カードキャプターさくら 〜中身が限界オタクの私は、推し(知世)を泣かせたくなくて勇気を出す〜 作:ちいさな魔女
さくらは目覚まし時計の音で目を覚ます。しかし、今回は昨日のこともあって疲れも溜まり、ケルベロスに起こしてもらった。
さくら「ふぁ〜……ありがとうケロちゃん……起こしてもらって」
ケルベロス「まあ昨日あんな事があったさかい。疲れんのも無理ないな」
さくら「そうだね。お父さんになんて言うべきかな……」
あれは父親の地下の図書室に封じられていたもので、勝手に開けてしまった事はまだ明かしてない。いつか話すべきなのは分かっているし、恐らく藤隆も気付いているだろう。
さくら「よし。朝ごはん食べに行こう。あっ、まだケロちゃんは部屋から出たらダメだよ。まだ話してないんだから」
ケロちゃん「はーい」
そして、さくらはリビングに来て父親の藤隆や桃矢の元に来る。
さくら「お父さん、お兄ちゃん。おはよう」
藤隆「おはよう、さくらさん」
桃矢「お、おはよう。さくら。また怪獣が降りてきたな」
さくら「その怪獣の足音で目が覚めた?」
桃矢「そうだな。そんだけ騒げば目が覚め………えっ!?」
桃矢は席に座るさくらの返しに驚き、うっかり立ち上がる。
さくら「ん?どうしたのお兄ちゃん?」
桃矢「い、いや、なんでもない………」
桃矢はさくらからの返答に驚いていた。いつもなら「怪獣じゃなーい!」と怒って返すのだが、こんな風に余裕の態度で返されたのは初めてだ。
藤隆「あはは。桃矢さんに反撃しましたね」
さくら「でもさくらは怪獣じゃないもん」
今日は桃矢が朝食を作っており、兄の手料理を食べるさくら。やはり美味い。
朝食の味を堪能した後、今日は朝の掃除当番の日だと思い出し、食器を片付けた後にバスケット内のクッキーを手に取る。
さくら「やっぱりお父さんのクッキーは美味しい♡甘い物はやっぱり最高♡」
一つ食べた後にもう一つを持って、リビングを後にする。
桃矢「……やっぱ怪獣じゃん」
藤隆「元気で何よりですね」
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さくら「……はぁ。なんか複雑」
さくらはあの後、家を出てローラースケートを巧みに使って学校に向かった。その道中で雪兎の家に寄り道したのだが、其処で花をプレゼントしてもらった。なんとか感謝を告げて学校に来たのだが、実はかなり複雑な気持ちなのだ。
さくら(雪兎さん………クロウカードの守護者なんだよね。ケロちゃんと同じで、名前は
さくらには、前世の記憶がある。雪兎がクロウカード編のラスボスであるユエだと知ってる。知ってる以上、自分と今後も結ばれるはずもない。しかし、今も好きなのは本当だ。但し、知世の事も同じくらい今は好きだ。知世が推しなのもあって、尚も好意は止まらない。
教室に入り、鞄を降ろして机に置く。
知世「あら?早いですわね」
さくら「あっ、知世ちゃん。何か用があるの?」
教室の扉を開けて、さくらの親友である大道寺知世が入って来た。さくらの幼馴染にして、さくらをこの世で誰よりも愛し、さくらの恋も応援してくれる優しい大人びた女の子だ。
知世が早く来たという事は、さくらの朝の当番日を把握して、尚且つ昨日のことで聞きたいのだろうと確信するさくら。
知世「いえ、さくらちゃんにお聞きしたい事があって」
さくら「………」
さくらは、やはりと思った。知世ならば昨日のことを見逃してる筈も無い。
そして、知世が用意したビデオカメラの映像には、星の杖に跨って空を飛ぶさくらの姿があった。
さくら「………どうやって撮ってんの?」
知世「あら?」
知世は、さくらのリアクションに違和感を感じた。いつもなら「ふぇえーっ!」と驚く反応が表れる筈なのだが、今回はリアクションがかなり薄い。まるで、分かっていたかのような反応だ。
さくら「あっ」
さくらは、知世の反応を見て思い出した。うっかりどうやって撮ったか聞いてしまった。
さくら「………知世ちゃん。今から話す事は知世ちゃんだけにしか教えない事だよ。ケロちゃん、居るのは分かってるん、だよ!」
さくらは鞄を開けて、中に居るケルベロスを引き摺り出した。
ケルベロス「にゃあ!?何すんねんさくらぁ!!」
知世「さ、さくらちゃん?これは一体?」
さくら「取り敢えず、お昼休みに説明するね」
