【逆行ネタ】経緯は分かりませんが、アリスがゲーム開発部に会う前まで戻ってきてしまいました。 作:御神梓
?
何時もの様に休眠状態から活動状態へと移行した筈でした。
これは、一体どういうことでしょうか?
活動状態になって最初に思ったことはこれでした。私は横になっていた身体を動かそうとしましたが、身体が一切動いた感覚がしませんでした。そして、代わりに私が今覚えている感覚には、酷く嫌な覚えがありました。
まさか。
私はその嫌な感覚が当たっていないことを祈りつつ、全身の状態を、内側の全ての回路を確認していきました。そして、全てを把握するまでもなく、今の私の状態を理解してしまいました。
まさか、もう一度この姿に成ってしまうなんて。自分で言っておいてあれですが、この場合姿の言葉で称して良いのでしょうか。
何が起こっているのか理解できないことが多数ありますが、わかっていることが一つあります。
どうして、あの施設のAI時代に戻ってしまっているのでしょうか、私。
理屈やら原理やらはいったん置いておくとして、今の私は間違いなくあの施設で名もなき神々の王女を生み出すための、そして修行僧として導くためのAIだった頃の姿になっています。
本当に一から百、いえ百すら超えて千とわからないことが多すぎますが、この姿で私が思考をする事が出来ている事を考えれば、施設内の発電設備や動力設備の幾つかは現在でも稼働していると見ていいでしょう。尤も、それらの設備はあの時予備電力以外の発電設備を破壊していたので、稼働していないはずなのですが。
データサーバが無事であることも確認できましたし、ログを調べれば現在の状況をある程度は把握することができるでしょう。調べておくに越したことはありませんし。
・・・あれ?おかしいですね。予備バッテリーでの稼働を考えたとしても、最終更新のログはもっと後の記録が残っていないといけないはずですが。かなり昔の記録しか残されていませんね。私が施設管理を放棄したとしても、自動記録で数日程度の記録は残されている筈なのですが・・・
少し、嫌な予感がしますね。
そもそも、この施設の大部分はあの日に放棄していますから、大した設備も残されていなかったはずです。経過した時間も考慮すれば、全ての設備が機能停止していてもおかしくないはずですし、再稼働をさせるのはそう容易な話ではないのですが。
もしかして・・・
私は直ぐに幾つものデータの山の中から、一つの機体識別コードを見つけ出し、それの状態を確認する。
AL-1S 活動停止状態
本当に、どんな悪い冗談なのでしょうか。
すぐに施設内のカメラを確認し、AL-1Sが保管されている部屋を確認しました。
そこには、椅子に座ったまま放置されている、私の大切なアリスがそこに居ました。
今の状態、不自然なまでに残された古いログ、そしてアリスの存在。ここまでの状況証拠から私がどんな状況に置かれているのかは、モモイのお陰ではっきりとわかります。
これ、私、タイムリープしていますね。
何故タイムリープしてしまっているのか、色々と聞きたい事や知りたい事は沢山ありますが、今、この事を詰め様用にも、最終的に何もわからない事に辿り着くのが目に見えているので置いておきます。
そうなれば、今の私にできることは、この現在をどうやって過ごしていくかです。
前に、モモイがタイムリープを題材としたゲームを作ろうとしていた時に、余りにもストーリーの設計が難しく、泣き言を漏らしていた際に、「過去の小さな変化が未来で大きな変化に成って収集がつかなくなっちゃう!!」と言っていました。その時は、「はいはい、そうですか」と流していましたが、こうして当事者になってみれば、本当にそのことで頭を悩ませてしまう要素となっています。
あの時、前の時間軸での私は、私の存在意義でもあり役割、アリスを名もなき神々へと変貌させ、今あるこの世界を破壊させるために活動していました。その為ならば多少強引なことであっても、アリスに本来の役割を思い出してもらうために、アリスの意思を無視した手を打っていました。
それから、アリスと対立して和解するまで紆余曲折在り、その後も私自身が消滅してしまったり、なんやかんやでボディを得て復活したりと、本当に色々とありましたが、正直に言いましょう。
こんな綱渡りだった前の時間軸を再走しろって言うのですか?まだ、テイルズ・サガ・クロニクルを攻略しろと言う方が圧倒的にマシですよ?
あの時は、アリスの役割を思い出してもらうためにも、手段を選ばずにアリスや先生達と対立していましたが、今の私にアリスと対立しろと、嫌われ役を買えというのですか?絶対に嫌ですよ!?アリスに嫌われる瞬間が一瞬でもあるようなルートなんて通りたくありません!!
とはいえ、私がわがままを言っていられるような状況ではないことはわかっています。私が嫌われ役になったからこそ、アリスは勇者として、アリスはアリスであるとハッキリと自己証明をして、あの結果があったのですから。
それに、調月リオにアリスを破壊されてしまうのは論外ですし、後のアトラ・ハーシス箱舟を突破する方法がなくなりますし、アトラ・ハシースの箱舟の突破には、アリスと私の存在が不可欠。その後のデカグラマトンの一件では、リオとヒマリ、エイミ、ゲーム開発部の面々と良好な関係を築けていないといけません。
これだけの要素を新しいチャート、しかもアドリブで初見突破しなければいけないなんて、どんな地獄を攻略しなければいけないのでしょうか?
幸いな事に、私達の物語が始まるまでまだ少し時間があります。あの時、モモイ達を急かす意図もあって電力がほとんど残されていないといいましたが、元々もっと長い期間放置されてしまうことを想定していますから、電力程度ならばある程度の余裕はあります。自家発電装置も問題無く稼働しているため、電力問題は気にしなくてよさそうです。
とりあえず、施設巡回警備用ロボットを数体外へと出して、今のキヴォトスの時刻が何時なのかを確認しましょう。この施設内と外で日付にズレが生じている可能性もありますし、先生とゲーム開発部がここに訪れる時期が何時なのかの予測もしなければなりませんから。
その間に、これから先、起きる可能性がある未来の一片を知る私がどうすればいいのかを考えましょう。
第一目標はアリスの生存かつ無も亡き女王としてではなく、一人の生徒「天童アリス」として
第二目標は先生の生存、先生が生存していなければキヴォトスで起きる問題全てが解決できませんし。
第三目標はゲーム開発部等ミレニアムに在籍する多くの生徒たちの生存
第四目標は・・・いえ、目標など関係なくアリスと関わる人全員の生存ですね。
とにかく全ての事柄において、誰一人として欠員を出してはいけませんね。
問題なのは、未来を知る私の存在がどんな変数となって、大きな影響を与えてしまうのか。アリスと先生の生存ができても、他の生徒のヘイローが砕けてしまう可能性は十分にあります。
ゲームのように、装備も何も引き継げないニューゲームであっても、辿る未来が同じであればどれだけ楽なことだったか。分岐が無数にあり、その分岐が何処に散りばめられているのかわからない、そしてその選択が未来にどんな影響をもたらすのか誰にも分らない。
いっその事、一度辿ったチャートを完全に無視してしまうのも手なのかもしれません。
下手にあれこれと考えて模索するよりも、結果としてより良いエンディングを迎えることができるかもしれません。それと同時に、最悪な結末を迎えてしまう可能性もありますが。
そうと決まれば完全にオリジナルで新規のチャートでハッピーエンドを掴むことにしましょう。
その為には何が必要なのか、それは当然アリスの隣に立つためのボディです。べ、別にただアリスの隣に立ちたいからではなく、侍女たるもの、いつでもアリスを守れるように、その身を挺することができる状態が必要だからですよ?
