そんなテレビが娯楽の中心に返り咲く日は再び訪れるのか?
これはそんなテレビの凋落に立ち向かう一人のプロデューサーの戦いの記録である!
国民がテレビを観なくなってどれくらいの月日が流れたのだろう。
インターネットに若い世代から順に視聴者を奪われ、「若者のテレビ離れ」などと言っていた頃だろうか?
ネットで流行ったコンテンツをテレビで扱ってやるよと上から目線で大幅にストーリー弄ってドヤ顔で放送していた頃だろうか?
はたまた、動画サイトでのアップロードの影響が無視出来なくなり、ネットでいつでも観られるというニーズに気付きもせずに、ただアップされた動画を削除して回るだけだったあの頃だろうか?
何にせよ、今日では若い世代の大半が「テレビを見ない」とか答え、現役世代の多くがテレビを必要としないと言う時代になった。
困ったのはテレビ局側である。
視聴者と一緒にスポンサーまでネットに流れてしまう。
やむを得ずスポンサーを繋ぎ止めておく為に、広告費の値下げに踏み切るった。一部のスポンサーは去ったが、それでも多くのスポンサーの引き止めに成功したし、去った分のマイナスは単価が下がった事でこれまでCMを流せなかった企業の参入してくれたので、なんとか局を維持出来る程度には収益を回復させられる。
しかし、単価の下がった広告でこれまでと同じだけの収益を確保しようとすれば当然流すCMの数は増える。
増えたCMを、ノルマをこなすように番組でやたらと流した。
それまで一度に3本から4本だったCMを5から7本に増やした。
CM明けに司会のお笑い芸人にひとこと言わせた後、再度CMを流した。
しかし、それもCMが放送時間の半分を占める様になってから、視聴者は大きく減少していった。
このままではテレビがこの世から消えてしまう!
1人のプロデューサーが危機感を抱く。
あのテレビが娯楽の発信源だった頃に、
お茶の間の中心にテレビがあった時代に戻したい!
彼はそう思い、その為にはどうすればいいか考えた。
早速、制作チームのみんなを集めてのミーティングを行う。
彼はホワイトボードに数字を書いた。
・番組A
若年視聴率 0.82%。
高齢者層視聴率 3.6%
CM占有率 60%。
実質番組放送時間 1時間番組中20分。
・番組B
若年視聴率 1.44%。
高齢者層視聴率 5.9%
CM占有率 40%。
実質番組放送時間 1時間番組中35分。
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書き終えると、メンバーに意見を求める。
最近入った若いADさんが感想を口にする。
「.やっぱ、CM短い方が視聴率良いんスポンサーね。」
古株のディレクターさんも
「今の時代ダイパ重視なんで、CMが長いと視聴者を滞在させ続けるの難しいですよね」
ここで営業担当者が口を出す。
「言っておきますが、CMは減らせませんので」
さっきからずっと堂々巡りだ。
原因は分かっているのに解決が出来ない。
CMを減らす事は売上に関わる事なので製作側は口を出せないのだ。
重苦しい沈黙。
彼はゆっくりとマーカーを置いた。
「何か、短い時間で、それでも視聴者の興味を鷲掴みする様な何か…」
再び先程のADが発言する。
「足りないのは、やっぱり刺激ですよね」
分かってる!分かっているんだ!
でも過激なお笑いは今まで散々叩かれてきた。
「具体的には?」
とディレクターも私と同じ気持ちに違いない。声に苛立ちが混じっている。
発言を突っ込まれて、焦るAD。
ふとミーティングルームの机の上にあった週刊誌の表紙にあったグラビアに目が行く。
「おっぱい…とか?」
やや、やけくそ気味に答える。
しかし、その一言でプロデューサーは目が覚める。
おっぱいだ!
そうだ!おっぱいなんだよ!
今ではPTAの批判などから一切映す事が出来なくなった、おっぱい。
しかし、テレビが流行の最先端だった時代、
最も視聴率を生み出していた魅惑の果実!
おっぱいを出そう!
早速企画をまとめ、上に掛け合う。
会議室が凍った。
「コンプライアンスが!」と誰かが叫び、
「未成年者の健全な育成に問題が!」と法務が青ざめ、
大手スポンサーが黙って会議室から出ていった。
それでもプロデューサーは決行した。
コンプライアンス?体の一部を映すだけだ!
未成年者?そもそもテレビなんて見てねえよ!
スポンサー?代わりなんていくらでもある!
ゴールデンタイムに放送したのだ!
おっぱい丸出しのお色気番組を。
番組の視聴率は後半になればなるほど伸びた。
口コミで拡散されていったのだ。
SNSは炎上し、ワイドショーは批判し、PTAからの電話は鳴り止まなかった。
しかし誰もが観ていた。
視聴率と注目の高さに手のひらを返した様に、スポンサーは戻ってきた。
クレームは視聴率という数字の前にはただの雑音でしかなかった。
PTAが苦情を言ってきたことすら、長らく注目すら浴びなかったテレビにとってはカンフル剤となった。
あいつらが批判すればするほど番組は「ウケて」いる証なのだ。
この成功を他局も真似た。
テレビはお色気番組で溢れ、今までテレビなんか観ていなかった若者たちがテレビを見る様になった。
何故か、自室にこもって。
お陰で家電量販店ではテレビがバカ売れしたらしい。
テレビは一人一台の時代が、やってきたのだ。
こうしてテレビは生き延びた。
内容は空っぽのまま。
テレビにとってはこれも一つの終焉であった。