機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0096 The Legends Sing of UC Lullaby~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
結局全31話となりました。
3月いっぱい続きますのでよろしければお楽しみください。
なお…活動報告で予告いたしました通り事件勃発がFile.12からとなります…。
空白期間の描写でとんでもなく間延びしておりますがお付き合いくださいますと幸いです…orz
U.C.0093 12月某日
ラー・カイラム艦長室にて。
端末に表示された航海日誌の最終項目を、ブライト・ノアはしばらく閉じることができずにいた。
戦闘終了。
アクシズ消滅。
ロンド・ベル解散予定。
淡々と並ぶ文字は、あまりに軽い。
指先が止まる。
――コンコン。
「俺だ。入るぞ、ブライト」
聞き慣れた声に、わずかに肩の力が抜けた。
「いいぞ」
ドアが開き、アムロ・レイとユウ・カジマが入室する。
二人の姿を見た瞬間、ブライトは思う。
(これで、本当に終わりか……)
「ここを離れる前のあいさつに来たんだが……邪魔だったか?」
「問題ない。ちょうど区切りをつけていたところだ」
区切り。
そう言いながら、何ひとつ区切れていないことを自覚している。
アムロの視線が端末へ落ちる。
「航海日誌か……色々あったな」
「ネオ・ジオンには振り回され続けた」
それでも、とブライトは続けなかった。
あの最後の一件だけは、言葉にすると何かが崩れそうだった。
「次はネェル・アーガマだったな」
「ああ。まだ詳しい任務は聞いてないが」
「ユウはトリントンか」
「はい」
短い会話。
別れの挨拶にしては、あまりに淡泊だ。
だが三人とも分かっている。
これ以上踏み込めば、あの話題に触れてしまう。
沈黙が落ちる。
ブライトは、結局それを自分から破った。
「……なぁアムロ」
視線を上げる。
「俺たちはどうすれば“あれ”の本当の力に気づけていたんだろうな」
空気がわずかに沈む。
“あれ”――
アクシズを三射で焼失させた機体。
オービタル・リーダー。
搬入時にも、ブリーフィング時にも、
そしてアムロにだけ届いたというメッセージにも、
兆しはあったらしい。
だが、その意味を完全に理解できた者はいなかった。
そして、その一撃の直後、機体はパイロットごと爆散した。
何も、残らなかった。
アムロが目を伏せる。
「……ヒントはあった」
低い声だった。
「違和感もあった。ララァの言葉も……今思えば、全部繋がってたのかもしれない」
だが、と続ける。
「俺は理解しきれなかった」
ユウが目を伏せる。
「自分も……ブリーフィングでスペック表を見た時に、何かがおかしいと感じました。
ですが、それを裏付けるだけの根拠がなかった」
「根拠か」
ブライトはかすかに笑う。
「最終的に作戦を承認したのは俺だ。疑う材料はあった。
だが、確証がなかった」
確証がなければ動けない。
それが指揮官だ。
だが、確証が揃った時には――すべてが終わっていた。
艦長室に、機械音だけが戻る。
「……やめよう」
アムロが小さく言った。
「こんな話をしても、帰ってくるわけじゃない」
その言葉に、ブライトはうなずく。
(帰ってこない)
それだけが確かな事実だった。
「ブライトはこの船に残るのか?」
「ああ。まだ現場にいるらしい」
また、送り出す側だ。
アムロが軽く笑う。
「皆に無理をさせるなよ」
「わかっているさ」
短い笑いが、かすかに場を和らげる。
だがその奥にある痛みは消えない。
ロンド・ベルは解散する。
英雄はそれぞれの持ち場へ戻る。
宇宙世紀0093年は終わる。
だが、終わらなかったものがそこにはあった。