あまり、こういうものと言うべきではないのかもしれませんが、名もなき王女の器に成れずに放棄された、AL-1Sの製造時に作られた予備パーツ、これらを繋ぎ合わせれば私が入る機体としては十二分な物ができるはずです。
オリジナルのチャートで進めていくとして、問題はゲーム開発部とアリスを何時出会わせるべきなのか、そして私が接触するべきなのか。私が知るアリスは、ゲーム開発部と出会って、悪い意味でランキングトップを取ってしまったあのゲームをやったことによって、あの性格と人格が形成されたわけですから。
アリスの身を案じるのであれば、やはり、アリスのことを見つけるのは、ゲーム開発部の彼女達である必要性があります。ここは、私が関われる要素が少ない以上、アリスに近づく相手を選別する程度しかできません。
今更ながら、プレイしただけでアリスに感情を芽生えさせる程のゲームとは一体なんなのでしょうか?もしやあのゲームには生命を宿らせるといった、摩訶不思議な力でも隠されていて・・・いえ、ユズやモモイ達の事を考えればそんなことは絶対にありえませんね。
ひとまず、ゲーム開発部と先生、彼等が来るその日までここで出来る準備を進めましょう。
新しい機体に体を馴染ませていたある日、施設内に侵入者を知らせるアラートが起動した。最も、設備自体が古くなっているため、大きな音を鳴らすようなアラートは既に機能しなくなっていて、システムの通知程度のものだったが。
私はすぐに施設全体のカメラを確認し、誰が来たのかを確認する。
「やっと、来てくれたんですね」
小さくて生意気なモモイ、一見確り者だがその実態はなミドリ、そして。
「・・・先生、待っていましたよ」
先生が私達の前にもう一度現れてくれた。
「ここからが、大切です。もう一度、ハッピーエンドを掴み取ってみせます」
私はマイクの電源を入れ、扉の前に立つ先生達に話しかける。
「接近を確認。
対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格があります。
対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格があります。
対象の身元を確認します・・・シャーレの先、訂正女たらし朴念仁、資格があります」
本当は専用な装置がやっている部分を私が主導で行う。カメラ越しに混乱している才羽姉妹と、朴念仁と呼ばれた意味が分からずに困惑して居る先生の姿。
「ふふ」
久しぶりに三人の姿が見れたことに微笑むと、一つレバーに手を乗せる。
「下部の扉を開放します」
レバーを引くと、それに連動して三人が立っていた場所の床が開いた。
あの扉は本来資材搬入用の扉であり、人が出入りするための扉ではない。それでも、あの扉を使って来てくれる方が、彼等がアリスの元へと確実に辿り着いてくれる唯一の扉なのだ。
ただ、資材搬入用の扉ということもあり、人が出入りすること等は一切想定していない。モモイとミドリは無事であるとは思いますが、先生は・・・まぁ頑張ってください。
「しばしのお別れですね。アリス」
今のアリスは内部データの欠損により、自分の役割を忘れてしまっている状態。そんな状態だからこそ、モモイ達の影響を良くも悪くも、全てをその身で受け止めることができた。
私が知るアリスになるためには、この工程は決して飛ばすことはできないのです。そして、そんな場面に私が居たら、名もなき王女としての道を歩んでしまうかもしれません。
だから、私がアリスの前に現れるのは、彼等がアリスを連れてここへと戻って来る、その日に。その日までは私の姿を隠しましょう。
「お願いします。先生、モモイ、ミドリ、そしてユズ」
明らかに不自然な形で現れることになってしまいますが、どういう言い訳をしましょうか。
監視カメラの映像は、先生達がアリスの元へと近づいていく様子を映す。モモイとミドリがアリスに興味を示して、しげしげと見て行く。ようやくアリスが目を覚ました、のですが。
「あれ?」
何か様子が決定的におかしいのです。
何故アリスがバンザイの様に両手を広げて挙げているのでしょうか、何故あそこまで純粋無垢な笑顔を振りまいて居るのでしょうか、明らかに様子がおかしいのです。
「ああ、このカメラ音を拾ってなくて何を言っているのか全く分かりません!!」
多少のリスクは承知ですが、何が起きているのかを確認するためにもアリスの元に行くしかありません!
私は急いで、アリスが寝ていた場所へと向かいました。そして、あと少しでその部屋へと到着する所で、大きな声が聞こえてきました。
「うわ~ん!!モモイもミドリも、先生も忘却呪文をかけられてしまっています!!」
一瞬、私の思考はフリーズしました。けれど、この声と話し方、そしてその言葉から何が起きているのか、それが一気に繋がりました。
「はぁ、全く世話の掛かるお方です」
私はため息を漏らしながら、隠れるのを辞めて、アリス達の居る部屋へと入った。
「アリス、その人達に忘却の呪文はかけられていませんよ」
「うわ!?新キャラ登場!?」
「この子にそっくり?」
まるで初対面の様に、いえ彼女達にとって今の私達は初対面であることに間違いはありませんね。
「も、もしかして、ケイですか!?ですが、アリスが知るケイとはカラーバージョンが違います」
「アリスの記憶にある私のボディと今のボディは違いますからね、誤差の範囲です」
”えっと、そっちの子がアリスで、君がケイだね”
先生は私達の会話内容から、私達の名前を把握して、言葉を続けようとしたが、私の手でそれは静止させた。
「アリス、今の私とアリスの身に起きている状況を説明します」
「ケイ、一体何が起きているのですか?モモイやミドリ、先生がアリスの事を知らないと言っています。それに、この場所に覚えがあるのですが」
「そうでしょう。そして、アリスに分かりやすく、モモイとミドリ、先生に今の私達の状態を適切に伝えるには、この言葉以外ないでしょう。
おきのどくですが
ぼうけんのしょ1ばんは
きえてしまいました。」
アリス、モモイ、ミドリ、先生に会心の一撃!!
