【あたさに♀】「父親ではなく男として見てください……」 作:駒由李
原作:刀剣乱舞
タグ:オリ主 クロスオーバー 二次創作 刀×主 創作審神者 女審神者 刀×女審神者 クロスオーバー あたさに あたさに♀
▼夜鷹と安宅切って外見の雰囲気似てるよなって ダウナー黒髪イケメン
pixivより転載
金色の、猛禽のような目が印象的な女性だった。
「はじめまして。あなたが安宅切だね」
語り口はそれでいて穏やか。時節は年末だというのに、春の陽気さえ感じさせた。
それでも気にかかったのは、彼女の杖。
「これから宜しくね」
そう言って、杖を突いていない方の手を差し出してきた。安宅切は、それに素直に応じることにした。
「あぁ、主は中学生の頃に脚を悪くされたんだそうだ」
なんとなく彼女に直接訊くのは憚られた、審神者の杖の理由を存外あっさり教えてくれたのは長谷部だった。彼にはこの本丸を案内してもらっていた。
その道中で気付いたのは、日本家屋にも関わらず徹底したバリアフリーであることだ。
長谷部は語る。
「元々フィギュアスケートの道を志されていたそうだが、練習中の事故で膝をな……将来を嘱望されていたスケーターだったらしい」
「そうだったのですか……」
「まぁこの話は隠されているわけではない。主とそういう話になったら俺から聞いたと言え。それにしてもお前……」
「?」
不意に、長谷部がじっと安宅切の顔を見つめる。目を見つめる、というよりは顔の造作を確認されているような雰囲気だった。長谷部は頬を掻く。
「何だってそんな風な姿に顕現したんだろうな」
「は?」
「まぁそのうちわかる。鏡を見ればすぐにわかる話だ」
──その後、風呂場にて自身の顔を鏡で見たが、安宅切には何のことかわからなかった。
彼が知るのは、数日後。審神者の私室兼執務室を訪ねたときのことだ。
審神者の部屋から、音楽が流れて来る。クラシックだ。それを耳にしながら、審神者が音楽でも流しているのかと思う。その曲がシューベルトの「魔王」であることを知るのはのちほどのことだ。
「主、失礼します。お茶の時間です」
「あ、有難うね」
どうやら審神者は休憩時間のつもりで「それ」を観ていたらしい。
テレビのモニターでは、ひとりの黒服の青年が踊っていた。ただし、氷の上である。
──猛禽の目。それがびくりと、安宅切の動きを縫い止める。フィギュアスケートのことはわからない安宅切でも、その指先ひとつから只者ではないことがわかる。
怜悧な顔で舞う姿は、王者ともいうべき気迫を背負っていた。
それを平然と眺めている審神者。そして、不意に気付く。
──モニターの中の青年と、審神者。男女の風貌の差はあれど、顔立ちがそっくりだった。瓜二つと言っていい。特に目がよく似ていた。
それを見て、安宅切は思わず尋ねた。
「あの……ご親戚ですか?」
「ん? あぁ、父親」
さらりと言われて慄く。安宅切は、茶と菓子を乗せた盆を持ったまま動けない。
審神者は机に肘を突きながら言う。
「私が至れなかった境地に行った人でね。夜鷹純って知ってる? わかんなかったら篭手切に訊くといいよ。この本丸の中だと1番詳しいから。……」
「主?」
不意に、審神者が安宅切を見つめた。それに、原因不明の胸の高鳴りを覚えていると、審神者は笑って言った。
「それにしても、安宅切ってウチのお父さんに似てるからちょっと安心する」
「……そうですか。お茶とお菓子、置いていきますね」
「うん、有難う」
モニターの中では、称賛を浴びながら無感動そうに手を上げる審神者の父親がいた。
「そういうことがありまして」
「そうか」
炬燵で温まっていた長谷部に、先程起きたことを話した。長谷部は蜜柑を剥きながら言う。
「夜鷹純なら稀にこの本丸に来るぞ。娘の顔を見に来る。娘の足が悪いから向こうから会いに来る。ただ難物だ、注意しろ」
「あ、『夜鷹純』呼びなんですね。ご父君ではなく」
「実物に接するとおのずとそうなるぞ。──で? わかっただろう、お前が主と似ていることに」
「……そうですね。あれだけご父君に似ていらっしゃる主なんだから、ご父君に似ているという私が主と似ているというのは自明ですね。……そんなに似ていますか?」
「正直今ならきょうだいで通じる」
「そんなにですか……」
長谷部にそう言われ、少しだけ項垂れる安宅切。
それから、彼は言った。
「……『お父さんに似てるから』と言われたとき、胸がもやもやして……なんなんでしょうこれは……」
「……それは、『おもしろくない』という感情じゃないか」
「!? 御刀様、おわかりに……?」
「お前は意外とわかりやすい奴だな」
長谷部は喉の奥でくつくつと笑った。
「まぁあとは自分で考えるんだな。『なぜそう言われておもしろくなかったか』、この理由はな」
「……御刀様、楽しそうですね」
「そうか? まぁなんにせよ頑張れ。最終的に夜鷹純を相手取ることになるんだからな──」
「……君、新しい子? ふぅん、僕と娘に似てるね。それで娘にちょっかい出してないだろうね?」
「いずれそういう仲になれたらと思います」
「へぇ、いい度胸してるね君」
「安宅切!?」
了