鬼太郎にお金持ちの鬼娘が求婚する話

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この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。


鬼太郎二次創作コメディプロット作成

第一章:鬼の持参金

 

夕暮れがゲゲゲの森を濃い藍色に染め上げる頃、その「異物」は現れた。

カラン、コロン。

鬼太郎の下駄の音が止まる。彼の視線の先、カラスたちが騒がしく羽ばたいた広場には、場違いなほど豪奢な漆塗りの長持(ながもち)が並べられ、その傍らには一人の女が立っていた。

 

「……誰だい、君は」

 

鬼太郎の問いに、女がゆっくりと振り返る。

絹のような黒髪を高く結い上げ、隙のない着こなしの着物からは、隠しきれない力強さと、人間社会の荒波で揉まれた者に特有の「富の香り」が漂っていた。彼女は鬼族。かつて人に仇なし、その強欲さゆえに数を減らした一族の生き残りだ。

 

「お初にお目に掛かります、鬼太郎殿。私は羅刹。……あなや、近くで見れば見るほど、なんと清らかな霊気」

 

羅刹と名乗った女は、うっとりと目を細めて鬼太郎に歩み寄った。彼女の瞳には、恋慕というよりは、稀少な国宝を眺める鑑定士のような、あるいは優れた種子を見つけた農夫のような、切実な熱が宿っている。

 

「単刀直入に申し上げましょう。私と祝言を挙げ、幽霊族の稚児を……そうですね、十人ほど設けてはいただけませぬか?」

 

「えっ……?」

 

鬼太郎の思考が停止した。背後で、カラスの羽根を撒き散らしながら、赤いワンピースの影が飛び込んでくる。

 

「ちょっと! あんた、何言ってるのよ!」

 

猫娘だった。モデルのような長い脚が地を蹴り、鬼太郎と羅刹の間に割って入る。鋭い爪が夕闇に光った。

 

「鬼太郎にいきなり子作りなんて、破廉恥にもほどがあるわ! 帰りなさい、この鬼女!」

 

だが、羅刹は動じなかった。それどころか、猫娘の肢体を品定めするように眺め、ふっと柔らかく微笑んだのだ。

 

「……なるほど、美しい猫又だ。貴女も鬼太郎殿の有能さに惹かれているのでしょう? 案じ召されるな。私は重婚、大歓迎でございます」

 

「は、はあ!?」

 

「幽霊族は絶滅の危機。対して我が鬼族は、野心に溺れて自滅した愚か者の末裔。このままでは、幽霊族の持つ『誠実さ』も『強靭な霊質』も、現世から消えてしまう。それは世界の損失です。……猫娘殿、貴女も協力しなさい。貴女が一人産むごとに、私が人間社会で築いた資産から、一生遊んで暮らせるだけの養育費を……あ、もちろん、ダイヤモンドの首輪も差し上げましょう」

 

「金で解決しようとしないでよ! 私は、そういうんじゃなくて……!」

 

猫娘の顔が沸騰したように赤くなる。怒りか、あるいは提示された条件の現実味に対する混乱か。

 

「見てください、鬼太郎殿のこの横顔。幽霊族の遺伝子を後世に残すことは、妖怪界の義務です。さあ、まずはこの最高級の日本酒で乾杯といきましょう。子作りは、体力をつけてからで構いません」

 

羅刹は手際よく長持を開け、琥珀色の液体が詰まった瓶を取り出した。その香りは一瞬で森を満たし、家の中で茶を啜っていた目玉おやじまでが「なんと、これは伝説の……」と這い出してきた。

 

鬼太郎は、激昂する猫娘と、粛々と宴の準備を始める羅刹、そして酒の香りに鼻の下を伸ばす父を見比べ、深く、深く溜息をついた。

 

「……父さん。幽霊族って、そんなに『有能な種族』だったかな」

 

「鬼太郎や、少なくとも『我慢強さ』だけは天下一品じゃな……」

 

幽霊族最後の生き残りを巡る、種族存続(と独占欲)を賭けた騒がしい日々が、幕を開けようとしていた。

 

 

 

第二章:鬼の論理、猫の純情

 

広げられた緋毛氈(ひもうせん)の上には、人間界の高級料亭でもお目にかかれないような山海の珍味が並んでいた。だが、猫娘の喉を鳴らしたのは食欲ではなく、目の前の女が放つ、あまりに居丈高で、それでいて理路整然とした「正論」への困惑だった。

 

