揺蕩う旅人の記   作:篝火サスケ

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2. 富津金谷(前編)

6:54- 船の形をしたPA

 

久々にドライブをしたくなったから今日は富津金谷に浜焼きをしに行くよ。

 

まずは朝早く家出たから腹ごしらえからだね。首都高にはPAがほとんどないからここが一番いいんだよね。

普段は長蛇の車の列を作る駐車場も朝早いから並ばずに入れた。代わりにお店はほとんどやってないんだけど。

 

ひとまず、何か小腹を満たせるものがないか探さないと。いいお店がないか見回っていると肉まんが売られていた。具はアサリ。...アサリ?

うん、肉まんは好きだし、餡まんとかも好きだけど、アサリは試したことがなかったな...。

 

試しに買ってみる。サイズは小さいものの、貝の旨味がぎゅっと詰まっている感じがした。ジューシーでおいしく、また食べたくなるような味だった。

最低限お腹は満たせたかな。貝ももっと食べたくなったし。浜焼きは食べ放題だからお腹はなるべく空かせておきたいんだよね。

 

フードコートを見るとトラックドライバーと思われる人が何人かいた。その中で、私服姿の明るい茶髪の女性が浮いて見えて強く印象に残った。

 

 

3月の朝焼けも海の匂いも冷たい空気も、すべてが眠気を覚まさせてくれる。

折り返し地点は過ぎているし、PAやSAもほとんどない。あとは走りきるだけ。

 

 

 

 

 

8:30- 浜焼き屋さん

 

時間は8時30分。あれから無事に何事もなく、目的地に着くことができた。

お店が始まる前に行こうと思ったんだけど、少し早めに来てしまった。ちょうど駐車場の入り口が空いて入れるようになってて助かった。

駐車場の止めやすいところに止めてお店へと向かう。

 

 

 

10時開店だけど早くついてしまった。整理券だけもらって他の観光スポットにでも行こうかな。

整理券待ちの行列に並んでいると、後ろに一人の女性が並んだ。年齢も随分と近そうだ。……あれっ、この人、さっきのPAで見かけた人っぽいな。あっ、目が合ってしまった。

 

「あの、初めまして」

「...はじめまして」

 

初対面の人に声をかけるなんて、勇気あるなぁ。

元気な声と髪の明るい茶色も相まって、明るい性格なのがビシビシと伝わってきた。こんなタイプの人とあんまりお話したことがないかも。

 

「お嬢さん、一人なの?」

 

もしかしてこどもと勘違いされているのだろうか。私はよく未成年と間違えられるのだ。好きな酒を買うために何度年齢確認をされたか。挙句訝しげな視線を受けながら買ったこともあったっけ。

若く見られるのはいいけど、こういうところは困るよなぁ。

 

「はい、一人、車で来ました。」

「そうなんだ!いやぁ、一人で食べ放題の浜焼きに来るなんて珍しいなって思って!もしかして一人で食べる予定?もしよかったら一緒に食べない?」

「…そうですね。ありがとうございます、ぜひご一緒させてください。」

 

ごめんなさい、すごくいい人だった。今まで一人が多かったけど、そうね。自分勝手な謝罪の意もかねてたまには付き合おうかな。

 

「よかった!今日もともと千葉県に住んでる友達と来る予定だったんだけど、さっき来れないって話が来てね。どうしようか困っていたんだよね!」

「そうなんですか、千葉、というかこの店で合流する予定だったのですか?」

「そうそう、神奈川に住んでいるから最初の合流地点のお店で合流する予定だったんだよね。いやぁ、車で来たせいでスマホ見る機会が少なかったのがいけなかった」

「その割には明るそうですね。自分だったらわざわざここまで来て突然友達が来れなかったら文句の一つくらい出そうですけど」

 

本当に明るい人だ。自分だったら人が来なかったら怒るかも。いや、旅程を変更して好きなところを巡るかも?

