機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0096 The Legends Sing of UC Lullaby~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
U.C.0096 4月20日
L5宙域にて。
ガランシェールの艦橋は静かだった。
二週間。
ガランシェールは、L5宙域を円を描くように漂い続けた。
ラグランジュポイントを巡り、可能性のある航路を洗い――
最後に反応を捕らえた地点を何度も往復した。
だが――何もない。
赤い影は、跡形もなく消えていた。
ガランシェールは、最初に目撃情報が入った宙域へ戻ってきている。
未練だ。
分かっている。
「同地点、再走査に入る」
ジンネマンの声は低い。
返答はある。だが覇気はない。
その時、艦橋の扉が開いた。
「艦長! 緊急報告です!」
通信士が息を切らせて飛び込んでくる。
「何だ」
「今ニュースで……
地球連邦政府がラプラス事件の真相を公表しています……」
空気が止まる。
「……公表、だと?」
モニターが展開される。
連邦政府公式声明。
内部監査の結果、過去の機密文書が発見され、
ラプラス事件に関わる隠蔽の事実が確認されたという。
関与した当時の高官の名。
歴代政権による情報統制。
そして――
関係者の一斉更迭。
現在の大統領による謝罪。
当事者ではない現政権としての責任。
さらに宣言が続く。
透明性のある政府への転換。
その第一歩として、
――主義思想に対する自由の保証――
――コロニー市民への社会保障支援政策の策定――
――コロニー自治権拡大への準備の着手――
この三本の柱を立てる、と。
ジンネマンはわずかに目を細める。
鍵は永久封印されたと聞いたはずだ。
それなのに。
真相は公表された。
革命ではない。暴露でもない。
体制が、自ら口を開いた。
中身だけが、白日の下に晒されている。
誰かが、掠れた声で言った。
「……じゃあ、俺たちは何のために……」
続きを言えない。
武器を取り、命を賭け、
体制を変えるために戦ったはずだった。
だが体制は、自ら膿を出した。
革命は起きていない。
流した血は、引き金になっていない。
それでも――。
世界は動いた。
ジンネマンは無言で画面を見つめる。
怒りが湧くでもない。
歓喜でもない。
ただ、力が抜ける。
「マスター?」
隣からの声。
マリーダ・クルス が見上げている。
変わらぬ眼差し。
その存在だけが、現実だ。
ジンネマンは目を細め、ゆっくりと息を吐いた。
重い。
肺の奥に溜まっていた何かが、抜けていく。
「……そうか」
それだけ。
戦う理由が、根こそぎ奪われた。
憎むべき体制は、変わると言う。
否定する材料はない。
ならば。
自分たちは何だったのか。
答えは出ない。
だが――
マリーダが兵器ではなく生きられる世界に近づくのなら。
それだけで、十分なのかもしれない。
「……これで、良かったのかもしれんな」
呟きは、誰に向けたものでもない。
L5の闇は静かだ。
追うべき影は消えた。
残ったのは、行き場を失った拳と、
これからの時間だけだった。
だが――隣にマリーダがいる。
それで、十分なのかもしれない。
シャアを追跡していたところ、戦う理由を失ったようです。
こうしてジンネマンやマリーダは生存することとなりました。
そしてこっそり操舵手兼ギラ・ズールのパイロットのギルボア・サントも生存してます。