルは父と母と共にしたかつての盗賊討伐の話を語り始める。
■荷馬車と遠き日の思い出
今から10年近く遡り、交易街の構想が形となり始めた時期。
各州の支援領地から資材の送り届けが活発に行われると同時に懸念していた問題が顕在化した。
搬送用の馬車が賊に襲われるという事故が起き始めたのだ。
資材の中には食料やお金にしやすそうな物もある程度含まれる。
そんなものが頻繁に送り届けされるのをみて一儲けしようと愚かにも考える者が出てしまった。
襲っている盗賊達は、当時の時点からでも大陸内でも屈指の戦力とされるフリーレン一行の関わる土地だと知ってか知らずか……
シュタルクとフェルンは早々に根本の寝蔵ごと壊滅させるために動き出した。
当然ながら今のシュタルク達に護衛を頼むほどの資金力がない……自分たちでやるしかない。
それに対応に泣き寝入りをすれば際限無くやってくるし住民も安心して移り住むことが出来ない。
村の未来がかかっている。避けられない戦いだった。
✧ ✧ ✧ ✧
ある朝、霧立ち朝日もまだ見えぬ時間帯。早朝出発にしたのは子供たちに悟られずに出発するため。
「じゃあ、フリーレン。子供たちのことを頼むな」
「朝ご飯はお伝えした通り、後は温めるだけのものを用意しています。フリーレン様の方でもご用意できると思います」
「判ったよ。二人とも油断しないようにね」
この日ばかりは流石に寝坊をせずに素直に起きてきたフリーレンは、2人に少しほころびた皮のローブを手渡しながら口を酸っぱく2人に忠告する。
「いつかの経験でわかってると思うけど、対人戦は理屈じゃない。
相手も人だから、策略を練ってくる。いつどんな時も格下を相手にするとは思わないこと」
「ああ、判ってる」
そう言いながらシュタルクはローブをまといつつ御者台に乗る。
「対処しなければ、住民が安心して過ごせませんから。必ず解決してきます」
フェルンはその隣に座る形だ。馬車も少々使い込まれたものを使っており。見た目は旅の商人夫婦といった風だ。
「街のことは私に任せて。二人とも行ってらっしゃい」
「ああ、行ってくる!」
そう言ってシュタルクは手綱を取って馬車を走らせた
✧ ✧ ✧ ✧
荷代にある古びた樽。木材の隙間から覗いた瞳はシュタルクと同じ赤の色。
(気づかれてないかな? どこに行くんだろ?)
(案外うまく行きました。早起きした甲斐がありましたね兄様)
微かな隙間から見える風景は、馬車の背部の風景。
街道の方向からすると、リーゲル峡谷側へと進んでいるように見えた。
(フリーレンには悪い事したかなぁ)
(書き置きをしているので、大丈夫でしょう)
樽の中でそんなコソコソと話をしているのはシュタルクとフェルンが家に置いてきた……というか眠っていたはずの子供たち。
兄のシュタアルと妹のティアフォート。
シュタルクとフェルンが今回のような遠征をすることを察知し、準備状況をチェックし、どうやって乗り込むかを検討した結果。
シュタルクとフェルンが出発するより先に起きて荷物の中に紛れてしまえばいいだろうというシンプルな作戦。
二人が寝ていると思われている布団の中には丸められた座布団やぬいぐるみが放り込まれている。
もう少しすると、起こしに来るであろうフリーレンが慌てふためくことであろう。
(ごめん、フリーレン。でもやっぱりこの目で見てみたいんだ)
そんな少年の想いと共に馬車は進む。
✧ ✧ ✧ ✧
その一方、戦士の村跡地のシュタルクとフェルンの家の中では
「いない……!!これは……やられた……」
睡眠中、ある程度は見える魔力のゆらぎが全く感じられれず。
訝しんで子供部屋の掛け布団を引っ剥がした時にフリーレンが思わず漏らした一言。
「これは……あの二人、フェルンとシュタルクに付いていったな……」
