機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0096 The Legends Sing of UC Lullaby~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
U.C.0096 4月5日
強襲揚陸艦 ネェル・アーガマ 艦橋にて。
静かだ。
モニターに映るのは、散在するスペースデブリと遠くに瞬くコロニーの灯り。
L4。
L2。
いずれの宙域でも異常は確認されなかった。
「……何もありませんね」
小さな呟き。
咎めるべきかと一瞬思い、
艦長席の オットー・ミタス はそれを飲み込んだ。
自分も同じことを考えている。
静かすぎる。
「警戒は維持だ。
哨戒は延長、このままL5へ向かう」
強く言ったつもりだったが、
わずかに間があったことを自覚している。
副長席のレイアムが復唱する。
「明朝には到達予定です」
予定通り。
何も起こらない航行。
――そのはずだった。
回線が開く。
『ブリッジ、アムロだ』
艦橋の空気がわずかに変わる。
『出撃許可をくれ』
一瞬、沈黙。
レイアムが確認する。
「敵影は確認されていません」
当然の疑問だった。
オットーはマイクを取る。
「理由を」
短い間。
『……狙われてる感じがする。
何かが……来る』
簡潔すぎる返答。
数値上の異常はない。
粒子濃度も安定している。
艦橋がざわつく。
サーセルが即座に再走査をかける。
「再度全域を確認します。
……やはり異常は見当たりません。
粒子濃度も安定しているようですが……」
困惑するサーセル。
数値上の異常も、
根拠も……ない。
だが――。
艦橋前方、第一カタパルト。
すでに発進姿勢で固定された白と青の機体。
Hi-νガンダム。
一年戦争のエースパイロット。
しかもロンド・ベルでも主力を務めた男。
その少佐が、「来る」と言っている。
迷いが喉を塞ぐ。
今出せば、過剰反応かもしれない。
艦の規律を乱す判断になるかもしれない。
だが。
「……許可する」
決めた。
「第一カタパルト、アムロ機優先」
「了解。第一カタパルト、アムロ機優先。発進シーケンス開始」
その直後。
「――熱源反応急増!」
サーセルの声が跳ねる。
「方位C-12、距離12000! デブリ帯内部より六!」
前方モニターに六つの光点。
「識別信号なし!
データ照合……該当機種なし!
新型機の可能性あり!」
「不明機、さらに加速!進路は……!」
わずかな間。
「――本艦へ直進!戦闘速度で突っ込んできます!」
距離はまだある。
だが、向かってきている。
オットーは息を吐いた。
『アムロ、
Hi-νガンダム――出る』
カタパルトが閃光を放つ。
白い機体が宇宙へ射出された。
今度は迷わない。
「MS隊、緊急発進! 続け!」
格納庫から報告。
「ボッシュ機、発進準備完了!」
「ジェガンD型、カタパルトへ!」
RGM-89D ジェガンD型が続く。
だが、白い機体はすでに敵進路の中央へ向かっている。
早い。
誰よりも。
「通常の緊急発進より……二十秒以上早い」
レイアムが感嘆混じりに呟く。
オットーはスクリーンの中の白い機体を見つめた。
敵の進路を横切る軌道。
無駄がない動きだった。
「……だからか」
思わず漏れる。
レイアムが振り向く。
「艦長?」
「いや……」
一年戦争のエース。
ロンド・ベルの主力。
それだけではない。
あの男は、戦場で生き延びてきた。
だから――先に動く。
『敵先頭機、捕捉。
ブリッジ、艦は前へ出るな。ここは任せろ!』
Hi-νはすでに敵進路を塞ぐ位置を取ろうとしている。
「……全艦、アムロ隊の支援に徹しろ!
不用意に前へ出るな!
リゼル隊は……」
そこで言葉が止まる。
レイアムが助け舟を出した。
「艦長、敵機数に対して直掩数が足りていません。
リゼル隊の発進を急がせましょう」
オットーは一瞬だけ迷う。
「……頼む!」
「了解。リゼル隊、発艦準備急げ!」
副長席から即座に指示が飛ぶ。
オットーはスクリーンの白い機体を見つめる。
「……これが、一年戦争の“英雄”か」
アムロ・レイ。
伝説は知っている。
だが今、目の前で展開されているのは、過去ではない。
現役の戦闘能力だ。
L4やL2では、何もなかった。
「奴らの狙いは、この宙域にあるのか……?」
L5への途上。
ついに火は上がった。
そして――
その火へ、白い閃光が向かっていく。