カードキャプターさくら 〜中身が限界オタクの私は、推し(知世)を泣かせたくなくて勇気を出す〜   作:ちいさな魔女

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時系列的には2000年代、つまり平成12年頃から始めます。


目覚め

カードキャプターさくら。CLAMP作品の人気シリーズであり、平成12年にアニメとして放送され、任期を博した。

 

その主人公の名前は木之本桜。『さくら』という呼び名で慕われ、CLAMP作品最強格のキャラクターだ。その性格も好感が持てて、人気のキャラクターでもある。

 

そんな彼女はこの日、運命が大きく変わる事になる。

 

それは、運命に従い、さくらはクロウカードを解放してしまう。しかし、その時に異常事態が発生した。

 

――――――――――――――――――――――

 

木之本家の図書室。さくらは学校からの帰りで謎の声を聞いて、図書室でとある物を見つけた。其処にある本を見つけてしまい、そしてその1枚のカードを手にしてその名前を言ってしまう。

 

さくら「『WINDY』………?キャ!!」

 

さくらはその瞬間、WINDYのカードから起こした風で全てのカードを吹き飛ばしてしまった。本来なら、其処でWINDY以外のカードを回収するのが運命。しかし、今回は違った。

 

本棚から一冊だけ関係の無い本が落ちてきて、さくらはその本を踏みつけてしまう。

 

さくら「ふぇ?」

 

そして、さくらは図書室の木製本棚に後頭部を打ち付けてしまう。その衝撃で、さくらは意識を失ってしまった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

さくら「……う、うう……」

 

後頭部に走るズキズキとした痛みで、さくらは目を覚ました。

 

ひんやりとした床の感触。鼻をくすぐる古い紙の匂い。

 

さっきまで、父親の図書室にあった本を開けてしまい、WINDYのカードで風を起こし、其処から記憶が無い。

 

さくら「……あれ? 私、なんで本を踏んづけて転んでるんだっけ……?」

 

その瞬間だった。

 

頭に走る激痛と共に、脳内に身に覚えのない「濁流」が逆流してきた。否、身に覚えはあるが、体験したことの無い別人の記憶。

 

さくら(待って、今WINDY(風)を読んだよね? 封印解いたよね? つまりここ、クロウカード編の第1話の現場!? しかも私、本を踏んで後頭部強打とか、運動神経抜群な木之本桜として『解釈違い』な失態演じてる!?)

 

さくらは顔を両手で覆う。

 

さくら「は、はにゃあああああんっ!?」

 

叫び声が図書室に響く。

 

この口癖。それは、さくらが思い出した記憶にある「アニメの主人公」そのものの声。

 

しかし、今のさくらの脳内は「知世ちゃんの限定フィギュアの予約開始日」と「様々な作品知識」でパンパンに膨れ上がっている。人間の記憶容量を超えていると言っても過言ではない。

 

ケロちゃん「こにゃにゃちはー!やっと起きたんか!目覚めた時気ぃ失っとったから、頭打ったんやな!」

 

聞き覚えがありすぎる、エセ関西弁の声。

 

恐るおそる視線を上げると、そこには本の表紙から抜け出したばかりの、黄色いぬいぐるみ——封印の獣、ケルベロスが浮いていた。

 

さくら「……ケ、ケロちゃん……?」

 

ケロちゃん「なんや、わいの名前知っとるんか? いや、わいはケロちゃんやない!わいは封印の獣、ケルベロスや!わいはこの本の守護者で、クロウカードを護っとるんや!」

 

さくら(本物だ……!質感が完全にCGを超えてる……!可愛い……いや、今はそんなこと言ってる場合じゃない!)

 

さくらは震える手で、空っぽになった『クロウカードの本』を見つめた。

 

記憶が確かなら、これからさくらは大変な事件に巻き込まれ、何度も死ぬような思いをしてカードを集めることになる。

 

ケルベロス「カードが全部飛んでいってしもた。このままやと、この世に『災い』が起こるんや……!頼む、お前さんが『カードキャプター』になって、カードを捕まえてくれへんか!」

 

本来さくらなら、怖くて「そんなの無理だよ〜」って泣き言を言っていたはずだ。

 

でも、今の私の脳裏には、ビデオカメラを抱えて微笑む「推し」の姿が焼き付いている。

 

さくら(……知世ちゃん。私がカードを集めないと、知世ちゃんが住むこの街が、この世界が、メチャクチャになっちゃうんだよね?)

