僕のヒーローアカデミア:科学結界の学園都市(アカデミーシティ)   作:まだら模様

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とりあえずなんとかできたので供養します
この小説が広まらないかな〜と思いつつ


第2話:演算される正義(前半)

 

第2話:演算される正義(前半)

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 第11学区。

 学園都市の外部に位置し、広大な面積を誇るこのエリアは、主に「対大型兵器用」の無人演習場や、自動化された物流倉庫が立ち並ぶ無機質な空間である。

 

 普段は無人のドローンと警備ロボット(駆動鎧)しか存在しないこの「鉄の街」に、今日は異質な熱気が漂っていた。

 空を覆う鈍色の雲は低く垂れ込め、湿度を含んだ風が演習場に設置された偽装ビル群の間を通り抜ける。

 

 その中心に設置された特設モニタールームでは、学園都市の研究者たちと、雄英高校の引率教師である相澤消太、そして「平和の象徴」であった八木俊典――オールマイトが並んで座っていた。

 

「……あまり、気分のいいものではありませんな」

 

 八木が、痩せ細った体をさらに小さくするようにして呟く。

 彼の視線の先、モニターには演習場に配置された教え子たちの姿が映し出されていた。しかし、その映像の傍らには、常にリアルタイムで更新される膨大なグラフと数値が並んでいる。

 筋電位、脳波の変位、発汗量、そして「個性」によって放出されるエネルギーの指向性――それらすべてが、彼らの預かり知らぬところで解析され、裸にされていた。

 

「我々学園都市にとって、現象を数値化できないことは『存在しない』ことと同義です」

 

 隣に座る白衣の男――第17学区の演算解析局長は、眼鏡を押し上げながら無機質な声で答えた。

 

「雄英の生徒たちのポテンシャルは認めましょう。しかし、彼らの力の使い方はあまりに『感覚的』だ。筋肉を動かすように個性を振るうのは、蒸気機関の時代で思考を止めているのと変わりません」

 

 その言葉に、相澤の眉間に深い皺が刻まれる。

 

「感覚、で何が悪い。戦場では、お前の言う『計算』が終わる前に、ヴィランの手が喉元に届く。その一瞬を生き残るための反射を、あいつらは死に物狂いで磨いてきた」

 

「……ええ。だからこそ、ここで証明させていただきたいのです」

 

 解析局長は、薄笑いを浮かべてボタンを押した。

 

「――我々の『システム』が、あなたの言う『反射』をどれほど容易く凌駕するかを」

 

 

 演習場、エリアD。

 立ち並ぶ模擬ビルの中、緑谷出久は『ワン・フォー・オール』を全身に巡らせ、微細な放電を伴いながら屋上を跳んでいた。

 

(『ワン・フォー・オール:フルカウル 15%』……よし、感覚は悪くない。でも……)

 

 出久の視界は、先ほどから耳に装着された通信デバイスから投影される「AR(拡張現実)」のデータで埋め尽くされている。

 

 今回の模擬戦のルールはシンプルだ。

 雄英生と学園都市の学生が混成チームを組み、あるいは対抗戦の形で、街の各地に隠された「ターゲット」を回収、もしくは相手を戦闘不能にする。

 出久のパートナーとして割り振られたのは、昨夜出会った上条当麻。

 そして対戦相手は――爆豪勝己、上鳴電気、そして常盤台の『超電磁砲』、御坂美琴。

 

「おいおい、緑谷! ぼーっとしてると、お前の位置情報は筒抜けだぞ!」

 

 通信機から、上条の焦ったような声が響く。

 出久は視線をARマーカーに移した。

 そこには、自分を目指して高速で接近する二つの点が映っている。

 

「……爆豪君と、御坂さん……!」

 

「緑谷、逃げろ! そいつら、さっきから連携がめちゃくちゃなんだよ! 爆豪が爆発させて、御坂がその煙の中に電磁誘導をぶち込んで……科学反応の相乗効果(シナジー)とかいうふざけた攻撃を仕掛けてきてる!」

 

 上条の警告が終わるよりも早く。

 出久の直感――継承者たちがもたらす「危機感知」が、激しく脳髄を叩いた。

 

「……っ!?」

 

 出久は屋上を蹴り、空中へ身を投げ出した。

 直後。

 先ほどまで彼が立っていた屋上が、爆圧と電光の混ざり合った「プラズマの塊」によって一瞬で消滅した。

 

「逃がさねぇっつってんだろ、クソナードがぁ!!」

 

 爆煙の中から、籠手を構えた爆豪が飛び出してくる。

 その背後には、青白い火花を帯びた御坂美琴が、風を操るように浮遊デバイスを使いこなしながら追随していた。

 