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朝の掃除や午前中の授業を諸々済ませて、さくらは知世と二人でランチタイムに入る。其処でさくらは、昨日起きた出来事を全て説明した。カードキャプターになった事、クロウカードの事、そして封印の獣ケルベロスの手も借りて全て説明した。
知世「それはまあ、なんて素晴らしいのでしょう!さくらちゃんが命を懸けて戦う姿、是非ともビデオカメラに収めたいんです!」
さくら「まあ、それくらいなら良いよ。だって知世ちゃん私の事好きだもんね」
知世「へっ?」
さくら「あっ!わ、私の事を撮るのが好きだねって話!」
知世の本心を理解してる為か、うっかり話してしまったさくら。その場しのぎで誤魔化したが、知世は目を輝かせている。
知世「当然ですわ!さくらちゃん以上に可愛い被写体なんて、この世にはありませんもの!」
誤魔化せた?そう思いこむことにしたさくら。
ケルベロス「ならこれも知っとるか?さくらはな、途中で敵前逃亡するし、泣いて怖がっとった癖に、いざ戦うと覚悟を決めて目茶苦茶頼りになるんや!」
知世「まあ!泥臭くとも最後まで退かずに戦うなんて、素敵ですわ!」
さくら「もう、恥ずかしいからやめてよ!それに、敵前逃亡じゃなくて戦略的撤退!」
さくらは顔を赤くする。確かに覚悟を決めたのは本当だが、それを知世の前で言われると恥ずかしい。
知世「もし宜しければ、カードキャプターとしての力をお見せして頂いて宜しいかしら?」
さくら「良いよ」
そして、昨日の呪文を唱えて、鍵を星の杖に変形させた。以前よりも早めに詠唱したさくら。
さくら「………ねえ知世ちゃん。私、意図しない形でも、カードを世界にばら撒いちゃった。今も何処にあるか分からないの。もしかしたら、呪詛師のように悪い人達の手元にあるかもしれない……」
知世「さくらちゃん?」
さくら「なら、私は全てのカードを集める!カードを全て集めて、知世ちゃんがゆったりと私を撮影出来る毎日にしてみせるよ!だからお願い!本当は知世ちゃんを巻き込みたくないけど、私だけじゃ難しいの!だからお願い!力を貸してほしい!知世ちゃんとケロちゃんが必要なの!」
さくらは思いの丈を知世にぶつけた。
知世「勿論ですわ!さくらちゃんの力になれるなら、是非とも協力しますわ!後、出来ればコスチュームも考えさせてくださいまし!」
ケロちゃん「ほな、わいも協力するで!大船に乗ったつもりで頼ってな!」
さくら「皆……ありがとう!」
さくらは頼れる味方が出来て、心底安心した。そんな思いを告げたおかげか、知世が後日用意したコスチュームに込められた、とある異変に気付く事になるのだった。
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翌日の学校で、友枝小学校に異変が起きる。机や跳び箱、マットレス等がグラウンドに山のように積み重なっており、教室内も机を積み重ねたピラミッドになっていた。一晩でここまでやるのは、明らかに人間の手では不可能だ。ましてや、学校の夜間警備員も誰一人として気付かなかったのもおかしい。
生徒と教師と共に片付けを行ったのだが、積み重ねる際に机や椅子の脚を器用に組み合わせていることもあり、片付けにかなりの時間を費やした。授業が潰れた事を喜ぶ者も居れば、片付け中に怪我をした生徒や大人達も居る。
さくら「授業は確かに退屈だけどさぁ、学べる機会なんて一度切りだしやれるだけやっとかないとね」
知世「まあ、まるで二度目の人生を歩んだような言い方ですわね」
さくら「へっ!?ま、まあ学ぶことは良いことだしね!」
なんとか誤魔化したさくら。
さくら「それより、あの状況はどう考えても人間の仕業とも思えないんだよ。一晩であれだけ机や跳び箱、マットレスをピラミッド状に積み上げるなんて」
知世「ええっ。人間の仕業ではありませんわ」
ケルベロス「うーん………どのカードかはまだ分からんけど、クロウカードの仕業なんは間違いない」
さくら「やっぱり………夜の学校は不気味で怖いけど、やるしかないよね」
さくらは夜の学校には、怖いイメージを抱いていた。元からでもそうだが、この世界で『特級呪物』という言葉がまかり通った以上、呪霊が居てもおかしくない。
しかし、放っておくわけにもいかない。
さくら「……ケロちゃん。夜の間までに体を鍛えておくよ」
ケルベロス「おう!その意気や!」
