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夜中の校庭で先輩を助けるために呪物と言われる指を食べようとしたツンツンとしたピンク髪が特徴の少年、虎杖悠仁。
しかし何故か気づいたら高層マンションの一室、窓際にいた。
窓の外からは街の明かりが眼下に広がる。
そして上裸で左手が何故かビブラスラップという楽器になっている老爺。
その後ろでは足を組んでこちらを見ている左目に大きな眼帯を付けている老婆。
そして俺の姿を見て飛び上がり、驚愕する老婆。
虎杖を見て固まって動かない謎の変態老爺。
「どうなってんの!?」
状況把握に努めようとした虎杖だったが、やはり意味不明であり、把握しようがなかった。
唯一分かるのは先ほど居た場所ではないという事だけ。
「東堂、おめぇどうするんだよこれ」
老婆の声が固まり続けている老爺に突き刺さる。
「う、うむ……」
老爺はようやく虎杖を見る。
「うむ……じゃねぇよ! どうすんだよ! 早く戻せ!」
「いや、それが――出来ない」
「は?」
老婆の怒りに慌てる老爺。
そんな謎な状況に更に混乱する虎杖は再び叫ぶ。
「どうなってんだって! さっきまで伏黒とか、何か呪い? とかが居たのに!」
ようやく二人の老人は虎杖を真っすぐ見る。
「はぁ……。起っちまったもんはしょうがねぇか。まさか”本当に”こうなるとは……」
そして虎杖はようやく説明を受けることが出来た。
老婆の名は釘崎野薔薇。変態片手楽器の老爺は東堂葵。
二人は”虎杖悠仁”の友人で”ブラザー”だという。
虎杖は全く理解できないものの、曰く”過去の虎杖悠仁”と”未来の虎杖悠仁”が東堂によって入れ替わったという。
伏黒から”呪力”や”呪い”などの簡単すぎる説明は受けていたものの、全く理解が出来ていない。
「でも虎杖の”もしかしたら”が本当に起こっちゃうとは」
釘崎が深くため息を吐く。
東堂と虎杖が二人合わせてキョトンと釘崎を見る。
「アイツが言ってたんだよ。”東堂ならいつかやりかねない”ってな。いつも術式テストに付き合わされてるからな。だからアイツはこの時の為に”これ”を置いていったんだ」
釘崎が棚から取り出したのは小箱と手紙だった。
手紙を東堂に渡す釘崎。
その手紙を読んだ東堂は目を大きく開き、虎杖を見る。
「な、な、何!?」
虎杖は突然の意味不明な眼差しに焦りまくる。
「本当だ。確かに宿儺の指が――だが何故だ? 呪力は感じるのに嫌な感じが一切しない」
東堂の疑問に釘崎は再び呆れたようにため息を吐き、「続きを読め」と睨む。
そして数分で手紙を読み終えた東堂は深く深くため息を吐く。
「なるほどな……。ブラザーはこんなことを考えていたのか」
虎杖は――未来の虎杖は東堂のテストに毎回付き合わされていた。
そしていつか東堂のネジが更に飛んで、とんでもないことになるかもしれない。
そうして虎杖が”居なくなってしまう”かもしれない事を予期していた。
どこか別の空間に行ってしまったらどうしようもない。
しかし、東堂の術式は対象の入れ替えが可能な術式。
そして東堂は単純な物や人物同士の入れ替えではなく、もっと拡大解釈したいと言っていた。
そこで虎杖は危機感を持つ。
故に準備をした。
自分が居なくなってしまったら今後のこの世界が危なくなる。
自分を呪物化する事も、この世界の今後300年に渡る平和も危なくなるかもしれない。
だから徹底して準備した。
いきなり300年ではなく、ひとまずの対策を――。
そして出した結論が元々自分の中にある宿儺の指を活用する方法。
仮に過去の自分と入れ替わった場合には未来の自分が残した擬似的な呪物である虎杖の持つ術式情報を残した”指”と使い方を記した手紙を釘崎に預けたのだ。
虎杖が残した指は疑似的な呪物であり、本物の呪物ではない。
まだ自分を呪物化する方法が分かっていないからだ。
故に術式情報しか入っていない為、呪力を持たない。
だからこそ過去の自分にも確実に存在する”宿儺の指”を利用する。
未来での虎杖の肉体に元々存在した宿儺の指は宿儺がこの世を去った時点で機能を消失していた。
特級呪物ではなく、ただ呪力を持つ存在に。
これは虎杖の仮説として”宿儺が未練なく、もっと違う道を――としてこの世を去ったから”と判断していた。
そして過去の虎杖が未来に来てしまった場合、その肉体に宿る宿儺の指はどうなるか。
正直これは推理をするしか虎杖にはなかった。
既に未来に宿儺は存在しない。
故に例え過去の虎杖が未来へ来たとしても宿儺という”存在しないもの”が宿っている訳もない。
だからその指に感応するように虎杖が残した術式を刻んだ指を取り込むことで宿儺の指と感応を起こし、呪力を覚醒させ、術式も同時に獲得する。
但し、練度は未来虎杖の比ではなく、著しく低いだろう。
しかし、東堂と釘崎が居る。
手紙の最後には修行を付けてくれと書かれ、謝罪で締められていた。
「東堂、あんた本当にヤバい事してくれたわね……。まぁ虎杖があんたを理解していて、準備をしてくれていた事だけが救いだけど――」
東堂は涙を流していた。
しかし、その涙を釘崎は完全無視し、虎杖に向き直る。
「喰いな」
釘崎は小箱を開けて虎杖へ渡す。
「えぇ……」
虎杖は生々しい指を見て引くが、よくよく考えて先ほど呪物を喰おうとしていた事を思い出し、嫌々ではあるが、飲み込む。
そして――
「不味い――」
何も変わらない。
「取り敢えず成功か」
釘崎の言葉に虎杖は疑問マークが浮かんでいる事が表情で分かる顔を向ける。
「呪力が溢れてるよ」
虎杖悠仁に呪力が生まれた。