「緑谷君! あんたの動き、予測パターンが単純なのよ! 計算式の変数を変えなさい!」

 

 美琴が指先を向ける。

 彼女が放ったのは、巨大なレールガンではない。

 

 無数の鉄粉を磁力で繋ぎ合わせ、高速回転させた「砂鉄の剣(チェインソー)」。

 シュルシュルと音を立てて空を裂く砂鉄の刃が、出久の回避進路を先読みするように網を張る。

 

(予測されている……!? 僕の動きの癖だけじゃない。気流、風速、筋肉の収縮……そのすべてが、彼女の演算に取り込まれているんだ!)

 

 出久は空中で姿勢を制御し、黒鞭(くろむち)を射出。隣のビルの鉄骨に引っ掛け、強引に軌道を変えた。

 だが、そこへ爆豪の追撃が重なる。

 

「遅ぇ! 空中なら計算もクソもねぇだろ!」

 

「爆豪君、待って! その位置だと彼女の磁界と干渉して――」

 

 出久の制止は、轟音にかき消された。

 爆豪の爆破が、美琴が操作する砂鉄の磁界と激突する。

 普通なら自壊するはずのその激突は、しかし美琴の精密な「再演算」によって制御され、爆豪の炎を指向性のある「熱線」へと変質させた。

 

「はっ、面白いじゃねぇか電磁女! 威力が上がってやがる!」

 

「当然でしょ、私の演算を舐めないで!」

 

 個人の「個性」ではない。

 「個性」と「計算」が組み合わさった時、それは未知の兵器へと昇華される。

 出久は冷や汗を流しながら、全力でビルの谷間へと逃げ込んだ。

 

(これが学園都市の戦い方か……。個性をただの力としてではなく、物理法則のパーツとして組み替えているんだ。これじゃあ、僕たちの『反射』は文字通り『読み切られて』しまう……!)

 

 

 一方、演習場の最深部、エリアS。

 そこには、他の喧騒から切り離されたような静寂が支配していた。

 轟焦凍は、自らの周囲を氷の壁で囲み、警戒を最大レベルにまで引き上げていた。

 

「……来ないな」

 

 対戦相手として通告されていた「学園都市第1位」の少年。

 予定の時刻を過ぎても、誰も現れない。

 ただ、遠くで爆豪や出久たちが戦う音が聞こえるだけだ。

 

 轟が視線を周囲に走らせた、その時。

 カツン。

 乾いた音が響いた。

 それは、金属の杖がアスファルトを叩く音。

 瓦礫の山の影から、一人の少年が歩いてきた。

 

 白一色の、線が細い体。

 どこか病的に白い肌と、血を思わせる紅い瞳。

 首には奇妙なチョーカーを巻き、右手には杖をついている。

 

「……お前が、学園都市の『最強』か」

 

 轟は右半身から冷気を漏らし、地面を瞬時に凍らせた。

 氷の牙が、獲物を捕らえる蛇のように少年に向かって突き進む。

 

「……あァ? 『最強』ねェ。随分と使い古されたラベルを貼るもんだな」

 

 少年――一方通行(アクセラレータ)は、立ち止まりさえしなかった。

 迫り来る数トンもの氷の塊。

 プロヒーローでも回避を余儀なくされるその一撃に対し、彼はただ、軽く左足を地面に置いただけだった。

 瞬間。

 轟音と共に、轟の放った氷が**「逆方向」**へ弾け飛んだ。

 

「!? なに……っ!」

 

 轟は咄嗟に炎を放ち、逆流してきた氷を溶かそうとした。

 だが、驚愕すべきことが起きた。

 放った炎までもが、少年に触れる寸前、不自然な角度で折れ曲がり、轟自身の足元を焼き払ったのだ。

 

「熱ィな、三下。お前、ベクトル計算の基礎からやり直してこいよ」

 

 一方通行は、面倒くさそうに頭を掻いた。

 

「運動エネルギー、熱エネルギー、電気信号。この世界のあらゆる力には『向き』がある。俺はその向きを、文字通り『反射』してるだけだ」

 

「反射……だと? 炎も氷も、一切触れていないはずだぞ」

 

「触れてるぜ? 俺の皮膚の数ミリ外側にある『演算領域』にな。……お前らの『個性』ってのは、どうも出力を自慢するばかりで、数式としての美しさがない。見ててイライラするんだよ」

 

 轟は再び構える。

 今度は最大出力。

 広範囲を凍結させ、逃げ場を失くしてから、一点に超高熱の炎を叩き込む。

 エンデヴァーから受け継いだ、最強のコンビネーション。

 