フリーレンは頭を手で抑えながらこれはまいったという表情をしている。
実際まいった。フェルンから任されていたのにこの失態。
流石に今から追いかけていくと、村の戦力がゼロになってしまう。それはまずい。
現状でもシュタルク達を信じて移住してきてくれた人達がいるのだ
「シュタルク、フェルンごめん!あの子達多分そっちだ……」
■襲撃者と密航者
「リーゲル峡谷か……懐かしいと言うべきか因果なものだなと言うべきか……」
ここはシュタルクがフリーレンとフェルンと出会い、紅鏡竜との初めての実戦をして勝利を収めた地。
「シュタルク様が人生で初めて引き籠もっていた場所ですね」
「……。
せめて『私達が初めて出会った場所』とかそういう言い方できない?」
峡谷は天然の洞窟なども多く盗賊の住処にしやすい場所も多い。
近隣に村もあるため自衛の警備隊が目を光らせていたのだがそれでも今は少々賊の数も増えており、ややオーバーフロー状態といった所。
それ故に被害も出てシュタルクとフェルンが動くことになったのだが。
馬車が走る先は徐々に薄暗く、影の濃い、渓谷の隙間にある森の中に入っていく。
ふと、ここに来て
「……フェルン」
「判っています。3,4,5,6……少し離れて2名、8名程度はいますね」
シュタルクとフェルンは表情と姿勢を崩すこと無く小声で確認を取った。
……馬車を取り囲むように追跡している人間の気配を感じる。
フェルンはおそらく常人にもあるような微量な魔力の揺れを感じて数を数えている。
峡谷の岩肌の露出した場所ではなくまだ森の中なので人が隠れるのにはちょうどいいのだろう。
馬車の速度に追従しつつ、徐々に散開して周囲を取り囲むように陣形を整えている。
(少し距離をおいて、一人だけ……動きのいいやつがいる……)
殺気のようなものを感じないのに、嫌な感じがする。
フェルンの魔力のトレースで追いかけられていない場合は、注意が必要だと自身に言い聞かせる。
どうやら、襲撃を指示しているリーダー格のようなやつがいる。
✧ ✧ ✧ ✧
少し開けた場所に出る手前、ようやく追跡者に動きが見えた。数名が先行して前方に出てくる。
前方の通り道、茂みから2名ほどの男が出てきた。
いずれも盗賊然とした風貌の男たち。
「……おい、そこの商人。ここは、交通料取ってんだ。通りたきゃ払う物払いな」
ベタベタだ……今時珍しい。少々バカバカしくなってきた。
隣でフェルンはフードを深くかぶって顔を隠しているが
(これは怒ってるなぁ……まあこんなのに忙しい最中の手間暇掛けてるんだし、そりゃ怒るよね)
この手合は、どう考えても通行料だけで済ませる気はないだろう。
何なら女性はさらって、上物なら売り飛ばすぐらいの事をやる。
ここにいない他の連中は抵抗した場合や逃げおおせようとした途端に襲ってくるのだろう。
とりあえず乗っておこう。下手に暴れて逃げられると厄介だ。
全員おびき出して昏倒させれば上々……
問題は遠巻きに指揮しているやつ……こっちに来てくれるか?
「や、やめてくだせぇ……俺達はしがない商人の夫婦です。
あんた達が満足できる金なんて持ち合わせてねえよ」
怯えた演技で答えてみる。
隣のフェルンは手で口元を抑えて顔をそむけ震えている。
あきらかに笑いをこらえている風味なので、大根で悪かったな……と半眼になってフェルンを睨む。
……まあ、いいか。見様によっては怯えているようにも見える。
「ああん、後ろの積み荷は何だよ。カネがないならそっから金になるもの出せばいいだろ」
どこまでもセオリー通りで助かる。
「ひぃ……、お前……突っ切って逃げるから捕まっていろよ!」
手綱を引こうとした瞬間、
「ちょっとわざとらしくありません?」と言いたげなフェルンの視線が見えた。
いやいや、今のはいい演技だろ!?と思ったんだけど駄目?