知世「でしたら、私もお手伝いさせてください!さくらちゃんの活躍する姿を、しっかりとビデオで撮らせて頂きますわ!」
さくら「うん。それくらいなら良いよ」
さくらは知世が用意してくれる衣装が、かなり楽しみだった。クロウカード集めで、実はこれこそがさくらの楽しみの一つであるからだ。
さくらは夜の戦いに備えて、トレーニングに励む事にしたのだった。
桃矢「なんださくら?懸垂なんて始めたのか?」
さくら「まあね!バトンしてる以上、体も鍛えないと、ね!」
さくらは公園の鉄棒で懸垂していたが、兄の桃矢がそれを目撃。雪兎も同行していたので、「頑張ってるね、さくらちゃん」と言われて嬉しいにも関わらず、正体知ってるせいで複雑な気分を抱いた事で集中力が切れてしまい、鉄棒から落ちてしまったさくらであった。なお、無傷で済んだ。
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その日の夜、さくらは夜の学校へケルベロスと共に来た。其処へ、リムジンと衣装を沢山取り揃えたバンと共に知世も合流した。その時に知世は4名のボディーガードを連れてきており、彼女達も事情を把握している様子であった。
知世「さくらちゃんはこれから、クロウカードを集めるとお聞きしたので、戦う為のコスチュームを用意しましたの!」
さくら「コスチュームかぁ。確かに見た目を変えるだけでも、相手に精神的動揺を与えたりするし、場に合わせる事による精神的な余裕も生まれるね。それに、魔法少女には戦う時に相応しいコスチュームは必要だよね」
知世「まあ、理解が早くて嬉しいですわ!」
さくら「それに………色々あってどれも可愛いよ!でも、大人になっても着たら、痛々しいかなぁ?」
知世「そんな事ありませんわ!さくらちゃんは大人になっても、きっと似合いますわ!」
さくら「そ、そうかな?ありがとう。それより、早くどれにするか決めよう」
そして、バンに乗り込んでコスチュームに着替えるさくら。胸元の赤く大きなリボンが特徴の可愛らしい衣装だ。
さくら「凄い……これが私?こ、こんなの本当に似合うかな?」
知世「バッチリですわ!」
因みに、ケルベロスにも赤いリボンを取り付けてもらった。知世が作ったのだ。
さくら「可愛い!ケロちゃん似合うよ!」
ケルベロス「そか?知世、いいセンスやな〜」
知世「ありがとうございますわ!」
そして、夜の学校に突入したさくら達。さくらはこの時の為に懐中電灯を持ってきており、照らして周りを見渡した後に消していた。
知世「まあ、さくらちゃん映画で見るような動きをしますわね」
さくら「こんな夜の闇の中、ライトを照らし続けたら自分の居場所をバラしちゃうからね。敵が何処か分からないのに、照らしっぱなしにしたら危ないよ」
ケルベロス「なんや特殊部隊モンでも観たんか?」
バイオハザードでジル・バレンタインがやったのを真似してるなんて、死んでも言えないさくら。
すると、月明かりの照らす校舎に、一つの影が浮かび上がる。影と共に、宙に浮かぶ天使像がさくら達の元へ襲い掛かってきた。
知世「まあ!」
さくら(やっぱりSHADOWのカード!実体が見えない!なら!)
さくらは月明かりに映る像の影を見ると、像を持ち上げる人型の影が現れた。
さくら「………『闇の力を秘めし鍵よ。真の姿を我の前に示せ。契約のもと、さくらが命じる
さくらは以前とは比にならぬ速さで呪文を唱え、星の杖を展開して手に持つ。
影を懐中電灯で照らすと、像を持つ影は姿を消した。影が消えた事で、像はグラウンドに落ちて粉々に砕けた。
さくら「消えた!」
知世「影だから、光に弱いんですのね!」
ケルベロス「SHADOWは本体以外は光を浴びれば消えるんや!」
さくら「普通影は光を浴びれば濃くなるのにね」
さくらは星の杖を構えるが、影は次々と現れてくる。
この友枝小学校だけでも生徒はかなりの数が居る。その影を集めたのならば、懐中電灯で照らしても焼け石に水だ。
さくら「やっぱり、この数に多さ……光が足りない!でなきゃ月明かりとかで消えないもんね!」
さくらは影の攻撃を避けていく。攻撃を冷静に見極めて避けていく。
ケルベロス「『FLY』のカードで逃げるんや!」
さくら「『FLY』!」
さくらは星の杖に跨り、カードを使って空中を飛ぶ。
しかし、影達は机を投げつけて攻撃してくる。
さくら(空を飛んだのは逆効果だ!寧ろ的になるだけだ!)
