知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
目を開けるとそこは真っ白な空間だった。隣には鎧姿の兵藤がいる。
「おい、兵藤。ここどこだ?」
「俺に訊かないでくださいよ、先輩。ドライグ、これ、何?二天龍特有の何かなの?」
『いや、俺も知らん……』
どうやらドライグさんも知らないらしい。じゃあ、一体ここは何なんだ?
……あ、そうだ!こう言う時こそドキンダムだ!
おい、ドキンダム!
――『ちょっと黙ってろ。こんなイベントのせいで俺は今、頭が痛い』
え?どういう事?
――『我らは知っている。何せ、ユノハから叩き込まれた知識だからな……』
はぁ……?ユノハ様、一体どういう事ですか?
――『私が嫌いなイベントが起きる。それだけよ』
あなた、どうせ嫌いなイベントしかないでしょうよ。
――『そうね、その通り。でも、その中でも悪目立ちするようなものだってあるのよ』
余計に分からない。これは、流れるままでいろってことなのか?
俺と兵藤は静かにしていると、ふと声が聞こえた。
『聞こえますか?』
「え?」
兵藤の虚を突かれた声が響く。どうやら、俺の空耳じゃないらしい。その声から、俺は何者かがこの空間に引きずり込んだってことを考えた。
「おい、兵藤。警戒しろ」
「先輩にも聞こえたんですか?」
「ああ。誰だか分からないが、俺達をここに引きずり込んだ張本人かもしれん」
「何ですって?」
俺が兵藤に警戒を促すと、奴はすぐに構える。さて、どこから来る?
『そう警戒しないでください。私はただ、神の遣いとして来たものです』
「正体が分からん奴相手に警戒を解くとでも?」
俺がそう言うと、謎の声は何か納得したように言う。
『そうですね、このままでは怪しまれるのも当然。では、自己紹介しましょう』
随分マイペースで苛立つ。こっちはロキの相手で忙しいんだぞ。
『私はおっぱいの精霊です』
そうか、おっぱいの精霊か。
「「……はい?」」
余りに素っ頓狂なことを言われて、俺と兵藤は面食らうしかなかった。え、おっぱい?
『私は総てのおっぱいを司りし神、乳神様に仕える精霊です。あなた方二人の強いおっぱいへの渇望が私とつながったのです』
「「……」」
現実離れ、と言うよりは阿呆すぎて唖然とするしかない俺と兵藤。そんな俺達などいざ知らず、おっぱいの精霊は話を続ける。
『この度我々がつながったことを記念して、お二方に力を貸そうと言う乳神様の願いを伝えに参ったのが、今回の目的です』
「あ、そう言うの、結構です。俺、努力している途中なんで……」
兵藤が気まずそうに断る。俺も無言で頷く。兵藤だって馬鹿じゃない。おそらくだが、そのうさん臭さにドン引きしているのだろう。そもそもこんな状況を信じたくない可能性だってある。
『……そうですか。ですが、覚えておいてください。おっぱいは、常にあなた方と共にあることを』
「は、はぁ……」
そんな返答しか出来ない。突然現れて、んでもって突然力を貸すとか、色々信用出来んのだが……。
待って、ユノハ様はそのおっぱいの精霊ってのは知ってたの?
――『ええ。悔しいことにね』
……よし、あとでタンニーンさんにも訊こう。そんな変態的な神がこの世界にいるのかを。報連相、大事だからな。アザゼル先生にも訊こう。巻き込み、大事。
俺が現実を見ないようにしていると、再び目の前が光に包まれる。先ほどより短いそれが終わると、さっきまでいた採石場に俺達はいた。
「戻った?」
「先輩、一体どう言う……」
「ダイチ!イッセー!何をしているの?!」
俺達の背後から大きな声でそう言うのは、リアスだ。タンニーンさんもいる。
「あのー、タンニーンさん」
「何だ、そんな急に改まって」
「乳神って、どこの神話にいる?」
俺がそう言った瞬間、その場の空気が凍り付いた。
「リアス嬢ぉおおおお!ブラックゾーンが壊れたぁああああ!」
「だだだだ、ダイチぃ!!?あなた、何を言ってるの!!?」
「ち、違う!本当なんだ!さっきまで乳神の遣いであるおっぱいの精霊と話していてさ!な、兵藤!」
「そ、そうです!俺もその場にいました!何ならドライグだって!」
『本当だ、タンニーン!なんか、俺の知らない神の知らない遣いが俺達に話しかけてきたんだ!』
「ブラックゾーン!何もドライグをそんなにいじめなくてもいいだろ!」
「あなた達、そんなに欲求不満だったの!!?」
「俺何もしてない!!」
ちきしょぉおおおお!!何が乳神だ!何がおっぱいの精霊だ!ふざけんな!皆から変な人に思われたじゃねぇか!