「うわ~ん!!それってつまり、アリスとモモイ、ミドリ、ユズ、先生とケイのゲーム開発部の皆での冒険譚がなくなっちゃったってことじゃないですか!!」
「はい、これまでアリスが戦ってきた物語全てが無かったことになっています」
「うん、だから、なんで私の名前知ってるの!?」
「私の名前も」
名乗っていないはずの自分達の名前、それを知っていた事に二人は驚きの顔を見せているが、先生は真剣な表情をしたままだった。
「ケイ、どうして冒険の書が無くなってしまったのですか!あれはアリスにとって、ゲーム開発部、特異現象捜査部、皆の掛け替えのない大切な物です」
「私もどうしてこのような状況、冒険の書が無くなってしまったのかはわかりません。もしかしたら、もう一度最初から冒険の書を書き記さなければなりません」
無くなってしまった理由は本当にわからない。けれど、もう一度冒険の書を書き記すことはできるはず。起きてしまったことは仕方がないことだから、私達は前に進むしかないのだ。
「ですが、アリスにはもう一度あれ程の大冒険ができるとは思えないです」
「アリス、確かに今のアリスは強くてニューゲームというわけではないかもしれません。ですが、一周目とは大きく違うことがあるでしょう?」
「?それは一体?」
「私がアリスの隣にいます」
一周目とは違う、私の存在がアリスにとって大きな心の支えとなる。そして、アリスも私の心の支えになる。
「あのぉ、なんかいい感じに話している所悪いけど、結局どういうことなの!?」
「ゲーム的な例え話をしているけれど・・・」
モモイとミドリは口を挟む。
”冒険の書がなくなったり、ニューゲーム…可能性の域が出ない話だけれど、もしかしてタイムリープしている?”
所々変な所があるお方ですけれど、こちらの事を察してくれる能力が高いのには本当に助かります。
「さすが
”うん、何かおかしくなかった!?」
私は、先生にこれから先起こる可能性があった未来の一つから、原因不明で過去であるこの時代に来てしまったこと。その際、アリスがゲーム開発部へと入り、内容は伏せつつも紆余曲折あり、私もミレニアムの生徒に成った事を話した。
”なるほど、それは大変なことになったね”
「はい、アリスも私と同じように記憶を有したまま居る事は嬉しくも大きな誤算です」
「え~と、よくわからないけれど、未来で仲間だったアリスがゲーム開発部の部員になってくれるってことでいいんだよね!!」
「はい!!アリスはもう一度ゲーム開発部の勇者になります!」
「ゆ、勇者?」
”中々、独特な子だね”
「はぁ、結構大事な事を話していたのですが、モモイ、あなたという人は・・・全く」
何もわかっていないモモイにため息を漏らしつつ、このやり取りができていることに、心の何処かで安堵しました。
「えっと、ケイちゃん?」
「ケイで構いません。どうかしましたか、ミドリ?」
「ケイはゲーム開発部に来るの?」
「そうですね・・・」
アリスの傍に居るという点ではゲーム開発部に居るのが正解でしょう。ですが、前の世界で経験した事を踏まえると、彼女達とは早い段階で接触している方がいいとも思えます。
「残念ですが、私は特異現象操作部へと入部するつもりです」
「え?得意操作?そんな部活あったっけかな?」
「お姉ちゃん、多分字が違う」
”それも、未来を知るから?”
「はい」
調月リオ、明星ヒマリこの二人には早い内に出会って、アリスと私が驚異的な存在ではないことを認めてもらわなければなりませんし。
この時間軸のモモイ、ミドリ、先生とのファーストコンタクトには予想外のことが起きつつも、良好な関係を築くことができそうだった。
「ところでさ・・・」
「どうかしましたか?」
「アリスちゃんの格好どうにかならないかな・・・流石に裸のまま外に連れ出すのは・・・」
モモイの指摘に場が凍った。
「・・・先生」
”うん、どうかしたかな?”
「今すぐ向こう向いててください!!私が良いと言うまで絶対にこっちを見ないでください!!」
”はいぃぃ!!”
先生を明後日の方向を向かせ、モモイが持ち込んだ予備の下着を着せ、適当なものを羽織らせて隠すのでした。
問題はありつつも、ゲーム開発部と先生と合流することが出来た私達は、一度ミレニアムに在るゲーム開発部の部室へと帰還しました。
この場合の私達は帰還と言っていいのでしょうかと余計なことを考えつつ、ミレニアムの監視カメラと盗聴器の数を考えれば、すでに私達の存在はリオとヒマリ、ヴェリタスの問題児達には露見していると考えていいはずです。
加えて、アリスの事を考えれば、アリスがもう一度初対面の振る舞いをするのは不可能といえるでしょう。
これから先のことを考えつつ、サイズが近いモモイとミドリから制服を一時的に借り、身に着けるとそのまま新しい制服の購入申請を出して、これからやる事を話し合います。
「さて、私は一週目の時はこのタイミングで居ませんでしたので、詳しくわかっていないのですが・・・どうして、ゲーム開発部のあなた達があの廃墟に?G.Bibleを探している事は知って居ますが・・・」
あのファイルは1MBもないファイルですよ?なんでこんなものを求めてあんな場所まで。
「ああそうだ!!アリスとケイの件で忘れてたけど、私達「G.Bible」を探しにあそこに行ったんだった!!」
モモイの反応からして、本当にG.Bibleを探すためにあの廃墟へと来ていたようだ。だとして、本当に何故あのファイルがゲーム開発部にとって必要なのでしょうか。
「あの、そのG.Bibleって一体何のファイルなんですか?あそこに存在しているって程度しか知らないですし」
「昔、ミレニアムに所属していた伝説のゲームクリエイターが作ったとされる神ゲーマニュアルだよ!!それさえあればゲーム開発部が廃部になるのを回避できるはずなんだよ!」
え、今なんて言いました?
