「あなたはやりすぎた」と危険視され女神に排除された異能の騎士、取って付けた詫び転生の勧誘を拒否して女神を斬り殺してしまう   作:ますかるぽーね

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ドランゴライダー

「賊の言葉を鵜呑みにするほど私はお人好しではない」

 

 ヒューガは臨戦態勢を崩さず言葉を返した。

 相手は太陽石に身を潜めるセラの気配に勘付くような得体の知れない男だ、警戒してし過ぎるということはない。

 

「……はぁ? 賊って誰のことだよ?」

 

「貴様ら以外に誰がいる? どこから流れてきたのかは知らんが、貴様が真の頭目だというのならば、村の安寧のためにも即刻この地から立ち退いてもらいたい。私の要求はそれだけだ」

 

 今さら何を寝ぼけたことを言っているのかと、ヒューガは若干の苛立ちを覚えながら要求を伝える。

 

「………………おい、ダントン!」

 

「へっ、へい!」

 

「俺たち、なんで賊扱いなんかされてんだ!? マジで俺がくたばってる間に何があったってんだよ……」

 

 黒髪の痩せ男は、傍らの巨漢をどついて捲し立てた。

 

「いてて……お、オレさっき説明しようとしたのに……」

 

 そう言うと、大男は身を屈めて痩せ男の耳元で何やら話し始めた。

 

(……我々はいったい何を見せられている)

 

 有無を言わさず斬りかかることもできたが、あまりに真に迫った男の動揺ぶりに気勢が削がれてしまった。

 

(あの剣士のおっさん、本気でなーんも知らない顔して――ん……?)

 

 セラは突然言葉を切って不思議そうな声を上げた。

 

(どうした?)

 

(いやぁ、なんか今急に男の子の声が聞こえたような気がして)

 

(男児の? 私は子どもの気配など感じないが……)

 

(うーん、気のせいなのかなぁ?)

 

 セラはそう言いつつも、何か腑に落ちていない様子だ。

 

「……なるほどな。――あー……剣士のにーちゃん、悪ぃな。変なタイミングで待たせちまって」

 

 痩せ男はヒューガに向き直ると、頭を掻きながらバツの悪い顔で謝罪してきた。

 

「立ち退く決心はついたか?」

 

「――っと、その前にひとつ確認だ。そこでぶっ倒れてる俺のダチ……死んじゃあいねーよな?」

 

 痩せ男の声色から軽薄さが消え、鋭い眼差しが射貫くようにヒューガを見据える。

 

「意識を失っているだけだ、じきに目を覚ます」

 

 ヒューガは先ほど気絶させたヤンという名のゴロツキを一瞥して答えた。

 

「そいつを聞いて安心したぜ。……いやな? どうやら、お互い死ぬほどワケありみてぇだし、いっそ隠し事抜きで腹割って話せばわかり合えんじゃねーかなぁって思うワケよ」

 

「だ、旦那!?」

 

「腹割るってこたぁ、つっ、つまり――」

 

「しゃーねぇだろ! そうでもしなきゃ、あのにーちゃんも納得してくれねぇよ」

 

 痩せ男は慌てた様子の子分たちを窘めるように、ヒューガを指差して言った。

 

「……貴様らの身の上話を聞けと?」

 

「ま、ぶっちゃけ半分そういうこった。そりゃあ聞くも涙、語るも涙で一聞の価値アリアリってなもんよ」

 

 男はカカカと笑うと、大剣を地面に突き立ててその場に座り込んでしまった。

 

(あーんなこと言ってるけど……どうする?)

 

(……相棒よ、私を信じてくれるか?)

 

(信じてなかったら一緒になんかいないよ。つまり、あのおっさんの話に乗っかってみるんだね?)

 

(……ああ、普通であれば戯れ言も大概にしろと一笑に付すところだが……)

 

(光魔法は使うし、なんか剣も光ってたし、おまけにボクの気配まで感じ取ってた……どう見ても普通じゃないね)

 

(幸い、私の()()はこの状況を危機とは認識していない。少なくとも、今のあの男に害意がないのは真実だろう)

 

(《超感覚》だっけ? 本当に便利だよね、君の異能……地味だけど)

 

(……地味で悪かったな)

 

 ヒューガはため息交じりに呼吸を整えると、構えを解いて魔剣を鞘に納めた。

 

「おっ、秘密の相談は終わったか?」

 

「……話は聞こう。その上で改めて判断させてもらう」

 

 〝憑き物〟についての言及は受け流し、歩み寄るために一歩踏み出した、その瞬間だった。

 

「どっ、ドドドドッ、ドッ、ド……ドドドドドッッ!!」

 

 突然ヒューガの背の正面扉が勢いよく開いたかと思うと、血相を変えた小柄の若い男が言葉にならない声を上げながら飛び込んできた。

 

(迂闊だったな、まだ外に1人残っていたか)

 

(ちょうどオシッコにでも行ってたのかもね……)

 

 危うく反射的に剣を抜きそうになったが、当の男はヒューガなど視界に入らないほど気が動転している様子で一目散に痩せ男の方に駆けていった。

 

「リック! いったいどうした!?」

 

 痩せ男はリックと呼ばれた子分を抱き抑えて尋ねた。

 

「だっ、旦那ァ! やっと意識が戻ったんですね!? ――って、い、今は、そっ、それどころじゃ、なななな、なくってェ!!」

 

「とりあえず落ち着けって」

 

 痩せ男は子分の両肩を叩いて無理矢理落ち着かせると、「何があった?」と続きを促した。

 

「そそそ、それが……っ! どっ、ドラゴンに乗ったイカれた女がいきなり空から現れて……っ! お、オレたち全員大人しく出てこないと、きょっ、教会ごと木っ端微塵に吹き飛ばすって脅してきやがったんですよぉっ!」

 

「……………………はああぁぁああぁぁああぁぁっ!?」

 

 シン……と静まり返った礼拝堂に、痩せこけた剣士の間抜けな叫びだけが反響した。

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