呪術廻戦υ(ユプシロン)   作:ホシカワ

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無事、退院致しました!
ご心配おかけして申し訳ございません!

そして更新通知行ってしまった方々、ミスですw
すみません!

これから毎日投稿という事は体調的に無理かもしれないのですが、今後ともお付き合いをよろしくお願いいたします!!!


第十話・【不穏な】

 虎杖悠仁は任務の予定だった。

 しかし、急遽キャンセルされ、五条と夜蛾に呼び出され、夜蛾の部屋にいた。

 二人の表情は怒りに染まっている。

 この雰囲気で何かあった事は容易に想像できる。

 しかし、何があったのか全く分からない。

 真人の件なのか、羂索の件なのか。

 だが五条までもあからさまに怒りを見せている事を考えると”上層部”とも思える。

 

 「悠仁、まず連絡事項。悠仁は交流会に出られない。上からストップがかけられた」

 五条の怒りはやはり上層部へのものだった。

 虎杖は五条が上層部へ何を怒っているのか未だに分からないが、頷いて了解を伝える。

 「それから上が悠仁の異変に気付いた。実年齢は流石にバレてないけど、最初この世界の戸籍通りに15歳か16歳で行こうとした。けど上が嘘だと言って結果二十歳って事にしたけど、後日悠仁の調査をした上が悠仁の年齢に気づいた。けど悠仁はこの時代15歳だし、何の問題もないはずだった。15歳な訳がないと言ったのは上だしね。けど、今まで呪術界と一切関りがなかった悠仁がいきなり特級として現れた。しかも15歳。羂索と繋がってる奴が何かしたんだろうね――出頭命令が来た」

 五条の最後の言葉で五条の怒りの原因が理解できた。

 同時に夜蛾も表には見せないが憤怒にまみれているのが虎杖には分かった。

 虎杖自身もさっさと上層部をどうにかしたいと思っていたものの、まさかいきなり出頭命令とは思わなかったのだ。

 夜蛾学長は最初からこの時代の本当の年齢である15歳として届けていたのだが、上に否定され、二十歳と登録。

 しかし、上が調査をすると今まで呪術に関して一切触れる機会のない家系であり、そんな子供が突然”今まで隠れて呪霊を祓っていた”更に単独で国家転覆が可能な特級として登録。

 そして戸籍などの確認の結果、15歳であり、家族は最近死去した祖父のみ。

 他も一切呪術界と関係がない。

 だが、羂索と関係のある上層部によって虎杖悠仁が羂索の残した作品であり、宿儺の器の為に作られた事を一部の上層部は知った。

 故の出頭命令。

 「多分だけど僕たちが悠仁を守ろうと嘘をついているとか思ってるんだと思うよ。虎杖悠仁は本当は特級術師ではなく、呪術を覚醒したひよっこ。そして宿儺の器だから隠している――とかね。バカバカしい。けど、今回はもしかしたらいいチャンスかもしれない。悠仁の世界線では僕が上層部を皆殺しにしちゃったんでしょ? だったら今回は誰が味方で誰が敵かをしっかり見極めてきて欲しいんだ。出来るよね、悠仁」

 両眼は黒い布で覆われている為に分からないが、口角はしっかり上がっていた。

 そしてこういう時の為に前もって虎杖、五条、夜蛾の三名で打ち合わせをしておいたのだ。

 開示する情報と徹底して隠す情報の二種を。

 そして夜蛾と五条が知る総監部の人員。総監部に関しては腐り切っているものの、内側から変えようとする者もいる為、今回虎杖の出頭に際して見極めようという事になった。

 虎杖自身この時代の総監部の事は噂でしか知らない。

 未来の総監部もやはり腐り切っているとまではいかないものの、御三家が無くなってからの総監部は当初こそは世の為に動いていた。

 しかし、政治家と癒着し、一部の術師を排除したり勝手なルールを作ったり――。

 そして終いには世間から距離を置こうとした虎杖を総監部は執拗に追い、最強である虎杖を何としてでも自分たちの手元に置きたがった。

 そうなると自分が居なくなった時に”今”が困る事は容易に分かっていた。

 だからこそ平和なうちに身を引こうとした。

 もちろん虎杖自身の心の傷も大きかった。

 だから徹底的に隠れた。

 最強に至った虎杖を追跡できる者など一人しかいない。

 しかし、”何故か”その人物を誰も追えず、結局虎杖の雲隠れは最後まで成功したのだ。

 