 

「あはは、そうかもね。ただ、朝起きたら38度を超える熱だったんだって。最近はやってるインフルだゴメンって泣きながら電話が来たから。流石に怒れないかな」

「そう、なんですね…。すごいポジティブですね」

 

そう雑談しているとお店の受付が始まったようで列が動き始めた。やっと受付ができそう。

ただ、進むのが遅いからもう少しだけ話せそうだね。そうだ、名前知らなかったな。

 

「そうだ、お名前を教えてもらってもいいですか。私は湊といいます。趣味がドライブと神社仏閣巡りで、運転ついでにここまで来ました。本日はよろしくお願いします。」

「朝陽です!よろしくね!趣味はグルメ巡りをしているの。友達に行ってみたい浜焼きのお店があったからここに来たんだ!」

 

簡単な紹介をしているうちに整理券をもらえた。

 

 

 

 

 

9:15- 切通しトンネル付近

 

整理券を受け取った後、開店まで1時間ほど時間があったので朝陽さんとどうするか話し合った。朝陽さんは近くのお土産屋さんに訪れるらしい。何しろ、おいしいお魚を売っていたりするお店が近くにあるんだとか。

一方で私は、訪れたい観光名所があったので、またお店で落ち合うことにしてしばらく分かれて行動することにした。

 

 

さて、私のほうはというと、あそこから10分くらいのところにある大師堂のところに来ている。地層などを見ることができて一度来てみたかったんだ。

確か、ここって大師堂への道につながっているんだよね。ナビによるとこのあたりだとおもうんだけど…。

 

 

ちょっと⁉

 

 

まさかの曲がるところが駐車場につながる道だった。うっかり見逃すところだったよ。

ここの道、Uターンできるようなコンビニとか駐車場、脇道さえないから逃したら戻る時間もなかったかも…。

 

まぁまぁ、無事についたし良しとして…。

 

 

だからさ⁉

 

 

パーキングエリア、車2台分しかなくない…?しかも切り返しスペースかなり小さいよ…。

えっ、ここに停めなきゃいけないってマジですか?

 

 

やってやらぁ!

 

 

 

はぁ…はぁ…。強敵だった。久々に結構な数、切り返した気がする…。

うん、疲れたけど、その甲斐はあったかな。

 

目の前には山の間にぽっかりと穴が空いていた。まだ見ぬ世界を見せてくれる門のようですごくそそる。

 

さて、では行こうか。

 

 

壁面には異なる色の土で縞々の石ができている。背を名いっぱい伸ばしても届かないほど切り開かれていた。出入口が日の光に照らされ、トンネル中央はやや暗い程度の明かり。きれいな壁面を見るには問題ない明るさだ。

壁にはノミのようなもので削り取られたような跡がみられる。はたして昔の人はこのトンネルをほるのにどのくらいの時間をかけたのだろうか。

 

昨日降った雨の影響か緑の匂いが強くした。ひんやりとした空気を感じながら2つほどトンネルを潜り抜けると、トンネル内の明るさに慣れてしまったせいで世界が白く感じる。

しばらくして慣れてくると、小高い丘と原っぱが広がっていた。とてもきれいで見入ってしまった。

 

このあたりに弘法大師を祭ったお堂があるらしいのだけど、どこだろうか。

少し道を進むとのぼりが立っているのが見える。なるほど、道を折り返すように階段があった。なるほど、この先にあるのね。

 

最近ドライブばっかりだったからこの量の階段を上るのはつらいなぁ。それでも一歩ずつ進んでいく。散歩中の人たちとすれ違う。

よくこの道を散歩コースにするね、もう私、ヒザがげんかいだよ……。運動、しようかなぁ……。

 

 

よかった、お賽銭箱がみえた……。

あそこがゴールかな?もう、おわるんだね……。

あれっ、むこうにまだ、階段がみえるよ……。

あぁ、おさいせんばこじゃなくて、おじぞうさんかぁ。

まだのぼらなきゃなのかな……。

 

 

あぁ……。やっとごーるだぁ……。

つかれたぁ……。

 

 

やっと落ち着いた。高所だけど、葉っぱをつけてない木々があって完全には見渡せないっぽいね。でも新芽の緑が少し、見えている。

いいね、いい景色だ。

 

 

階段を一歩ずつ下っていくと徐々に低い景色になっていった。それでも、山の向こうにある海は見えない。ただ、広がっている原っぱと木々がある程度だ。

それでも、晴れているからか、新芽や菜の花が光って見えた。とても鮮やかだった。




やっと主人公の名前とか描写できました。
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