やっと艦隊に合流できた。
・・・とはいっても、後一時間ほどで横須賀に到着するが。
「なぁ、先に帰投して入渠しててもいいか?」
「あ、あぁ、いいぞ。それとも輸送艦に乗るか?」
「いや、結構だ。」
「はぁ、横須賀提督、私の言葉を忘れたのかね?」
まーた邪魔が入ったよ。
「忘れてはいませんよ。ですが、彼の損傷は激しい。戦闘では足手まといになるだけでしょう。ならば、ここで艦隊から離脱させて、他の艦娘が戦いやすくする方が、より守りやすくなると考えられますが。」
「私も、その意見に賛成します。主砲、魚雷ともに全て使用不可能です。戦艦ならば、装甲で盾になることはできるでしょうが、私は駆逐艦です。戦略目標としての順位も低く、的にすらなれないでしょう。」
「君は主砲が使えないだけで戦うことができなくなるのか?」
「どういう意味でしょうか?」
「素手で戦えという意味だ。」
「お言葉ですが、私の左腕、左足は骨が砕けています。手が動かなければ殴ることはできず、足が潰れていれば、踏み込むことができません。身体強度は艦娘の方が人間よりもはるかに優れていますが、身体構造は変わりません。分かりますよね?このような状態では、ただ味方を混乱させる結果しか出ないということですよ。それに・・・。」
「それに?」
来た。遅いな。
「長門!通信コード六一二五九八三、開け!」
「え、あ、分かった!」
「なにをしている!」
「それはこちらのセリフだ。」
「司令長官!」
「貴様、現在の横須賀鎮守府と第一世代艦艇の指揮権を持つのは誰だと思っている?」
「それは司令部でしょう。ですが、我々参謀本部は司令部傘下の組織です。そして、緊急司令代行権を保有しています。何も問題はないでしょう?」
「勘違いがあるようだな。横須賀鎮守府及び第一世代艦艇の指揮権を持つのは司令部ではない。指揮権を持つのは二人だけ。司令長官である私と現横須賀鎮守府提督の八代樹希大佐のみだ。緊急司令代行権は関係ない。貴様ら参謀本部は、重大な違反行為を起こした。硫黄島にレーダーサイトを設置してくれたのはありがたいが、これほどの越権行為を見逃すことはできない。帰ったらすぐに軍法会議だ。厳罰を覚悟しておけ。」
「待ってください!話を!」
「貴様らと話すことはもうない。後は取り調べで洗いざらい吐け。」
「司令長官!」
そこで通信が切れた。
「八代樹希!貴様一体何をした!」
「いえ!私は何も知りません!なんで?なんでこんなタイミングで・・・。」
「全部俺がやったことだ。」
「白霜が?」
「ああ。出撃の前日、電波妨害に気付いた。深海棲艦によるものではないから、人間が意図的に作り出していることだと気づいた。そして、一時的に妨害が消え、そのあとの参謀本部との通信だ。そこである程度分かったよ。小笠原に行くように進言したのも俺だ。まぁ、艦娘のこともあったが、どうにかして本土と通信をするタイミングを確保するため。小笠原には、以前修理しておいた中継器がある。それを使って大本営と通信をしたわけだ。」
「・・・貴様ぁ!ここで沈めてやる!」
「それはやめておいた方がいいぞ。」
「なにを言うか!貴様には主砲も魚雷も打てない!できることは何もないだろう!」
「ああ、あれ半分嘘。魚雷は打てるよ。だから・・・、この輸送艦も簡単に沈められるわけだ。それに、確かに骨はあちこち折れているが、別にそれで打撃の威力が下がるわけではない。そして、さっきの続きだが・・・、現在、上空にはF-5が数機展開しています。私に任せるよりも、彼らに任せる方がより確実でしょう。」
「・・・クソが!貴様のせいで全てが台無しになった!どうしてくれる!」
「どうするも何も、自分の責任でしょ?俺は知らないよ。あ、そうそう。提督に何か危害を加えたら、ただでは済まない。これ司令長官からの伝言。分かった?・・・で、提督。」
「なんだ?」
「そろそろ帰っていい?」
「ああ、帰れ。それからとっとと入渠しろ!」
「あいよ。」
***
「おかえり。」
「あぁ・・・、やっと帰って来た・・・。」
「お疲れ。」
「あーもう、一時はどうなるかと思ったよ・・・。白霜、本当によくやってくれた。ありがとう。」
「それはどうも。あ、あと一つ、伝言を預かってる。」
「なんだ?」
「「早期に対応できなくてすまなかった。そして、生きて帰ってきてくれてありがとう。」だ。」
「そうか・・・。白霜、ありがとう。俺からも、何もできなくてすまなかった。」
「別に?俺は戦えただけよかったよ。」
「そうか・・・。今日はもう休め。明日から北海道へ行く準備をする。」
「分かった。」
11月23日
17:35 艦隊、横須賀鎮守府へ帰投。
北海道出発まであと五日。
やっと帰ってきました。参謀総長も呆気ない。
・・・実は、第二章もうちょっと続きます。あいや、戦闘はもうないんですけど。ふっふっふ。クライマックスで終わらないのがこのアホ作者なのであ~る。
白「とっとと終わらせろ。このボケ。」