 つまり、虎杖自身も総監部には辟易している。

 だから今回の出頭での作戦に乗り気なのだ。

 

 

 

 

 

 

 「東京都立呪術高等専門学校一年生、特級呪術師虎杖悠仁か?」

 出頭時刻に総監部が集合する真っ暗な部屋に入室し、姿が見えないよう障子のようなもので区切られたスペースに総監部の面々が居る。

 その中央から問う声が響く。

 「そうだ」

 虎杖は短く返答する。

 しかし――

 「嘘を吐くな! この場での虚偽は万死に値すると思え! もう一度聞く! 貴様は特級呪術師虎杖悠仁か!」

 何をキレてるんだと首を傾げた虎杖だったが、怒号を上げる声で理解した。

 ”特級”という事にキレているんだ。

 というよりももっと正確に言えば、ガキである”虎杖悠仁”がいくら宿儺の器であっても今まで呪術に一切触れてこなかった家系にも拘らず”特級”はあり得ない。

 そしてこの場で虚偽の発言をした――このことに怒っているのだと虎杖は理解する。

 しかし、虎杖は何一つ嘘を言っていない。

 自分は間違いなく特級呪術師だし、現在東京校の一年生だ。

 「何故嘘だと?」

 虎杖は静かに返す。

 しかし、待ってましたと言わんばかりに声が響く。

 「白々しい。貴様の経歴を調べた。宮城の片田舎で生まれ、幼い頃に両親とは死別。その後は祖父と暮らしていた。その祖父も既に死亡している。貴様の家系には呪術に関する事が一切ない。にもかかわらず特級だと? ふざけるな。我々は呪術界の中心だぞ。舐めるなガキの分際で」

 虎杖は短く息を吐く。

 五条も言っていた通り相当イかれた連中だ。

 昔の虎杖悠仁であればこいつらの言葉に怒りを見せてもブーブー言うだけだっただろう。

 しかし、今ここに居る虎杖悠仁は羂索が引き起こした未曽有の呪術テロを止めた救国の一人であり、史上最凶の特級呪詛師にして天災そのものである宿儺を倒した男。

 更に数十年の研鑽を積み、最強の座に至った”特級呪術師”であり、数十年の人生経験がある。

 虎杖よりも恐らく年下の連中から凄まれても全く恐怖などは感じない虎杖。

 それどころか笑ってしまうレベルであった。

 こんな連中に夜蛾と五条だけではなく多くの術師が振り回されたのかと――。

 

 

 虎杖はズボンのポケットに手を突っ込んだまま立っている。

 先ほどの怒号にも一切怯まずに。

 その姿を見た一人の人物がとうとうブチギレた。否、ブチ切れてしまった。

 「貴様ぁ! 総監部の前で平然と大嘘を垂れ流すどころか謝罪や反省の色もない! ガキだから謝罪をすれば許してやろうと思っていたが、もう我慢ならん! この場で――」

 突然怒号が止まる。

 総監部の面々の正面にある障子のような遮り板”全て”が粉々に切り刻まれたのだ。

 「な、何が――」

 怒号を上げていた男ではなく、別の男が呟く。

 「黙って聞いていれば――じゃあこっちも言わせてもらおうか。お前らのどこに尊敬に足る部分があるんだ? 一部の家の人間だけに媚び諂い、そいつらの圧力があれば簡単に屈する。更に現場を酷使し、自分たちの意に沿わない人間はすぐに始末する。そんな奴らに尊敬を以て接する価値なんてないだろ」