 

ズキズキ痛む後頭部を押さえながら、さくらはゆっくりと立ち上がった。

 

膝はガクガク震えている。前世の「陰キャオタク」な精神が、全力で「ムリ、逃げたい、おうちに帰りたい」と叫んでいる。

 

だけど、思い出したんだ。

 

「勇気」とは、「怖さ」を知ること。そして「恐怖」を我が物とすること。

 

さくら「……分かったよケロちゃん。私、やる。カードキャプター、やるから!」

 

さくら(見ててね、知世ちゃん。君の貴女愛するこの世界と、貴女の笑顔は……この『元オタク』な私が、黄金の精神で守り抜いてみせるからっ!!)

 

――――――――――――――――――――――

 

夕食を済ませ、冷蔵庫のキャラメルプリンを『糖分は脳の活動に必要だし、勉強には頭を使うからね』と兄の桃矢に言いながら(その時、桃矢はさくらの発言に驚いてたが)部屋に戻るさくら。

 

冷蔵庫のプリンをケルベロスに持ってきたさくらは、プリンをご馳走しつつカードの事を尋ねた。

 

さくら「カード、やっぱり何処に行ったか分からない?」

 

ケルベロス「アカン……何処に行ったか分からへん」

 

さくら「やっぱり………特級呪物だったんだね」

 

ケルベロス「せや。クロウカードは、その封印が解かれた時、この世に災いを齎すと言われとる。そのカードは、クロウ・リードという凄い魔術師が作った特別なカードや。1枚1枚が生きてる上に特別な力を持ち、それぞれが好き勝手に行動する上に並の術師では歯が立たん。それで、クロウがこの本を作って、封印の獣であるわいを本の表紙に移したんや」

 

特級呪物とつい言ったが、それを認識してる辺りケロちゃんは呪術師と繋がりがあるのだろうと、さくらは改めて思った。というより頭を打ってからか、それともカードを放った影響なのか、時々窓の外から見かけるのだ。特に対して強くなく、人に影響を及ぼさない、見てるだけの呪いを。

 

ケルベロス「というか、よう特級呪物について知っとるな?お前さん、一般家庭な筈なんに」

 

さくら「へっ?あっ……」

 

うっかり話してしまったさくら。話すべきか?そう考えたさくらだが、今はFLYとの戦闘に備えるべきだろう。

 

さくら「そ、それはまた後でね。それより、クロウカードを今後どうやって集めるの?」

 

ケルベロス「ふむ……この本は魔力の無い人間には開ける事すら出来ん!でもお前さんは開けられたっちゅー事は、お前さんには魔力があるっちゅーこっちゃ!あっ………お前さん名前は?」

 

さくらは、そう言えば名乗ってなかったと思い出す。

 

さくら「さくらだよ。木之本桜」

 

ケルベロス「よし、其処に立って」

 

ケルベロスに言われた通り、その場で直立して立つさくら。

 

ケルベロス「『封印の鍵よ。汝との契約を望む者がここにいる。少女の名はさくら。鍵よ、少女に力を与えよ。封印解除(レリーズ)』!」

 

ケルベロスの詠唱と共に、本から飛び出してきた小さな鍵がさくらの目の前で光り輝きながら、一本の杖に変化していく。鳥の頭のような先端に二対の白い翼を取り付けた、ピンクが基調の杖だ。

 

三日月と太陽が描かれた魔法陣の中心に浮かぶ杖を、さくらは迷わず手にする。

 

さくら(凄い………これが星の杖………)

 

さくらは杖を手にした事で、アニメでよく見た杖の感触に心が躍った。

 

―――――――――――――――――――――――

 

さくら「………それで、私にカードキャプターとして活躍させたい訳だけど………実は……やっぱり怖いんだよ……」

 

さくらは風呂上がりで、ドライヤーで髪を乾かしつつ櫛で整えていく。冷風も使って温まった髪の毛を冷やしていく。

 

ケルベロス「ふかふかやなぁ………って!さっきやるって言うたやろがい!」

 

さくら「うん言った。でも………どれだけ恐ろしいか考えたら………やっぱり私に無理じゃないかって………」

 

さくらの言葉は本心だ。頑張ると言ったが、やはり本物の木之本桜のように動ける自信はない。元々陰キャだった記憶も相まって、自分に出来るか分からなかった。それに、死ぬかもしれないという恐怖もある。

 

ドライヤーのスイッチを切って、棚に置いたさくら。

 

ケルベロス「これ使ってカードバラけさせたんは何処の誰やったかな?」

 

さくら「むぅ………30年間も寝ぼけてた獣に言われても………」

 