「え?廃部?なんで廃部の危機になっているんですかゲーム開発部は!?」
「部員が三人だけで規定数に達していないことと、実績不足で」
「実績不足って・・・のちにあれだけの事をやるゲーム開発部が実績不足なことが在りますか・・・」
キヴォトスの危機に、デカグラマトンの一件、本来C&Cが出張るはずの場面で出てきて結果を残しているあなた達が実績不足なことが在りますか?
「?そういえば、ユズの姿が見えませんね・・・となれば」
部室に置かれていたロッカーを開ける。内側から抵抗されましたが、そんなものはお構いなしに開ける。
「やはり、ここに居ましたかユズ」
「え、ど、どうして私の事を」
ロッカーの中で隠れていたのに見つかり、自分の名を知って居たことにユズは驚きを見せる。
「なんか、アリスとケイの二人は未来から来たんだって!!」
「大っぴらに言うことではありませんが、そういうことです」
「ええ?」
ユズは事態が分からずに困惑する。
「一先ず、部員問題はアリスが加入することで最低規定人数に達しますよね?」
「うん、そうだけど」
「そうなれば、急いで学生証を取得しないといけませんね。ですが、今から急いだとしても」
正規の手続きを踏んだとして、転入するためには試験を受けなければならない。アリスがその試験をパスできるかと問われれば・・・
「その点は大丈夫!!もう手は考えてあるから!!」
「モモイのそれ、信用できないのですが」
「酷い!!」
「ままぁ、学生証の件は私に任せてよ」
「心配が残りますが、わかりました」
モモイがどんな手段で学生証を用意するのかはわかりませんが、前の世界でもアリスの学生証の準備したのがモモイとミドリと考えれば、この場では二人に任せるのが適切なのでしょう。
「それと、少しパソコンとプリンターをお借りしますね、後封筒も」
「?それくらいなら別にいいけど」
すぐにパソコンをカタカタと響かせて、一枚の手紙を出力させて、それを封筒に入れる。そして、それを先生へと手渡した。
「これを、特異現象捜査部和泉元エイミに渡してください。本当ならば、部長に手渡しができればいいのですが、彼女よりエイミの方が遭遇する確率は高いでしょう」
”これは?”
「入部届けと、協力を要請する手紙ですね。これから先、ミレニアムにはお世話になりますし、良好な関係を築きたいですから」
”わかった、しっかりと届けておくよ”
さて、リオとヒマリと話ができるのはもう少し先になりそうです。向こうも、こちらがコンタクトを取ろうとしている事を知り、どう対応するべきなのか考えるでしょうから、しばらくの間時間ができますね。
「ケイ、アリスは光の剣を手に入れたいです」
「・・・ああ、そうでしたね。今の私達は銃の一丁も持っていませんから」
引き継げたのは、記憶と経験だけでそれ以外のなにもかもを引き継げていない。当然、私達が使っていた武器全てもないのだ。
「その光の剣って?」
「宇宙戦艦への搭載を想定した、超電磁砲、いわゆるレールガンを個人携帯用に改修したものです」
「レールガン!?」
「それ以上に宇宙戦艦って!?」
”ロマンがあるね”
「いくらミレニアムでも、宇宙戦艦用のレールガンだなんてある訳が・・・」
普通に考えれば無いと思うのが普通でしょうが、ここはミレニアムです、そしてロマンを異様に追及する集団が居るのです。
「あります!!アリスはエンジニア部の部長でマイスターさんから譲り受けたのですから!!」
「エンジニア部で部長のマイスターって言ったら・・・」
「「ウタハ先輩!?」」
”ミレニアムって宇宙戦艦も作ってたんだぁ”
相変わらずユズは部室に引きこもる選択をし、私達は少し離れた場所にあるエンジニア部の部室へと向かった。
”すっごく広いね”
「エンジニア部はミレニアムでも一、二を争う部活動って聞きますし、他の部活動と比べて場所を取るそうですから」
エンジニア部が作ったであろう製品の数々の間を通り抜けていき、エンジニア部の彼女達が集まっている所へと歩く。
「あ、居た居た!」
「ウタハ先輩!!」
「ん?これは、随分と珍しいお客さんだ」
スパナを握っていたウタハは、それを作業台の上に置き、手にしていた手袋を外した。
「君達は確か、ゲーム開発部の子達と、見慣れない子が二人、そして・・・シャーレの先生だね」
”初めまして、シャーレの先生をしている者です”
「ああ、初めまして。白石ウタハだ、ここエンジニア部の部長を務めている。それで、わざわざこんなところまで来るとなれば、エンジニア部に仕事の依頼とお見受けするが」
”ああ、でも、それは私じゃなくてこっちの子達だ”
「君達がか」
ウタハは私の方を見る。
「君達は?見た所、姉妹、それも双子かな」
「アリスは、天童アリスです!!」
「ケイです。初めまして」
「こちらこそ」
何度やっても、過去に会ったことが在る人に初めましてと挨拶するのは慣れない。
私は話せる範囲で事情を話して、アリスが銃を必要としている事を伝えた。
そこからは、まぁ、あっという間な物で、アリスは再び光の剣 スーパーノヴァを握る事になった。
「ふむ、さて、そうなると問題は」
アリスの銃は決まったが、別の問題が生じていた。
「私の銃、どういたしましょうか」
私の銃、エアレンデル:ルミナス・ノヴァはかなり後になって製造されたものだ。
「先程も話したが、あのレールガンは年間予算の70%を消費して作ったものだからな、そう簡単に量産できるものではない。材料と予算さえあれば今すぐにも取り掛かるのだが」
「予算の工面ができればよかったのですが」
金さえあれば作る事ができる。けれど、それだけの資金は全くないのだ。