「いいですか、猫娘殿。感情という不確かなものに振り回されるのは、若さの特権。ですが、種(しゅ)の存続という大義の前では、貴女の独占欲など瑣末な問題です」

 

羅刹は優雅に盃を傾け、琥珀色の酒を唇に湿らせた。その仕草一つ一つに、実業家としての余裕と、鬼族特有の野性が同居している。

 

「独占欲じゃないわよ! 私はただ、鬼太郎が変な女に騙されないように……!」

 

「『変な女』とは心外な。私は現在、不動産業と酒造業を営み、妖怪界と人間界の橋渡しをしている功労者ですよ。私が欲しいのは、鬼太郎殿という『個体』のみならず、彼が内包する幽霊族の……あの、あまりにも誠実で、辛抱強く、そして透き通った霊的資質なのです」

 

羅刹の視線が、困り果てて自身の髪をいじっている鬼太郎に注がれる。

 

「見てごらんなさい、あの涼やかな横顔を。我ら鬼族が、権力を欲して同族を喰らい、人間に打ち取られて数を減らした歴史の中で、幽霊族は常に影に潜み、慎ましく、しかし確実にその魂を守り抜いてきた。彼らは、我々が失った『徳』そのものなのですよ。そんな素晴らしい血が、このまま一代で絶えるなど……妖怪界の、いえ、世界の知的損失だと思いませんか?」

 

「そ、れは……」

 

猫娘は言葉に詰まった。彼女自身、鬼太郎の底なしの優しさや、泥を被ってでも誰かを助ける誠実さに惹かれている。それを「種族の徳」として言語化され、全肯定されると、不思議と自分の恋心まで高尚なものとして認められたような、奇妙な高揚感が芽生えてしまう。

 

「あなや、羅刹殿! お主、そこまで幽霊族のことを……!」

 

涙を流して感動していたのは、目玉おやじだった。茶碗の中で、羅刹が注いだ極上の酒に浸かりながら、彼は声を震わせる。

 

「左様でございますか。幽霊族の価値を、そこまで深く理解してくれる者がおったとは。……鬼太郎や、聞いたか。お主のその『誠実さ』こそが、今や妖怪界の宝なのだぞ!」

 

「父さん、酔いすぎだよ。……それに羅刹さん、買い被りすぎだ。僕はただ、僕のできることをしているだけで……」

 

「その無欲さ! それこそが稀少価値なのです!」

 

羅刹は身を乗り出し、鬼太郎の細い手を取った。力強いが、肌は驚くほど滑らかだ。

 

「幽霊族の男子は、一度決めた相手には決して背かない。耐久性、持続性、そして霊力の純度。どれをとっても経営者としてこれ以上のパートナーはいません。猫娘殿、貴女もそう思うでしょう? 貴女が鬼太郎殿の傍らにいたいなら、それで構わない。私が正妻として家庭と資産を管理し、貴女は側室として彼の心を支えればいい。どうです、理にかなっている」

 

「側、室……? 私が、鬼太郎の、二番目……?」

 

猫娘の脳内で、ウェディングドレスを着た自分と、その横で不敵に笑う和服姿の羅刹、そして困り顔の鬼太郎という、カオスな新婚生活のイメージが膨らむ。

 

「……いや、待って! なんで私が折れる前提なのよ! そもそも鬼太郎は誰とも結婚しないんだから!」

 

「おや、では彼をこのまま独り身で死なせ、幽霊族を滅ぼすと? 貴女はそれほどに残酷な猫なのですか?」

 

「なっ……!?」

 

「さあ、そうと決まれば祝宴の続きです。猫娘殿にも、後ほど最高級の鰹節を……あ、失礼。モデル体型を維持するための、最高級のプロテインをお分けしましょう」

 

「喧嘩売ってんの!? 受けて立つわよ!」

 

夜の帳が下りるゲゲゲの森。羅刹が持ち込んだ「鬼の論理」は、猫の純情を翻弄し、幽霊族の青年を未曾有の危機(?)へと追い込んでいくのだった。

 

 

 

第三章:酒池肉林の宴と幽霊族の矜持

 

気づけば、ゲゲゲの森は異様な熱気に包まれていた。

羅刹が運ばせた長持の中身は、酒と食料の無尽蔵な宝庫だった。その匂いにつられて、砂かけ婆や子なき爺、さらには一反木綿やぬりかべまでが広場に集まり、いつの間にか大宴会が始まっている。

 

「いいか、鬼太郎……。この酒は『鬼の涙』という名酒じゃ。かつて我ら鬼族が、戦の前に士気を高めるために醸した……血と誇りの味ですよ」

 