馬が慌てて進もうとした所に残りの6人が前後から取り囲むように現れた。
体躯の良い男たちに囲まれて馬は急停止する。
あらかた掛かった。が最後の一人は遠巻きに見たまま……
仕方がない、全員寝かせて追跡するしかあるまい。
「さて、じゃ積荷は全部いただいていくぜ。
あと連れは女だな。上物ならそいつも連れて行け!顔を確認しろ」
仲間の男が馬車に登ってフェルンに手を伸ばす。
(フェルン、少しだけ我慢してくれよ……)
――と、思った瞬間。シュタルクとフェルンにとっては想定外のことが起きた。
馬車の後方木の樽を下ろそうとしたのか木材の樽が落ちて割れる音と共に
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
……覚えのある子どもの声が背後で荷を下ろそうとしていた場所から聞こえたのだ。
「ああっ!何だこのガキど ―――」
そんな声が聞こえてからの彼女の判断は早かった。手を伸ばしていた盗賊の腕をひらりと回避しそのまま立ち上がって荷台の方へ駆け出す。
背後にいるのであろう聞き覚えのある子供に向かって野党が手を出そうとしたその一瞬――
――カッ―――
と、鋭い魔力光が輝く。
そのまま、ドンッと短い空気の振動音が鳴り響き……
「―――っガぁは!!!!」
手を出そうとした男は、叫び声とともに 10m 程度回転しながら吹き飛んでいった。
文字通りぐしゃぁという音で地面に激突した男はピクリとも動かない。
「……あっちゃぁ」
シュタルクは顔を手で覆いながら天を仰ぐ。
「な、な、なん……だぁ……」
盗賊たちが見上げる馬車の上空。
くたびれたフードから、はらはらと美しい紫の髪が揺れる様に躍り出て舞う……
表情は薄いのに、見下ろす眼光はあきらかな怒気をはらんでいる事がわかる。
「シュタアル……ティア……どういう事ですか。ちょっと今日はお尻を叩く程度で済む話ではありませんよ……」
そんな静かな怒りを胸に……取り出した杖からは シュゥゥゥ~ と魔力残り火的な煙を上げている。
樽から放り出された子供達の顔は焦りで青くなっている。
「あっ、あの……えっと……バレた?」
「ええ……シュタアル……どういう事ですか?」
「あの……あのあの、母様……ちょっと違うんです。これは……」
「あら、ティアフォート、何が違うの? お母さんに教えて」
上空で表情を一切変えずに子供達へと問いかけるフェルンを傍目にシュタルクは状況を確認する。
吹き飛ばされた盗賊の男は……よかった、生きている。
どうやら
連れ立っていた盗賊の男が二人で肩を貸して起こそうとするが完全に伸びてしまった様子だ。
魔法使い……それもかなり高位の使い手……と理解してしまったらしい連中はジリジリと子供達の眼の前に降り立ったフェルンから距離を取る。
これは、駄目だな……一網打尽どころではない。
しかし、フェルンの行動は致し方ない……子供達を守るためだ。
怒り狂っているようにも見えるが確実に防御魔法で囲える位置に二人を確保している。
遠くで見ていた男の気配は完全に消えてしまった。用心深いやつだと思いつつ拳を握るシュタルク。
まだ眼の前の魔法使いの登場に、どうするかを決めきれていない連中を……
「ごはぁっ!!」
「な、こいつ!! がぁっ」
とりあえず、昏倒させることから始めよう。
✧ ✧ ✧ ✧
「「ごめんなさい……」」
並ぶ兄妹の頭の上には揃ってたんこぶが出来そうなほど頭を小突かれている。
(容赦ないな……)
昔、シュタルクを叱る時はぽこぽこで済んでいたのだが、あれはどうやら対シュタルクの方法らしい。
どっちにしろ、フェルンのげんこつでシュタルクのダメージをいれることが出来ないので心に訴えかけるのが最も効率的ではあるのだが……
これは子供たちには効果がないのでここは毅然とムチはムチとして与えるしか無い……のかな?
なお、シュタルクは昔からこれが無茶苦茶苦手なので兎に角周りには甘すぎると指摘されている。
「もう付いて来てしまった以上、お父さんとお母さんのそばを絶対に離れないように!」
「はい……」
襲撃が知られてしまった以上、フリーレンに連絡して回収してもらう程時間をかけるのは得策ではない。
今こうしている状況すら良くはない。
控えの連中が「たかだか二人なら畳み掛けてしまえば良い」と判断して待ち構えてくれると祈る他無い。
「シュタルク様、この子達の安全確保は私の方でなんとかします。申し訳ないのですが後衛は……」
「判ってる。遠距離の射手だけフェルンで対処してくれるか?あとは全部なんとかするから」
「はい。わかりました」
フェルンだけ子供達を連れて帰る……にしてもそれはそれで危ない。
遠くで見ていた男……少なくとも単独の魔法使いが相対するのは危険だ。
ならフェルンはシュタルクのカバー範囲内で子供達はフェルンの防御範囲内にいてくれるのが一番良い。
■峡谷の賊と英雄の腕(かいな)
「ギフティ!! 聞いてねぇぞ! アイツラは何だ!」
「あーあーあーあー、うるさいねぇ、君たちは」
峡谷に隠し作ったアジトに戻った盗賊達は今回の襲撃を命じた男へと苦情を投げかける。
カリスマ性のある頭領がいて組織建てている……という訳でもないごろつきの集まり。
強いて言うなら、強いやつが偉い。
そして、現状この中で特に取り留めて何も特徴のない髪を後ろでまとめた目付きの悪い程度の……一見すると何の特徴もないひょろっとした男に誰もが勝てない。
どこからともなくふらっとやって来て、仲間にしてくれと言ってから全員を実力で黙らせた奇妙な男。
その男は自らを猛毒……ギフティと名乗った。
「遠くで見てたから判るよ、ありゃ冒険者ギルドや魔法協会でもマスタークラスは優にある腕だね。
君等が単騎で襲いかかってもどうにもならんわ」
「くっ、この、言わせておけば……
ありゃ、俺達の討伐を目的にここに来た風味だぞ!」
そう言われて、ギフティはくつくつと笑う。
「ガキがいたでしょ、弱点をわざわざさらしてくれているんだ。
存分に使わせてもらいなさいな」
その時、ドアを勢いよく空けた伝令係が入ってきた。
「おい、襲撃の二人組、ガキ連れたままこっちに来るみたいだぞ!」
「おやぁ、二手に分かれてくれたら……おもり付きになったほうをワンチャン撃てると思ったけど。
冷静というか、高慢というか、子連れで狩れると思われてるみたいよ、君達」
ギフティは実に愉快そうに他の盗賊達を煽る。
「くそ、全員叩き起こせ! 体格いいやつも全員だ! 取り囲んで袋にすれば行けるだろ!」
「はーい、がんばってねー」
部屋からドタドタと出ていく盗賊連中を手を振って見送った後、椅子の背もたれに体重を預けながら一人ぼやく。
「ようやく出てきたねぇ……
しかし、噂には聞いてたけど思ったよりやばいな。マジで大魔族とかヤッてるんじゃない?
