機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0096 The Legends Sing of UC Lullaby~ 作:にわ@タイトル単位作品作成者
U.C.0095 4月某日
地球連邦軍 トリントン基地にて。
乾いたタイヤ音が、格納庫のコンクリートに響く。
輸送トレーラーがゆっくりと停止し、巨大な影がせり出してくる。
――新しい機体だ。
ユウ・カジマは腕を組んだまま、その光景を見上げていた。
搬送用クレーンがワイヤーを緊張させる。
ゆっくりと持ち上げられた機体が、人工照明の下に姿を現す。
青。
いや、正確には“濃い蒼”だ。
可変高機動試験機を発展させた局地戦仕様機――
バイアラン・カスタム。
トリントン基地の防衛戦力強化の一環として配備された最新鋭機。
そして――
「ユウ大尉、専用機です」
整備主任が、どこか誇らしげに言う。
専用機。
その響きに、胸の奥がわずかに軋んだ。
蒼い装甲。
鋭角的なセンサーアイ。
推力偏重の後部ユニット。
視界の端に、別の蒼が重なる。
――ブルーディスティニー。
あの機体も、蒼かった。
あれは希望の色ではなかった。
呪いの色だ。
EXAMの赤い光。
歪んだ鼓動。
意識の奥底に潜り込む異質な感覚。
ユウは無意識に右手を握り込んでいた。
(……違う)
目の前の機体は、あれとは違う。
暴走するシステムもなければ、
人の精神を侵食する兵器でもない。
純粋な推力。
純粋な機動力。
対MS戦闘を想定した堅実な改修機。
だが――
蒼は、記憶を呼び起こす。
「専用機なら、色もそれらしくしろって話でしてね」
そう言って整備主任は機体を見上げる。
「……誰の趣味かは知りませんが」
整備主任がユウに向き直り苦笑する。
「トリントンの防空部隊は海沿いの迷彩パターンを基準にしてますから。
それに……似合ってると思いますよ」
似合う。
その言葉に、ユウはわずかに視線を伏せた。
似合うと言われたことは、かつて一度もなかった。
ブルーディスティニーは、人を選ぶ機体だった。
選ばれなければ、その蒼に拒まれる。
拒まれた者に、生還はない。
選ばれたとしても、それは祝福ではなかった。
そして――
目の前にある、もうひとつの蒼。
新たに得る力。
思い起こされるのは先の戦い。
宇宙で見た、あの光。
三射目。
限界を超えた出力。
空間を裂く閃光。
対コロニー落とし用戦略砲撃MS――オービタル・リーダー。
最後の射撃の直前、
赤い機体が突入してきた。
シャア・アズナブル。
止めなければならなかった。
どれだけ時間を稼げたのかは分からない。
その赤を、止めた。
それだけが事実だ。
三射目は放たれた。
アクシズは焼失した。
だが――
機体は、爆散した。
(……俺が、もう少し)
思考が、そこで止まる。
結果は変わらない。
そう理解している。
だが理解と納得は、別だ。
「大尉?」
呼びかけに、ユウは顔を上げた。
蒼い巨体が、静かに立っている。
これは呪いの機体ではない。
暴走もしない。
誰かの精神を喰らうこともない。
ただの兵器だ。
ただの、戦うための機械。
ユウは一歩前に出る。
「……問題はない。受領する」
短い言葉。
それ以上は言わない。
蒼は過去ではない。
今だ。
この機体は、守るために使う。
爆散するための機体ではない。
ユウはバイアラン・カスタムを見上げる。
「よろしく頼む」
それは誰に向けた言葉か。
整備班は気づかない。
蒼い機体だけが、静かに佇んでいた。
と言うわけで今回のオリジナルMS枠、ユウ専用バイアラン・カスタムこと蒼いバイアラン・カスタムです。
何かを感づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、どうなるかはお楽しみに。
…EXAMシステム?搭載してるわけないじゃないですか。
あれは1年戦争時代に失われたシステムです。