知るかバカ!そんなことより侵略だ! 作:ブラッキオ
Side in
グレモリー本邸についてかれこれ数時間経った。俺はダイニングルームへと案内された。そこでは皆が待っていた。そう、お夕飯のお時間ですわ。
冥界にも夜の概念はあるそうだ。太陽と月がないけど。空は暗くなっていて、疑似的な月が浮かんでいる。なんか、色々魔力でどうこうしているそうだ。時間の概念も人間界に合わせているそうだ。
目の前にはいくら俺達が食べ盛りの男子高校生とは言え、明らかに多いと思う量の料理。それが綺麗な皿の上にこれでもかと乗っている。こう言う時は笑えばいいんだっけ?
席に座るのはリアスとその眷属悪魔一同。それと俺とアーシア。んでもって、リアスパッパとリアスマッマ、ミリキャス君。
そういや、結菜達はディハウザーさんのお世話になっているんだよなぁ。あいつら大丈夫かな?結菜とアイシャはいいだろうけど、四条が心配だ。そこで挙動不審な兵藤を見ていると、余計にそう思う。
「さぁ、遠慮なく楽しんでくれたまえ」
リアスのお父様がそう言い、会食が始まった。先に言うが、多分ここで量を食っても後で腹が減るだろう。
妙に長いテーブル。きらびやかなシャンデリア。装飾の凝った椅子。何もかもが俺の精神を削るせいで食べた気がしないのが目に見える。
さぁ、俺も食おう。俺は目の前のサラダを食す。うーん、美味しい。ドレッシングがすげーいい。ワインビネガーの風味が心地よい。
サラダを食べ終えたら次はスープと主食。ミネストローネとリゾットだ。どちらも美味しい。素材の味がしっかりしていて、感動してくる。野菜のうま味の溢れるミネストローネとチーズが味わい深いリゾットだ。
メインはステーキだ。一口食べると肉のうま味があふれていく。脂のいやらしさもない。ほんと、すげー。語彙力がなくなる。
「……」
視線を感じる。そちらを見るとそこにはリアスパッパがこちらをじっと見つめていた。
「えっと……もしかして無礼か何かを?」
これでもイタリアンのコースに則って食べていたつもりだったが……もしかしてフレンチの方が正解だった?もしくは俺が知らないところでとちったか。
「ああ、いや。何でもないよ。岸波大地君は美味しそうに食べると思ってね」
「あ、ありがとうございます」
何か誉め言葉をいただいた。俺の食べる姿が好評で何よりです。
「(なるほど、いわゆるイタリアンのコースに倣っての流れ、か。マナーも礼儀作法もしっかりしている。サーゼクスから聞いていたが、元とはいえ流石は王族ということかな?)」
リアスパッパの目、何だか品定めしているように見えたのだ。まぁ、可愛い娘に近寄る男ですもんね。そうもなりますよね。ごめんなさい。
「ミリキャスよ。昼間に岸波大地君とお話をしたそうだね」
お父様がそう言うと、ミリキャス君が神妙そうな表情で頷く。
「はい、その通りです」
「そこで、何か学ぶものはあったかな?」
「ありました。いいえ、あったと言うよりは気づかされた、と言う方が正しいでしょう」
「ほう?」
どうやら、俺の言葉を真摯に受け止めてくれていたようであるミリキャス君。それはそれでうれしいが何だか気恥ずかしい感じもある。
「僕は、少し無理をしすぎていたようです」
「と、言うと?」
お父様は孫の強い意思を感じ取ったのか、興味深く聞いてくる。
「ここ最近の僕は少し背伸びをしていました。魔王様方と多くの貴族たちの恩人であるブラックゾーン様、岸波様の復活。それに際して僕もグレモリーに恥じぬ者になろうと無理をしていました」
俺、そんなに偉くなった覚えはないんだけど……いや、皆がそう言うならそれを認めないといけないのか?やだなぁ、そんなの。俺はいつだって小市民だよ。
「ですが、それを岸波様は否定しました。今の僕に出来ることを全力でやる。やれないことを、出来ないことまでもやろうとするべきではないと」
「ミリキャス……」
何やらお母様まで感銘を受けていらっしゃる。いや、そうなる前にあんたらが止めるべきだったんでしょうよ……。
「僕にはまだ、身を投げ出せるだけの力はない。だけど、皆が僕にくれた願いを見捨てないことは出来る。僕はなんて自分だけの狭い世界で満足していたんだって、そう教えられたんです!」
え、そんなにあのフレーズが気に入ったの?だったらすぐに曲にして仕上げてサーゼクスさんに出すけど……?
にしてもミリキャス君、随分輝いているな。そんなに俺の言葉に影響されたか。
「そうか……確かにここ最近のお前は少し頑張りすぎな所もあった。それを改めたと言うことか。これは岸波大地君には感謝せねばならないな」
「え?そんなこと言われましても、俺はあくまでも俺の信条を語っただけのことです。実際にどうこうして、動いたのは紛れもないミリキャス君ですよ?感じ取り、学び、変わることを選んだのは、彼です」
俺はそう言うとお父様は笑顔になる。
「案外食えない人物なのだな、君は」
「そんなことはないですよ。存外、バターでソテーしたら美味しく食べられるかもしれませんよ?」
「はっはっはっ、そう言うことにしておこう」
どうやら俺の返答に満足していただけたご様子だ。
「皆、冥界に来てまだ不慣れだろう。足りないものがあったら言ってくれ。すぐに用意させる」
リアスのお父様による貴族ムーヴだ。足りないものがあるとは思えないけど、その時が来たら細川さん辺りに頼むか。
俺が再びステーキにありついていると、またリアスのお父様が俺を呼ぶ。
「岸波大地君」
「はい」
何だろう。マナーについては何も文句はなかったらしいし、一体何用で?