手傷ぐらい負わさないと許してくれないよねえ……雇い主」
愚痴のような言葉を漏らしつつも男はとても楽しそうに嗤った。
✧ ✧ ✧ ✧
「まさか我が子連れ行軍になるとはなぁ……」
馬車は一先ず適当な場所に隠しおき、馬の方は魔法で合図があると戻ってくるよう暗示をかけて野に放った。
繋ぎ止めている間に狼に襲われでもしたら可哀想って理由だが。
そのまま現地には歩きで向かう。
子供達は手を繋いで連れて行く他ないが、フェルンに両手を取らせるわけにはいかない。
そのため、フェルンはシュタアルとシュタルクはティアフォートの手を握って渓谷へと向かうことにした。
向かう先が判っている理由はフェルンが吹き飛ばしていた賊にトレースの魔法を仕掛けていたためだ。
確率は五分だが、相手に魔法使いの類がいた場合の逆探知の可能性もあったのでおおよその位置を把握後には切断済みだが。
道すがらチラチラと視線を感じる。おそらく斥候がこちらの様子を伺っている。
まあ、状況がここに至れば致し方ない。
「父様……」
手を繋いでいる娘がシュタルクへと声を掛ける。
おそらく、視線に気づいたのだろう。さすがフェルンの血を引く娘、優秀な子だ。
「判っている。斥候がこっちを補足したみたいだな。
流石にこの状態で見つからずに行くのは無茶だったか」
「いえ、足がつかれました。休憩しませんか?」
えぇ、そういう事……と、
ティアフォートの言葉を聞いてフェルンの方を振り向くと……
「休憩にしましょう」と苦笑いをしてシュタアルの方を見ている。
シュタアルもそれなりにつらそうだ。まあ子供の体力で無茶はできないか……とシュタルクは肩をすくめた。
✧ ✧ ✧ ✧
とはいえ、時間をかけると相手に準備する時間を与えることになる。
……いやまあ、もう十分に向こうも立て直しているだろう。逃げてないことを祈るばかりだ。
休憩がてらに子供達に今回のことの理由を聞くことにした
「で、なんでこんな馬鹿なことをしたんだ。危ないんだぞ、本当に」
「……だって」
頬を膨らませたシュタアルは応えようとしない。
「兄様は父様と母様がここ数日ピリピリした空気を感じて心配していたんです」
シュタルクから渡された水筒の水を飲んでいたティアフォートは言い淀むシュタアルに代わりに答えた
「ティア!」
無論シュタアルは抗議の声を上げる。
「もう隠しても、意味ないです」
「う……」
相変わらずのパワーバランスに苦笑しながらシュルクは我が子の隣に座り、シュタアルの顔を覗き込んだ。
「……村の人達も言ってた。怖いって。危ないって
たくさんの人に囲まれたら父さんや母さんでもどうなるからないって……
でも、父さんも母さんもみんなを守る英雄だから、それで……」
シュタアルは心配と、羨望と、ごちゃまぜになった感情を整理出来ないままに困っている様に見えた。
「そっか……」
シュタルクはそんな我が子を片腕で頭ごと抱き寄せながら
「……心配かけさせてゴメンな」
我が子の頭を撫でつつ伝える。
「……そういうの、そういうの。……やめてよ」
腕の中で遠慮がちに呟くシュタアルは本当に心配していたんだろう。
シュタルクの体に強く身を寄せてくる。
「ごめん……でも大丈夫だ。父さんと母さんに任せろ」
「……うん」
少し近くにいたフェルンはティアフォートの後ろに立ち彼女の頭にそっと手を添える。
少し嘆息をしたと思ったら彼女の頭を撫でだした。
呆れたというより「しょうがない人達だ」と温かな笑顔で見ている。
「母様……」
「素直じゃない娘ね……」
「……」
自身の髪に触れる心地よい母の手。ティアフォートはそんな母に甘える様に身を寄せた。
温かい。世界で最も安息の出来る場所がやはり母フェルンの存在を感じる場所なのだと実感する。
「あなた達が悪戯をしたいわけではないのは理解しています。
――でも
………………二人とも帰ったらお仕置きです」
………やっぱり駄目らしい。
「……そこは許してもらえないんですね」
ティアフォートは母に体に身を預けながらも苦笑いで答えた。
■英雄と父の背中
