激闘!燃え盛れ怒りの灰! ~ルビコンで一番つええ犬~   作:abubu_nownanka

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ルビコンで一番つええ犬-END

「それから?それからどうなったの?621はカーラを殺しちゃったの?」

 

雪深いルビコンの民間居住区、その外れにある小さな一軒の家の中で、コーラル暖炉がやわらかな光をゆらゆらと揺らしています。

 

暖炉の前の椅子に座るお爺さんを三人の孫たちがぐるりと囲んでいました。目はきらきらと輝き、今にもお話の続きが飛び出して来るのを待っています。けれど、お爺さんは長い髭の下で少しだけ意味ありげに笑うだけでした。

 

「えーっ! ずるいよ!」

「いいところだったのに!」

「ねえ、どうなったの?」

 

せっかくのお話が良いところで終わってしまい、子供たちは頬をふくらませます。それでもお爺さんは彼らを宥めるように、静かに語るのでした。

 

「分かるかい。大切なのはね、誰が勝ったかじゃないんだ。戦わなくてもよかったのかもしれない。ほんとうに強い者はね、戦うことじゃなくて、信じることを選べる者なんだよ。戦いより対話を。戦争より共生を。それこそが、このルビコンに流れるコーラルの願いなんだよ。」

 

暖炉のコーラルの赤い光が、ふわり、と小さく脈打ちました。そしてお爺さんは昔から伝わる言葉を口にするのです。

 

「コーラルよ、ルビコンと共にあれ。」

 

一番下の孫も元気よく言いました。

 

「灰被りて我らあり、だね!」

 

お爺さんは嬉しそうに頷きました。すると台所の方から良い匂いが流れてきて、お婆さんがオールマインド印の大きな鍋を持ってやってきました。ミールワームのシチューがとろとろと音を立て、湯気が立ちのぼり部屋いっぱいにあたたかな匂いが広がります。

 

子供たちもさっきまでの不満なんてすっかり忘れて、ご機嫌な笑顔になりました。

 

ふと、空の向こうに小さな光がゆっくりと流れていきました。惑星封鎖機構の偵察機です。けれど今のそれは武装がすべて取り外され、機体の側面で明るい電飾文字が灯っています。

 

『やさしいコーラル』

『まもろうルビコン』

 

それは誰かを傷つけるためではなく、ただルビコンの人々を見守るためだけに静かに空を巡っているのでした。

 

お爺さんは窓越しにその光を見つめながら、ほんの少しだけ遠い目をしました。

 

あの夜、621の心の中に燃え上がった小さな炎、それはこの平和な時代に至る小さな一歩だったのでしょうか?

 

あの大変な時代を生きた人々なら、ルビコプターが飛んでてルビコンが焼けてなくてルビコニアンが生きているということは本編のどういうルートを辿った話なのか大体察しがつくのでしょう。

 

でも、それはとても辛い記憶。希望に満ちた次の時代の子供達には伝える必要は無いのかもしれません。お爺さんもブーストチャージで蹴り潰されて1/4に圧縮されたコクピットから命からがら這い出したあの日のことを思い出し、静かに笑うのでした。

 

暖炉のコーラルは今日も変わらず優しく揺れています。

 

人々の暮らしを見守るように。

すべてを覚えているかのように。

 

コーラルは流れます。

私とレイヴンがそうであったように。

いつまでも、いつまでも。

この星と共に──。

 

『激闘!燃え盛れ怒りの灰! ~ルビコンで一番つええ犬~』 おわり

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