アルフィア狂い 作:PETTA
「・・・・」
その男は木蔭から何かを真剣に見つめている。
「アイツ例の記録保持者か?」
「この前Lv4になったあの?」
その不審者の前を通りかかった冒険者たちはひそかに呟く。
優雅な休日
オープンテラスというのは見た目は良いが、様々な雑音が気になるイマイチな席だ。
強化された聴覚は否が応でもそれらを拾う。
ある男の顔が浮かんだ彼女は容器を握り締める。
「何か顔紅くないか?」
「息も荒いな・・・風邪でも引いてるのか?」
私の知っている男ならばそれで普通だ。
・・・その男は恐らくあの陰に居る。
もし私が動けば、奴も動くだろう。
魔法を打ち込みたいが
何もしていないのに攻撃するのは流石に忍びない。
こちらが立てば
「あぁ立ったな。じゃあ大丈夫か」
店を出てからすぐに路地裏へ入る。
この様な道を良く理解していれば
「おい」
ストーカーの真後ろに立つことが出来る。
「嫌だなぁ・・・つけてたなんて。そんな事はしていないよ」
ビクトールは苦しい言い訳を展開する。
「お前には此処が普段使いする様な道に見えるか?」
ここは路地裏でも屈指の悪路だ。
誰も通らないからこそこうなっているのだ。
「・・・正直に言えば許してやってもいい。この前は世話になったからな・・・・何時からつけていた?」
許すとは言わない。
「…初めから」
初めからか・・・。
「私が朝食を食べ始めてからか?」
横に振る。
「…私が店を決めた辺りか?」
横に振る。
「・・・私がホームを出た辺りか?」
この男まさか・・・。
「もっと前」
拳を握り締める。
「あれ?もう聞かなくていいの?」
事の重大さを理解していない。
非常に不愉快だ。
「あぁ、もう良いとも。」
何故ならそれは・・・
「ゴぉッ!!」
私の着替えだからだよ。
「それで、今日は何の用だ?」
ビクトールは垂れ流されいる汚物以下の人間だが、用もなく接触してこない。
前に『毎日用も無いのに会いに行っちゃ嫌われるだろう?』と言われ舌打ちをしたものだ。
「いや、アルフィアこそなんで分からないんだ?」
何か約束でもしていただろうか?
「明日はアルフィアとメーテリアの誕生日だろう?」
あぁ、そういえばそうだった。
「毎年ホームを花だらけにする馬鹿がやってくる…ろくでもない日だ。」
毎年私がどんな気持ちで片づけているか・・・・。
皆、送り主とその相手が誰なのかを知っているのだから。
恋文を他人に見られる様な恥辱を味わう日だ。
めでたくなどない。
「今年は夜間の巡回を実施する予定でな、不審者はその場で殺す事になっている。」
今年こそは阻止してみせる。
「今年はいつも買ってる店が仕入れに間に合わなかったんだ。
困るよね。」
ビクトールの悲報は私にとっては朗報だった。
「だから今年は花に代わるものを納めないとね」
私は徴税人か何かか?
「その様な法は無いし、むしろ納める方が推奨されない」
プレゼントというのは貰っても扱いが困るのだ。
「第一、私たちは冒険者だ。武器は壊れる前提で数本持ち歩いている奴らも居る」
有形の贈り物は使わない物ならずっと倉庫の中で、使える物ならばすぐ壊れる。
「壊れない物は高いだろう、数億はある。」
だから送るなと言っているのだが
「数億ならギリギリ買えるよ」
等と言う。その立派な耳は飾りなのか?
「取り敢えずメーテリアへのプレゼントを買おうと思う。」
「ならば回れ右をして帰れ」
「アルフィアへのプレゼントもまだなんだよ。」
「・・・・」
結局、奴の買い物に付き合う羽目になった。
しかしどんな頭をしていれば平然とこの様な行いが出来るのか。
最初に目に入ったのは服の店。
それもこの町にしては珍しい洒落た店だ
可愛い服を見ていると、妹がそれを着ている映像が浮かぶ。
「これは・・・」
メーテリアに似合うのではないだろうか?
