サイド7の受信機~アムロ・レイの隣で鳴り響く、もう二つのガンダムの叫び~   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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 一年戦争最後の日。ア・バオア・クーの空域は、物理的な爆炎を越えて、精神の光が奔流となって渦巻いていました。
 アムロさんとララァ・スン。二人のニュータイプが触れ合った瞬間に解き放たれた「刻(とき)」の輝きは、時空の壁を突き抜け、私という未熟なレシーバーに宇宙のすべてを見せました。
 それは、戦争という名の残酷なチェス盤ではありませんでした。
 凍えるサイド6の雪、熱気に満ちた東南アジアの密林、そして今まさに砕け散ろうとしている要塞。それらすべてが、一つの命の環(わ)となって繋がっている光景。
 ララァさんが示した「光の向こう側」には、悲劇も希望も、シローお兄ちゃんの愛も、クリスお姉ちゃんの涙も、すべてが等しく星の瞬きとして存在していたのです。


光の向こう側(U.C.0079.12.31)

「カツ、レツ! 離れちゃダメだよ!」

 ホワイトベースがア・バオア・クーの地表に不時着し、艦内は爆発と叫び声に包まれていた。

 でも、キッカは知っていた。今、一番激しく戦っているのは、ここにいる大人たちじゃない。

 もっと遠く。光の粒子が虹色に踊る、あの「刻」の裂け目の中で、アムロさんが戦っている。

 

(……温かい。悲しいのに、とっても温かい)

 

 キッカの頭の中に、いくつもの景色が流れ込んできた。

 それは映画のフィルムが燃えながら回っているような、不思議な光景だった。

 

 リボ・コロニーの雪が降る森。そこで一人、ガンダムの残骸の横で立ち尽くすクリスお姉ちゃん。

 雪山でアイナお姉ちゃんを抱きしめ、朝日を見つめるボロボロのシローお兄ちゃん。

 そして、アムロさんの剣に貫かれながら、優しく微笑むララァさん。

 

『……ねえ、キッカ。見える? 人は、こんなに遠く離れていても、繋がることができるのよ』

 

 ララァさんの声が、キッカの耳に直接届いた。

 それは耳鳴りじゃない。宇宙そのものが、キッカに語りかけているような、透き通った音。

 キッカが見てきた「戦場の断片」が、ジグソーパズルのように組み合わさっていく。

 

(ジャングルのお兄ちゃんが生き延びたのも。サイド6のお姉ちゃんが、ガンダムと一緒に傷ついたのも。全部、アムロさんが「アムロさん」でいられるために必要なことだったんだ……)

 

 アムロさんの孤独な光を、世界中の誰かが立てた「生きるための音」が支えている。

 シローの愛が宇宙の冷たさを和らげ、クリスの苦悩が「戦うことの意味」を問い、バーニィの嘘が少年の心に平和への願いを刻んだ。

 それらすべての波長が、今、アムロさんのガンダムの背中を押し、彼を絶望から救い出そうとしている。

 

「……アムロさん、負けないで! ララァさんが、みんながついてるよ!」

 

 不時着した艦内の煙の中で、キッカは叫んだ。

 その瞬間、アムロさんの意識が、一瞬だけキッカの方を振り返ったような気がした。

 ガンダムを捨て、壊れかけた要塞の中を走るアムロさん。

 彼の目には、もう敵であるシャア・アズナブルしか見えていないかもしれない。

 けれど、彼の魂の底には、キッカを通じて届けられた「世界中の鼓動」が、静かな勇気となって流れ込んでいた。

 

「……刻(とき)が見える……」

 

 遠くで、アムロさんの声が響いた。

 それは、過去と未来、そして現在戦っているすべての人々を肯定する、ニュータイプとしての確信に満ちた声だった。

 

 キッカは、燃えるホワイトベースの壁に手を当て、静かに目を閉じた。

 光の向こう側で、シローお兄ちゃんが笑っているのが見えた。

 クリスお姉ちゃんが、空を見上げているのが見えた。

 宇宙の耳鳴りは、いつの間にか、美しいシンフォニーに変わっていた。




ア・バオア・クー最終決戦。アムロ・レイとララァ・スンの精神的接触は、宇宙世紀における人間意識の拡大を決定づけた。その瞬間、極限まで研ぎ澄まされたアムロの感覚は、図らずも地球で生還したシロー・アマダや、サイド6で悲劇を経験したクリスチーナ・マッケンジーらの精神波とも共鳴したとされる。無数の「生」と「死」の意志が要塞周辺に集結し、戦争という狂気を超えた、一時の純粋な理解の刻が訪れていた。
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