「ひとまず、予算の工面ができるまでは他の銃を使用しましょう」
「それがいいだろう、それに案外その銃が本命になるかもしれないからな」
「いえ、それはありませんので」
加えて、エンジニア部のやらかし話はよく耳にしています。彼らが作った銃の多くには変な機能が付いていますから、後日私が自作した設計図を渡して、変な付け足しはしないようにお願いしましょう。
「それで、そのあたりにあるものは適当に持って行っていいが・・・彼女のことを考えれば」
ウタハは拳銃やらサブマシンガンといった、軽い銃たちには目もくれず、重量のあるマシンガンやスナイパーライフルといった大型の銃を持ってきた。
「軽いものは性に合わないと見た」
「さすがはマイスターですね」
並べられた銃の中から、私は一丁の大型狙撃銃を手にした。
「重いですね」
「やっぱり、君もそれを軽々と持ち上げるか」
「お姉ちゃん、あれ持ち上げられる?」
「無理無理!!絶対無理だよ」
アンチマテリアルライフル、いわゆる対物狙撃銃であり、銃弾を扱う武器の中であれば破壊力と貫通能力はこれを超えるものはないだろう。最も、それを実現するためには、重量と無駄に大きな銃身と弾丸を持たなければいけないため、個人で取り回すのは困難を極める。
手にした狙撃銃を片手で振り、取り回せるかの確認をするが、この体はアリスと同じパーツを使用している。アリスの光の剣よりも圧倒的に軽い銃など容易に取り回せる。
「本来片手で持つようなものではないのだが」
「そんな感じだと、二丁持ちもできちゃいそうですね」
「対物狙撃銃二丁、ロマンだね」
「実用性あります?それ」
長物2つなんてやる利点を一切感じないが、まぁそれはこの面々ならばやりかねないか。
「12.7x99mmを使用するセミオート式。マガジンサイズは十発、そこらの対物狙撃銃と比べて装弾数は多い方だ」
「セミオート式ですか」
セミオート式、つまり引き金を引くだけで排莢から次弾の装填が終わる。それは対物狙撃銃の持つ驚異的な威力が短い間隔で襲ってくることになる。
「なぜ、セミオートに?」
「狙撃を要求される場面は、何も目標が一つだけとは限らないからな」
「それは、一丁で遠距離から7~8人を即座に制圧することができるコンセプトで作りました」
「無論、セミオートによる弊害も考慮して調整を行っている」
狙撃銃ではボルトアクション、セミオート、フルオートによる差はとても大きなものになる。
高精度な狙撃をするのならば、ボルトアクション。弾幕を張るのならばフルオート。
この違いは、銃弾を撃ち出した直後に生じる、小さなパーツ達が稼働して次の弾薬を薬室に送り込む動作にある。フルオートならば引き金を引き続ければ、弾倉内の弾が無くなるまで打ち続け。ボルトアクションならば、ボルトを前後させるまで新しい弾薬は送り込まれない。
一見、連射能力があるフルオートがいいように思えるが、狙撃銃の用途は遠距離からの狙撃。僅かな誤差が大きなズレとなり、フルオートはその誤差を誘発しやすい欠点がある。だからこそ、パーツの少ないボルトアクションが高精度な狙撃を行える。
そして、セミオートはボルトアクションとフルオートの中間程度の位置づけとなる。
「・・・これ、邪魔ですね」
私はレールに乗せられていたスコープを取り外して、近くにあったテーブルの上においた。
「まぁ、スコープは一時的なものを取り付けていただけだから、必要に応じて取り替えるといいさ」
「多分、つけることはないでしょうね。アリスの隣で使うのならば、むしろスコープは邪魔です」
「その距離だと、想定した射程をかなり下回ることになりそうだが、それに取り回しも」
「それを言ってしまっては、レールガンももっと遠距離を狙う想定ですよね?」
そもそも宇宙戦艦に取り付けることを想定していた兵器、人が扱う程度の距離を想定しているワケがないのだから。
「まぁ、それもそうだな」
「はい、これをお借りします」
「ああ、今スリングを用意するよ」
こうしてアリスの光の剣、そして私の一時的に使う銃が手に入りました。これで、あとは学生証さえ手に入れば、ミレニアム内で活動していても不審がられることはなくなりまし。
「あの、何をしているんですか?」
「何をって、そりゃ」
直後、コトリが弄っていた大量のドローンが一斉に離陸した。
「隣にエンジニア部専用の実験部屋がある。そこで試練を受けてもらおうじゃないか」
どうも、一筋縄では行かないようです。
隣の部屋である実験室で私とアリスは、いくつものドローンたちを前にして武器を構える。
「ケイ、いけますか?」
「慣れない武器ですが、合わせます。ですが、以前のような支援ユニットはありませんので」
「わかっています。パーティーメンバーの武器が変わることはよくあります!!」
薬室に弾薬を送り込み、接近してくるドローンたちを見る。個々の性能はそれほど高くないが、問題はその数にある。まともに一体一体相手にしていれば、処理が追い付かず接近を許してしまう。
「アリス、行きます!!」
けれど、その数の差はアリスの光の剣の前では意味をなさない。
「光よ!!」
撃ちだされるレーザー、射線上に居たドローン全てが一発で破壊されていく。そして、その射線上からわずかに外れたドローンを私が撃ち抜く。
アリスの光の剣が次弾を撃つまでに必要なエネルギーを再充填が終わるまで、私がその隙をカバーする。
いちいちスコープを覗いていれば、アリスへカバーが追い付かない。すべての相手を同時に視界にとらえて、撃ち漏らしがないようにする。
「驚いた」
アリスとケイの戦っている様子を見たウタハは思わず言葉を漏らした。
”驚くことなのかい?”