そう思い、手に取ろうとした瞬間。
「いやぁ、分かって無いな・・・へたっぴさあ。」
そう言ったビクトールが選んだのは大人らしい服だった。
「お前こそ分かっていない。メーテリアは可憐だ。
そんな子はとびきり可愛い服を着るべきだ。」
「メーテリアも可憐だが、あの子はもういい年だ。
ならば年相応の服の方が似合う。」
婦人服の店では場違いなはずの男なのに、そう思わせないのはメーテリアの為を本気で想っているからなのか
「あの子はそういう服は好かないだろう。」
「アルフィアに似合う服がどうして好きじゃないと言い切れるのか」
「私の事はどうでもいい」
「良くない。」
2時間以上口論を交わし、結局8着も買う事になった。
「娘さんへの贈り物ですか?」
店員の発言に
「えぇそうです。このオラリオでも屈指の美貌を持っていましてね。まぁ妻の方が可愛いですが」
見事に食いついた。
竿を折り曲げる勢いで語り始めている。
店の人間は少し引いている。
このオラリオで婦人服を売っている数少ない店でその様な事をされては堪らない。
首根っこを掴んで逃げる様に退店した。
「4着も買ってしまった・・・こんなに送れない」
後悔先に立たずとはこの事か。
「いや、普通に送れば良いじゃないか?」
そうは言うがあの子は高い物はあまり受け取らないのだ。
「じゃあ着てくれ」
一瞬・・・ほんの一瞬それらを着ている自分が彼と歩いている姿を想像した。
「それは・・・却下だ」
あんな恥ずかしいのはごめんだ。
「じゃあ次はアルフィアの分だが」
拒絶したいが何を言ってもコイツには通じない。
「どれ位の予算を持っている?」
一番高い奴でも買わせよう。
「この辺りの土地は全部買えるな」
・・・。
「ならば毎朝叫べばいい。それが私の喜ぶプレゼントだ」
叫ぶかもしれないが、大した迷惑にはならないだろう。
「じゃあ後はちょっとした物を買っておくよ」
2個目のプレゼントならば…受け取って困る物は買わないだろう。
昨日は花まみれにしないと言っていたが、信用できないし。
何より長年の癖で早起きしてしまった。
既に団長は起きていた。
「アルフィア・・・今年は花束が一束らしい。」
いりませんと言っても、一度は受けとれと押し切られてしまった。
困ったがとても綺麗な花なのだから、部屋に飾ろうと一本引き抜こうとすると何かが落ちた。
カードが入っている。
「アルフィアの寝顔はどうして可愛いのか?」
「今後美人の定義には灰色の髪が入るんだろうな」
「ロッカーにプレゼント置いておいたよ」
「もしかしてアルフィアは下着も黒なの?」
その様なカードが10枚以上出てくる。
・・・・しれっと不法侵入を示唆した文章が書かれている。
物入れを見ると、不自然な箱がある。
かなり年季の入った箱だ。
開けると中には綺麗な髪飾りが入っている。
「お姉さま・・・似合っていますね」
メーテリアが言うならそうなのだろう。
「アルフィアそれ・・・」
通り過ぎようとした友人が二度見したまま口をパクパクしている。
「409000000ヴァリスで売ってた奴じゃない!!凄いね!」
・・・は?
「そんなに高かったのか?」
こんな小さな髪飾りが・・・・?
「120年前にある国の王女様に送られた物だよ・・・いやぁ凄いね。」
王女・・・・?
「Lv5であった高名な鍛冶師が深層の素材やそれ以上に希少な材料を用いて作られたって聞いたことがあるよ。」
アイツ・・・財布は大丈夫なんだろうか。
その後もヘラや装飾品に詳しい団員が目を見開き、酷い者は立ち止まる程だった。
私はこれをどう返せばいいのだろうか・・・・・。
とりあえず奴の所に向かうとしようか。
その瞬間…夜を切り裂く轟音が響いた。
アルdwィアぁぁっぁぁっぁぁぃうぃfcdじぇwq-fjd9えfj9-え3うjfcんうぇうfcんれいKどあ
叫びの様なその音は周囲の建物で反射して、此処まで届いたのか。
アルフィアぁぁっぁぁっぁぁぃ!!!!!!!!
聞き覚えのある
声だ・・・。
余りの衝撃で椅子から立ち上がれない。
おいうるせぇぞッ!
何時だと思ってる?!
何処で叫んでやがるッ!!!
外では怒号が飛び交う。
数年前の誕生日に出会った彼は相変わらずだ。
・・・すでに分かっていた事だが
いくら暴言を吐いても暴行しても逃げない彼は間違いなく狂人だ。
そんな男が刹那の余韻を気にしないのは当然か
髪飾りを触りながら思う。
あぁ・・・やはり今日はろくでもない日だ。
そうとしか言えない。
弛緩した表情筋はもう一度引き締まる。
後数十年か続いていくのだろう。
だが、この日々も…いつかは無くなる。
私はそれをどう思うだろうか。
素直になれない私でも、時が経てば・・・この日々が…
「アルフィアーー ちょっと 彼止めてきてくれない?」
耳を指で塞ぎながら…苦しそうに頼んでくる。
「あぁ」
静かに目を閉じて、扉に手を掛ける。
「いってらっしゃい!」
完結しました……。
もしかすると、あと1〜2話ほど更新するかもしれません。
皆様の応援に、心から感謝しています。
この二次創作を通して、私が見失ってしまった「生命」というものを言語化したかったのですが、私の文章力と知識では到底及びませんでした。
美しい命の輝きを書きたかった。
次は……いつ書くのだろうか、と考えています。
けれど、それはまだずっと遠い先のようにも思えます。
今は本でも読みながら、誤魔化していくのかもしれません。
何十年も経ってから、ようやく書けるものなのか……。
そう思うこともあります。
今は、まだ分かりません。
とりあえず、私にできることは
人と関わりながら、知識を得ながら、進み続けることだと思っています。