「はい、終わり!この話はあとで!おい、兵藤!ミョルニルを出せ!さっさと片づけるぞ!」
「くそぉお!信頼を失ったことへの怒りはロキにぶつけてやる!」
そう言って、兵藤はミョルニルを出して、構える。構えるが、そこから動かない。どうした兵藤?
「……先輩」
「な、何だ?」
「急に冷静になって思い出したんですけど、ミョルニルって邪念があるととても重くなるんですけど、どうしましょう?俺、邪念の塊なんですけど?」
なるほど、兵藤しか扱えないのに、兵藤には扱えないって言う矛盾が今ここで起きているのか。
いやいや、どうすんだよ。ロキを倒す切札が使えないって、じゃあ俺が出張るか?いや、ロキをどれくらいいじめればいいか分からないし、下手に俺が介入して『もうあいつに全部丸投げすればいい』になられても困るな。
ドキンダム、こういう時ってどうすればいい?もう、雑に兵藤に禁断パワーでも打ち込んでパワーアップさせるか?
――『賛成ダム』
だよな、ヴァー君ですらダメだったのに、そんなホイホイと兵藤に渡すわけにも……何て?
――『だーかーら、賛成ダム』
そ、その心は?
――『あいつ、主人公だから。あの時のヴァー君だと力に溺れかねなかったけど、今のヴァー君や兵藤なら大丈夫そうだし、何なら俺がロックをかけまくるから大丈夫ダム。いざとなれば、こっちから回収すればいいし』
は、はぁ……。そんな軽いことでよいのだろうか。一応禁断パワーって世界を滅ぼせるもののはずなんだけど……。
――『だったら四条はどうなる?あいつなんて、今の時点で冥界を落としかねない実力だぞ』
嘘だー。そんなはずがないだろ。あいつはまだまだ青二才だ。
そうだよな?そうだと言ってくれよ。俺だけ成長してないとか笑えねーんだよ。
――『っつーことで、サクッと禁断パワーを注入しな』
う、うっす。
「兵藤」
「は、はい」
「ミョルニルを構えろ」
「え、だから俺は……」
「つべこべ言わず、構えろ」
「う、うっす!」
兵藤に俺の言葉を強引に信じさせる。悪い先輩で申し訳ないが、これもお前のためだと思ってくれ。
兵藤がハンマーを取り出し、構えた。なるほど、それがミョルニルか。
俺は兵藤の背後に立って、精神統一をする。俺の心は硝子のように透き通っている。
――『我が思うに、貴様の心は泥水のように濁っていて、硝子のように脆いのだが?』
ひでぇ言葉は無視だ。都合のいいことだけをうまく取捨選択していく。それが大人ってものだ。
「せ、先輩?」
よし、今だ!
俺は兵藤の背骨に合わせて、まっすぐ貫手を入れる。それは敵を貫く武器ではなく、いわば注射針のような感じで差し込んだ。
「ひょっ??!!」
『ブラックゾーン!?』
俺の突如とした奇行に、驚きの声を上げる兵藤とドライグさん。すまんな、俺は正常だ。
「今から禁断の力をほんの僅かだけ流す。それで多少はミョルニルも誤魔化せるはずだ」
「ひょ、ひょひょひょ……」
『何を言ってやがる、ブラックゾーン?』
お前らコンビ、そんなに理解力なかったっけ?急にIQ下がったな。
「いいから黙って受け取れ!俺からのプレゼントだ!」
その時、黒い炎が地面から沸き上がり、ロキと量産型ミドガルズオルムを包み、拘束する。それにスコルとハティまで巻き込まれた。何だ、こいつは?