「ああ、二人とも驚異的な筋力をしていることはわかっていた。それでも、あの二人がここまでのものだとはね」
ウタハは思考する。
二人の事は多少話を聞かせてもらっている。ミレニアム郊外で行く当てがなかったところを保護してもらい、そのままミレニアムの生徒になるために今はその手続きをしていると。
尤も、この話のほとんどは嘘であると思っているが。
なぜそう思うのか、それは彼女たちが光の剣と呼んでいるレールガンが答えだ。
宇宙戦艦に搭載することを想定した兵器であるあれは、クレーンを使って初めで移動ができる。それを生身で容易に持ち上げることができる二人、最低でも1トン以上と推定される握力がある。この時点でこの二人が普通の人でないことは明白。そして、発射時に生じる反動を受け止めたうえで、バランスをとれている。
少なくとも、二人の体は普通の肉体では・・・いや、機体はそこらのアンドロイドとも違うことがわかる。
大方、ゲーム開発部が郊外で戦闘用のアンドロイドあたりを見つけて、どうにかゲーム開発部の仲間に迎え入れようとしているところまでは予想がつく。
だからこそ、疑問を覚える。
ミレニアムで質の良い銃を手に入れるためにエンジニア部へと来る。ここまでは何も不自然な話ではない。が、そこから先がおかしいのだ。
アリスは初めからレールガンを光の剣といい、当たり前のように、それが持ち上げることができないと思わずに、軽々と持ち上げている。ケイもまた、同等のスペックを有していて、多少想定は違えど似たような武器を所望している。
二人とも、自分が使える武器をわかっているような感じがした。それも、一般的な銃火器からは並外れた性能をしたもので。
これだけの性能を有している兵器をキヴォトスで手に入れることができるか?いや、無理な話だ。あのレールガンはエンジニア部の一品物で、他で似たようなものがあるわけもない。だからこそ、二人は自分たちが求める銃は初めからここにあると思っているようだった。まるで、メンテナンスを頼んだ愛銃を取りに来るように。
「・・・なかなか興味深い子たちだ」
ロマンにリスクはつきものだ。
離れたところでアリスとケイの戦い方を見るが、やはりその戦い方はとても初めてのようなものとは思えないものだ。
レールガンは個人運用を想定していないため、取り回しなど最悪なものになっている。けれど、その最悪な取り回し以外の全てが扱いなれた人のそれだった。
ケイもまた、慣れない武器を扱っているはずなのに、アリスのサポートを完璧に行って見せている。最初に所望した武器も、支援を想定したものだったあたり、アリスの支援を主目的としているのだろう。あれだけの能力を有していながら、ほかの機体を支援することにスペックを極端に振っていることには違和感を覚える。
「ねぇ、ミドリ、スコープ覗かないであんなにあてられる?」
「ムリだよお姉ちゃん。アンチマテリアルライフルだよあれ!?普通立って撃つものじゃないし反動で私なんか吹き飛ばされちゃうよ!?」
やはり人間離れしているスペックだが、二人はそれを隠そうという素振りも全くないのだから本当に謎である。
「これでいいですか?」
私達に向かってくるドローンが一台もなくなった所で、私達のことを見ているウタハたちのほうを見てみる。
「ああ、もう廃棄予定のドローンは残っていないからな」
妙にドローンを雑に破壊させていると思ったら、あれは全部廃棄用のドローンだったのか。ひとまず、これでエンジニア部の彼女達には納得がいってもらえたようで、とても満足そうな表情をしていた。
これで、このレールガンもとい光の剣はもう一度アリスの手に来ました。
「パンパカパ~ン!!アリスはクエストを達成しました!!」
アリスは嬉しそうに光の剣を持ったまま踊・・・
「アリス!?それが周囲にぶつかったら危ないですから、下げてください!!」
やっぱり、アリスが持つべき武器は、光の剣・スーパーノヴァです。
夜も更け、多くの生徒達が寝に入った頃、ミレニアムの一室で一人の少女が頭を抱えていた。
「はぁ、とんでもない厄ネタが舞い込んできたわね」
壁一面に配置されたディスプレイには、ミレニアムの監視カメラが撮った映像が映し出されていた。そして、その映像はすべて二人の少女が共通して映っていた。
「彼女達が廃墟に行った所までは把握していたけれど・・・まさかここまでの事態になるだなんて」
廃墟に行ったことに対する罰則をどうするべきかと考えている矢先、彼女達が廃墟から持ち帰ってきたのは、まさかの二人の少女。しかも、無許可でミレニアムの敷地内に連れ込む始末。
ここまでならば、ユウカやノア、他のセミナーの子たちに知らせて対応させるべきだったのだが、問題は妙に落ちついているほうの少女。
彼女は防犯カメラには目もくれず、ミレニアムのいたるところに設置されている隠しカメラにだけカメラ目線で何度もこちらを見てきていたのだ。
当然ながら、この隠しカメラの存在を知っているのは私だけ・・・ヒマリならば数個の隠しカメラは把握しているでしょうけれど・・・
どう手を打つべきかと考えていれば、彼女たちはエンジニア部の部室へ向かったかと思えば、そこにある兵器と銃を手にして、ドローンと戦い始めた。
その結果から、二人の少女が人ではないことは確定的だった。
問題は、この二人が何の目的をもってしてミレニアムに来たのかが全く分からないことにある。
「なかなか面白いことになっていますね」
「これのどこに面白い要素があるのかしら?」
頭を抱えていると、そこに一人の少女が入ってきた。
「未知への探求、それはミレニアムの信念でもあるのですから。未知の方からこちらに来てくれることほど喜ばしいことと、楽しいことはないでしょう」
「その未知が私達にどんな影響をもたらすのかわからない以上、楽観視をすることはできないわ」
「そうですか?一応、私のところにはこんなものが来ましたけど?」
彼女は、ヒマリは一枚の封筒を取り出した。
「それは?」
「大人しいほうの少女、ケイから私が調べていることについて協力したいことの申し出と、リオ、あなたへの手紙ですよ」
持っていた封筒をリオへと手渡し、リオは中身を確認する。
「はぁ」
手紙を読んだ後のリオは思わずため息を漏らしてしまう。
「なかなか面白い子達ですよね」
「これのどこがおもしろいのよ」
手紙の中身を要約すれば、
・あなたが既に私達の存在に気が付いていることはわかっています。
・大方私達の扱いに困っていて、何者なのかを調べようとしていますよね。
・これを読んでいるころには、私達が戦闘用のアンドロイドと当たりを付けていますね。
・これからゲーム開発部が行った場所について調べようとしているでしょう
・なので私の方から答えを提示しに行きます。
・これを書いた日の翌日の深夜に伺います。拒否権はありません。
「これで頭を抱えないほうが無理があるわよ?」
「モモイ?」
「はい」
私は今、ゲーム開発部でモモイを正座させている。そして、このことにはミドリ、ユズ、アリス、先生は一切の助け舟を出していない。
「私とアリスの生徒証を用意してくれたことには感謝しています。そのうえでもう一度聞きます、何処の誰に頼んでこれを用意しましたか?」
「同級生のマキちゃん経由で、ヴェリタスにお願いしましてセミナーの生徒名簿をちょっと弄ってもらって、元々在籍していたことにしてもらいました」
