機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0096 The Legends Sing of UC Lullaby~   作:にわ@タイトル単位作品作成者

20 / 34
File.19 直観

U.C.0096 4月8日

 強襲揚陸艦ネェル・アーガマ ブリーフィングルーム

 

 投影モニターに赤い光が瞬く。

 

 投影されているのは、戦闘時の観測記録。

 問題の機体――ユニコーンガンダムの挙動だ。

 

 オットー・ミタスは腕を組み、落ち着かない視線でそれを見ていた。

 

「……装甲が赤く光ると、見境なく襲いかかる、か。

 兵器の挙動としては、どうにも腑に落ちないな」

 

 オットーの呟きに、

 レイアム副艦長が静かに頷いた。

 

「あの挙動では、作戦への組み込みは困難です。

 発動条件も未だ特定できていません」

 

 ――コンコン。

 

「入れ」

 

 扉が開き、アムロ・レイが入室する。

 

「失礼する」

 

「ああ、すまない。時間を取らせる」

 

 オットーは椅子に腰を下ろしたまま、やや曖昧に切り出す。

 

「単刀直入に聞きたい。君から見て――あれはどうだった?」

 

 主語は出さない。

 だが視線はモニターの赤く光るユニコーンへ。

 アムロもまた、モニターへ視線を向ける。

 

「……それか」

 

 小さく息を吐き、アムロは眉間を押さえる。

 

「……危険だ。あれは」

 

 即答。

 

 オットーは小さく息を呑む。

 

「やはり、そうか」

 

 どこか確認するような響き。

 

 レイアムが補足する。

 

「制御不能と判断しますか?」

 

「単純な暴走じゃない」

 

 アムロは映像を見据えたまま続ける。

 

「……あれは、“何かに反応している”」

 

「“何か”……?」

 

 オットーが首を傾げる。

 

「おそらく強い敵意や殺気だ。あの場ではそれが増幅されていた」

 

 断言ではない。

 あくまで推測だ。

 

 レイアムが投影された戦闘記録へ視線を落とす。

 

「強い敵意や殺気……つまり、戦場に出せば再び発動する可能性がある、と?」

 

「……可能性は高い」

 

 オットーは落ち着かない様子で椅子に体を預けた。

 

「それは……厄介だな」

 

 率直な本音。

 

「少なくとも今の段階で、修復はするべきじゃない」

 

 アムロの声は静かだった。

 

「理由は?」

 

 オットーが問う。

 

「戦力として必要不可欠な機体じゃない」

 

 淡々とした事実。

 

「発動条件も分からないまま戦場に出すのは、味方を危険に晒す」

 

 レイアムが補足する。

 

「だから、修理そのものを保留にと?」

 

「そうだ」

 

 アムロは頷く。

 

「制御手段が確立するまでは、触れるべきじゃない」

 

 短い沈黙。

 

 オットーは視線を落とす。

 

 戦力を削る決断ではない。

 むしろ不要な火種を抱えない判断だ。

 

「……そうか。

 厄介どころじゃ済まんな」

 

 考え込むオットー。

 

「現段階での修理再開は、危険と判断します」

 

 すかさずレイアムが意見を差し込む。

 

「……そうだな。

 修理は凍結する方向で進めよう」

 

 オットーはうなづき、アムロに問う。

 

「ああ。異論はない」

 

 アムロもうなづく。

 

 オットーは小さく頷いた。

 

「では、その方針で頼む」

 

 レイアムが即座に応じる。

 

「整備班には現状維持を指示します。ジョナには私から伝えておきます」

 

 オットーは小さく頷く。

 

「とはいえ……」

 

 視線をアムロへ。

 

「パイロットの意見も、聞いておくべきか」

 

 アムロは肯定する。

 

「当然だ」

 

 レイアムが補足する。

 

「現在、バナージ・リンクスは医務室で経過観察中です」

 

 オットーは顔を上げた。

 

「まだ目を覚ましていないのか?」

 

「はい」

 

 短い返答。

 

 オットーは一瞬考え、

 

「……目を覚ましたら教えてくれ。

 私の方で一度、話をしてみる」

 

「承知しました」

 

 了承するレイアム。

 

 アムロが立ち上がる。

 

「あれは甘く見るべきじゃない」

 

 静かな警告。

 

 オットーは苦く笑う。

 

「……肝に銘じておくよ」

 

 答えを聞き、アムロが退室する。

 

 扉が閉まる。

 

 室内に残るのは、赤いログの残像。

 

「厄介なものだな……」

 

 オットーの呟き。

 

 レイアムは冷静に応じる。

 

「ですが、今これを抱えているのは我々です」

 

「……ああ」

 

 ネェル・アーガマは静かに航行を続ける。

 

 今は――

 眠る一角獣を、その腹に抱えたまま。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。