すると、空気の入れ替えで開けた窓から突風が吹き荒れる。

 

窓から外を見ると、夜空に巨大な鳥の怪物が羽ばたいて飛んでいた。

 

さくら「あれがクロウカードの?」

 

ケルベロス「あれは『FLY』のカードや!」

 

さくら「着替えてる時間は無さそう………急ごう!」

 

さくらは気が付いてないが、この時のさくらは『FLY』のカードを止める為に動き出していた。怖がっている筈なのに、自分がやろうという決意を秘めていた。

 

さくらは玄関に向かい、ローラースケートを装備して外に飛び出す。勿論、ローラースケート用のヘルメット、リストガード(手首)、エルボーパッド(肘)、ニーパッド(膝)を身に付けた。因みにヘルメットは、さくらがローラースケートを買ってもらった時に安全の為に貰ったものだ。

 

ケルベロス(なんや?さっきまで怖がっとった癖に、やる気に満ちた顔をしとるな)

 

ケルベロスはさくらの変わりように驚きつつも、カードキャプターさくらの素質の高さを垣間見た。

 

―――――――――――――――――――――

 

『FLY』の突風が吹き荒れる。風の力だけで周囲の建物は窓がひび割れていき、木々も削られていく。

 

さくら「ぐっ……凄い風!」

 

ケルベロス「の割には上手く進んどるな!」

 

さくらは風が吹き荒れる中で、『FLY』の元まで辿り着いた。

 

さくら「ひっ!あ、あんなに大きいんだ………」

 

さくらは、再び恐怖で身体が強張り始めた。

 

ケルベロス「なんやさっきの威勢は何処行ったん!?」

 

さくら「そんな事言われても!」

 

さくらはいざ初めての戦闘となった途端、やはり怖さが勝ってしまった。これではマトモに戦えないだろう。

 

さくら(ごめん………やっぱり私じゃ無理だったんだ!)

 

すると、『FLY』が嘴を開いて風を起こす。さくらはケルベロスと共に吹き飛ばされるが、ケルベロスが落下前に口で噛み付いて落下を防いだ。

 

さくら「や、『闇の力を秘めし鍵よ。真の姿を我の前に示せ。契約のもと、さくらが命じる 封印解除(レリーズ)』!」

 

そして、星の杖を展開して右手に持つさくら。

 

ケルベロス「ええかさくら。『FLY』は風属性の魔法や。なら、『WINDY』で捕まえられる筈や」

 

さくら「相手は空を飛べる以上……何処かで叩き落とすか、飛び乗ったりしないとね………でもここじゃ狭い……おまけに私だって戦った事もないし、喧嘩も苦手………なら!良いアイデアがあるよ!」

 

ケロちゃん「おっ!あるんか!?」

 

さくら「うん!こんな時こそ使える、たった一つの策があるよ!」

 

さくらは恐怖に苛まれつつも、一つの決断に至る。それは、伝統的な戦法の一つ。

 

さくらはローラースケートを巧みに動かし、後ろを向いた後に地面を蹴って走り出す。

 

さくら「逃ぃげるんだよぉー!ケロちゃぁーん!」

 

ケルベロス「はぁー!?なんやコイツぅ!?それでもカードキャプターかぁ!?」

 

さくらはローラースケートで道路を爆走し、『FLY』に背を向けながらも逃げ始める。

 

すると、『FLY』はさくらを追いかけ始めた。空を飛び、羽ばたいて追いかけていく。

 

追いかけて来る『FLY』を見たさくらは、改めて敵意を持ってくる敵に怖さがこみ上げてきた。しかし、それ以上にとある感情がこみ上げてきた。

 

さくら(怖い……でも、どうすればいいか分かる!なんとなくだけど、身体が動く!)

 

さくらは無意識に、恐怖に耐える精神力が芽生え始めていた。

 

さくら(何処かで知世ちゃんが私を撮ってる!もし此処で止めたら、知世ちゃんも危なくなる!そんなの嫌だ!!私は、私は…………)

 

さくら「知世ちゃんを護るんだぁー!!」

 

さくらは壁に向かって走る。斜めになってるお陰で、ローラースケートで乗り上げても上手く走れた。

 

ケルベロス「うぉぉおおっ!?」

 

さくら(怖いけど、頑張れる!怖くてもいいんだ!誰よりも何よりも、知世ちゃんを護りたい!この手に届く範囲でいい!!救える人を助けたい!!)