「今日から私のことをお
??????????????????
……いかんいかん、疑問符に脳みそが埋め尽くされる所だった。え、お父さん?いや、それについては……うーん、俺にも譲れないもんはあるし……。
「それは出来ません」
「……その理由は?」
目を細めてそう言うお父様。ここまで良くしてもらっているのは確かだが、全部に『YES』と言うと思ったら大間違いであることを証明せねばならない。
「この世界で俺の父親は、たった一人ですから」
大切な恩人。誰よりも守りたい人達の一人。俺の大切な家族だ。あの人達に不義理だけはしたくない。
俺がそう言うと、少し虚を突かれたような様子になったお父様。ただ、すぐに笑顔になる。
「君ならそう言うと思ったよ」
「あなた、『また』急ぎすぎましたね?」
「そうだな。全く、老いのせいにしたくはないが……こうもなるとそれも疑わしく思えてしまうよ」
リアスのご両親が何やらお話されている。俺にはよく分からない話だ。とりあえず、何となくだがリアスのお父様はお母様の尻に敷かれているってのは分かった。
「岸波大地さん。大地さんと呼んでもよろしいかしら?」
「え、あ、はい。大丈夫です」
お母様が随分近づいてきた。ど、どうしたので?
「しばらくはこちらに滞在されるのですか?」
「そうで……あー、いえ、確か魔王領に行く用事があるのと、ベリアル家の方へ用事がありますね。ですので、グレモリー家にいられる時間は限られるかと」
「そうですか……ですが、あなたの振る舞いと気品であれば大丈夫でしょう。時間を縫って、少しこちらでマナーのお勉強をしてもらいます。兵藤一誠さんも一緒に」
「え?」
突然の流れ弾に驚く兵藤。俺も俺で驚いている。何でなの?そんなに俺のマナーがやばかったか?
「兵藤一誠さん。あなたも一誠さんと呼んでよろしいかしら?」
「はい、大丈夫ですが……」
「では……曲がりなりにも『兵士』の駒を8つ使った身であるのがあなたなのですよ、一誠さん。だからこそ、それ相応のマナーや気品を付けてもらわねば困ります」
おお、それはよかったな兵藤。きっと今頃四条も四条でしごかれているぞ!ダチと一緒だ!
そんな中で不服そうな声で抗議をする者が一人。
「お父様、お母様。先ほどから聞いていれば、私の意向を無視してイッセーについて話を進めて。その上ダイチにまで何かと行動をして。一体何のおつもりですか?」
リアスだ。静かながら、その声には不満が満ちている。ただ、その言葉に負けるようなお母様ではない様子。リアスの言葉を受けて、目を細める。臨戦態勢に入ったのを感じた。
「お黙りなさい、リアス。あなたは一度ライザー・フェニックスとの婚約を解消しています。それを私達が許しただけでも破格の待遇と思いなさい。お父様とサーゼクスがどれだけ他の上級悪魔への根回しをしたと思っているの?一部貴族からは『世間知らずの我が儘娘が伝説のドラゴンだけに飽き足らず、伝説の英雄までも無理矢理引きずり出して婚約を解消した』と言われているのですよ?いくら魔王と妹とは言え、限度があります」
口に入れようとしていたステーキの手が止まる。もしかしなくても、俺のカチコミって良くないことだったのかな?
――『そんなことはないだろ。所詮、この世界は力こそ正義だ。力あるお前に誰も逆らえんよ。それが正義なんだからな』
随分ドライなことを言うな、ドキンダム。その価値観を俺が好まないのも分かっていて言っているか?
――『当然』
仕方のない奴だ。
「わ、私とお兄様は……」
「関係ない、と?表向きではそうでしょう。ですが、三大勢力が協力体制になった今、あなたの立場は他の勢力の者にすらも知られることとなります。そうなる以上、誰もがあなたを魔王の妹と見るわ。以前までの身勝手な振る舞いが出来ると思ったら大間違いです。何より、あなたの今後は誰もが注目するでしょう。リアス、あなたは今、そう言う立場なのですよ?」
「お母様……」
「二度目はありませんよ。甘えた考えは捨てなさい。いいですね?」
厳しいお言葉だ。これにはリアスも納得できない様子ではあるものの、引き下がった。
まるで貴族みたいだと思った俺の姿はお笑いだ。忘れかけていたよ、リアスが本物の貴族だって。いくら力でどうこうなる世界だったとしても、彼女のコミュニティはそう簡単じゃないって。
こうして俺はお母様の真意を理解出来ないまま兵藤と一緒に貴族のマナー講座を受けることとなった。下手に元王子なんて嘘をつかなければ良かったと思う反面、ついた以上はそれ相応のものは求められるはずなので、ここで学んでおきたいと思う心もある。
一つ気になることと言えば、お母様の言った『娘の最後の我が儘です。親として責任は最後まで持ちます』と言っていたこと。どう言うことなの?
Side out
ここを書いている時、「リアスも大変ねぇ(天の助並感)」と言う気持ちと「草。わがままのツケや(笑)」と言う気持ちがせめぎ合っていました。