機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0096 The Legends Sing of UC Lullaby~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
U.C.0094 9月某日
強襲揚陸艦ネェルアーガマ副艦長室にて。
副艦長室は静まり返っていた。
ネェル・アーガマの副長席から離れ、レイアム・ボーリンネアは個人端末を軍の統合データベースへ接続している。
検索対象――
オービタル・リーダー。
民間企業が独自開発した対コロニー落下用防衛MS。
そこまでは公表情報として存在する。
だが。
詳細な設計思想、実戦試験記録、軍との技術連携ログ――
それらが極端に薄い。
「……妙だな」
レイアムは低く呟く。
民間開発機である以上、軍主導の正式配備記録が乏しいのは理解できる。
だが。
コロニー落下対処級の装備だ。
連邦が無関与ということはあり得ない。
少なくとも評価試験や共同検証の痕跡は残るはずだ。
しかし、検索をかけるほどに浮かび上がるのは“空白”。
削除痕ではない。
誰かが消した形跡もない。
ただ、継承されていない。
記録が、責任とともに消えている。
それが、気に入らない。
そもそも――
それで済ませていい規模の装備ではない。
レイアムは検索対象を変更する。
開発元企業名――スターアラウンダーズ。
ヒットしたのは、二年前の倒産記録。
資産整理完了。
技術資産の一部は不明。
(企業主導、か……)
軍の統制外で巨大兵器が動くことへの本能的な警戒。
それは一年戦争で嫌というほど思い知らされた。
統制の外にある力は、往々にして暴走する。
「……これでは追えんな」
本体を追うのは無理だ。
ならば――別の経路。
レイアムは更に検索を絞る。
関連武装。
対落下衝撃迎撃システム。
高エネルギー分散破砕装置。
そして――
検索結果の片隅に、目が止まる。
技術ログの端々に、ひとつのコードが残っていた。
――G-PROJECT――
レイアムの指が止まる。
各ページの内容に、直接の関連記述は見当たらない。
オービタル・リーダーとの関連性も不明。
だが、関連技術ログを辿った末端に、その参照コードがある。
さらに詳しく調べてみる。
ACCESS DENIED。
権限が足りない。
このコードにたどり着いたのは、
――偶然の一致か。
それとも、技術的連続性か。
「……G、か」
ガンダムか。
それとも、別の何かか。
詳細は一切開示されない。
委託先も、予算元も、目的も。
ただ、存在しているという事実だけが示される。
レイアムは椅子に深く背を預ける。
軍内部の極秘計画。
だが、それが何を再現し、何を目指しているのかは分からない。
オービタル・リーダーの情報は薄い。
G-プロジェクトの情報は閉ざされている。
二つの点。
線はまだ引けない。
だが――
「近すぎる」
小さく漏れた言葉。
偶然と片付けるには、気配が似ている。
公的記録の薄さ。
管理系統の分断。
責任主体の曖昧さ。
それが気に入らない。
自分は副艦長だ。
艦を守る責任がある。
その艦が、知らぬ計画の渦中に置かれる可能性があるなら。
黙ってはいられない。
しかし。
現時点では推測に過ぎない。
証拠はない。
疑念だけがある。
それが一番厄介だ。
端末を閉じる直前、再びG-PROJECTの文字を見る。
ACCESS DENIED。
冷たい表示。
レイアムの胸の奥で、静かな苛立ちが生まれる。
怒りではない。
不安でもない。
「説明されないこと」への拒絶。
艦橋ではオットーが艦長として奮闘している。
部下たちは彼を信じ、任務をこなしている。
その秩序の裏で、
もし別の力が動いているのだとすれば。
――それは善意か。
――それとも別の意図か。
まだ分からない。
分からないからこそ、落ち着かない。
副艦長室の窓外に星が流れる。
ネェル・アーガマは静かに航行を続ける。
だがレイアムの中では、
小さな疑念が確かに芽生えていた。
オービタル・リーダーの空白。
そして、G-プロジェクト。
点は打たれた。
線は、まだ引かれていない。
――だが、いずれ繋がる気がしてならなかった。
File.03を読まれた後にこれを読むと物凄く歯がゆい感じがするかと思います。
ですが、疑っている人にとって疑っている物の近くで秘密裏に動いている物とは他の人から見ると異様に怪しげに見えるものなんです。
こういうところが人間心理の面白いところですよね。