少し赤らんだ顔で、羅刹が鬼太郎の隣に腰を下ろした。彼女の纏う空気から、先ほどまでの刺々しい商売人の気配が、夜風に溶けるように消えていく。

 

「羅刹さん、みんなに振る舞ってくれてありがとう。でも……やっぱり結婚の話は、承服できないよ」

 

鬼太郎は、猫娘が羅刹と「どちらが鬼太郎に相応しい給仕ができるか」という不毛な競争(という名の飲み比べ)で自爆し、砂かけ婆に介抱されている姿を横目で見ながら言った。

 

「ふふ、わかっています。貴方はそういうお方だ。……鬼太郎殿、貴方は不思議に思わないのですか? 私ほどの資産と力があれば、無理矢理にでも貴方を拐(さら)い、地下の奥深くにでも閉じ込めることができる。鬼とは、本来そういう生き物なのです」

 

羅刹の言葉に、鬼太郎の背筋がわずかに震えた。だが、彼女の横顔には冷酷な支配欲ではなく、どこか遠い過去を悼むような寂寥感が漂っていた。

 

「私の先祖は、欲しいものを力で奪い、人を喰らい、神を呪った。その結果、どうなったか。……英雄に首を撥ねられ、同族で足を引っ張り合い、今や人間社会の隅っこで、人の真似事をして金を稼ぐだけの卑小な存在に成り下がった。欲は、強さの源ですが……同時に種を滅ぼす毒でもある」

 

彼女は空になった盃を見つめ、自嘲気味に笑う。

 

「それに対して、幽霊族はどうでしょう。貴方たちは、決して奪わなかった。ただ慎ましく、世界の調和の一部として、誰からも憎まれず、しかし誰からも忘れられないほど静かに、誠実に生きてきた。……私が貴方の子供を欲しがるのは、単なる有能な兵隊が欲しいからではありません。我ら鬼族が失ってしまった『静謐なる誠実』を、この世に繋ぎ止めたい。そのために、貴方の清らかな血が必要なのです」

 

鬼太郎は、杯を持ったまま絶句した。

彼女の「子供が欲しい」という言葉の裏には、自らの血脈に対する絶望と、幽霊族という滅びゆく光への、祈りにも似た執着があった。

 

「……僕に、そんな大層な価値があるとは思えないよ。僕はただ、父さんに育てられ、人間と妖怪の間で揺れながら、今日まで生きてきただけだ」

 

「その『だけ』が、どれほど難しいことか! 損得も、野心も、復讐心もなく、ただそこに在る。……鬼太郎殿、私は貴方がますます欲しくなりました。ああ、今すぐこの場で契約書に判を……いえ、接吻を交わしたいほどに!」

 

「だから、話が飛躍しすぎだってば……!」

 

感極まった羅刹が、その豊満な胸元を押し付けるようにして鬼太郎に迫る。

その時、酒に溺れていたはずの猫娘が、雷のような速度で二人の間に割り込んだ。

 

「離れなさいよ、この強欲女! 鬼太郎は、あんたの種族の『漂白剤』じゃないんだから!」

 

「おやおや、復活しましたか。さすがはモデル体型、代謝が良い。……ですが猫娘殿、貴女も聞きましたか? 私の真剣な告白を。貴女も鬼太郎殿の誠実さを愛しているのでしょう? ならば、それを永遠に残すために協力するのが、真の愛というものではありませんか?」

 

「理屈はいいのよ、理屈は! 鬼太郎は、私が……私が守るんだから!」

 

猫娘の瞳が、怒りと羞恥で金色に輝く。

羅刹はそれを面白そうに眺めると、ふっと夜空を仰いで満足げに頷いた。

 

「いいでしょう。今日、すぐに答えが出るとは思っていません。……ですが、私は諦めませんよ。何しろ鬼は、一度食いついたら離さない。それに、私はもうこの近くに広大な土地を買い、屋敷を建てる手続きを終えましたから」

 

「……はあ!?」

 

猫娘の叫びが森に響き渡る。

羅刹は優雅に立ち上がり、乱れた着物を整えると、鬼太郎に向かって深々と頭を下げた。

 

「では鬼太郎殿。明日から、毎日お弁当を持ってお伺いします。幽霊族存続計画……長期戦の構えです。覚悟しておいてくださいね」

 

カラン、コロン。

彼女の去り際の下駄の音は、かつてのどの妖怪よりも力強く、そしてどこか楽しげに、ゲゲゲの森の夜に溶けていった。




この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

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