休憩を終えて再び移動を再開すし、程なくして峡谷の開けた場所に到着した。
前方には炭鉱跡と思われる洞窟が複数あり、昔はここで鉱石採掘がなされていたであろう場所が広がる。
「いかにもって感じではあるな」
炭鉱として賑わっていたであろう時期に作られた小屋などがまだ残っている。
「シュタルク様……」
「判ってる。散っているけど取り囲むようにこちらを見ているな」
気取られない程度の小声でコミュニケーションを取る。
どうやら逃げずに来てくれたようだ。散り散りになって野盗として活動されると厄介さ極まるためここで全員ぶっ飛ばして捕まえるのがベストだ。
ちなみに、先に襲撃した者たちは全員捕縛して馬車の中で寝かせている。
ついでに、フリーレンからもらった相当深く眠ってしまう薬効も飲ませてしまっているのでまる1日は起きることはないだろう。
全部片付いたら周囲の村の衆にも手伝ってもらいつつ国の憲兵に突き出す予定だ。
正直な所は憲兵も最初から同行していただき、その場その場で確保して頂きたかった。
自治領でかつ貧乏弱小な地域ゆえの悲しい現実ではある。
さて、もう少し進んだら岩場の影にいるような射手の射程範囲となる。
「シュタアル、ティアフォート、二人共私から離れないように」
「うん……」
「はい……」
素人の集団……でもないが影なる戦士たちの様な極まった者や上位魔族といった単純な頂上生物達と渡り合ってきたシュタルクとフェルンからすると、盗賊の集団などの個々の戦力は大したことはない。
何なら、殺気を消せてない分おおよその場所が気配から判ってしまう。
フェルンもおそらく常人からも見えるような僅かな魔力の流れを見ているのだろう。
殺気というのは相手の命に対する意識そのものだ。
故に勢い込んでこちらを狙う者はよく分かる。だが……まるで息をするようになんの興味も感情もなく、相手の生命を奪える手合は……攻撃意思に殺気がこもらない。
実に厄介な……嫌な感じがするのだ、いることは判るが一人位置が掴めきれない。
影なる戦士クラスのが出てくるのか、それ以上か、それ以下か……何にしろ仲間に紛れてこちらを見ている。
そんな折、峡谷どこからかこだまするように声が聞こえた
『よぉ~、田舎町から派遣された子連れの戦士と魔法使い様よ。
随分舐めた真似してくれるじゃない……
ここ、どこか判ってるー? 家族でピクニックに来るような場所じゃないのよー』
峡谷にこだまする声は均一に鳴り響く。
その口調は相手を馬鹿にしたような、あえて精神を逆なでするように訴えてくる。
「……シュタルク様、これはおそらく声を拡散する魔法です……
民間魔法レベルのものですが、おそらく位置を掴ませない気ですね……
おっしゃっていた通り、一人だけ厄介な使い手が混ざっています」
「そうみたい……だな……」
シュタルクは背中の戦斧を取り出し、回転させてからそのまま勢いよく柄を地面に叩きつけた。
斧の柄が設置した位置……叩きつけた岩の中心に、放射状にピキピキとヒビが入る。
「随分と近隣の街に迷惑をかけてくれたな。田舎町だと思って舐めてくたものだ」
声の主は相変わらず場所を悟らせないように語りかけてくる。
潜伏している様な連中はなんとなく判るのに、この声の主の場所は掴めない。
『そーなんですよ、最近それなりの規模の街を作ろうとかいう気前の良いやつがでてきまして、我々も良い商売をさせてもらってます』
「……」
背後にいるフェルンの温度が上がった……いや下がったのかな。
「かあ…さん……?」
空気を察したのかフェルンの隣でコートの裾を掴んでいたシュタアルはフェルンの顔を覗き込む。
とはいえ、フェルンがこの程度で我を忘れて怒り狂うことはない。むしろこういう時程冷静に対処をする人間だ。
シュタアルの頭をそっと撫でたフェルンは「大丈夫、下がっていて」と呟いた。
✧ ✧ ✧ ✧
ギフティは気配を消しつつ渓谷の中で死角となる岩場のを縫うように移動していた。
もし仮に補足されてもすぐに逃げられるようにだ。
(さて、そろそろいい頃合いかな)
