いらっしゃいませ。
不死のお客様。
牙猪騎士アレフを斃したのですね。
あれほどの猛者をもくだすとは……流石と言う他ありません。
牙猪騎士は、シースにとって切り札の中の切り札と言うべき戦士達です。
シースの目となり各地の情勢を探るのが六目の伝道者であるならば、牙猪騎士は看過できない情勢へ直接干渉する術であった筈です。
そのような大駒をこの地へ差し向けた辺り、シースにとってギーラの失踪は看過できない事象のようです。
さて……いったいどこに真実が隠されているやら。
ギーラの岩の力は、おそらくシースにとってウロコとしての価値はないもののようです。
ですがその被造物である怪物達を処分することなく管理下に置いてあったのですから、それとは別の価値があった筈。
もとより。
かつての敵対でギーラを下した時、何故シースはギーラを消さなかったのか。
やはりそれが気になって仕方ありません。
岩の力を奪ってなお、ギーラに何を求めたのか。
お客様が撃破した牙猪騎士の存在は、その真実に近づく貴重なヒントである筈です。
それは同時に真実への道筋を阻む脅威でもありましたが、この世界においてもその脅威は取り除かれた。
もしかしたら、シースの秘密を暴けるかもしれませんね。
◆
せっかくの機会なのです。
お客様には、とびきりのデザートを振る舞いたいと存じます。
以前からお話しております「イェルマニア」には、伝統のケーキがございます。
バウムクーヘンです。
バウムクーヘンとは、中心に穴がある円状のケーキです。
スライスすると樹木の年輪のような模様が出てくることから、木のケーキなどとも呼ばれます。
結婚式といった行事にて親しまれる特別なデザートで、実は専用の設備を必要とする食べ物です。
それだけにバウムクーヘンを焼く職人には技量を求められ、美味しいバウムクーヘンを焼ける職人は社会にて一定の地位を築けたと言います。
その実、簡単に作れる食べ物ではない。
ですが、私には「工夫」を凝らす力がございます。
さらに、当店では特製のクリスタルソースをたっぷりかけて提供しております。
この黒い森特有の、シースのものとは異なる結晶を「工夫」して加工したソースです。
シースの結晶とは異なり呪いに冒されることはなく、むしろ耐性を得られる特別製です。
味も「工夫」しておりますので本場のバウムクーヘンとは異なる味・風味をお楽しみいただけます。
「クリスタルケーキ」です。
お口直しにぴったりの一品ですので、どうかお試しあれ。
◆
お客様が牙猪騎士アレフを斃したことで時空の歪みに何らかの影響が出たのか、大樹のうつろの先についてのお話を伺うことができました。
どうやら、大樹のうつろの先に「灰の湖」が広がっているようです。
灰の湖については、謎に包まれた異世界であると聞いています。
どこまでも広がる異様な湖と砂浜が広がり、遠くには巨大な大樹が何本も聳え立っている。
そのうちの一本が病み村でも見られた大樹であり、そしてお客様が今回攻略した大樹もまたそうであるそうです。
その地では、シースの領域にも生息していた「五足のバイバル」や、黒い森の庭にもいた「湖獣」が潜んでいるといいます。
いずれも油断できる相手ではありませんが、今回の灰の湖にはギーラの力が侵食してより危険な場所となっているようです。
例えば、また岩のバイバルが現れるかもしれませんし、湖獣にも岩の力が備わってしまっているやも。
ですが。
それらよりもその地で警戒すべきは、書庫塔から脱し大樹のうつろを経由してその地に至った「岩の黒竜ギーラ」そのものでしょう。
シースの古い友であり、グウィンの敵対者。
かつてシースに敗れて書庫塔に閉じ込められたそのギーラが、灰の湖にいるのです。
◆
時に、お客様は"ダークスレイヤー"を入手したでしょうか。
ダークスレイヤーは、岩の黒竜ギーラの尾から見出されたドラゴンウェポンです。
魔術に連なる者を殺す力を有する魔剣でございます。
適切な能力を持つ者が振るえば、闇色の光波を飛ばすことができるのだとか。
それ自体がギーラに通用することはありませんが、しかしこのドラゴンウェポンの存在そのものがギーラ攻略のヒントになる筈。
ギーラには、もう下半身がないのです。
曰く、ギーラが纏う「岩のような」ウロコは、呪いに対して無力であるようなのです。
その呪いは、火の時代そのものに起因するものだそうで、だからこそギーラは灰の湖を目指したのかもしれないのです。
噂ばかりの眉唾な話なのですが、灰の湖とは火の時代以前の面影を強く残す場所だそうで、ともすればギーラにとって居心地の良い場所であったのやも。
しかし、呪いとは厄介なものです。
その原因から逃れたとて、体を蝕むものが消える道理はありません。
下半身を失う程度の理不尽が起きても、不思議ではない。
きっと、実際の岩の黒竜ギーラはかなり危険な状態である筈です。
下半身を失ったことで、かえってその重い体から解放され機敏に動けるようになってしまっているのかも。
そしてシースと同様の巨躯ゆえに、ただ両腕を使い這うだけでも恐ろしい攻撃となるでしょう。
ですが、それでも……きっと、討ってしまうのがよいと存じます。
その強大なソウルは、お客様の使命を大きく助けるものになり得ますし……何より、話を伺う限りギーラは死に場所を見失った獣と化している。
古い友に敗れ、生きたまま書庫塔に閉じ込められ、呪いに冒されたまま今日まで苦しみ続けている。
誰かが、おくるべきです。
◆
行かれるのですね。
どうか、貴方の旅に寄る辺があらんことを……おっと失礼、呪いとは厄介なものですね。
やはりお客様に対しては、こちらの方が相応しいでしょう。
またのご来店、心よりお待ちしております。
事が終わった後もお立ち寄りくだされば、またお酒や料理をお作りいたします。
ここは黒い森の酒場ですから。
・クリスタルケーキ
黒い森で酒場を経営する、名もなき神族による菓子料理。
シースのクリスタルゴレムを模した、持ち帰り用の品。
HPを回復し、呪いの蓄積を減らし、呪死状態を解除する。
樹木の年輪を思わせる形を特徴とする伝統の菓子に、特製の青いクリスタルソースが塗られている。
このソースは店主の「工夫」による特別製であり、呪いを解くことができる。
本来呪いとは逸らすことしかできないものだが、これは人を使わず呪いを逸らす貴重な手段である。
ましてや、ロードランでも貴重な甘味を楽しめるのだ。これ以上の贅沢など望むべくもない。
・岩の黒竜ギーラのソウル
灰の湖にまで落ちていた
岩の黒竜ギーラのソウル。
ギーラはシースと同様「ウロコのない」竜であったが、後天的に岩のウロコを得た。
だが岩のウロコは呪いに対して無力であり、ギーラは亡者と化した。
シースはグウィンを攻撃するギーラを書庫塔に封印し、岩とは異なるウロコを求めるようになった。
嫉妬と憎悪を共有した友を、取り戻すために。