機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0096 The Legends Sing of UC Lullaby~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
同日同時刻
トリントン港湾施設にて。
ロニはシャンブロの中で、
その光景を目の当たりにしていた。
爆炎。
砂煙。
焦げた匂い。
モニターの端で、味方機の反応がひとつ、またひとつ消えていく。
「マリナー……ロスト」
「ゾゴック反応消失」
「カプール……」
報告が途切れる。
蒼い影が、視界を横切る。
速い。
いや。
速過ぎる。
無駄もない。
一瞬前までそこにいたはずの機体が、次の瞬間には残骸になっている。
叫びも、怒りも、映らない。
処理。
ただ、処理している。
ロニの喉が、ひりついた。
「……何故っ!」
ロニは照準を合わせる。
赤い照準枠が蒼い機体を捉える。
撃つ。
反射ビットが光を返す。
だが蒼い機体は、予測を超える速度で通り過ぎていた。
「またっ……!」
息が荒くなる。
読むことはできる。
だが――
空白。
殺意も、憎しみもない。
ただ淡々と、
どう仕留めるか、
どこを断つか、
その順番だけが流れ込んでくる。
ロニの背筋が冷える。
「……人、なの……?」
ビットを展開する。
光が跳ねる。
だが蒼は止まらない。
味方機が斬られる。
貫かれる。
爆発。
火。
土煙。
(見えてる……)
(なのに……当たらない……!)
「ロニ、落ち着け」
父の声。
「分かってる……!」
だが視界の中では、蒼い機体がまた一機を破壊する。
淡々と。
躊躇がない。
怒りもない。
機械のように。
いや。
機械の方が、まだ理解できる。
「何……?一体何なのっ!?あれ!!」
違う。
速いだけじゃない。
迷いがない……?
……いや、違う。
――無機質。
ロニは唇を噛む。
恐怖を押し込める。
「ここで止める……!」
照準を、無理やり固定する。
撃つ。
外れる。
ビットの反射が届く前に、蒼は通り過ぎる。
蒼い機体は味方機を掴む。
盾にする。
ビームを逸らす。
爆発。
最後の随伴機が消える。
警告音だけが残る。
赤い巨体と、蒼い影。
二つだけ。
ロニの呼吸が速くなる。
何も感じない。
なのに。
胸の奥が締めつけられる。
(この人……敵を人と思ってない……?)
怒りもない。
悲しみもない。
こちらの心に触れてもこない。
それなのに。
確実に、殺しに来ている。
シャンブロの照準が、また揺れる。
蒼い機体は異様な速度で、射線を駆け抜けた。
――捉えられない。
まるでこちらの攻撃が、存在しないかのように。
蒼い軌跡が、視界を横切る。
蒼い機体――バイアラン・カスタムの中で、
ユウは最後の敵を見る。
赤い巨体。
周囲を旋回する反射端末。
拡散メガ粒子砲。
反射ビーム。
正面からの撃ち合いは不利。
(近接のみが有効打)
ユウは即座に結論を出す。
蒼い機体が上昇。
急降下。
横へ流す。
ビットが光を跳ね返す。
拡散ビームが地表を焼く。
だが蒼は止まらない。
戦闘機動のまま飛び続ける。
次の一手を探る。
赤い巨体。
砲撃。
ビット展開。
腕部の動作。
脚部の制動。
わずかに、噛み合わない。
砲撃のタイミングと機体挙動に遅延。
統制が一拍遅れる。
(操縦と火器管制が分離している……)
複座。
あるいは分業。
(……ならば)
次の瞬間。
拡散メガ粒子砲。
ビット反射。
光が交差する。
ユウは赤い巨体の上空から滑り込む。
反転。
弧を描き、地表すれすれへの急降下。
推力最大。
一気に踏み込む。
警告音。
だが遅い。
大型アイアン・ネイルが振り下ろされる。
蒼い機体は横へ流して回避。
ビーム・サーベル。
一閃。
巨大な爪が宙を舞う。
距離ゼロ。
機体中央下部へ潜り込む。
死角。
ビットが追従できない。
もう一閃。
首部。
切断。
火花。
赤い巨体がわずかに傾ぐ。
ユウは機体を捻り込む。
ビーム・サーベルを深く突き立てる。
機体中央。
動力部。
貫通。
即座に引き抜く。
推力全開。
後退。
赤い巨体が停止する。
一瞬の静止。
そして――
大爆発。
衝撃波。
炎が空を染める。
蒼い機体は距離を取り、爆風をやり過ごす。
破片が降る。
警告反応、消失。
沈黙。
「……目標、機能停止を確認」
ユウは旋回する。
戦域に残る敵性反応はない。
通信回線を開く。
「こちら、ユウ・カジマ。
敵部隊の沈黙を確認。
これより帰投する」
海風が吹き抜ける。
蒼い機体がゆっくりと上昇する。
蒼い軌跡を残し、基地へと戻って行った。
ガーベイ家の方々はMIA(作戦行動中行方不明)です。
生きているかもしれませんが、亡くなられたかもしれません。
どうなったかについては…皆様のご想像にお任せします…。