とぼけてみせたが、相手の事情は知っている。
今や泣く子も黙る元勇者パーティーの伝説の魔法使いフリーレンが連れた二人の凄腕の冒険者。
英雄シュタルクと一級魔法使いのフェルン。いわゆる英雄夫婦だ。
ここにいる盗賊共にはあえて伝えていない。せっかく撒き餌だなのだから全力で飛びかかり盛大に散ってもらおう。
誘うのは一瞬の油断。
「しかし、人使いが荒いねぇ……こんな超一級クラスの相手に深い手傷追わせてこいなんて」
何を考えているのかこんな化け物と敵対しないといけないなんて。
「ははは、なんて、なんて!実に……実に面白い……」
ギフティは歪んだ笑い顔で拡声魔法で言葉を告げる
『それでは、選抜部隊のみなさーん、前に出ましょう。
子連れで俺達に挑んでくる愚か者に天誅しちゃいましょう』
ギフティの呼びかけに、岩場の影からぞろぞろとガラの悪い屈強そうな男たちが姿を出す。
『じゃあ、皆さんよろしく』
✧ ✧ ✧ ✧
「出てきましたね……」
「結構いるな、全員残ってくれたってことかな?」
ぞろぞろと出てきた男たちはシュタルクとフェルンの前に立ちはだかる。
向かい合った先、先頭に立つ男がシュタルクに声をかけてきた。
「送り込まれてきたデタラメに強い襲撃者ってのはお前らか?」
「送り込まれったというより、自分たちで来たんだけどな。お前らのやってることは……俺達の夢にとって迷惑だ」
「夢ね……」
男は自嘲気味に笑う。
「そんなご大層なものを見ていられるのは結構なことだな」
「俺と、家族にとっては大切なことだ」
「そうかい、じゃあ夢も金も全部ここにおいて俺達の明日の食い扶持になってくれや」
判ってはいたが、言葉ではわかり会えない様子にシュタルクは戦斧を構える。
そして、そんな父を背後から眺めていたシュタアルはすぐ隣のフェルンのコートの裾を強く握る。
――怖い……
――恐ろしい……
武器を持って襲ってくることじゃない。
数十人いる人間の、意識が、敵意が、悪意が……自分たちに、目の前の大好きな父に一点に向けられている。
平和な街に住む自分たちでは普段ありえないほどの憎悪の念が渦巻いている用に思えた。
流れてくる憎悪から身を守るように本能的に母の身体に身を寄せる。
「シュタアル……怖いのはわかります。でも目を開けなさい。ちゃんと見なさい。
あなたが見極めようとしたものは、目を閉じ耳をふさいでいては決して相対すること叶いません」
母のフェルンはそう言いながら自身のコートの裾に隠れようとしてたシュタアルに声を掛ける。
「でも……」
戦斧を持って構える父の目の前には数十人の武装した男たちが構えている。
いずれも大柄で、本来なら数の暴力に抗うことは叶わないだろう。
フェルンは震えるシュタアルの頭を手を添えた。
「問題ありません。お父さんは……戦士シュタルクは。この大陸を代表する最強の戦士です。知っているでしょ?」
「うん……」
目の前で盗賊の男たちの対峙するシュタルクは腰を低く構えた。
一触即発の空気。
「だから、信じてあげて。他ならぬあなた自身が、お父さんは誰にも負けない人だと」
「母さんは、信じているの……?」
「お父さんは、戦士シュタルクは、どんなに恐ろしい相手でも、どんなに怖くても……大切なものを背にした時、決して一歩も引いたりはしません」
「父さん……」
シュタアルの視線の先、一人の戦士の背中は、対峙する大柄の野盗達より小柄なはずなのにどうしてかとても大きくて広いものに見えた。
✧ ✧ ✧ ✧
たとえ、どんな相手でも、格上でも、格下でもシュタルクの手はいつも震える。
自分が傷つく事には慣れている。
しかし、大切なものを自分が守れるのか、何一つ失うことなく勝つことが出来るのか……
恐ろしいものは何だ? 守りたいものは何だ? 優先順位は?
すべてを受け入れ、この身は戦うこと叶うのか。
いつだって、どんなときだって自問自答している。
―――ばれ!!
背後から、小さな声が聞こえる。
聞き覚えのある声が、シュタルクの魂に直接呼びかけてくる。
―――がんばれ!!
