機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0096 The Legends Sing of UC Lullaby~   作:にわ@タイトル単位作品作成者

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File.30 気骨 ~エピローグ~

U.C.0096 4月某日

 地球連邦政府庁舎 執務室にて。

 

「報告します」

 

 机の前に立つ報告者が、書類を抱えたまま告げる。

 

「承認を頂いておりましたRX-0の核兵器貯蔵庫への封印、無事完了したとのことです」

 

 高官は、無言でうなずいた。

 

 それで十分だった。

 

「続いて、内部監査による各種不正の洗い出し、関係者の一斉更迭、すべて手続きおよび実施が完了しております」

 

「ご苦労」

 

 短い労い。

 

 それ以上でも以下でもない。

 

「それと、ネェル・アーガマのオットー・ミタスより上がった3号機……フェネクスについての見解がこちらになります」

 

「ほう」

 

 書類へ視線を向ける。

 

 ――敵対性 なし

 ――危険性 条件付きでなし

 ――評価

   手出しをしなければ飛び回るだけの野鳥

 

「いかがいたしましょうか?」

 

 高官は最後まで読み終え、静かに言う。

 

「観光資源として流布しておけ」

 

 高官は視線を上げる。

 

「ただし」

 

 厳しい視線が報告者を射抜く。

 

「危害を加えれば危険である旨を添えて、な」

 

 そう告げ、再び書類へ視線を戻した。

 

「承知いたしました」

 

 やや間を置いて、報告者が口を開く。

 

「しかし……今回の公表は、本当によろしかったのでしょうか」

 

 高官は視線を上げる。

 

「いずれ誰かがやらねばならんことだ」

 

 穏やかな声。

 

「それが今、行われただけに過ぎん」

 

 淡々としている。

 

「このままにしておけば、世界は腐る。連邦はいずれ力を失っていたであろう」

 

 一拍。

 

「その頃には市民も……我々も……無駄に疲弊していたはずだ」

 

 報告者へ向き直る。

 

「そんな状況を、誰が望む」

 

 強くはない。

 

 だが逃げ場のない問い。

 

 報告者は言葉を失う。

 

 高官は目を伏せ、静かに続ける。

 

「私は望まぬ」

 

 それだけだ。

 

「だから、整えた。それだけの話だ」

 

 熱はない。

 

 決意も誇示しない。

 

 ただ、当然の処理をしただけという口調。

 

 報告者は小さく息を吐き、姿勢を正す。

 

「ところで……G-プロジェクトの進捗ですが、あまり芳しくありません」

 

「続けろ」

 

「Hi-νガンダムの武装として提供したハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーにより、融合炉直結兵装の稼働データは収集されました」

 

「しかし……コメットブレイカーの出力がいかに規格外であったかを確認する結果に終わったようです」

 

 沈黙。

 

「……そうか」

 

 否定も失望もない。

 

「規格外と、現状技術との差がどれほどあるのか」

 

 ゆっくりと立ち上がる。

 

「それが判明しただけでも十分だ」

 

 窓の外を見る。

 

 空は変わらない。

 

 世界は少し変わった。

 

「G-プロジェクトは継続する」

 

 決定事項の確認。

 

 宣言ではない。

 

「了解しました」

 

 報告者は一礼し、退室する。

 

 静寂。

 

 高官は椅子に腰を下ろし、背もたれにわずかに体重を預ける。

 

 深く息を吐く。

 

 執務室には空調の低い唸りだけが残る。

 

 机の上には、処理済みの書類が整然と積まれている。

 どれも既に彼の手を離れたものだ。

 

 疲労ではない。

 

 一つの工程が終わった、それだけのこと。

 

 都市の空は、今日も変わらない色をしている。

 

 やるべきことは、まだある。

 いつも通りに。

 

 視線は、すでに次を見据えている。

 

 時計の針が、ひとつ進む。

 それだけが、この部屋で確かに動いた。




連邦政府の中で眠っていた怪物が目を覚ましたおかげで連邦政府は大変革を迎えたようです。
こうして地球圏の平和がしばらくの間続くこととなりました。

本編これにて完結となります。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

この後0時半にあとがきを予約投稿いたしております。
舞台裏を知りたい方はよろしければお読みください。
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