機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0096 The Legends Sing of UC Lullaby~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
予めご了承ください…。
同日同時刻
トリントン近海海中にて。
海中は静かだった。
赤い巨体が水圧を押し分け、進む。
「空挺部隊、反応……消失……。
全機……ロストしました」
ワリードの報告。
二十機。
数分。
あり得ない。
「残骸確認。上空に高出力反応!単機です!」
単機。
操縦席のアッバスが息を呑む。
「……冗談だろ」
マハディは短く息を吐いた。
「予定変更。陽動を拡大する。上陸する」
「父様……」
ロニの声。
迷い。
だがマハディは揺れない。
「空挺は潰された。ならば我々が騒ぎを起こす。
潜入部隊のためだ」
浮上。
海面が割れる。
赤い巨体が姿を現す。
砲撃。
岸壁が爆ぜる。
対空砲火が散る。
周囲の水陸両用機も展開を開始する。
上陸。
そのとき。
「上空より急速接近反応!」
ワリードの声が変わる。
マハディが視線を上げる。
蒼。
空を裂く影。
速い。
直線ではない。
跳ねる。
軌道が読めない。
「あれが……」
空挺部隊を落とした機体。
ロニが照準を合わせる。
「捕捉――撃ちます!」
拡散メガ粒子砲発射。
回避。
ロニはすぐに理解した。
「……射線が読まれてる?」
違う……!
「先に抜けられてる……!」
次の瞬間、右舷側の警告音。
蒼い影が死角にいる。
ロニが再び撃つ。
だがまた、わずかに外れる。
「なぜ当たらない……!」
感応がない。
圧もない。
なのに――読まれている。
「心に踏み込んでこないのに……。
読めてるの……?な、何故……!」
未来を見てるんじゃない。
撃とうとした瞬間、そこにはいない。
「こっちが……遅れてる!?」
「落ち着け、ロニ」
マハディの声は低い。
「機体性能だ。焦るな。距離を取れ」
だがマハディも理解していた。
違う。
あの動きは、性能だけではない。
蒼い機体が旋回する。
推力が爆発的に上がる。
急接近。
赤い巨体の全センサーが、蒼を追う。
接敵まで、数秒。
ロニの思考が走る。
反応速度。
回避タイミング。
機体挙動。
「……経験?」
直感ではない。
戦闘データ。
反復。
戦場。
「この人……戦い慣れてる……!」
ロニの呼吸が乱れる。
視界の端で、蒼が跳ねる。
読めない。
捕まらない。
何機も落としているのに。
波がない。
凪いでいる。
理解できない。
マハディは前を見る。
「……場数の違いだ」
マハディが低く言う。
「慣れた兵士ほど厄介だ。
距離を保て。近付けさせるな」
赤い巨体、シャンブロが空を見上げる。
その瞬間――
蒼い機体、バイアラン・カスタムが空を裂いた。
推力上昇。
加速。
沿岸に展開する赤い巨影へ一直線。
対空砲火。
ビームが交差する。
だが直線ではない。
上昇。
反転。
急降下。
蒼い軌跡を残し、捉えきれない軌道を描く。
距離が詰まる。
ユウの視界に映るのは巨大な赤い機体と、その周囲に展開する水陸両用機。
「……主目標確認」
だが、まずは周囲。
脅威を削ぐ。
ザク・マリナーが対空射撃を行う。
ユウは機体を横へ流し、死角から急接近。
機体背部からクローアームで貫く。
そのまま離脱。
爆散。
ゾゴックが距離を詰める。
ユウは機体を引き上げる。
間合いの外。
メガ粒子砲発射。
装甲を貫通。
爆散。
カプールが跳躍。
ビーム・サーベルが閃く。
両断。
着地と同時に再加速。
ジュアッグの砲撃が背後を掠める。
ユウは急上昇。
反転。
至近距離でのメガ粒子砲発射。
沈黙。
残る僚機は数機。
だがそのとき。
警告音。
複数の高出力反応が分離。
赤い巨体から放たれる小型端末。
「……サイコミュ兵器?」
ビームが拡散する。
反射。
軌道が曲がる。
地面が抉れる。
「……っ!」
再度、反射ビーム。
ユウは機体を縦回転させ回避。
分析。
遠隔端末。
反射制御。
予測困難。
(適性持ちか……厄介だな)
警戒レベルを引き上げる。
推力配分を再計算。
僚機が突撃してくる。
思考を分割。
まずは周囲。
一機。
アッガイが6連装ロケット弾ランチャーを構える。
ユウは急接近。
ビーム・サーベルで斬り払う。
もう一機。
ズゴックが前進。
ユウは機体を滑らせ接近。
胴体をクローで拘束。
盾代わりにし、反射ビームを逸らす。
爆発。
最後の一機。
ハイゴックが対空ミサイルを発射。
機体を捻り、急降下で回避。
至近距離。
メガ粒子砲発射。
静寂。
周囲に残るのは残骸だけ。
蒼い機体が空中で制動する。
正面。
赤い巨大な機体。
その周囲を旋回する反射端末。
距離。
中距離。
互いに止まらない。
海風が吹き抜ける。
「……主目標、単独確認」
ユウは操縦桿を握り直す。
蒼と赤。
改めて、対峙する。