大切なものがある。守りたいものがある。
それは命をかけるに値するものだと、体と心が訴えている。
「父さん! がんばれぇぇぇぇ!!」
……自然と、震えが止まった。
小さなその体に宿る力の限り叫ぶその声に……
確信と、勇気と、覚悟が
シュタルクの身体に宿る。そんな気がした。
「ああ!! 任せろッッ!!」
我が子の声に応じ、大陸最強と呼ばれる戦士が、駆け出した。
■開戦と遭遇
「くたばれぇ!」
先陣を切って来た男が大きな剣を振りかぶりシュタルクを両断しようと、その剣を振りおろそうと……
「……なっ!!」
そう思った瞬間にはシュタルクはもう胸元、振り上げた男の両腕にはシュタルクの戦斧の柄背を真横に当てられそのまま押しのけられた。
そのまま顔面に横一文字に柄をぶち当てられた男は倒れて背後にゴロゴロ転がる。
速すぎて、威力がありすぎて、ぶち当てられた本人は何をされたことを理解する間もなく背後の数名を巻き込んで転がり気を失った。
今回のシュタルクとフェルンは基本非殺の戦いとなる。
戦斧で一刀両断……という訳には行かない。もちろん後ろで見ている子供にそんなものを見せる訳にもいかない。
先程の一撃も柄をぶち当てた単純な体当たり。ただ、速度と威力が大陸屈指の戦士の基準なだけ。
中央先頭の男が吹き飛んだため陣形の真ん中に穴が空き、駆け出した先頭の兵たちがつんのめる。
シュタルクはそのまま、穴を開けた陣の中央で斧を倒して刃が当たらない形で戦斧を大きく振り回し、一回転することで周囲の男たちを弾き飛ばした。
✧ ✧ ✧ ✧
未だ先陣を切った男たちの背後を隠蔽しながら様子を見るギフティはシュタルクの手合いに目を見開く。
(一息で4人以上をぶっ飛ばしてやがる。しかも、殺さないように手加減をされて。
こりゃぁ有象無象は何人いても勝てんな……全員順当に倒されるだけだわ)
まごうことなき大陸屈指の戦士。
愛おしさすら感じる。こんな強者に、こんな戦力に……戦場で出会えていたのなら苦労することなく、行けていただろうに……
そうはならなかったから今の似非戦場がある。
これほど憎悪と殺気が立ち込めているのに死の匂いがしない戦場。
一人の戦士と一人の魔法使い
圧倒的な力の差がそれを実現させている。
(くだらない、くだらないなぁ……英雄様ぁ……)
もっと血を、もっと死を、振りまかなければ……ここに来た意味がない。
腹の底から来る、悦楽の感情をこらえながら男は2本のナイフを構えつつ戦況を眺める。
戦士は次々と野盗の兵を吹き飛ばし昏倒出せている。これを止めるのは困難だろうが……後ろの魔法使いはさらに厄介だ。
シュタルクとの開戦を機に一気に後方隊から弓矢で射れと命じていたのだが……
視線を向けることもなく、障壁で阻まれている。
しかも、そこいらの魔法使いがよくやる全体防御ではない。四方八方から飛ぶ矢をピンポイント障壁で防いでいる。
神業と言って差し支えない。魔法使い対策の定石である防御魔法による魔力切れは到底叶わないだろう。
ついでに言えば、子供に向かって撃ったやつから順当に反撃の魔法で吹き飛ばされている。
諦めて逃げようと背を向けたものも曲差撃ちでやられており、もう殆ど残っていない。
――― これが英雄と呼ばれる者たちの実力か
✧ ✧ ✧ ✧
シュタルクが中央から切り崩し、蹴散らし、フェルンは遠距離から仕掛けようとするものを撃ち落とす。
本来はフェルンに上空から面制圧を掛けてもらいたいところだが、子供達を守りながらなので今はコツコツ行くしかない。
単純にこのペースで行けば特に何も起こらず打倒できるだろう。
しかし、この場にはイレギュラーの人物が紛れている。
我が子を守りながら戦う二人としては、非常に厄介極まりない存在。
そして、その瞬間は訪れた。
「こ~んにちわ~」
間の抜けた掛け声だが、襲いかかってくる瞬間の殺気は他の者達のそれとは全く異質なそれ。
2本のナイフの双撃が他の属達の間を縫ってシュタルクの首元を狙って近づいてくる。
ここに来て初めてシュタルクが全力で回避の行動を取った。
一気にジャンプして場所を変えたシュタルクは先ほどまで自分がいた位置を振り向きその場に現れた人物を改める。
「何度も、煽るような行動取ってたのはお前か」
「はじめまして英雄殿、そして我々のゴミのような戦場にようこそ」
