激闘!燃え盛れ怒りの灰! ~ルビコンで一番つええ犬~   作:abubu_nownanka

7 / 7
ルビコンで一番つええ犬-END

「それから?それからどうなったの?621はカーラを殺しちゃったの?」

 

雪深いルビコンの民間居住区、その外れにある小さな一軒の家の中で、コーラル暖炉がやわらかな光をゆらゆらと揺らしています。

 

暖炉の前の椅子に座るお爺さんを三人の孫たちがぐるりと囲んでいました。目はきらきらと輝き、今にもお話の続きが飛び出して来るのを待っています。けれど、お爺さんは長い髭の下で少しだけ意味ありげに笑うだけでした。

 

「えーっ! ずるいよ!」

「いいところだったのに!」

「ねえ、どうなったの?」

 

せっかくのお話が良いところで終わってしまい、子供たちは頬をふくらませます。それでもお爺さんは彼らを宥めるように、静かに語るのでした。

 

「分かるかい。大切なのはね、誰が勝ったかじゃないんだ。戦わなくてもよかったのかもしれない。ほんとうに強い者はね、戦うことじゃなくて、信じることを選べる者なんだよ。戦いより対話を。戦争より共生を。それこそが、このルビコンに流れるコーラルの願いなんだよ。」

 

暖炉のコーラルの赤い光が、ふわり、と小さく脈打ちました。そしてお爺さんは昔から伝わる言葉を口にするのです。

 

「コーラルよ、ルビコンと共にあれ。」

 

一番下の孫も元気よく言いました。

 

「灰被りて我らあり、だね!」

 

お爺さんは嬉しそうに頷きました。すると台所の方から良い匂いが流れてきて、お婆さんがオールマインド印の大きな鍋を持ってやってきました。ミールワームのシチューがとろとろと音を立て、湯気が立ちのぼり部屋いっぱいにあたたかな匂いが広がります。

 

子供たちもさっきまでの不満なんてすっかり忘れて、ご機嫌な笑顔になりました。

 

ふと、空の向こうに小さな光がゆっくりと流れていきました。惑星封鎖機構の偵察機です。けれど今のそれは武装がすべて取り外され、機体の側面で明るい電飾文字が灯っています。

 

『やさしいコーラル』

『まもろうルビコン』

 

それは誰かを傷つけるためではなく、ただルビコンの人々を見守るためだけに静かに空を巡っているのでした。

 

お爺さんは窓越しにその光を見つめながら、ほんの少しだけ遠い目をしました。

 

あの夜、621の心の中に燃え上がった小さな炎、それはこの平和な時代に至る小さな一歩だったのでしょうか?

 

あの大変な時代を生きた人々なら、ルビコプターが飛んでてルビコンが焼けてなくてルビコニアンが生きているということは本編のどういうルートを辿った話なのか大体察しがつくのでしょう。

 

でも、それはとても辛い記憶。希望に満ちた次の時代の子供達には伝える必要は無いのかもしれません。お爺さんもブーストチャージで蹴り潰されて1/4に圧縮されたコクピットから命からがら這い出したあの日のことを思い出し、静かに笑うのでした。

 

暖炉のコーラルは今日も変わらず優しく揺れています。

 

人々の暮らしを見守るように。

すべてを覚えているかのように。

 

コーラルは流れます。

私とレイヴンがそうであったように。

いつまでも、いつまでも。

この星と共に──。

 

『激闘!燃え盛れ怒りの灰! ~ルビコンで一番つええ犬~』 おわり

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

STALKER:Fox Hunt(作者:abubu_nownanka)(原作:S.T.A.L.K.E.R.)

▼【挿絵表示】▼チェルノブイリ原子力発電所事故に端を発し、国土の一部を覆った未知の異常領域「ゾーン」。放射線に蝕まれた大地には、物理法則を歪める致死の異常現象「アノマリー」が点在し、奇怪な変異生物「ミュータント」たちが跋扈する。そしてあるいは、ゾーンが生み出す不可思議な結晶体「アーティファクト」も。▼やがて、この人知の及ばぬ荒野へと命を賭して足を踏み入れる者…


総合評価:1418/評価:9.02/完結:14話/更新日時:2025年05月14日(水) 17:39 小説情報

IFルート ~早期にリナ先輩と接触ルート~(作者:oota)(原作:俺の切り札は光らない)

IFとして、ドロシーちゃんが体験入部に来る前の頃に。▼荒れていた時期のリナ先輩が気まぐれで部活の様子を見に来て、部員達に喧嘩売ったら普夫くんが買って。その結果仲良くなる話。▼ツイッターで見たジグ部長ルートについての話題から、このIFルートについて想像し、楽しそうだと思い書きました。▼リナ先輩良いよね……という個人的な思いを燃やして書きました。▼本作品では一部…


総合評価:449/評価:8.11/短編:7話/更新日時:2026年06月23日(火) 12:00 小説情報

キヴォトス企業、アーキバス・コーポレーション(作者:ねうしとら)(原作:ブルーアーカイブ)

キヴォトスに“大人”として転生したブルアカミリしら転生者が、この世界の技術力を駆使すればACを造ることも夢ではないと希望を抱き、企業として奮闘する話。▼尚、キヴォトスで社会人として揉まれた結果、性格も企業となってしまった。▼


総合評価:12526/評価:8.89/連載:22話/更新日時:2026年02月25日(水) 19:12 小説情報

酒寄研究所の禁止リスト(作者:白鷹泉)(原作:超かぐや姫!)

酒寄研究所は、今日もホワイトに稼働中。▼しかしその裏には、秩序を守る者達の隠された苦労と悲哀があった……▼※SCP財団「ブライト博士の禁止リスト」のパロディです。▼※財団やオブジェクトが登場する予定はありません。▼※作品設定上、超かぐや姫!の重大なネタバレが前提となります。未視聴だという方は今すぐ回れ右してネトフリ契約するか劇場に走れ。▼※pixivにも投稿…


総合評価:1795/評価:8.55/連載:13話/更新日時:2026年06月21日(日) 00:00 小説情報

新人先生はネタバレ生徒しか引けない(作者:KuRoNia)(原作:ブルーアーカイブ)

シャーレに着任したばかりの先生が、シッテムの箱で見つけた『募集』機能。▼それは、シャーレに入部届を出している生徒をランダムで呼び出す、いわゆるガチャのようなものだった。▼軽い気持ちで初回募集を行った先生の前に現れたのは、臨戦状態のホシノと黒いドレス姿のシロコ。▼だが先生は、まだアビドスにも行っていない完全な新人先生だった。▼「うへ……最序盤じゃん」▼「ん、ネ…


総合評価:8825/評価:8.85/連載:30話/更新日時:2026年06月24日(水) 00:16 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>