 

さくら「たああああっ!!」

 

さくらは『FLY』の背中に飛び乗る。そして、『WINDY』のカードを取り出して翳す。

 

さくら「風よ!戒めの鎖となれ!『WINDY』!」

 

さくらは星の杖を介して、カードから美しい女性型の精を呼び出した。『WINDY』は無数の触手状の風となり、『FLY』の全身を拘束していく。またたく間に拘束され、墜落する飛行機のように地面へ不時着する『FLY』。

 

さくらは巧みにローラースケートを操り、止まって星の杖を両手で握る。

 

さくら「汝のあるべき姿に戻れ!クロウカード!」

 

そして、星の杖を翳し、カードを具現化して『FLY』を封じ込めていく。

 

さくら「……はにゃあ〜……」

 

さくらはその場に座り込む。ホントに戦えた。まさかと思いつつ、言いしれない達成感に高揚感が芽生えだす。

 

ケルベロス「流石はわいが見込んだカードキャプターやわ!それにしても、逃げたと思ったら途端に回り込むなんて、天性の才能やわ!」

 

さくら「初めてだけど…………でも油断はしない。今回はたまたまだよ………·もしこれより危険な戦いが起きたら………今度こそ死ぬかもしれない。大切な人達も護れない!」

 

怖いのは変わらない。しかし、本当に怖いのは大切な人達が居なくなる事だ。

 

さくら「私、強くなる!ケロちゃん、私もっと強くなるよ!大切な人達を守れる様になりたい!いや、なりたいんじゃなくてなるよ!」

 

ケルベロス「おおっ!よう言った!流石はさくらや!」

 

さくら(待っててね知世ちゃん!知世ちゃんの生きる未来を、私が守ってみせるから!)

 

こうして、前世の記憶を思い出した新生さくらの、カードキャプターとしての人生が始まった。これから先に待つ戦いは、きっと生半可ではないだろう。

 

それでも、さくらは諦めない。

 

さくら「絶対、だいじょうぶ!」

 

魔法の言葉。さくらの心に秘めた、大いなる言葉。

 

その後、さくらは星の杖に箒のように跨り、『FLY』のカードで魔法使いのように空を飛びながら帰宅するのだった。

 

―――――――――――――――――――――――

 

夜の街。其処で一人の少女が、空を飛ぶ木之本桜を撮影していた。

 

???「さくらちゃん?これは一体?」

 

―――――――――――――――――――――――

 

東京都立呪術高等専門学校。通称、呪術高専。

 

上層部の部屋にて、一人の男が部屋の中心に立っていた。

 

上層部『夜蛾……友枝町の『窓』からの報告だ。あの街で、既存の術式の体系に属さぬ、極めて高密度のエネルギーが観測された』

 

上層部『もしそれが制御不能な『呪い』であるならば、芽のうちに摘み取れ……失敗は許されんぞ』

 

任務を受けたその男は、高専から出て階段を降りていく。そして、新幹線でその街へ向かっていく。新幹線の中で席に座りながら資料へ目を通しつつ、その報告内容に目を疑う。

 

???「子供が関わっているというのは本当か……? もしそうなら、この腐った連中に知られる前に、俺が保護せねばならん」

 

そして、その写真に写る無邪気な少女の笑顔に彼は心を痛める。

 

???「この笑顔を、あの腐った老人たちの前に差し出せというのか……一度でも『術師』として登録されれば、この娘の人生は死ぬまで呪いとの戦いに塗り潰される」

 

写真を握り、窓の外に流れる夜景を見つめながら、彼は心に決める。

 

???「もし、この娘が『呪い』ではない何かを扱っているのなら……俺は、上層部に嘘を吐くことになるだろうな」

 

彼の名は、夜蛾正道。彼は物質に呪いを込めて操る「傀儡呪術学」の第一人者であり、「呪骸(じゅがい)」(呪力によって自立活動する器物)の作成に長ける。

 

呪骸は高い戦闘能力を持つことに加え、人形であるが故に痛覚や恐怖心を持っておらず、一切のダメージに怯むことがない。内部の核を破壊されるか、術師から供給された呪力が尽きない限りは戦闘継続が可能である。

 

なお呪骸として動かす人形は自分自身で作っており、強面に似合わずかわいい外見のものが多い。本人曰く「カワイイを作っているわけではなく、作ったものがカワイイになってしまう」。

 

そんな彼は、友枝町で写真に写る少女の事を、あの街で起こる異変に立ち向かってどうするか試すつもりだ。




ローラースケートを使う際にヘルメットを被ったのは、オリジナルです。
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