髪を後ろでまとめた……取り立ててなにか印象に残るような部分のない男。
強いて言うなら、自分より目付きが悪い男だなというぐらいの印象。
何かに紛れて致命傷を狙う先の一撃、おそらく目立たぬ事すらも処世術なのだろう。
ニィと笑って男は人混みに紛れて隠れる。
厄介だ……突出した強さもあるが、それ以上に自分の強みを最大化させることに長けたタイプ。
早めに、打倒する必要がある。
距離を取った位置からシュタルクは再度跳躍して、一気に集団の中央に斧の一撃を叩き込む。
もちろん、誰も叩き切ることなく、その勢いと衝撃派で吹き飛ばすだけの形にはなる。
そのまま体勢を崩した者を斧の腹で殴り、ケリを放ち、柄で突く等の打撃で昏倒させていく。
「やっぱり強さの格が違うねぇ、俺達とは大人と子供の様な力量差だ」
やはり、死角を縫って攻撃してきた男の攻撃。
戦闘慣れ……というより、戦場慣れしている。力と技、それとはまた別途の領域。
生き抜くことと相手を屠る事に特化した戦い方。
シュタルクは斧の刃で死角を縫ってきた攻撃を弾く。
「全員、突き出す予定だけど……あんたは五体満足で済む約束はできねーぞ」
「ああ、高慢なことだ。当然の様に勝つ気でいるんだねぇ」
✧ ✧ ✧ ✧
一方でギフティも焦っていた。焦ると同時にたかぶっている。
強い。とんでもなく強い。これはたしかに大魔族を打倒したという大仰な噂も嘘ではないかもしれない。
なんということだろうか、本当に素晴らしい。
魔族も減り、調子づいた貴族たちによる平定で北部の抗争も減り、自分たちの生きる場は失われた。
だというのに、こんなに楽しい狂騒の場があるとは。女神とは異なる邪悪な神がいるのなら感謝をしたい。
―― ギィィン!! ――
金属の刃同士がぶつかりこすれ合う、独特の音。自分達が切り結ぶたびに心地良い音がなる。
生きている事を実感すると共に、徐々に反撃が鋭くなっている。
(徐々にこちらのペースを学んでいる。スピードも上がっている)
なんということだ……この化け物は戦うほどに強くなるのか。
その事実に心が踊る。
だが、遊んでは居られない。遠からずこんな事を繰り返していてはあと数回の切り結びの末に斬られる。
雇い主の意思を尊重するならば……英雄夫婦のどちらかには致命傷を追っていただかなくては。
✧ ✧ ✧ ✧
神経を研ぎすまし、盗賊連中の攻撃を躱し、いなし、弾き、件の男の一撃をしのぎ、反撃をする。
(凌ぎきれる!)
シュタルクは頭の中でそう考えた。リズムは掴んだ。次の一撃で確実に反撃を届かせられる。
ここで終わらせて、賊を全員気絶させて、フェルンや子供とともに家に帰る。
こんな血なまぐさいことも、子供の危険を気にすることもない安寧の日々に帰るのだ。
徐々に数が減ってきた賊の間から件の男が顔を表す。
数度の切り結びの末にやっと顔を覚えた
しかし、肝心のナイフの一撃が来ない。
不殺をルールとするシュタルクとしては相手の一撃が来ないなら、殴打で迎撃するしかない。
しかし……対処が可能になってきた油断と、その判断の遅れが致命的な隙となった。
ズイッとシュタルクへと接近してきた男はニヤニヤとした顔のままシュタルクの顔の正面まで近接してくる。
ここまで近いなら、武器ではなく、拳か肘で直接撃つのが早い。
しかし、男は……そのまま口を開き
―― 喝(カァァツ)!! ――
音声の拡散魔法を利用した音による衝撃をシュタルクに浴びせた
「……ぐっ!!」
殺傷性も、威力も何も無い想定外の一撃。だが、一瞬怯んでしまった。
その一瞬をついた喉元へのナイフの斬撃……これはシュタルクの経験と闘争本能が自然と防御を成功させたが……体制が崩れた。
「……しまっ!!」
「全員……叩き伏せちゃって……」
その声とともに膝をついたシュタルクに賊達は駆け寄り一斉に刃を振り下ろす。
「シュタルク様ッッ!!」
「父様ッッ!!」
妻のフェルンと、娘のティアフォートの声が聞こえた気がした。
その瞬間、シュタルクを置いて駆け出した男の視線はフェルンと子供達の方向を見ていたことだけは……周囲を囲まれたシュタルクにも判った。
「待……て……ぇ!!」
男は……動きを封じた自分を置いて、フェルンと子供達を狙う気だ……
~ to be continued ~