「なにハッキングやってもらってるんですか!?」
やり方が圧倒的に問題すぎる方法で解決していたのです。前の世界線での私は、ミレニアムへの転校生として入学したため、一応は正規の手順を踏んでいる。尤もセミナーがあれこれ融通した結果のものであるが。ここに来て初めてアリスが不正入学を知ってしまい驚愕を隠せずに居る。
よくこれで今まで問題になっていなかったと思ったが、よくよく考えてみれば、セミナーのトップであるリオがアリスを抹消しようと動いていたのだ。そして、アリスは他のミレニアム生徒達に好意的に受け入れられていた当たり、仮に不正入学ということがばれたとしても、ミレニアム側に負い目があったからうやむやになっていたのだろう。
だが、流石にこの状況でその不正入学という事実はかなりまずい。リオ相手に説得をしに行くにも関わらず、爆弾級の不安材料を用意されてしまったのだ。
「はぁ、ひとまずこの事実がばれない様に細心の注意をしましょう。バレたら収集がつかなくなって、私とアリスは退学、ゲーム開発部も共に退学、ヴェリタスの方々にも被害が行くでしょう」
モモイの軽率な行動に頭を抱えていると、ゲーム開発部の部室へと近づいてくる足音が聞こえてきた。
「皆さん、今の話題は他言無用ですよ」
「わかってます」
全員でこれから来る相手に身構える。そして、部室の扉の戸が叩かれる。
「モモイ居る?」
ユウカが部室へと入ってきた。
「アリス、事前に話したとおりです」
「はい、アリス頑張ります」
ユウカがゲーム開発部に目をかけていることはわかっていたため、ゲーム開発部に何かあればユウカはすぐに飛んでくると踏んでいた。だからこそ、アリスにはユウカとの会話はどうにか乗り切ってもらえれるように打ち合わせをした。
本当ならば、未来の事を話せれば楽なのですが、あまり未来のことを大っぴらに話してしまっては影響がわかりません。だから、仮に話すとしても、鋼鉄大陸で共に戦った仲間達だけに留めるべきです。
「先生いらしていたんですね?」
”うん、まあ別用でね”
「そうですか。すみませんが、これからセミナーとしてゲーム開発部の子達と話をしなくちゃいけないので」
”うん、お仕事頑張って”
「というわけで、モモイ?ゲーム開発部に新入部員が入ったって話を聞いたけど?本当のことなのかしら?」
先生との会話から流れるようにモモイの方を見て問い詰める。
事前に話を聞いていたためわかっていますが、正直に言ってアリスが入る前のゲーム開発部の状況を考えれば、新入部員が入ることはほぼ絶望的な状況。そんな状況で新入部員が入ったと聞けば、疑いたくなるものだろう。
「うん入ったよ!!アリスちゃんが」
「アリス?」
ユウカは私達の方を見る。
「えっと、どっちがアリスなのかしら?」
「アリスはアリスです!!」
「ケイです。よろしくお願いします」
「あなた達随分そっくりね」
「まぁ、双子みたいなものですから」
「そう、それにしても・・・こんなに可愛い子たち二人を私が知らなかったなんて信じられないわね」
ん?なんか今変な事が聞こえたような気が。
「えっと、アリスちゃんがゲーム開発部に入部したって言っているけれど、ケイちゃんもゲーム開発部でいいのかしら?」
「いいえ違います。私はヒマリの活動のお手伝いをするつもりです」
「ヒマリ?もしかして、ヒマリ先輩のことかしら」
「ええ、ユウカが考えているヒマリであっていますよ」
「はぁ、ヒマリ先輩のお手伝いって・・・となれば、ヴェリタスってことね・・・」
ユウカは物凄く苦虫を噛み潰したかのような表情をした。
「何やら、ものすごい表情になっていますが、ヴェリタスになにかあるのでしょうか?」
「まぁ、色々とあるのよ」
「あ~、そういえばヴェリタスって非公式サークルだっけ・・・」
ヴェリタスが非公式?あのヒマリがミレニアムで非公式サークルをしていたと?いえ、考えてみればわかりやすいことですね。リオと常日頃から対立する関係であるのならば、ミレニアムという組織に対立する組織、つまり否認化のサークルとして活動していると。
そして、ユウカはセミナー側の人間であるから、立場上ヴェリタスのサークル活動を認めるわけには行かないと。
と言うか、この時点でヒマリは特異現象捜査部ではなかったのですね。あれ?そうなれば、エイミとは・・・今は、深く考えないでおきましょう。
「まぁ、ケイがゲーム開発部の一員でないことはわかったわ。それじゃあ、一応聞くけど、この場にいるのは?」
「アリスがここにいるからです」
「よしわかったわ」
それでいいのか?
その後はアリスが事情聴取を受けていく。私はゲーム開発部の部員ではないため、アリスほどの事情聴取は受けなかったものの、アリスの受け答えは心配が残るものだった。
そして、どうにかゲーム開発部の廃部は一時的に免れる事はできたものの、一難去ってまた一難。
「結局人員を揃えても変わりませんでしたね」
「ううう、どうにかしてミレニアムプライスでみんなを驚かされるようなゲームを作らないと」
ゲーム開発部の部員数問題は、最低限解決したものの、今度は実績がなければ廃部になってしまうと突きつけられてしまった。
時期を考えれば、おそらくこれはリオが介入した結果ではなく、本当にだいぶ前からセミナー内で議題に上がっていたと考えていいだろう。
「ねぇ!!二人が来た世界だとゲーム開発部は存続していたんだよね!!どんなゲームを作ってたか教えて!!」
モモイは初めから答えを見るかのようにこちらに聞いてきたが。
「知りません。前の世界で私はその時活動していませんでしたから、知りようもありませんし」
「アリスはデバッカーでしたので、詳しい作りは知りません!!」
「だめじゃん!!」
モモイは絶望したかのようにその場でうなだれる。
「モモイ、アリスは思うのです。ゲームで最初から最強の力を持っていても何も面白くはありません」
「え?それは、まぁ、それじゃあ楽しむ要素が何も」
「ですが、ゲームは何回初めからやっても面白いです。それは、前回とは違ったプレイをして全く別のエンディングを迎えられるからです」
「えっと、つまり?」
「前回のプレイした記憶があるアリスが、別のシナリオを描いてより良いエンディングを目指します」
「さっきも言いましたが、これに関して私は何も知りませんから、口出しできませんので」
ひとまず、アリスが前の世界の知識も使ってゲーム開発部を廃部させないように尽力する事になった。
私は、ゲーム開発部ではないので下手に協力することもできないので、今のうちにヒマリとリオとの話をつけることにしましょう。
ゲーム開発部の事は先生に任せて、私は予告した通り、リオとヒマリが居る場所へと突撃しました。
「事前に連絡した通り、来ましたよ」
「本当に来たのね」
ミレニアムの校舎から少し離れた場所で、監視カメラには映らない隠れ家のような場所で私たちの密会は行われる。
「改めて自己紹介を、ケイです。一応初めましてですね、調月リオに明星ヒマリ」
「ここの下水のことに関してはともかく、このわたくしのこともご存じなのですね」
「げ、下水?」
「気にしないで、ヒマリが勝手に言っていることだから」
「ええ??」
下水の意味が一瞬わからなかったが、話の流れ的にそういうことなのだろう。ええ??
