機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0096 The Legends Sing of UC Lullaby~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
同日同時刻
強襲揚陸艦ネェル・アーガマ艦長室にて。
着任挨拶はすでに終わっていた。
オットー・ミタスは静かに資料を閉じ、
レイアム・ボーリンネアは視線を落としたまま動かない。
「失礼します」
ノーム少佐と共に退室しようとした、その時。
「チェーン准尉」
足が止まる。
「聞きたいことがある」
振り返る。
「何でしょう?」
レイアムの目が、まっすぐに向けられる。
「――オービタル・リーダー」
空気が、変わる。
チェーンの表情がわずかに歪む。
「知っているな。
准尉の知っていることを、すべて教えてほしい」
数秒の沈黙。
「……MS-010-A FAZZに酷似した外観でした。
ですが、武装はすべて撤去されていました」
淡々とした口調。だが硬い。
「機動性は著しく低い。
戦闘機動は想定されていない構造でした」
「主武装は」
「右肩に搭載された大型ビーム砲です。
MSには不釣り合いなサイズでした」
レイアムの視線が鋭くなる。
「出力は?」
「詳しい値はデータがありません。
ですが……小型核融合炉が五基搭載されていました。
砲身部にΔ型Iフィールド発生装置を十セット。
さらに最奥部に九基。
それらを展開した状態でなお、
グリプス2を上回る規模の消滅を確認しています」
沈黙。
「……砲の奥に、理解の及ばない構造物が存在していました。
用途は不明です」
室内が静まり返る。
「具体的な威力は」
その問いは、確認ではない。
覚悟の確認だ。
チェーンの喉が鳴る。
「牽制の一射目で、アクシズの三割を焼失。
二射目で八割。
三射目で――完全焼失」
絶句。
「その後は」
レイアムの声は低い。
チェーンは一瞬、視線を落とす。
「……爆散……したそうです」
「……何?」
わずかな沈黙。
「……おそらく……機体の限界を……超えてしまったのだと……思います」
室内の空気が、沈む。
「……そうか」
それだけだった。
そして――
「あの……!」
チェーンが顔を上げる。
「この話は……少佐には……
アムロ少佐にはしないでいただけませんか!?」
誰も、言葉を発せない。
「……アムロ少佐は……その……
オービタル・リーダーの爆発を、目の前で見てしまったんです。
どうか……少佐の傷に触れないであげてください……」
言葉が落ちる。
レイアムは眉間を押さえ、短く息を吐く。
「……わかった」
チェーンは小さく頭を下げる。
「……ありがとうございます」
話を終え、ノーム少佐と共に退室しようとした、その時。
「チェーン准尉」
足が止まる。
「最後に一つ、確認したい」
「何でしょうか」
レイアムの視線は鋭い。
「“G-プロジェクト”という名称を聞いたことはあるか」
一瞬、チェーンの眉がわずかに動く。
「G……プロジェクト……?」
記憶を探るように視線が泳ぐ。
「いえ。聞いたことがありません」
即答ではない。だが、嘘もない。
レイアムは黙って見つめ続ける。
「……そうか」
副長はわずかに頷いた。
「准尉、情報提供に感謝する」
「はっ」
敬礼。
そして、退室。
扉が閉まる。
沈黙。
レイアムは静かに椅子へ戻る。
「……G-プロジェクトによるものの線は薄いですね」
オットーは腕を組む。
「連邦再編下で進められている次世代MS統合計画――その名ではないか、という噂はあるが」
「ですが、あの出力規模は通常の機体開発とは異質です」
レイアムは低く続ける。
「仮に“G”の名を冠する計画が存在したとしても、
あの兵器思想とは結びつきません」
推論は続く。
だが依然尻尾はつかめない。
オットーは静かに言う。
「計画兵器であれば、制御下にある」
「ええ。ですが、あれは……」
レイアムは言葉を探す。
「設計思想が連続していない」
「既存技術の延長ではない、ということか」
「はい」
沈黙。
二人とも“組織の影”を探している。
真相は、まだ遠い。
それを知る者は、ここにはいない。
やがてレイアムは息を吐く。
「少佐への聴取は実施しません」
「ああ」
「G-プロジェクトの件を含め、調査は続けます」
オットーは短く頷く。
「……わかった。続けてくれ。」
それで会話は終わる。
だが副長の胸には残る。
“計画がある方が、まだ安心できた”
未知の怪物ほど、恐ろしいものはない。