機動戦士ガンダム SilenceWar ~U.C.0096 The Legends Sing of UC Lullaby~   作:にわ@タイトル単位作品作成者

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File.08 感覚

U.C.0095 10月某日

 強襲揚陸艦ネェル・アーガマ 合同訓練にて。

 

 ネェル・アーガマは演習航海兼哨戒任務の途上にあった。

 

 宙域は静穏。

 だが艦内は静かではない。

 

 カタパルトデッキ。

 

 発進シークエンスのカウントが響く。

 

「Hi-νガンダム、アムロ、出る」

 

 蒼と白の機体が滑り出す。

 推進炎が闇を裂く。

 

 アムロ・レイ少佐のHi-νガンダム。

 

 続いて、ボッシュのジェガンD型。

 さらにリゼル隊。

 

 ノーム少佐の号令が飛ぶ。

 

「合同訓練開始。想定敵は高機動機。各機、散開」

 

 宙域に光が走る。

 

 ビームの交錯。

 ダミーバルーンの炸裂。

 

 リディは息を詰める。

 

 速い。

 

 Hi-νが描く軌道は、直線ではない。

 曲線でもない。

 

 “無駄の削ぎ落とされた軌道”。

 

 敵役のボッシュ機が一瞬で包囲圏へ追い込まれる。

 

「くっ……!」

 

 通信越しに悔しさが滲む。

 

 アムロの声は静かだ。

 

「焦るな。選択肢を減らすな。

 自分で動ける戦場を描け」

 

 その言葉で、戦場の温度が変わる。

 

 リゼル隊が連携を取り直す。

 

 だが次の瞬間。

 

「ハイパー・メガ・バズーカ・ランチャー、射出」

 

 艦側からのアナウンス。

 

 巨大な砲身が展開される。

 

 融合炉搭載型――

 艦からのエネルギー供給を必要としない独立出力。

 

 規格外の代物だ。

 

 Hi-νがそれを構える。

 

「……出力、上がりすぎだ」

 

 アムロの小さな呟き。

 

 発射。

 

 光が、空間を塗りつぶす。

 

 訓練用ターゲットは蒸発。

 余波が機体を揺らす。

 

「安定性が悪い」

 

 淡々とした声。

 

「……扱いづらいな」

 

 通信はそこで切れる。

 

 誰も何も言わない。

 

 威力は圧倒的。

 だが、あれは――

 

 “繊細な兵器”ではない。

 

 訓練終了のコール。

 

 各機帰投。

 

 

同日同時刻

 強襲揚陸艦ネェル・アーガマ格納庫にて。

 

 格納庫の空気は重い。

 

 合同訓練のあとだ。

 誰もが無言で、自分の出来を反芻している。

 

 リディも例外ではなかった。

 

 機体の脚部を見上げながら、さっきの挙動を頭の中で繰り返す。

 

 ――動きが遅れた。

 

 分かっている。

 

 そのとき。

 

「おい、難しい顔してるな」

 

 ボッシュが現れた。

 

 わざとらしいほど明るい声。

 

「してません」

 

「してる」

 

 即答。

 

「お前、今“コンマ何秒遅れたか”とか考えてただろ」

 

 図星。

 

 ボッシュはニヤリと笑う。

 

「そういう時はな、英雄の話を聞くといい」

 

「は?」

 

「アムロ少佐の話だ」

 

 強引だ。

 

 だが止まらない。

 

「いいか。アクシズ戦だ。あの戦場、まともに数値化できると思うか?」

 

「……困難でしょうね」

 

「だろ? なのにお前は、自分の遅れを数字で測ろうとする」

 

 リディは黙る。

 

 ボッシュは壁に寄り掛かり腕を組む。

 

「νガンダムはな、完璧だったわけじゃない」

 

「え?」

 

「むしろ無茶だ。あんな急造機体であの規模の戦場に出るんだぞ?」

 

 それは事実だ。

 

「でもな、あの人は“整えた”」

 

「整えた?」

 

「味方が動きやすい形に、敵が動きにくい形に。

 派手な撃墜より、そっちの方が多い」

 

 ボッシュはちらりとリディを見る。

 

「止めた奴がいた。記録にも残ってる。

 だが、止められる形にした奴もいた」

 

 リディの肩から、ほんの少しだけ力が抜ける。

 

 それを確認してから。

 

「まあでも一番すごいのはフィン・ファンネルだけどな!」

 

「そこですか」

 

「浮いてビーム撃つんだぞ!? 反則だろ!」

 

 整備員達が苦笑する。

 

 ボッシュは両腕を広げる。

 

「こう、ぶわーって展開してな!」

 

「危ないですからやめてください」

 

「芸術だぞ芸術!」

 

 空気が、少しだけ軽くなる。

 

 リディは気づく。

 

 この人は――

 

「……中尉」

 

「なんだ?」

 

「さっきのは、わざとですか」

 

 一瞬の間。

 

 ボッシュは肩をすくめる。

 

「先輩の仕事だ」

 

 軽く言う。

 

「お前は真面目すぎる。

 英雄はな、完璧だから英雄じゃない」

 

「……」

 

「不完全でも前に出たから、記録に残る」

 

 立ち上がる。

 

「肩の力を抜け。

 数値は後から整備が直す。

 お前が直すのは“覚悟”だけでいい」

 

 ――覚悟。

 

 その言葉が、胸の奥に落ち着く。

 

 リディは小さく笑った。

 

「中尉、たまにまともなこと言いますね」

 

「……否定はしない」

 

 一拍。

 

「演出だ!」

 

 胸を張る。

 

 リディは理解する。

 

 この人は分かっていてやっている。

 そして、それを悟らせすぎない程度に演じている。

 

 格納庫の喧騒が、少しだけ柔らかくなった。

 

 その向こう。

 

 Hi-νガンダムの整備が進む。

 

 巨大なハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーが、

 静かに再調整を受けている。

 

 だが、

 ――出力は落とせない。

 

 落とす手段の調査はされている。

 しかしまだ見つかっていない。

 

 それでも、

 ――必要であれば使わなければならない。

 

 アムロは、その可能性を理解していた。




今回のオリジナルMS枠その2こと、Hi-νガンダムのSilenceWar世界線仕様です。
基本スペックは元作品の通りですが、ハイパー・メガ・バズーカ・ランチャーの威力が元作品のそれを上回る仕様になっています。
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