 虎杖は静かに言う。

 「き――お前がやったのか」

 正面の老人が言う。

 しかし――

 「何が?」

 虎杖は惚ける。

 何に対しての問いなのかは分かっているが、敢えて惚ける。

 一種の警告だ。

 「そういえば俺が特級だって信じられなかったんだったな。だったら領域を見せようか? でもあんた達程度だったら領域入った瞬間死ぬから辞めよ」

 虎杖が他の案を考えようとしたその瞬間に覆面姿の性別不明の人物が虎杖の前に三人現れる。

 その三人は虎杖に対して刀や銃などの武器を向けている。

 「やるつもりなら覚悟しろよ」

 虎杖の言葉が終わった瞬間、三人は一斉に虎杖へ駆ける。

 刀を持った二人は一気に虎杖へ間合いを詰めて刀を振るう。

 もう一人は虎杖の背後に回り、二発発砲。

 これにて戦闘終了――そのはずだった。

 三人は総監部お抱えの術師であり、スリーマンセルで組んでいる。

 故に連携能力が非常に高く、総監部の敵を数々始末してきた実績を持つ、一級相当の術師なのだ。

 しかし、相手が悪すぎた。

 二名の刀は呪具。

 呪力を流して強化をする単純な呪具だ。

 その刀を両手で一本ずつ素手によって虎杖は止めたのだ。

 しかも怪我どころか傷ひとつない。

 刀と手の隙間を何かが高速で動いているかのように刀と何かの衝突音、摩擦音が高速で鳴る。

 そして後方から発砲された銃弾も手作りの呪具であり、発砲した人物の術式が付与されている。

 その術式の効果は【時間の加速】である。

 この術式を付与している為、【着弾部位の時間加速】という効果となる。

 この術式は触れた部分の時間を加速するという一見すれば最強クラスの術式だが、致命的な弱点がある。

 術者の呪力量に比例して加速時間が決まるのだ。

 そして術者の呪力量は並以下。

 そして術式付与の為に込めた呪力量も当然低い。

 虎杖は弾着地点を呪力の揺らぎによって既に感知済みであり、その部分を血液を超圧縮し、凝固させて簡易的な鎧にした。

 簡易的であっても銃弾程度簡単に防げてダメージは一切通らない。

 当然虎杖は銃が何かしらの呪具であるか、銃弾に術式が付与されている事を思案していたため、より強固に鎧を作った。

 そして着弾と同時に術式効果が発動する。

 二発の弾に込められた経過時間は五時間。

 通常の使い方は着弾部だけでなく着弾し、内臓部にまで到達した銃弾が術式効果を発動する。

 つまりは内傷を負った状態で更に五時間分の傷を受けるという事。

 すぐに処理すれば助かる傷だったとしても初期段階で五時間後の傷になっていたら助からない場合が圧倒的に多数であろう。

 故に最強のスリーマンセルなのだ。

 だが、先にも述べた通り、相手が悪すぎた。

 虎杖の鎧は銃弾のダメージを一切負わず、また、術式効果により五時間の時間加速が行われたとしても虎杖自身の呪力が切れていないどころかそもそも維持に対して呪力をそこまで使用しない事で、完全な無駄撃ちに終わったのだ。

 そして着弾と同時に後方の一人が膝から崩れ落ちた。

 否、膝から下が斬り落とされたのだ。

 更に虎杖の正面の二人も同じく膝から下が斬り落とされ、その場に伏す。

 そして虎杖の両手に残った刀を虎杖は容赦なく握りつぶし、刀は刃部分が完全に粉々となってしまった。

 「まだやる?」

 正面に座る老人を睨む虎杖。

 その眼光に老人は驚きを通り越して怯えた。

 「羂索に伝えろ。必ずお前らを潰すと」

 虎杖は言い終えると踵を返して部屋を出た。

 

 部屋では何も言えなくなった総監部の面々と地に伏せる三人組だけが残った。

 だが、この場に一体の呪霊が居たことを誰も気づいていなかった。

 否、虎杖悠仁だけが気づいていた。

 しかし、放っておいたのだ。

 恐らく羂索の使用する夏油傑の術式による呪霊で、遠隔での監視などを行っていたのだろう。

 だからこそ最後に虎杖は言葉を残したのだ。

 『こちらは全て知っているぞ』――と。

 

 

 

 この日羂索は大幅な計画見直しを余儀なくされた。

 同時に総監部よりの通達【東京校一年・虎杖悠仁を特級呪術師に認定する】と。

 つまり、正式な特級術師として日本中の術師に公表されたのだ。

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