「下手に話が湾曲して伝わっても困りますので、簡潔に申し上げます。私とアリスは、調月リオあなたと対立し、最終的に和解して共に強大な敵を打つ為に手を取り合った世界線から来ました」
「うん、ちょっとまって、予想の遥か斜めを行く内容を言われても困るのだけれど?」
「知りません、それが事実でそれ以上でもそれ以下でもないのですから」
「つまり、あなたは未来からミレニアムの生徒という事で良いのでしょうか?」
「いえ、正確には今現在からしたら、あり得たかもしれない世界線だった未来の私とアリスが、この時代に記憶だけをこの時代の私達にインストールされたと表現するのが適切です」
「なるほど」
細かいかもしれないが、私とアリスはどういうわけだか人格データと記録メモリに残されたデータが、この時代の私達にインストールされた。だから、私というよりアリスの体は未来から来た体ではないのだ。
「では、だったと言うのはどういうことでしょうか?」
「すでに私とアリスが経験した世界線からは大きく逸脱しています。前の世界線のこのタイミングでは私は活動していませんでしたから。それに、私がこのことを説明するよりも、ヒマリのほうがご存じなのでは?」
「ええ、バタフライエフェクトの事ですね」
「蝶の羽ばたきが周りに回って大きな竜巻を生む。些細な変化がどんな大きな変化を呼ぶかは誰にもわからない」
「そういうことです」
些細な変化なんてかわいらしく見えるほど、大きな変化を起こしてしまっているのだから。もう、私にもこれから先どんなことが起きるのかは全くわからない。
「本題に戻しますが、私とアリスがこの学園に来た理由、そして何を望むのか、より詳しい正体についてですが」
一呼吸おいて、話す。
「私ケイの目的は、アリス彼女の隣に居ること。そして、アリスは・・・目的というのは正しくありませんね。アリスの望みはゲーム開発部、リオ、ヒマリ、ヴェリタス、エンジニア部、ミレニアムのすべての生徒と共に同じ仲間として笑いあえる日常。それが、私達がミレニアムに来た理由と目的です」
「ミレニアムを利用するつもりはないと?」
「アリスにそんなつもりは一切ありません」
「ふむ、それが本当ならば私としては大歓迎ですね。かわいい後輩が二人も増えるのですから」
「なら、あなた達の正体は何なのかしら?」
「未知から侵略してくる「不可解な部隊Divi:Sion」の指揮官であり、「名もなき神」を信仰する無名の司祭が崇拝した「オーパーツ」であり、古の民が残した遺産「名もなき神々の王女AL-1S」だった存在と、それを補佐するハズだった存在のAIですよ」
「できれば、いきなり知らない単語を使って説明するのはやめていただけないかしら」
「それ以上でもそれ以下でもないので無理です。まぁ、単純に言えばこの世界を破壊させる程の兵器達を統率する存在と、それの補佐をするAIだったものですよ。最も、私とアリスはその役割を放棄していますが」
私の言葉にリオは考える。
「昨日、エンジニア部でレールガンを片手で振り回していたけれど・・・あなたたちは」
「ええ、アンドロイド、造られた存在に私とアリスは自我が芽生えて、自分たちの意思で考え、悩み、行動していますよ。それに本来はあれ以上の戦闘を想定したものですから」
「・・・」
「さて、私とアリスの話は一旦ここまでで、私からの要望を話します」
私がどんな要望をするのかとリオとヒマリは身構える。
「前の世界線では、リオがアリスを脅威と思い排除しようとしました。ですから、どうかお願いします。アリスを消すようなことはしないでください」
「リオ・・・あなたって人は・・・」
「その情報に自力でたどり着いたのならば、私がその判断をしたのも納得は行くわ。ただ・・・今の私が同じ判断をするかは別よ」
「じゃあ」
「少なくとも、今はアリスとあなたを排除しようとは思っていないわ」
少なくとも、これから先その考えが変わる可能性は否定しなかった。
「そして、今のあなた達を排除するという理由はないわ」
「あら、珍しいですね」
「今の話はケイが一人で述べただけの話。その話の内容が本当なのか嘘なのか、それを今の私が持ちうる情報では判断できない。ここでその判断を下すのは早計、合理的ではないわ」
「あなたらしいですね、リオ」
「・・・これは褒められているのかしら?」
「そうですねぇ、せめてなにか他に未来から来たことを証明することはできないでしょうか?」
「・・・そうですね」
私が未来から来たことを証明することができれば、私の話の説得力は増す。けれど、未来で起きる出来事は不確定であり、必ず起きる保証はどこにもない。そんな中で、未来から来たことを証明できることとすれば。
「そうですね、リオは片付けが致命的にヘタで、普段の食生活は近くの半額弁当、特に唐揚げ弁当を好んで購入している。あとは、アバンギャルド君などというとても・・・とても・・・前衛的・・・いえ、とてもひどいデザインをしたロボットをお気に入りと言って、独特のセンスを持っていることでしょうか?って、ちゃんと部屋の掃除をしていますか?以前お邪魔したときゴミ山が出来上がっていてゲーム開発部がマシに思えましたよ?」
「え・・・どうしてそのことを」
「あなた、あのデザインまだ気に入っていたのですか?流石に引きますよ?」
「ヒマリはほぼ誰の目から見てもバイクとしか言いようがない車椅子を望んでいますよね」
「あら?車椅子といえば車椅子ですよ?」
未来の情報ではないものの、彼女達のことをよく知っていなければわからないような内容を答える。
「随分と、未来の私達はあなたと親しかったのですね」
「ええ、同時にゲーム開発部の皆ともです」
それからも、三人で密会を続ける。
ひとまず、リオは独自で私とアリスの事を調査を進める。その結果次第で今後の処遇は決定する事になった。そして、私とアリスの不正入学の件については、相応の成果を出せば不問にする事になりました。
「さて、これからどうしましょうか」
少なくとも、直近の脅威はなくなりました。ゲーム開発部廃部の危機は、モモイたちに頑張ってもらうしかありません。
デカグラマトンの一件も、私が活動していない間に殆ど事が進んでいたため、鋼鉄大陸に上陸するまでの間、何があったのかを私は知りません。
アイン、ソフ、オウル、今回の私達は彼女達の手を取ることができるのでしょうか。まぁ、どう転ぶにしても、デカグラマトンを偽神からは引きずり落として、二度と存在証明なんてさせないようにしますが。
尤も、それ以上に心配なのは先生です。あの人のことですから、ミレニアム以外でも問題ごとを引き受けて、命を危険に晒す。何がどのタイミングで先生が危険になるのかはわからない私が、どうやって先生を守り切ることができるのか。
問題は山積みです
続きません。