「この漆黒のオーラ、ヴリトラか!」
タンニーンさんがそう叫ぶ。ヴリトラ……つまり匙君が来たか。
黒い炎が龍の形となって現れる。あれが今の匙君の姿か。様子を見る限り、ありゃ暴走までとはいかなくとも制御がうまく出来ていない様子だな。
ドキンダム、流石にあれには力を貸さんぞ。
――『あら、珍しい。ノリで行くかと思ったダム』
いや、あれくらい自分でしてもらわんと修行していたグリゴリの面子がつぶれるやろ。
――『んー、まぁそうやね』
それにしても、随分派手な光景だ。派手っつーか、中二か。黒炎なんていかにもだしな。まさに『闇の炎に抱かれて消えろ』って感じだ。
さて、もういいだろう。
禁断パワーを流し終わったので、俺は手を引っこ抜いた。今の兵藤なら、多分ミョルニルを扱えるはずだ。
何が起こったのか確認をしているのか、腕や体をあちこち見る兵藤。大丈夫、問題ないよ。
――『何せ、俺が制御するにしまくったものだからな。簡単に害が出てたまるかダム』
とのことです。
「先輩、今なら何か行けそうな気がします!」
……もしかしなくてもプラシーボ効果じゃないよね、ドキンダムさん?
――『いや、それはない……はず』
え、ちょっと不安になるような言い方やめてよ。
――『だって、おっぱいへの執念でこの世の摂理捻じ曲げるのが兵藤一誠だし……』
お前らの中での兵藤一誠像がどうなのかすごい気になるんですが……。
俺が深い疑問を抱いていると、兵藤がミョルニルを構える。俺はその背中を叩いた。
「行ってこい、兵藤一誠。神を黙らせろ」
「ご期待通りにしてみせます!」
先輩らしく 咤激励してみる、なんてかっこつけをしてみたのはいいが、それはそれとして暇になったのも事実だ。現にミドガルズオルム達はスコルとハティ諸共匙君に拘束されているし、俺のやることがない。
「ん?」
スコルとハティ?
俺は二頭の方を見た。苦しそうに足掻いているのが見ていられない。
「スコル!ハティ!待ってろ!」
流石にそこから逃げきれなかったか!
俺は走ってスコルとハティのもとへ行く。ドキンダム、こいつはどうすればいい?
――『ぶった斬れ』
オッケー!
俺は手刀を作り、そのまま振りかぶって黒炎を引き裂いた。
『何これ?!怖い!助けて会長!』
何か匙君の叫びが聞こえたが、そんなことよりもスコルとハティだ。
黒い炎から解放されたスコルとハティ。すぐにひょいひょいと跳ねまわり、俺の周りをくるくるし出した。そんなに俺が好きか。照れるぜ。
――『ラヴィニアも寿水もお前が好きだぞ』
え、何だって?
――『こ奴、意地でも知らないふりを通すつもりか……!』
俺がアポロヌスの言葉を聞こえないふりをしていると兵藤の神器の音声が響いた。
『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost!!』
いよいよ佳境へと来たらしい。俺に出来るのは、馬鹿な後輩を見守るだけだ。
「おのれおのれおのれ!一時退却せねばならないとは!この屈辱、忘れんぞ!」
「ちょ、待てやゴラァ!」
ロキは逃走するつもりらしく、匙君の黒い炎を振り切って、魔法陣を描き出した。兵藤はまだチャージ中だ。しょうがない、俺が足止めを……
ガガガガン!!!
瞬間、天を裂かんばかりの雷光が広がる。それが何故起きたのか、誰が放ったのかは流石に馬鹿な俺でも分かる。
そっと視線を向けると、そこには気難しそう、でも何とか手をつなぎ合えている親子がいた。
いいものだな。んじゃ、俺もちょっと頑張るか。
俺は突っ走ると、ロキの目の前に立った。
「くそぉおおお!!」
ドゴォ!!
「こはっ!」
「彼女は瑠璃ではない」
俺は腹パンを入れた。大丈夫、死なない程度に手加減してやったから。
「先輩!行けます!」
後ろから兵藤がそう言う。よし、んじゃ俺は撤退だ!
俺は速攻で走り、スコルとハティの所で行くとわしわしと頭を撫でる。うーん、ふんわり。
「くらいやがれ、ロキッ!俺式ミョルニルぅううううッ!」
『Transfer!!』
俺が見つめる先では先ほどの雷光とは比にならない、それこそ『雷霆』が現れた。その雷はロキを飲み込むと、一瞬でその身を焼き、崩した。
光が止めば、そこには倒れたロキがいた。どうやら、これで俺達の任務は終わりらしい。
兵藤を見れば、こっちに向かっていい笑顔でサムズアップをしている。
「ったく、馬鹿がよ」
思わずそう溢しながら、俺はサムズアップで返した。
Side out
次回で7章を終わらせたい所存。