さくらは影が集まり、触手となって伸びてくるのを見て、カード戦の過酷さを改めて理解した。
しかし、だからと言ってさくらは諦めはしない。
SHADOWの集めた影の塊から一本の触手が伸びて、星の杖を捕まえた後にさくらを引きずり込もうとする。
しかし、SHADOWはこの時、思わぬ予想外の出来事に遭遇する。
夜蛾「あれは………くっ!あれだけの規模の力が………」
近くで謎の力を探知し、補助監督と共に友枝小学校へやって来た夜蛾も、呪骸を放とうとした。
しかし、その夜蛾と補助監督も、その光景に驚愕する。
知世が明かりを照らす直前、さくらは思わぬ行動に出たのだ。
普通、移動手段を掴まれたら逃れようとする。空を飛ぶ手段が制限されれば、尚更振り切ろうとする。前のさくらならそうしただろう。
しかし、今のさくらは。
さくら「女の子に触手は似合うけど………来てほしいなら来てあげるよ!!やああああ!!」
逆に影の塊へ突っ込んだ。勿論、何の策もなしに突っ込む程、さくらは間抜けではない。
さくら「風よ吹きとばせ!!『WINDY』!!」
星の杖の先で影の中心を突いた後、『WINDY』で起こした風の力で星の杖を中心に影を吹き飛ばした。影も予想外の行動に対処出来ず、風の力で吹き飛ばされてしまった。
そして、学校の電灯や校舎内のライトが全て灯され、影が全て消えた。
知世「やりましたわー!」
さくら「ナイスだよ!知世ちゃん!」
ケルベロス「安心しとる場合か!あれが本体や!」
ケルベロスが示す方向に、黒いフードの異形が歩いていた。
さくら「影は光が強い程濃くなるのにね」
さくらはSHADOWに向かって歩み始める。冷静に歩み寄り、SHADOWが袖から飛ばしてきた影を杖で弾き飛ばし、風で本体を拘束した後、SHADOWに向けて杖を翳す。
さくら「汝のあるべき姿に戻れ。クロウカード」
さくらはSHADOWをカードの形に封じ込めた。地面に落ちたカードを、さくらは拾って砂を払う。
さくら「ふう………敢えて突っ込んだのは初めてだけど、やってみるもんだね」
さくらは額の汗を袖で拭う。
知世とケルベロスの元を向くと、自分に向かって手を振ってくれた。さくらも手を振り、感謝を示す。
しかし、事態は此処で終わらなかった。
夜蛾「見事な発想だ。まさか、引きずり込まれそうになると、逆に敵の元へ突っ込むとはな」
さくらはその声を聞いた途端、奇妙な程の既知間に襲われた。
さくら(この声……いや、まさか……あり得ない!だって、その男はカードキャプターさくらの世界に居ない筈!)
さくらはその声の主の方向を向いた。
そして、現実を目の当たりにする。
知世「あら?貴方方は?」
ケルベロス「な、なんでや!?なんで此処に呪術師がおんねん!?」
さくら(やっぱり!!夜蛾正道先生だ!!補助監督らしい人は……あんな人居たかな?知らない女の人だ………)
さくらは、校舎のグラウンドに現れた夜蛾先生と補助監督の女性を見て、呪術廻戦もクロスしてるのだと理解した。
夜蛾「あの力は呪力とは異なる、大きな力だ………それをこんな小さな少女が封印するとは…………」
夜蛾はさくらを見て、ただ者ではないと知る。
夜蛾「………俺は呪術高専の教員、夜蛾正道だ。此処には任務で来た。だが予想以上の逸材なのは間違いないが、お前はどうなんだ?」
夜蛾は問う。
夜蛾「君は、何のためにカードを集めるのか?それを確かめさせてもらうぞ」
SHADOWとの戦闘からまだ数分しか経っていないにも関わらず、夜蛾から試される事になったさくら。しかし、さくらは受けて立つつもりだった。
これを乗り越えられないようでは、知世を護れないからだ。