「はっ。無駄だってのが、まだ分からねェか」

 

 一方通行が、一歩踏み出す。

 彼が足を踏みしめた瞬間、地面のアスファルトが液体のようになり、津波となって轟を襲った。

 ただの足踏みではない。

 

 「地面に伝わる力の向き」を変換し、すべての衝撃を前方の地面へと集中させたのだ。

 

「ぐああっ……!」

 

 轟は氷の壁を幾重にも張るが、その壁ごと文字通り「粉砕」され、後方のビルへと叩きつけられた。

 ……これが、絶望だった。

 雄英で、ヴィラン連合相手に、そして死柄木やオール・フォー・ワンを相手に戦ってきた轟でさえ、理解が及ばない力。

 どんなに熱く燃えても、どんなに冷たく凍らせても、相手に「触れる」ことすら叶わない。

 

「……おい。ヒーロー、だっけか」

 

 瓦礫の中に沈んだ轟を見下ろし、一方通行は吐き捨てるように言った。

 

「その程度の覚悟で、誰もが救える平和なんて言葉を口にするな。……反吐が出るぜ」

 

 

 一方、エリアD。

 爆豪と美琴の猛攻を凌ぎ続けていた出久だったが、限界は近かった。

 美琴の『演算』は、戦えば戦うほど精度を増していく。

 今や、出久が地面を蹴る際の「空気の震え」から、次の滞空時間をミリ秒単位で予測されるようになっていた。

 

「捕まえた!」

 

 美琴が腕を振る。

 磁力によって浮遊していた数台の無人車両が、出久を包囲するように収束する。

 

「爆豪! どいて、最大出力で行くわよ!」

 

「命令すんじゃねェ!! ――だが、あいつを黙らせるのは俺だ!!」

 

 爆豪が空中で回転し、大気中の酸素を凝縮させる。

 そこへ美琴の電磁火花が引火し、酸素爆鳴による巨大な「光の矢」が形成された。

 

 合体技(コンビネーション):ハウザー・エレクトロン。

 

 回避不能。

 逃げ場はない。

 出久は『ワン・フォー・オール』を45%まで引き上げ、正面突破を図ろうとした。

 その時。

 

「――そこの二人! ストーップ!!」

 

 ひょっこりと、戦場のど真ん中に現れたのは、上条当麻だった。

 彼は丸腰のまま、凄まじいエネルギーが渦巻く「光の矢」の真正面に立ちふさがった。

 

「上条君!? 危ない、逃げて!!」

 出久が叫ぶ。

 爆豪と美琴の攻撃が、上条の体を飲み込もうとした。

 ――しかし。

 

 「……は?」

 

 爆豪が呆然と声を漏らした。

 上条当麻が右手を差し出し、その攻撃に触れた瞬間。

 数万ボルトの電気も、街を焼き尽くすほどの爆炎も、そして美琴の精密な演算結果も。

 

 まるで最初から存在しなかったかのように、**「パチン」**という乾いた音と共に消滅した。

 

「……え、あ……何が起きたの?」

 

 美琴が目を丸くする。

 自分の全力の演算が、ただの「右手の接触」で完全に無効化された。

 計算式そのものが破壊されたような、理解不能な虚無。

 

「ふぅ……あぶねぇあぶねぇ。やっぱり俺の不幸体質は、こういう時にしか役に立たねぇな」

 

 上条は、痺れた右手を振りながら、苦笑いを浮かべた。

 

「悪いな。あんたたちの『個性』だか『能力』だか知らないけど……俺の右手には、そういう『異能の力』を強制終了させちゃう癖があるんだよ」

 

 幻想殺し(イマジンブレイカー)。

 

 学園都市のLevel 0。

 無個性のはずの少年が見せた、世界そのものの理を否定する力。

 

 出久、爆豪、美琴、そしてモニター越しに見ていた教師たち。

 すべての者の思考が停止した。

 だが、その沈黙を切り裂いたのは、突如として演習場全体に響き渡った、正体不明の警報だった。

 

『――警告。演習場外、第10学区境界線にて、未確認の空間歪曲を観測。……ヴィラン連合、および、正体不明の武装集団の侵入を確認しました』 

 

 モニターがノイズで乱れ、アレイスターの窓のないビルから発信された「緊急指令」が、全生徒の端末に強制表示される。

 

 【ミッション変更:侵入した『イレギュラー』の排除。死傷者は問わない】

 

 模擬戦は終わった。

 科学の島が、本当の戦場へと変貌する。

 

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